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Justice: What's The Right Thing To Do? Episode 02: "PUTTING A PRICE TAG ON LIFE"

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    命の値段
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    前回 私たちは
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    船乗りの裁判について議論した
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    海で人を食べた事件だ
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    船長と航海士がしたことや
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    それに対する批判を念頭に置きつつ
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    ジェレミー・ベンサムの
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    功利主義の話に戻ろう
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    ベンサムは1748年イギリス生まれ
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    12才でオックスフォード大学に進学し
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    19才で弁護士資格を得たが働かず
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    法学と道徳哲学に人生を捧げた
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    ベンサムの功利主義は前回も触れたが
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    その中心となる考えは単純だった
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    道徳の最高原理とは
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    個人的にも政治的にも
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    幸福を最大化することである
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    苦痛が快楽を上回るように
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    一言で言えば 効用の最大化だ
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    ベンサムは次のように考えた
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    我々は皆 苦痛と快楽に支配されている
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    だからどんな道徳もそれを考慮すべきだ
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    その最も良い方法が最大化だ
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    これが最大多数の最大幸福の原理となる
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    何を最大化すべきなのか?
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    ベンサムは幸福だと言う
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    より正確には効用だと
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    効用の最大化は個人のためだけでなく
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    共同体や立法者のための原理でもある
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    共同体とは何か? とベンサムは問う
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    それは結局 個人の集まりだ
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    だから より良い政策を求めたり
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    法律を定めようとしたりするとき
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    市民や立法者はこう問わねばならない
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    その選択によるすべての利益から
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    すべての代償を差し引いたとき
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    幸福が苦痛を上回る度合いが
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    最大化できているだろうか?
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    これが効用の最大化だ
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    さて 今日は君たちが
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    これに賛成か反対かを聞きたい
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    ところでこの功利主義の論理は
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    費用便益分析という名で企業や
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    政府によってよく使われてきた
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    関連するものを数値で表すもので
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    たいていは効用をドルに換算し
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    様々な事業の費用と便益を数値化する
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    このあいだチェコ共和国で
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    タバコ消費税増税の提案がなされた
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    タバコ会社のモリスは
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    チェコで事業を展開しているのだが
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    彼らはチェコ共和国内における
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    喫煙についての費用便益分析を行った
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    その分析の結果わかったのは
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    政府は国民の喫煙によって
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    得をするということだった
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    どうして得をするのか?
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    チェコ政府の財政に
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    マイナス効果があるのは事実だ
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    喫煙による病気が増えて
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    医療費が増大するからだ
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    一方 プラス効果もあり
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    それらは帳簿の便益欄に載った
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    プラス効果として加えられたのは
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    大部分がタバコ販売による税収だ
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    早死にによる医療費の節約も加えられた
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    年金もそう長くは払わなくて済むし
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    高齢者用住宅費の節約にもなる
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    すべての費用と便益が考慮され
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    この会社の調査でわかったのは
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    チェコ政府の税収は
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    1億4700万ドル増えるということだった
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    喫煙して国民が早く死んでくれれば
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    年金や医療費を払う必要がなくなるので
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    一人あたり1200ドル以上節約できる
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    これが費用便益分析である
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    君たちの中で功利主義を擁護する人でも
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    これはひどい調査だと思うかもしれない
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    モリスはメディアに叩かれ
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    この冷酷な計算について謝罪した
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    ところで ここには功利主義者が
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    容易に含めそうな事柄が見当たらない
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    肺ガンで死んだその人自身の価値だ
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    命の価値はどうなったのか?
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    費用便益分析の中には
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    命の価値を組み込んでいるものもある
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    最も有名なものはフォードピント事件だ
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    1970年代のこの事件を知っている人は?
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    ピントという車だ 知っているかな?
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    小型の車でとても人気があったが
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    一つ問題があった
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    燃料タンクが車の後方にあり
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    後ろから追突されると爆発した
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    何人もの人が死に 重傷を負った
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    被害者たちはフォード社を訴えた
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    そしてその裁判で
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    フォード社はその欠陥を認識しており
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    対策として保護装置をつけることに
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    それを実行する価値があるかどうか
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    費用便益分析していたことがわかった
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    その分析では費用について
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    車の安全性向上のために
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    1台あたり11ドルかかるとして計算した
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    これが裁判で公開された費用便益分析だ
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    1台あたり11ドル
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    車は1250万台あるので
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    安全性改善のための費用は
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    全部で1億3700万ドルになる
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    安全性向上によって得られる
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    便益の方の計算はこうなる
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    死者は180人で
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    1人あたりの価値を20万ドルとした
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    負傷者も180人で 1人6万7000ドル
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    安全対策なしで壊れる車が2000台で
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    1台あたりの修理代 700ドル
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    これらの便益を計算すると
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    4950万ドルにしかならなかったので
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    会社は装置を取り付けないことにした
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    言うまでもないが 裁判でこの
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    費用便益分析の資料が公開されると
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    陪審員は驚愕し 巨額の支払いを命じた
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    これぞ功利主義的計算ではないだろうか
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    命の価値もちゃんと計算に入れている
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    さて この費用便益分析を
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    擁護したい人はいるだろうか?
  • 9:35 - 9:38
    擁護できる人は?
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    またはこれは功利主義ではないと思う人
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    この例もさっきの例と同様
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    間違いを犯しています
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    人の命に値段を付けたかもしれないけど
  • 9:57 - 10:01
    残される家族の苦しみは入れていません
  • 10:01 - 10:06
    それは20万ドル程度じゃないと思います
  • 10:06 - 10:09
    待って 君の名前は?
  • 10:10 - 10:15
    20万ドルでは額が低すぎると言うんだね
  • 10:15 - 10:18
    死ぬ人の価値だけで
  • 10:18 - 10:21
    家族を考慮していない
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    では適切な額はいくらだと思う?
  • 10:27 - 10:30
    数字で表せるものではないと思います
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    命の価値を数値化すべきではありません
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    数字が低すぎただけではなく
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    どんな数字を付けたとしても間違いだと
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    他の人に聞こうか
  • 10:49 - 10:52
    インフレを考慮すべき?
  • 10:59 - 11:02
    じゃあ今だといくらだ?
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    これは35年前の話だ
  • 11:07 - 11:11
    200万ドル? なるほど
  • 11:14 - 11:19
    ボイテクは適正価格を提示してくれた
  • 11:19 - 11:23
    それ自体間違いだとは思わないのかな?
  • 11:25 - 11:29
    あいにく そうですね
  • 11:29 - 11:32
    何らかの数字が必要だと思います
  • 11:33 - 11:36
    いくら付けるべきかはわかりませんが
  • 11:36 - 11:41
    命に値段を付けることは可能でしょう
  • 11:42 - 11:46
    ボイテクはジュリアとは違う意見だ
  • 11:46 - 11:51
    ジュリアは値段は付けられないと言うが
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    ボイテクは決断のためには必要だと言う
  • 11:59 - 12:02
    他の人はどうだろう?
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    費用便益分析を弁護できる人は?
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    良いものだと思う人
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    車会社が費用便益分析を行わなかったら
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    利益が出せなくなり 潰れてしまいます
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    そして大勢の人が車を使えなくなったら
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    仕事ができなくなり 死んでしまいます
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    なので費用便益分析をやらなかったら
  • 12:28 - 12:32
    より大きな善が犠牲になってしまいます
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    最近 運転中の携帯電話の使用について
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    禁止にすべきか議論が行われたのだが
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    調査によれば 毎年約2000人の人が
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    運転中の携帯電話の使用が原因で
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    事故死しているということだった
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    ただハーバードのリスク分析センターが
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    これの費用便益分析を行ってみたところ
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    携帯電話の使用でもたらされる便益は
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    失われる命の価値とほぼ同じだった
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    人々が時間を有効活用することで
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    大きな経済的利益が生まれるらしい
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    運転中でも仕事の取引ができるからね
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    この話は 人の命に値段を付けることが
  • 13:33 - 13:37
    間違いであることを示してないだろうか
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    もし大勢の人々が
  • 13:41 - 13:45
    携帯電話や関連のサービスを使い
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    効用を最大にしようとするなら
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    その犠牲は必要なものだと思います
  • 13:53 - 13:56
    君は完全な功利主義者だ?
  • 13:59 - 14:02
    では もう一つ質問だ
  • 14:03 - 14:06
    ボイテクにも聞いたが この場合
  • 14:07 - 14:10
    命にいくらの値段を付けるべきかな?
  • 14:13 - 14:15
    そうですね 今すぐ思いつきで
  • 14:16 - 14:19
    数字を挙げたくはないですが…
  • 14:21 - 14:23
    じっくり考えたい?
  • 14:24 - 14:28
    だいたいでいい 死者は2300人いる
  • 14:28 - 14:31
    携帯電話の使用を禁止するか決めるには
  • 14:32 - 14:34
    金額を設定しなければならない
  • 14:36 - 14:39
    直感でいい いくらだ?
  • 14:40 - 14:44
    100万?200万? ボイテクは200万だ
  • 14:45 - 14:47
    じゃあ100万で
  • 14:50 - 14:53
    わかった いいだろう
  • 14:54 - 14:57
    最近ではこのような
  • 14:58 - 15:01
    費用便益分析を巡って論争が起きている
  • 15:01 - 15:06
    すべてのものに値段を付けるからだ
  • 15:07 - 15:10
    ここからは反対意見を考えていこう
  • 15:10 - 15:14
    費用便益分析は 功利主義の実践の
  • 15:15 - 15:20
    一つに過ぎないので それだけに限らず
  • 15:21 - 15:26
    理論全体に対する反論を考えていこう
  • 15:26 - 15:29
    正しい行いとは
  • 15:30 - 15:33
    法律の正しい基盤とは
  • 15:33 - 15:36
    効用の最大化である
  • 15:39 - 15:42
    この考えに反対の人はどれくらいだろう
  • 15:43 - 15:48
    法律や公益に関する功利主義的考えだ
  • 15:48 - 15:51
    賛成の人は?
  • 15:52 - 15:54
    反対より賛成の方が多いね
  • 15:55 - 15:57
    では反対意見から聞こう
  • 15:59 - 16:02
    何か良くない感じがします
  • 16:03 - 16:06
    少数派だから価値がなく
  • 16:06 - 16:11
    多数派だから価値があるとは限りません
  • 16:11 - 16:15
    最大多数の最大幸福の問題点は
  • 16:16 - 16:20
    少数派にとって公平でなかったり
  • 16:20 - 16:25
    発言権がなかったりするところです
  • 16:25 - 16:27
    興味深い
  • 16:27 - 16:31
    君は少数派への影響が心配なんだね
  • 16:35 - 16:39
    誰か心配症のアナに反論がある人は?
  • 16:41 - 16:44
    少数派が軽んじられてると言いましたが
  • 16:44 - 16:47
    多数派にいる個人の価値は
  • 16:47 - 16:50
    少数派にいる個人の価値と変わりません
  • 16:50 - 16:54
    ただ数が多いというだけです
  • 16:55 - 16:58
    何らかの決断をしなければならないなら
  • 16:58 - 17:02
    少数派の人には申し訳ないですが
  • 17:02 - 17:05
    より大きな幸福のためです
  • 17:08 - 17:11
    ヨンダには何て答える?
  • 17:11 - 17:14
    ヨンダは 人々の好みを足すだけであり
  • 17:14 - 17:17
    少数派の好みも考慮されていると言う
  • 17:17 - 17:20
    君が心配する例を挙げてくれるかな
  • 17:21 - 17:24
    功利主義が少数派を無視していると
  • 17:25 - 17:29
    君が心配に感じるのはどんなとき?
  • 17:30 - 17:34
    これまで出てきたすべての例がそうです
  • 17:36 - 17:39
    食べられてしまった少年にだって
  • 17:40 - 17:43
    生きる権利があったと思います
  • 17:43 - 17:48
    その事例で彼は少数派だったし
  • 17:49 - 17:53
    生き残る望みが低かったですが
  • 17:53 - 17:58
    だからといって 他の人の望みのために
  • 17:58 - 18:02
    彼が食べられていいことにはなりません
  • 18:03 - 18:08
    少数派の人にもある種の権利があり
  • 18:08 - 18:12
    それは効用のためであっても
  • 18:12 - 18:15
    差し出されるべきではない?
  • 18:18 - 18:21
    ではヨンダに聞こう
  • 18:21 - 18:24
    古代ローマでは
  • 18:24 - 18:29
    キリスト教徒をライオンと戦わせていた
  • 18:29 - 18:32
    ここで功利主義の計算をやってみよう
  • 18:32 - 18:35
    確かに ライオンと戦うキリスト教徒は
  • 18:35 - 18:38
    ひどく苦しむだろう
  • 18:38 - 18:42
    だがローマ人たちの興奮を考えると…
  • 18:50 - 18:53
    それは昔は
  • 18:54 - 18:57
    現代とは価値観が違うし
  • 18:58 - 19:01
    昔はそれで楽しかったんでしょうが
  • 19:01 - 19:06
    今のまともな現代人であれば
  • 19:07 - 19:10
    一人の苦しみならいいとか
  • 19:10 - 19:14
    そういうことは考えませんよ
  • 19:14 - 19:18
    でも 熱狂的なローマ人が大勢いれば
  • 19:19 - 19:22
    その幸福は 一握りのキリスト教徒の
  • 19:23 - 19:27
    耐え難い痛みより大きくなるはずだよ
  • 19:29 - 19:33
    功利主義に対する二つの反論が出た
  • 19:33 - 19:37
    一つは 功利主義が個人や少数派の
  • 19:37 - 19:42
    権利を尊重していない というもの
  • 19:42 - 19:44
    そしてもう一つは
  • 19:45 - 19:48
    人々の好みや価値は
  • 19:48 - 19:52
    合計できない というもの
  • 19:53 - 19:56
    すべての価値をお金で表すことは
  • 19:56 - 20:00
    できないのではないか
  • 20:00 - 20:05
    1930年代
  • 20:06 - 20:08
    ある心理学者が
  • 20:09 - 20:13
    この2つ目の疑問に答えようとした
  • 20:13 - 20:18
    彼は功利主義の前提を証明しようとした
  • 20:18 - 20:21
    すべての価値は
  • 20:22 - 20:28
    一つの基準で表すことが可能であると
  • 20:28 - 20:32
    この調査は 生活保護を受けている
  • 20:32 - 20:36
    若い人たちを対象に行われた
  • 20:37 - 20:41
    彼らに不愉快な行為のリストを渡し
  • 20:41 - 20:45
    いくらもらえばそれをやるか
  • 20:45 - 20:49
    と聞いてまわったのである
  • 20:49 - 20:55
    例えば いくらもらえば前歯を一本抜くか
  • 20:57 - 21:03
    いくらもらえば片足の小指を切断するか
  • 21:04 - 21:09
    15センチのミミズを生きたまま食べる
  • 21:10 - 21:15
    カンザスの農場で残りの人生を送る
  • 21:19 - 21:23
    デブを橋から突き落とす
  • 21:24 - 21:29
    最も高かったものは何だろう?
  • 21:32 - 21:34
    カンザス?
  • 21:39 - 21:42
    カンザスだった
  • 21:44 - 21:47
    彼らは30万ドルもらわなければ
  • 21:48 - 21:51
    カンザスでは暮らさないそうだ
  • 21:57 - 22:01
    では 次に高かったのは?
  • 22:03 - 22:05
    デブじゃないよ
  • 22:05 - 22:09
    歯でもない 小指でもない
  • 22:11 - 22:12
    ミミズだ
  • 22:16 - 22:20
    10万ドル支払われなければ
  • 22:20 - 22:23
    ミミズは食べないらしい
  • 22:23 - 22:26
    では一番安かったのは何か
  • 22:28 - 22:30
    デブじゃない 歯だ
  • 22:31 - 22:34
    大恐慌の時代 人々はたった4500ドルで
  • 22:34 - 22:38
    喜んで歯を抜かせた
  • 22:40 - 22:43
    この調査結果から
  • 22:44 - 22:47
    心理学者はこう結論付けた
  • 22:48 - 22:50
    どんな満足であれ
  • 22:50 - 22:54
    それが一定量存在する限り 測定できる
  • 22:54 - 22:59
    犬や猫や鶏の生活は
  • 22:59 - 23:03
    食欲 願望 満足から成っているが
  • 23:04 - 23:07
    それは人間の場合も同じであり
  • 23:07 - 23:11
    欲求や願望が多少複雑なだけだ
  • 23:12 - 23:15
    この研究をどう捉えるべきだろう?
  • 23:15 - 23:19
    これは すべての価値は
  • 23:20 - 23:24
    一つの基準で測ることができるという
  • 23:25 - 23:27
    ベンサムの考えを裏付けるのだろうか
  • 23:28 - 23:32
    それともこのおかしな調査の結果
  • 23:33 - 23:37
    正反対のことが示されたのだろうか
  • 23:38 - 23:43
    命であれ カンザスであれ ミミズであれ
  • 23:43 - 23:48
    人が重んじ 大切にしているものは
  • 23:49 - 23:53
    一つの基準で表すことはできない と
  • 23:54 - 23:57
    もしできないのなら
  • 23:57 - 24:01
    功利主義の道徳理論はどうなるのか?
  • 24:02 - 24:05
    次回もこの問題を続けよう
  • 24:45 - 24:47
    前回
  • 24:48 - 24:52
    ベンサムの功利主義に対する
  • 24:53 - 24:58
    反対意見について考え始めた
  • 25:01 - 25:06
    議論では二つの反論が出た
  • 25:08 - 25:12
    一つ目の反論はこうだ
  • 25:12 - 25:14
    功利主義の
  • 25:14 - 25:19
    最大多数の最大幸福においては
  • 25:19 - 25:24
    個人の権利が無視されている
  • 25:25 - 25:28
    少し考えてみよう
  • 25:29 - 25:32
    拷問とテロリズムについて
  • 25:33 - 25:38
    9月10日 テロの容疑者を逮捕したとする
  • 25:41 - 25:43
    君は確信している
  • 25:44 - 25:47
    その容疑者が差し迫ったテロの
  • 25:47 - 25:51
    決定的な情報を持っていると
  • 25:52 - 25:55
    だが容疑者は容易にはしゃべらない
  • 25:55 - 25:59
    情報を得るために 容疑者を
  • 25:59 - 26:02
    拷問することは正しいか?
  • 26:02 - 26:07
    それとも間違っているのか
  • 26:07 - 26:12
    個人の権利を尊重する義務はあるか
  • 26:14 - 26:17
    ある意味では これは最初の
  • 26:17 - 26:21
    路面電車の話に通じる
  • 26:23 - 26:28
    また費用便益分析の例では
  • 26:29 - 26:33
    多くの人が良しとしなかった
  • 26:33 - 26:38
    人の命に値段を付けることを
  • 26:40 - 26:44
    これは二つ目の反論へとつながる
  • 26:44 - 26:48
    すべての価値を一つの価値基準で
  • 26:48 - 26:52
    表すことは可能なのかという問題だ
  • 26:53 - 26:57
    すべての価値は同一の基準に置けるのか
  • 26:57 - 27:00
    もう一つ別の例を挙げてみたい
  • 27:01 - 27:03
    これは実際にあった話で
  • 27:04 - 27:06
    私の個人的経験から来ている
  • 27:07 - 27:11
    すべての価値を功利主義にあてはめても
  • 27:12 - 27:16
    失うものはないのか 考えてみてほしい
  • 27:19 - 27:22
    何年も前
  • 27:22 - 27:25
    私が大学院生だった頃
  • 27:25 - 27:29
    オックスフォード大学は共学ではなく
  • 27:29 - 27:35
    女子大学では男性の宿泊を禁止していた
  • 27:37 - 27:40
    1970年当時そのルールは全く守られず
  • 27:41 - 27:43
    みんな平気で破っていた
  • 27:43 - 27:46
    と私は聞いた
  • 27:51 - 27:55
    70年代後半 規則緩和の圧力が高まり
  • 27:55 - 27:59
    女子のセント・アン・カレッジでは
  • 27:59 - 28:03
    教職員の間で話し合いが持たれた
  • 28:03 - 28:07
    年配の女性教職員たちは保守的で
  • 28:07 - 28:12
    従来の規則を変えることに反対した
  • 28:12 - 28:15
    しかし時代は変わっていた
  • 28:16 - 28:19
    本当の理由を言うのが恥ずかしかったか
  • 28:19 - 28:24
    彼女たちは功利主義の議論を持ち出した
  • 28:25 - 28:30
    「男性が泊まると費用が増える」
  • 28:31 - 28:33
    どうしてか
  • 28:33 - 28:37
    「男はお湯を余計に使うし
  • 28:39 - 28:43
    シーツの交換回数も増える」
  • 28:47 - 28:51
    改革案は条件付きで大学に認められた
  • 28:52 - 28:54
    各女性が泊められる男性は
  • 28:55 - 28:57
    週に3人までとする
  • 29:01 - 29:04
    同じ男かは問われなかった
  • 29:05 - 29:09
    条件はもう一つあった
  • 29:09 - 29:14
    宿泊客は大学に50ペンス支払うこと
  • 29:15 - 29:20
    翌日 全国紙の見出しにこう書かれた
  • 29:20 - 29:24
    "セント・アンの女子は一晩50ペンス"
  • 29:29 - 29:32
    この話が示しているのは
  • 29:33 - 29:37
    すべてを功利主義で説明するのは
  • 29:37 - 29:41
    とても難しいということだ
  • 29:42 - 29:46
    これらの例が描き出しているのは
  • 29:46 - 29:49
    功利主義に対する二つ目の反論だ
  • 29:49 - 29:52
    少なくともこの反論には
  • 29:52 - 29:56
    次のような疑問が含まれている
  • 29:56 - 30:00
    功利主義は すべての価値を
  • 30:00 - 30:04
    例えばお金などに置き換えて
  • 30:04 - 30:07
    同一基準で比較できると前提しているが
  • 30:08 - 30:11
    それは正しいのだろうか
  • 30:12 - 30:15
    価値や好みの集計が懸念される
  • 30:15 - 30:18
    もう一つの理由がある
  • 30:19 - 30:22
    なぜ人々の好みを
  • 30:23 - 30:26
    すべて集計しなければならないのか
  • 30:27 - 30:32
    良い好みか悪い好みかに関わらず
  • 30:32 - 30:35
    区別するべきではないか
  • 30:35 - 30:40
    高級な喜びと低級な喜びを
  • 30:41 - 30:46
    人の好みに優劣を付けない態度には
  • 30:46 - 30:50
    ある程度の魅力がある
  • 30:50 - 30:54
    判断が不要で 平等主義的だからだ
  • 30:55 - 31:00
    ベンサムは言う すべてを集計すべきだ
  • 31:01 - 31:04
    人々の望みが何であるか
  • 31:04 - 31:08
    何が人々の幸せであるかに関わらず
  • 31:08 - 31:12
    ベンサムにとって重要なのは
  • 31:13 - 31:17
    快楽や苦痛の強度と持続性だ
  • 31:18 - 31:21
    高級な喜びや崇高な美徳とは
  • 31:21 - 31:23
    ベンサムにとっては ただ単に
  • 31:24 - 31:28
    より強く長い快楽を生みだすものだった
  • 31:29 - 31:32
    このことを表した彼の有名な言葉がある
  • 31:32 - 31:35
    喜びの量が同じであるなら
  • 31:35 - 31:39
    プッシュピンは詩と同じくらい良い
  • 31:39 - 31:43
    プッシュピンとは子どもの遊びだが
  • 31:43 - 31:47
    それは詩と同じくらい良いと言う
  • 31:48 - 31:53
    ここにはこんな主張が込められている
  • 31:54 - 31:58
    どんな喜びが崇高で価値があるかなど
  • 31:59 - 32:03
    誰にも決める権利はない
  • 32:04 - 32:07
    判断を拒むこの姿勢は魅力的だ
  • 32:07 - 32:10
    モーツァルトが好きな人もいれば
  • 32:10 - 32:13
    初音ミクが好きな人もいる
  • 32:13 - 32:17
    好みは人それぞれだ
  • 32:17 - 32:19
    ベンサムならこう言うだろう
  • 32:19 - 32:23
    誰かの喜びが他の人のより高級であると
  • 32:24 - 32:28
    誰が言うことができるだろうか と
  • 32:30 - 32:34
    だがそれは正しいのか?
  • 32:35 - 32:39
    優劣を付けなくていいのか?
  • 32:40 - 32:44
    私たちは捨てていいのだろうか?
  • 32:45 - 32:48
    ある種の喜びは
  • 32:48 - 32:52
    他のより崇高であるという考えを
  • 32:53 - 32:56
    古代ローマの例を思い出してほしい
  • 32:56 - 32:59
    キリスト教徒の権利の侵害が
  • 32:59 - 33:02
    問題であるように思われたが
  • 33:04 - 33:07
    別の反論も考えることができる
  • 33:07 - 33:12
    ローマ人が享受していた下劣な喜びも
  • 33:13 - 33:18
    高級な喜びと一緒にしていいのか
  • 33:20 - 33:24
    全体の幸福について考えるとき
  • 33:24 - 33:29
    その喜びも評価するべきなのか
  • 33:33 - 33:37
    これがベンサムに向けられた反論だ
  • 33:38 - 33:42
    この反論に答えようとした
  • 33:42 - 33:45
    一人の人物がいた
  • 33:45 - 33:49
    哲学者のジョン・スチュアート・ミルだ
  • 33:50 - 33:54
    ここからは 功利主義に対する反論に
  • 33:54 - 33:58
    ミルが説得力のある回答をしているか
  • 33:58 - 34:02
    検討することにしよう
  • 34:04 - 34:08
    ミルは1806年生まれ
  • 34:08 - 34:13
    父親のジェームズはベンサムの弟子で
  • 34:14 - 34:20
    息子のミルに模範的な教育を受けさせた
  • 34:20 - 34:23
    ミルは神童だった
  • 34:23 - 34:27
    3才でギリシャ語を理解し
  • 34:27 - 34:31
    10才でローマ法の歴史について書いた
  • 34:33 - 34:38
    そして20才で神経衰弱に陥った
  • 34:39 - 34:42
    5年間鬱状態であったが
  • 34:43 - 34:46
    25才の時 彼を救いだすことになる
  • 34:46 - 34:49
    ハリエットという女性に出会う
  • 34:49 - 34:52
    後に二人は結婚し
  • 34:52 - 34:55
    彼女の影響の下
  • 34:56 - 35:01
    ミルは功利主義を人間的にしようとした
  • 35:01 - 35:05
    ミルは功利主義の計算法が
  • 35:05 - 35:10
    人道的問題を考慮に入れて拡張し
  • 35:11 - 35:16
    修正できるか確かめようとした
  • 35:17 - 35:20
    個人の権利の尊重や
  • 35:20 - 35:24
    喜びの質の区別の導入だ
  • 35:26 - 35:30
    1859年 ミルは「自由論」を書き
  • 35:30 - 35:33
    個人や少数派の権利を
  • 35:33 - 35:36
    守ることの重要性を説いた
  • 35:36 - 35:39
    そして晩年の1861年
  • 35:40 - 35:44
    この講義で読む「功利主義論」を書いた
  • 35:45 - 35:50
    効用は道徳性の唯一の基準だ と彼は言う
  • 35:50 - 35:53
    つまりベンサムを支持しているのだ
  • 35:54 - 35:56
    はっきりとこう述べている
  • 35:56 - 36:01
    望ましいことを示せる唯一の証拠は
  • 36:01 - 36:05
    実際に人が望むということである
  • 36:05 - 36:10
    私たちに実在する経験的願望こそ
  • 36:10 - 36:14
    道徳的判断の唯一の根拠である
  • 36:15 - 36:19
    しかし 第二章の8ページでは
  • 36:19 - 36:23
    功利主義者が高級な喜びと低級な喜びを
  • 36:23 - 36:27
    区別することは可能であると論じている
  • 36:28 - 36:31
    ミルを読んできたよね
  • 36:32 - 36:36
    彼はどうやって区別するんだろう?
  • 36:36 - 36:42
    功利主義者はどうやって劣った喜びから
  • 36:42 - 36:46
    質の高い喜びを区別するのか
  • 36:48 - 36:54
    両方を経験した人が選ぶ方が高級なもの
  • 36:55 - 36:58
    その通りだ 君の名前は?
  • 36:59 - 37:04
    ジョンの通りにミルはこう言っている
  • 37:05 - 37:08
    人々の好みを除外することはできない
  • 37:09 - 37:13
    功利主義の前提を崩すことになるからだ
  • 37:13 - 37:17
    高級な喜びと低級な喜びを区別する
  • 37:17 - 37:20
    ただ一つの方法は
  • 37:20 - 37:23
    両方を経験した人が
  • 37:24 - 37:27
    好むかどうかである
  • 37:27 - 37:30
    そして第二章では
  • 37:31 - 37:35
    ミルはこのように書いている
  • 37:37 - 37:42
    二つの喜びのうち両方を経験した者が
  • 37:42 - 37:45
    全員 またはほぼ全員
  • 37:45 - 37:48
    道徳的義務感と関係なく
  • 37:49 - 37:52
    迷わず選ぶものがあれば
  • 37:53 - 37:57
    それがより好ましい喜びである
  • 37:57 - 37:59
    君たちに聞こう
  • 37:59 - 38:03
    この議論は成功しているだろうか?
  • 38:03 - 38:06
    成功していると思う人は?
  • 38:06 - 38:11
    これで喜びの質を区別できると思う人
  • 38:11 - 38:14
    成功していないと思う人は?
  • 38:18 - 38:20
    理由を聞きたいが
  • 38:20 - 38:23
    その前にミルの主張を
  • 38:23 - 38:26
    確かめるために
  • 38:26 - 38:29
    一つ実験をしてみよう
  • 38:31 - 38:34
    これから君たちに
  • 38:35 - 38:38
    3つの短い
  • 38:39 - 38:43
    人気番組の映像を見てもらう
  • 38:44 - 38:47
    一つ目はハムレットの独白
  • 38:48 - 38:50
    そのあとに別の2つの
  • 38:52 - 38:54
    何かが続く
  • 38:55 - 38:57
    では始めよう
  • 38:57 - 39:00
    男って最高だよ
  • 39:01 - 39:04
    頭が良いし
  • 39:04 - 39:06
    力も強い
  • 39:06 - 39:10
    筋肉質の美しい身体
  • 39:11 - 39:14
    神は最初に男を創ったわけだ
  • 39:15 - 39:18
    これほど素晴らしい生き物はない
  • 39:18 - 39:23
    それに比べて女は… 最悪のゴミだ
  • 39:24 - 39:27
    男でよかった…
  • 39:41 - 39:45
    恐怖が現実になったら…
  • 39:45 - 39:47
    噛んでる!
  • 39:47 - 39:51
    6人の挑戦者が死闘を繰り広げる
  • 39:52 - 39:56
    過酷な試練が彼らを追い詰めていく
  • 39:58 - 40:02
    生き残れるのはただ一人
  • 40:03 - 40:06
    フィア・ファクター
  • 40:16 - 40:18
    よぉ兄弟 ぶっ飛んでる?
  • 40:18 - 40:20
    誰だ君は 話掛けないでくれ
  • 40:21 - 40:26
    まあまあ それより上物のヤクあるぜぇ
  • 40:26 - 40:31
    こんな貧乏人には買えないわよ
  • 40:34 - 40:37
    ちょっと うちの親がいるじゃない
  • 40:37 - 40:40
    ハニー 僕たちの親だろう?
  • 40:55 - 40:59
    どれが好きか聞くまでもないようだ
  • 41:00 - 41:03
    シンプソンズが一番好きだという人は?
  • 41:05 - 41:08
    シェイクスピアは?
  • 41:10 - 41:14
    フィア・ファクターがよかった人は?
  • 41:15 - 41:17
    本当?
  • 41:21 - 41:24
    大多数の人が シェイクスピアより
  • 41:24 - 41:29
    シンプソンズの方が好きなようだ
  • 41:29 - 41:33
    では 少し質問を変えてみよう
  • 41:33 - 41:38
    どれが最も高級な経験だっただろうか
  • 41:39 - 41:42
    シェイクスピアだという人は?
  • 41:47 - 41:51
    フィア・ファクターだという人
  • 41:54 - 41:57
    いやそんなわけない ほんとに?
  • 42:01 - 42:02
    理由をどうぞ
  • 42:02 - 42:04
    一番面白かったから
  • 42:05 - 42:08
    どれが崇高な経験だったか聞いてるんだ
  • 42:08 - 42:10
    面白かったのは知ってるよ
  • 42:11 - 42:14
    面白いってだけで価値があるんだよ
  • 42:15 - 42:20
    他の奴が何と言おうが関係ないね
  • 42:20 - 42:24
    君は純粋なベンサム派に属するわけだ
  • 42:24 - 42:28
    人々の好みを集計するのはいいが
  • 42:29 - 42:33
    その優劣を判断するのはおかしいと
  • 42:33 - 42:36
    君の職業は? NEET? OK
  • 42:37 - 42:40
    では好みとは別に シンプソンズが
  • 42:40 - 42:44
    実際に高級な経験だったと思う人は?
  • 42:47 - 42:51
    シェイクスピアの方が高級だと思う人は
  • 42:52 - 42:56
    それはなぜかな? できれば誰か
  • 42:56 - 43:01
    シェイクスピアが最も高級だと思うが
  • 43:02 - 43:05
    シンプソンズが好きという人に聞きたい
  • 43:08 - 43:13
    シンプソンズは観ているだけで楽しめる
  • 43:13 - 43:18
    だが洗脳により人々はシェイクスピアを
  • 43:18 - 43:23
    良いと思うようになっているのだ
  • 43:26 - 43:30
    シェイクスピアは良いと言われたから
  • 43:31 - 43:33
    皆それを受け入れているのかな
  • 43:34 - 43:36
    シェイクスピアが良いと言うのは単に
  • 43:37 - 43:40
    社会や教師にそう教えられたからだと?
  • 43:40 - 43:43
    実際に良いからではない?
  • 43:44 - 43:48
    無知な人々はすぐに騙される
  • 43:48 - 43:52
    レンブラントの絵は評価されているが
  • 43:52 - 43:56
    大抵がわかったふりをしているだけだ
  • 43:57 - 44:00
    つまりある程度までは
  • 44:01 - 44:04
    文化からの圧力があると言うんだね
  • 44:05 - 44:08
    私たちはどれが良い作品か教わる
  • 44:08 - 44:09
    他に
  • 44:15 - 44:19
    僕はシンプソンズが一番楽しめました
  • 44:19 - 44:22
    でももし残りの人生を
  • 44:23 - 44:26
    三つのうちどれかを観て過ごすとすれば
  • 44:27 - 44:30
    アニメとか 娯楽番組は
  • 44:30 - 44:33
    選ぶことはないですね
  • 44:33 - 44:37
    男の良さについて深く考えることで
  • 44:37 - 44:40
    人生が有意義になり それが
  • 44:41 - 44:44
    より多くの喜びになると思うからです
  • 44:49 - 44:53
    残りの人生をカンザスで過ごすとして
  • 44:53 - 44:57
    シェイクスピアかシンプソンズのDVD
  • 44:58 - 45:01
    どちらかしか持っていけないとしたら
  • 45:02 - 45:05
    君はシェイクスピアを選ぶんだね?
  • 45:06 - 45:09
    ミルは高級な喜びと低級な喜びを
  • 45:09 - 45:12
    両方経験した人はみんな
  • 45:12 - 45:15
    高級な喜びの方を選ぶと言ったが
  • 45:16 - 45:20
    それは今ここで証明されただろうか
  • 45:21 - 45:23
    関係ない話していいですか?
  • 45:24 - 45:27
    去年 生物学の講義を受けたんですが
  • 45:27 - 45:31
    ネズミの脳を直接刺激して
  • 45:31 - 45:35
    強烈な快楽を与えるようにすると
  • 45:35 - 45:38
    寝食を忘れて 死ぬそうです
  • 45:39 - 45:41
    それくらい気持ちいいらしいです
  • 45:42 - 45:47
    でも長期的で高級な喜びと比べると
  • 45:47 - 45:52
    それは次元の低い喜びだと思います
  • 45:52 - 45:55
    僕は一瞬超気持ちいいのも好きですが
  • 45:58 - 46:00
    みんなもそうだろ
  • 46:00 - 46:06
    長い目で見れば ほとんどの人も
  • 46:06 - 46:11
    束の間の快楽に溺れるネズミであるより
  • 46:11 - 46:15
    高級な喜びを得る人間でありたいのでは
  • 46:15 - 46:18
    質問に答えて言うと
  • 46:18 - 46:21
    おそらくですが
  • 46:21 - 46:26
    ミルの理論通り
  • 46:26 - 46:31
    多くの人はどちらかと言われれば
  • 46:31 - 46:35
    高級な喜びの方を選ぶと思います
  • 46:36 - 46:40
    つまりミルは正しかったと?
  • 46:41 - 46:43
    ジョーに反対の人はいないかな
  • 46:44 - 46:46
    今回の実験によって
  • 46:46 - 46:50
    ミルの理論が反証されたと思う人
  • 46:50 - 46:53
    功利主義の枠組みでは
  • 46:53 - 46:58
    喜びの質は区別できないと考える人は?
  • 47:05 - 47:08
    人はより良いものを選ぶと言っても
  • 47:08 - 47:11
    そこに客観的な定義はありません
  • 47:11 - 47:15
    アニメを評価する社会もあるでしょうし
  • 47:16 - 47:18
    シンプソンズは楽しめますが
  • 47:18 - 47:21
    シェイクスピアは難解です
  • 47:21 - 47:26
    高級な喜びを理解するには教育が必要だ
  • 47:27 - 47:29
    ミルもそう指摘している
  • 47:29 - 47:34
    高級な喜びは前提に教育がある
  • 47:35 - 47:37
    その点は争っていない
  • 47:37 - 47:41
    しかし 一度教育を受ければ
  • 47:43 - 47:48
    人は喜びの質の違いがわかるだけでなく
  • 47:48 - 47:54
    実際に高級な方を好むようになると言う
  • 47:56 - 47:59
    ミルの有名な一節がある
  • 47:59 - 48:01
    満足した豚であるより
  • 48:02 - 48:05
    不満足な人間である方がよい
  • 48:05 - 48:07
    満足した愚者であるより
  • 48:08 - 48:10
    不満足なソクラテスである方がよい
  • 48:11 - 48:15
    愚者が異を唱えたとしても それは
  • 48:15 - 48:20
    愚者が自分の側しか知らないからである
  • 48:20 - 48:24
    ここからも高級な喜びと低級な喜びを
  • 48:24 - 48:28
    区別しようという姿勢が伺える
  • 48:28 - 48:33
    美術館に行くか 家でカウチポテトするか
  • 48:34 - 48:39
    時に私たちは後者の誘惑に負ける
  • 48:40 - 48:44
    それはミルも承知している
  • 48:44 - 48:49
    しかしそうやってダラダラしている時も
  • 48:49 - 48:51
    私たちは知っている
  • 48:52 - 48:55
    美術館でレンブラントを鑑賞する方が
  • 48:55 - 48:59
    より高級な喜びが得られるということを
  • 48:59 - 49:02
    どちらも経験しているからだ
  • 49:03 - 49:06
    そしてレンブラントの鑑賞が高級なのは
  • 49:06 - 49:10
    人間の高度な能力に関わっているからだ
  • 49:11 - 49:14
    個人の権利にまつわる反論に
  • 49:14 - 49:17
    ミルはどう答えたか
  • 49:19 - 49:23
    ここで彼は同じような論拠を使っている
  • 49:25 - 49:27
    「功利主義論」第5章
  • 49:28 - 49:31
    私は効用に基づかない架空の基準を持つ
  • 49:32 - 49:36
    どんな見せかけの理論にも異議を唱える
  • 49:39 - 49:43
    私は効用に基づいた正義こそが
  • 49:44 - 49:48
    比類なき神聖さと拘束力をもった
  • 49:48 - 49:54
    すべての道徳性の主たる部分だと考える
  • 49:54 - 49:57
    正義はより重要であり
  • 49:57 - 50:01
    功利主義に基づくことによって
  • 50:01 - 50:04
    個人の権利は尊重されると言うのだ
  • 50:04 - 50:08
    正義とは 道徳的要請の名称であり
  • 50:09 - 50:14
    集合的に 社会的効用は何よりも大きい
  • 50:14 - 50:17
    そしてそれゆえ正義は
  • 50:18 - 50:22
    他の何より 最高の義務なのである
  • 50:23 - 50:26
    つまり正義は神聖で特別なものであり
  • 50:26 - 50:30
    他の何とも替えることはできないのだ
  • 50:30 - 50:34
    そしてその理由は 究極的には
  • 50:35 - 50:39
    功利主義に基づいたものであり
  • 50:39 - 50:43
    私たちが考えてみるべきなのは
  • 50:43 - 50:47
    人類の長期的な利益と進歩である
  • 50:47 - 50:50
    私たちが正義を行い 権利を尊重すれば
  • 50:51 - 50:55
    長期的に見れば 社会全体が向上する
  • 50:55 - 50:58
    この考えに説得力はあるか?
  • 50:58 - 51:01
    それとも彼は権利について考えるうちに
  • 51:01 - 51:06
    功利主義から外れてしまったのだろうか
  • 51:07 - 51:12
    質の高い喜びや
  • 51:12 - 51:18
    神聖で特別な個人の権利を考えるうちに
  • 51:18 - 51:21
    この問いにはまだ答えられない
  • 51:21 - 51:28
    権利や正義の問題に答えるためには
  • 51:28 - 51:33
    功利主義ではない別の方法によって
  • 51:33 - 51:36
    権利とは何かを説明し
  • 51:36 - 51:40
    それが成立しているか見る必要がある
  • 51:40 - 51:42
    ところでベンサムは
  • 51:43 - 51:45
    道徳と法哲学の考え方として
  • 51:46 - 51:49
    功利主義を生みだした
  • 51:49 - 51:53
    彼は1832年 85歳で亡くなったが
  • 51:53 - 51:57
    ロンドンに行けば彼に会うことができる
  • 51:58 - 52:01
    彼は遺言を残していた
  • 52:01 - 52:07
    遺体を保存し 大学に飾ってほしいと
  • 52:07 - 52:10
    今彼はガラスケースの中で
  • 52:11 - 52:14
    自分の服を着て座っている
  • 52:15 - 52:18
    生前 彼はある問いに
  • 52:18 - 52:21
    自身の哲学でもって答えた
  • 52:22 - 52:26
    死者はどうしたら社会の役に立てるか?
  • 52:26 - 52:28
    彼はこう答えた
  • 52:29 - 52:32
    遺体を提供することで解剖学に役立つ
  • 52:33 - 52:36
    しかし偉大な思想家の場合は
  • 52:37 - 52:40
    未来の思想家を刺激するために
  • 52:40 - 52:44
    遺体を保存しておく方が良い
  • 52:44 - 52:49
    剥製になったベンサムを見るかい?
  • 52:50 - 52:51
    これだ
  • 52:53 - 52:56
    よく見るとわかるが
  • 52:58 - 53:02
    頭部は防腐処理に失敗したので
  • 53:02 - 53:06
    ろうで作ったもので代用している
  • 53:06 - 53:09
    そして下の方を見てみると
  • 53:10 - 53:14
    皿の上に本物の頭が置いてある
  • 53:16 - 53:19
    これだ
  • 53:21 - 53:24
    この話の教訓は何だろう?
  • 53:29 - 53:32
    大学では遺体を会議の席に着かせ
  • 53:32 - 53:34
    議事録にこう書いているそうだ
  • 53:35 - 53:37
    "出席すれども投票せず"
  • 53:40 - 53:42
    これぞ哲学者だ
  • 53:42 - 53:44
    生きてるときも死んでからも
  • 53:45 - 53:49
    自分の哲学に忠実だった
  • 53:49 - 53:52
    次回は権利について続けよう
Title:
Justice: What's The Right Thing To Do? Episode 02: "PUTTING A PRICE TAG ON LIFE"
Description:

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Video Language:
English
Team:
PACE
Duration:
55:10

Japanese subtitles

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