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数学とは? | 森田 真生 | TEDxKyoto

  • 0:21 - 0:24
    数学についてお話しましょう
  • 0:24 - 0:27
    みなさん数学は大好きですよね?
  • 0:27 - 0:29
    そうでもない?
  • 0:29 - 0:33
    みんながみんな数学が
    好きではない事は分かっています
  • 0:33 - 0:34
    正直に言って
  • 0:34 - 0:38
    数学が嫌いな方はこの中に
    どれくらいいらっしゃいますか?
  • 0:38 - 0:40
    そんなには多くない
    いいですね
  • 0:40 - 0:42
    実際に数学を嫌っている多くの人が
  • 0:42 - 0:45
    数学って数のことだろうとか
    計算や公式とか
  • 0:45 - 0:48
    そういうつまらないものの事だ
    と思っているようですが
  • 0:48 - 0:52
    本当はそうじゃないんです
  • 0:52 - 0:54
    ひとつ面白い話があります
  • 0:54 - 0:59
    19世紀にエルンスト・クンマー
    という偉大な数学者がいました
  • 0:59 - 1:01
    彼はとても有名な数学者で
  • 1:01 - 1:06
    今では 彼は「整数論の父」
    と呼ばれています
  • 1:06 - 1:10
    しかし彼は簡単な計算が
    そんなに得意ではありませんでした
  • 1:10 - 1:14
    ある時 授業中に
  • 1:14 - 1:17
    7×9の計算に行き詰まりました
  • 1:17 - 1:19
    7×9ですよ
  • 1:19 - 1:21
    黒板に書きながら
  • 1:21 - 1:25
    「7×9は?」
  • 1:25 - 1:27
    1人の学生が「61です」
  • 1:27 - 1:29
    別の学生が「69です!」
    と答えました
  • 1:29 - 1:33
    そこでクンマーは
    「君たち 落ち着いて考えなさい
  • 1:33 - 1:37
    61か69の両方であるわけがない
    どちらかであるはずだ」
  • 1:37 - 1:39
    この話おもしろいはずなんですが・・・
  • 1:39 - 1:41
    これは有名な笑い話なんですが
  • 1:41 - 1:46
    全ての数学者が数を扱うのが
    得意なわけではないんです
  • 1:47 - 1:49
    彼は有名な整数論の…
  • 1:49 - 1:50
    どうも ありがとうございます
  • 1:51 - 1:54
    数学は数だけの世界ではありません
  • 1:54 - 1:56
    実際 僕は数について触れずに
  • 1:56 - 1:57
    数学について何日間でも
  • 1:57 - 2:01
    お望みならば一週間でも
    しゃべり続けることができるでしょう
  • 2:01 - 2:03
    毎日新たな定理が証明され
  • 2:03 - 2:08
    新たなアイデアや概念が創造されています
  • 2:08 - 2:12
    数学は完全に終わりのない
    閉じていない創造行為なんです
  • 2:12 - 2:15
    そういう意味で
    数学は音楽に似ています
  • 2:15 - 2:18
    例えば 何がかっこ良く何がイケてないか
  • 2:18 - 2:22
    数学ではそれが時代や
    文化で変わっていきます
  • 2:22 - 2:24
    例えば ある人は圏論を
    最もかっこいいと思い—
  • 2:24 - 2:26
    「圏論」という言葉は
  • 2:26 - 2:28
    聞いたことがないかもしれませんが—
  • 2:28 - 2:33
    中には「集合論」ほどセクシーな
    数学はないと思う人もいます
  • 2:36 - 2:41
    ある国では具体的な数学を
    得意とする人が多く
  • 2:41 - 2:45
    ある国では抽象的な数学を
    得意とする人が多いことがあります
  • 2:45 - 2:47
    数学は 皆様が思い描いているほど
  • 2:47 - 2:50
    自由が利かないものではないんです
  • 2:50 - 2:53
    数学と音楽の間では決定的な違いとは
  • 2:53 - 2:59
    音楽の世界には素晴らしい作曲家がいて
    曲を創造します
  • 2:59 - 3:03
    と同時に 素晴らしい演奏家が
    その曲を演奏します
  • 3:03 - 3:05
    それでバッハやベートーベン
  • 3:05 - 3:09
    モーツアルトなど
    偉大な作曲家の美しい音楽が聞けます
  • 3:09 - 3:10
    でも それらを今聞けるのは
  • 3:10 - 3:13
    偉大な演奏家たちがいるからです
  • 3:13 - 3:14
    グレングールドやヨーヨーマなど
  • 3:14 - 3:17
    他の全ての演奏家たちが
    音楽を演奏して初めて
  • 3:17 - 3:19
    私たちはその音楽に
    アクセスできるのです
  • 3:19 - 3:22
    でも数学の世界では 残念なことに
  • 3:22 - 3:24
    すばらしい作曲家がいて
  • 3:24 - 3:26
    毎日たくさんの新しい数学が
    創造されているのに
  • 3:26 - 3:30
    誰もその数学を演奏していないのです
  • 3:30 - 3:32
    なので 美しい数学の世界に
    アクセスできるのは
  • 3:32 - 3:37
    プロの数学者に限られてしまいます
  • 3:37 - 3:39
    僕はこの状況を少しでも変えたいのです
  • 3:39 - 3:41
    実際 僕は3年ほど前から
  • 3:41 - 3:44
    「数学の演奏会」というのを始めました
  • 3:44 - 3:47
    ここのようなホール レストラン
    お寺などの場所で
  • 3:47 - 3:48
    僕は数学のことを話し
  • 3:48 - 3:50
    そこへは数学者ではない方々が
  • 3:50 - 3:53
    数学を「聴きに」いらっしゃいます
  • 3:53 - 3:56
    僕は もちろん僕だけでなく
  • 3:56 - 3:59
    より多くの人が「数学の演奏会」を開いて
  • 3:59 - 4:01
    美しい数学の世界を
  • 4:01 - 4:06
    数学者でない人に知ってもらいたい
    と思っています
  • 4:06 - 4:08
    では 話を本題に戻しましょう
  • 4:08 - 4:10
    数学は数だけの世界ではない
    と言いました
  • 4:10 - 4:13
    では数学とは何なのでしょう?
  • 4:13 - 4:16
    数学は日本語で「SUGAKU」と表されます
  • 4:16 - 4:19
    「SU」とは数を表わし
    「GAKU」とは学習を表わします
  • 4:19 - 4:22
    つまり「SUGAKU」とは
    数を学ぶものであると
  • 4:22 - 4:26
    僕はこの訳があまりいいとは思えません
  • 4:26 - 4:29
    というのも この訳では数学は
    数についての学問なのだ
  • 4:29 - 4:31
    という印象をもってしまうからです
  • 4:31 - 4:35
    しかし「数学(mathematics)」
    の本来の言葉はギリシャ語で
  • 4:35 - 4:39
    ta mathemata という言葉でした
  • 4:39 - 4:41
    ta mathemataの意味は
  • 4:41 - 4:43
    「我々が『つかみ取る』
    ことによって得られるもの」
  • 4:43 - 4:46
    ただ 通常の「つかみ取る」
    という意味ではなく
  • 4:46 - 4:49
    我々がすでに持っているものを
    「つかみ取る」という意味です
  • 4:49 - 4:51
    普通「つかみ取る」という単語は
  • 4:51 - 4:53
    我々が持っていない何かを
    「つかみ取る」という意味です
  • 4:53 - 4:54
    でも ta mathemataとは
  • 4:54 - 4:56
    我々が何か手に入るものを「つかみ取る」
  • 4:56 - 4:58
    でも「すでに得ているもの」
    をつかみ取るという意味です
  • 4:58 - 5:00
    ちょっと難しい概念ですが
  • 5:00 - 5:03
    言い換えると 数学の元々の意味は
  • 5:03 - 5:06
    すでに持っているものを「つかみ取る」
  • 5:06 - 5:09
    すでに知っているものを
    「知る」ということです
  • 5:09 - 5:12
    それはどういうことなのでしょうか?
  • 5:12 - 5:16
    日本人の数学者で岡潔という人がいます
  • 5:16 - 5:20
    みなさん このプレゼン後も
    是非この名前を覚えておいて下さい
  • 5:20 - 5:22
    彼はここ京都に住んでいたこともあります
  • 5:22 - 5:28
    世界で最も知られた
    日本人の数学者の1人です
  • 5:28 - 5:31
    岡潔はあまりにも偉大過ぎて
  • 5:31 - 5:33
    ヨーロッパでは「OKA」という名前は
  • 5:33 - 5:34
    数学者グループの名前だと思われていました
  • 5:34 - 5:37
    彼らは「岡潔」の全ての仕事を
  • 5:37 - 5:39
    とても1人で成し遂げたと思えなくて
  • 5:39 - 5:43
    それを1人でやったとは信じていませんでした
  • 5:43 - 5:45
    岡潔は偉大な数学者であっただけでなく
  • 5:45 - 5:50
    彼は偉大な思想家で哲学者でもありました
  • 5:50 - 5:52
    彼は数学についての
    示唆に満ちたエッセイや言葉を
  • 5:52 - 5:55
    いくつも残しています
  • 5:55 - 5:59
    特に彼が繰り返し言っていたのが
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    数学は自然数の最初の数字「1」について
  • 6:03 - 6:06
    何も説明することができない
  • 6:06 - 6:09
    確かに数字というのは数学の中で
  • 6:09 - 6:11
    最もシンプルな概念のひとつですが
  • 6:11 - 6:13
    でも もしあなたが
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    「なぜその最初の数『1』は存在するのか?」
  • 6:16 - 6:19
    「最初の数『1』というのは何か?」
  • 6:19 - 6:21
    これをどんなに数学的に論理的に
  • 6:21 - 6:23
    頑張って説明しようとしても
  • 6:23 - 6:25
    あなたは決してそれを
    説明することはできないし
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    決して証明することもできない
  • 6:28 - 6:30
    「1」という存在や最初の数
    「1」が何であるかを
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    我々は単にその存在を信じるだけなんです
  • 6:33 - 6:37
    そして その信念は根拠のないものに
    支えられています
  • 6:37 - 6:40
    この信じる心の力が無ければ
  • 6:40 - 6:42
    数学というのは全く根拠のない
  • 6:42 - 6:46
    無意味なものになります
  • 6:46 - 6:49
    最初に数学とは「数字」であり「計算」であり
  • 6:49 - 6:52
    または「論理」であり
    と思えたかもしれませんが
  • 6:52 - 6:54
    でも「計算」や「論理」の奥深くには
  • 6:54 - 6:57
    それを支える広大な心の領域があって
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    計算や論理を下から支えているのです
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    なので数学の中心には
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    数字や論理や計算があるのではなく
  • 7:08 - 7:12
    我々の心に巨大な
    広がりを持つ世界があるのです
  • 7:12 - 7:17
    岡潔はそれを「情緒」と名付けました
  • 7:17 - 7:21
    「情緒」という日本語はとても難しい言葉で
  • 7:21 - 7:23
    僕はしばらくこの「情緒」という日本語に
  • 7:23 - 7:26
    ふさわしい英語の訳を
    しばらく考えてみたのですが
  • 7:26 - 7:29
    残念ながら ふさわしい言葉が
    見つからなかったので
  • 7:29 - 7:33
    ここではこのまま「Jocho」
    と呼ぶことにします
  • 7:33 - 7:36
    岡潔の言葉を借りれば
  • 7:36 - 7:40
    数学は数や計算や
    論理についての学問ではなく
  • 7:40 - 7:42
    数学とは「情緒」についての学問である
  • 7:42 - 7:45
    それは私達の心の内側を
    覗き込む行為そのものの事であり
  • 7:46 - 7:50
    自分自身の心に出会う行為のことです
  • 7:50 - 7:52
    自分自身の内にある豊かな世界
  • 7:52 - 7:55
    つまり「情緒」に出会うことである
  • 7:55 - 7:57
    それで もし数学をしたいと思ったら
  • 7:57 - 8:00
    なにも難しい問題を
    解こうとする必要はありません
  • 8:00 - 8:02
    まだ誰も証明したことがない定理を証明しよう
  • 8:02 - 8:04
    そんなことを思う必要もありません
  • 8:04 - 8:06
    簡単な問題で構わないので
  • 8:06 - 8:08
    その問題に集中し
  • 8:08 - 8:09
    自分自身で考えてみることです
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    決して答えを見たり
    ごまかしてはいけません
  • 8:12 - 8:17
    自分の頭でそれが分かるまで
    徹底的に考え抜いてみる事です
  • 8:17 - 8:20
    ただ それには忍耐力が必要です
  • 8:20 - 8:22
    そしてそれに集中し続けること
  • 8:22 - 8:27
    ひとつの問題に忍耐強く
    集中し続けることが大切です
  • 8:27 - 8:30
    そのような心の状態を
    辛抱強く耐えていると
  • 8:30 - 8:33
    自分自身の心に
    再び出会うことになるでしょう
  • 8:33 - 8:35
    もしあなたが幸運であれば
  • 8:35 - 8:41
    「情緒」の海で泳いでいる
    自分自身に出会うでしょう
  • 8:41 - 8:44
    機会があれば
    是非みなさんもやってみて下さい
  • 8:44 - 8:45
    今回は数学についての
  • 8:45 - 8:48
    ごく短いプレゼンテーションだったのですが
  • 8:48 - 8:51
    伝えたいメッセージはただ1つです
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    数学とは数だけの世界でなく
  • 8:53 - 8:55
    計算だけの世界でもなく
  • 8:55 - 8:58
    論理だけの世界でもありません
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    数学とは自分自身の心の内側を
    覗き込んでいく行為のことであり
  • 9:01 - 9:05
    その過程で自分の中にある
    広がりを持った「情緒」の海で
  • 9:05 - 9:09
    自分自身に出会うという体験
    そのもののことである
  • 9:09 - 9:11
    そういう意味では
  • 9:11 - 9:14
    あなた自身も含めて
    誰もが数学者になれるのです
  • 9:14 - 9:15
    ありがとうございました
  • 9:15 - 9:18
    (拍手)
Title:
数学とは? | 森田 真生 | TEDxKyoto
Description:

「数学の演奏会」をご存知ですか?数学のステージで拍手に包まれる演奏家、それが森田真生さんです。2010年、東京大学理学部数学科在学中に、福岡県糸島市に数学道場「懐庵」を立ち上げたのが、独立研究者としての第一歩。以来、「思考を超えた制約の中に思考を投げ出す」ことをテーマに、さまざまな実験的ワークショップを開催しながら、大学制度の外側で独自の研究活動を展開してきました。主な関心は「圏論」「計算論」。現在は京都に拠点を構え、自然と「ともに-考える(com-putare)」という、言葉本来の意味での計算(computation)ということを理論的、実践的に追求しています。同時に、数学の世界の数々「名作」を「演奏する」ことをコンセプトに、「数学の演奏会」を全国各地で開催しています。

このトークは、TEDカンファレンスから独立して、ローカルに運営され、撮影されたものです。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
09:28

Japanese subtitles

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