移りゆく時間を、一枚の写真の中に
-
0:01 - 0:03物語を伝える写真を撮るという
-
0:03 - 0:06その純粋な情熱に
私は突き動かされています -
0:07 - 0:11一般的に写真とは
ほんの刹那に捉えた— -
0:11 - 0:13ある1つの瞬間を記録したものです
-
0:14 - 0:18どの瞬間も どの写真も
時間の流れの中の -
0:18 - 0:21目に見える確かな記憶の断片を
表しています -
0:22 - 0:25でも もし1枚の写真に
1つの瞬間以上の時間を捉えられたら? -
0:26 - 0:29もし 写真を使って
時間という概念を崩し -
0:29 - 0:32昼夜両方の最高の瞬間を
途切れなく ただ1枚の絵の中に -
0:32 - 0:35詰め込むことができたら
どうでしょうか? -
0:35 - 0:38私が作ったコンセプト
「Day to Night(昼から夜へ)」 -
0:38 - 0:41これが 人々の世界の見方を変えると
信じています -
0:41 - 0:43私にとってそうでしたから
-
0:43 - 0:48私の作業は
人々の記憶の中に散在する— -
0:48 - 0:51象徴的な場所を撮影することから
始まります -
0:52 - 0:55見晴らしの良い地点を1つ定め
そこから片時も動かずに撮影します -
0:55 - 1:00時間の経過とともに 人間と光が
移ろう瞬間の連続を捉えます -
1:00 - 1:03撮影には
15時間から30時間をかけ -
1:03 - 1:051500枚以上の写真を撮影して
-
1:06 - 1:09その中から 昼と夜それぞれで
最高の瞬間を選びます -
1:10 - 1:11時間を指標として
-
1:11 - 1:15昼から夜へと流れる時間を
滑らかにつなぎ合わせて1枚の写真にします -
1:15 - 1:18時間と共に流れる
私たちの意識を描き出すのです -
1:19 - 1:21パリのトゥルネル橋からの景色を
-
1:21 - 1:23ご覧ください
-
1:24 - 1:26こちらは 明け方
セーヌ川に沿って -
1:26 - 1:28ボートを漕ぐ人たちです
-
1:29 - 1:30そして同時に
-
1:30 - 1:33ライトアップされた
夜のノートルダムが見えます -
1:34 - 1:39そして朝と夜の中間には
光の都のロマンスが写ります -
1:40 - 1:43地上15メートルからの撮影が
私の主なスタイルですが -
1:43 - 1:46皆さんがご覧になった
すべての写真が -
1:46 - 1:48それぞれ同じ日に撮影されています
-
1:51 - 1:53「Day to Night」は
グローバルなブロジェクトで -
1:53 - 1:55私の作品は
常に歴史に関連しています -
1:56 - 1:59私はヴェニスのような場所を訪れ
特定のイベントの際に -
1:59 - 2:02自分の目で見るということに
強い興味を惹かれるので -
2:02 - 2:05歴史ある「レガッタ」を
見にいくことに決めました -
2:05 - 2:091498年から続いているイベントです
-
2:10 - 2:14船と乗客は
当時と一切変わらぬ姿です -
2:15 - 2:18ぜひ皆さんに
ご理解いただきたいのですが -
2:18 - 2:20単に隔たった2つの瞬間を撮るのではなく
-
2:20 - 2:24一日中 そして一晩中ずっと
撮影を続けます -
2:25 - 2:28特別な瞬間を切り取り
貪欲に集めています -
2:29 - 2:33そんな瞬間を1つたりとも逃したくないという
切迫感が私を突き動かしています -
2:36 - 2:41「Day to Night」というコンセプト
そのものは1996年に生まれました -
2:41 - 2:45雑誌『LIFE』に
バズ・ラーマンの映画 -
2:45 - 2:50『ロミオ+ジュリエット』の
キャストとクルーのパノラマ写真を依頼され -
2:51 - 2:54セットに着いたとき
真四角だと気付きました -
2:54 - 2:59つまり パノラマ写真を作るには
250枚の写真を撮影して -
2:59 - 3:01つなぎ合わせるという
方法しかありません -
3:01 - 3:05ディカプリオとクレア・デーンズが
抱き合っている様子を撮り -
3:05 - 3:08カメラを右へと寄せていくと
-
3:08 - 3:10鏡の存在に気が付きました
-
3:10 - 3:13その鏡にしっかり2人が見えました
-
3:13 - 3:15なので この瞬間と絵のために
-
3:15 - 3:17キスしてもらえるようにと
お願いしました -
3:17 - 3:18キスしてもらえるようにと
お願いしました -
3:18 - 3:21そして私は
ニューヨークのスタジオへ戻り -
3:21 - 3:25250枚の写真を
1つ1つ手で つなぎ合わせ -
3:25 - 3:28全体を見て思いました
「これはすごいぞ! -
3:28 - 3:30写真の中に時間の流れを描き出せている」
-
3:30 - 3:35そしてこのコンセプトを
その後13年の間 -
3:35 - 3:39テクノロジーが私の夢に追いつくまで
温めていました -
3:39 - 3:43これはサンタモニカ・ピアで撮った
「Day to Night」です -
3:43 - 3:45これからお見せする短い映像で
-
3:45 - 3:47撮影中の私に同行すると
どんな感じになるのか -
3:47 - 3:49ご覧いただきたいと思います
-
3:49 - 3:53まず始めにご説明すると
こういった景色を撮るには -
3:53 - 3:57ほとんどの時間を高い所で過ごします
通常は高所作業車や -
3:57 - 3:58クレーンの中です
-
3:58 - 4:01この日もいつも通り
12〜18時間 休みなく -
4:01 - 4:03全日 撮影を続けました
-
4:04 - 4:07幸いなことに
人間観察が大好きなのです -
4:07 - 4:09自信を持って言えることは
-
4:09 - 4:11もし家からの眺めだったら
最高だということです -
4:12 - 4:15でもこれが 私がこういった
作品を撮る方法なのです -
4:16 - 4:19さて いったん撮る景色と
撮影場所を決めたら -
4:20 - 4:23朝の始まりと夜の終わりを
決めなくてはなりません -
4:23 - 4:25「時間ベクトル」と呼んでいます
-
4:25 - 4:29アインシュタインは
時間を布地になぞらえたと言います -
4:29 - 4:32トランポリンの表面を
思い浮かべてください -
4:32 - 4:35重力の影響により
歪んだり伸びたりします -
4:35 - 4:38私もまた時間を
布地のように考えています -
4:38 - 4:43ただ私の場合は その生地を
平らな1枚の写真へと圧縮するわけです -
4:43 - 4:45この仕事のユニークな側面は
-
4:45 - 4:47私の写真からお分かりの通り
-
4:47 - 4:48時間ベクトルが変化することです
-
4:48 - 4:50時に左から右へ
-
4:50 - 4:54また時には前から後ろ、上から下へ
場合によっては斜め移動です -
4:55 - 4:58時間と空間を連続させる表現を
-
4:58 - 5:00二次元の静止写真の中で
模索しているのです -
5:01 - 5:03写真を合成しているときは
-
5:03 - 5:06まさに心の中で並行して
パズルをしているような感覚に陥ります -
5:07 - 5:09時間を軸に写真を組み立てますが
-
5:09 - 5:12これを「原板」と呼んでいます
-
5:12 - 5:15この過程が完了するのに
数カ月を要します -
5:15 - 5:18この仕事の面白い部分は
-
5:18 - 5:21どんな日に撮影しても
撮影場所に登った時点で -
5:21 - 5:23自分の思い通りにできる要素が
何一つないことです -
5:23 - 5:26つまり写真の中に
誰が映り込むかとか -
5:26 - 5:29日の出や日没の光景がどうなるかなど
全てが未知数なのです -
5:29 - 5:30では工程の最後の段階です
-
5:30 - 5:33一日中本当に調子が良くて
全てが変わりなければ -
5:33 - 5:36写真の中に誰を残し
誰を消すか -
5:36 - 5:38時間のみを基準にして決めます
-
5:38 - 5:411ヶ月かけて選別した最高の瞬間を
-
5:41 - 5:451枚の原板に継ぎ目なく
切り貼りしていきます -
5:46 - 5:48自分の目で見た通りに
-
5:48 - 5:50昼と夜とを統合し
-
5:50 - 5:54全く相容れない2つの世界の間に
類まれな1つの調和を作り上げるのです -
5:55 - 5:59私の作品はいつも
絵画に強く影響を受けてきました -
5:59 - 6:02例えばハドソン・リバー派の
アルバート・ビアスタットは -
6:02 - 6:04素晴らしい画家です
-
6:04 - 6:07彼の作品に触発され 最近
国立公園シリーズを撮りました -
6:07 - 6:10これは彼の描いたヨセミテ国立公園です
-
6:10 - 6:13そしてこれが
私が制作したヨセミテの写真です -
6:13 - 6:17『ナショナルジオグラフィック』
2016年1月号の -
6:17 - 6:19巻頭特集を飾りました
-
6:20 - 6:22この写真を撮るのに
30時間以上かけました -
6:22 - 6:24私はそれこそ崖に張り付いた状態で
-
6:25 - 6:29星々と月が移りゆく中で
エル・キャプテンの一枚岩を -
6:29 - 6:31月の光が照らす様子を
撮り続けました -
6:31 - 6:35そして風景の隅々にまでわたる
時間の変移を捉えました -
6:36 - 6:40もちろん 見どころは
人々が見せるとびきりの瞬間が -
6:40 - 6:41時間の流れに合わせ—
-
6:43 - 6:45昼から夜へ変容する様子です
-
6:46 - 6:48実のところを言えば
-
6:48 - 6:52ビアスタットの絵のコピーが
ポケットに入っていました -
6:52 - 6:54そして渓谷に太陽が登り始めたとき
-
6:54 - 6:56興奮で実際に体が震えてきました
-
6:56 - 6:59手元の絵を見て こう思ったんです
-
6:59 - 7:04「すごいぞ これこそビアスタットが
100年前に描いた光加減そのものだ」 -
7:06 - 7:09「Day to Night」とは
つまるところ -
7:09 - 7:11写真という媒体において
-
7:11 - 7:13私が大切に思うもの全ての結晶です
-
7:13 - 7:15それは風景であり
-
7:15 - 7:16同時にストリート写真であり
-
7:16 - 7:19色彩であり 建築でもあり
-
7:19 - 7:22遠近やスケール感や
特に歴史に関することです -
7:22 - 7:24この写真は
これまで撮ってきた中でも -
7:24 - 7:26最も歴史的な1枚です
-
7:26 - 7:292013年 バラク・オバマ大統領
就任式典の写真です -
7:30 - 7:32よく見ていただければわかるのですが
-
7:32 - 7:34大型スクリーンそれぞれに
-
7:34 - 7:36時の経過が 映し出されています
-
7:36 - 7:39ミシェル夫人と
子供たちが待っている様子 -
7:39 - 7:40次に大統領のあいさつ
-
7:40 - 7:42そして宣誓
-
7:42 - 7:44最後はスピーチの様子です
-
7:45 - 7:49こうした写真の撮影には
本当に多くの課題が付き物です -
7:49 - 7:51特にこの写真に関しては
-
7:51 - 7:55地上15メートルの高所作業台から
撮影していて -
7:55 - 7:56足場が不安定でした
-
7:56 - 7:59私と助手が
重心を変えるたびに -
7:59 - 8:01水平線が傾きました
-
8:01 - 8:02ご覧になっている写真には
-
8:02 - 8:05約1800枚の写真を使いましたが
-
8:05 - 8:08毎回のシャッターを切るごとに
両足をいちいち -
8:08 - 8:10固定しなければなりませんでした
-
8:10 - 8:14(拍手)
-
8:14 - 8:18この仕事から素晴らしい学びを
本当にたくさん得てきました -
8:19 - 8:21その中でも最も重要であると
私が思うのは -
8:21 - 8:25忍耐と観察力です
-
8:25 - 8:28例えばニューヨークのような都市を
俯瞰撮影するとき -
8:28 - 8:30日常生活に登場するような
-
8:31 - 8:33例えば車の中の人々は
-
8:33 - 8:35もはや「車の中の人々」ではありません
-
8:35 - 8:37まるで魚の大群のように
-
8:37 - 8:40群れとして同じような動きをします
-
8:40 - 8:43人々はよくニューヨークの
活気について語りますが -
8:43 - 8:46私はこの写真がその一端を
的確に捉えていると思っています -
8:46 - 8:48私の作品をよく見ていただくと
-
8:48 - 8:50そこには物語があります
-
8:50 - 8:53タイムズスクエアは
1つの渓谷に見えてきて -
8:53 - 8:56光と影が
浮き上がります -
8:56 - 8:59だから私はこの写真で
時間を格子状に並べる事にしました -
8:59 - 9:01影のあるところは
どこであれ夜なのであり -
9:01 - 9:04そして太陽のあるところは
常に昼なのです -
9:04 - 9:07時間とは とてつもないもので
-
9:07 - 9:09人智を超えた存在です
-
9:10 - 9:12しかし 私が制作している写真は
-
9:12 - 9:16独特かつ特殊な方法で 時間の姿を
捉え始めていると思っています -
9:17 - 9:21新たな形而上の視覚的現実を
具現化しているのです -
9:23 - 9:2615時間 ある場所を
ひたすら眺めていると -
9:27 - 9:29カメラを持ってきて写真を撮り
その場を去るより -
9:29 - 9:31少し違った角度で
-
9:31 - 9:33物事が見え始めるようになります
-
9:33 - 9:35これはその代表例です
-
9:35 - 9:37「サクレ・クール・セルフィー」
と呼んでいます -
9:38 - 9:3915時間以上
観察していましたが -
9:39 - 9:42サクレ・クール寺院自体には
誰も目もくれません -
9:42 - 9:45写真の背景として寺院を使う方に
興味があったのです -
9:45 - 9:48歩いて行って 写真を撮り
-
9:48 - 9:50そして去ります
-
9:50 - 9:55私たちが考える「経験」と
進化しつつある経験そのものとの -
9:55 - 9:59甚大な隔たりを表した例として
-
10:00 - 10:03これ以上のものを
私は知りません -
10:04 - 10:09シェアするという行為が
気がつけば 経験そのものよりも -
10:09 - 10:11重視されるようになっていたのです
-
10:11 - 10:15(拍手)
-
10:15 - 10:18最後に
私の最新作ですが -
10:18 - 10:21特別な思い入れのある作品です
-
10:21 - 10:25タンザニア
セレンゲティ国立公園の -
10:25 - 10:27セロネラ中心部で
撮影しました -
10:28 - 10:29ここは保護区ではありません
-
10:30 - 10:32動物たちの大移動が
起こる時期を狙いました -
10:32 - 10:36動物の多様性を最大幅で
捉えるのが目的でした -
10:37 - 10:38不幸にも
私たちが訪れたとき -
10:38 - 10:41移動のピークにもかかわらず
日照りが続いていました -
10:41 - 10:425週間の干ばつです
-
10:42 - 10:44よって どの動物も水を探していました
-
10:45 - 10:47私がこの水源を見つけたとき
-
10:47 - 10:51その場で起こっていることが
全てそのまま続けば -
10:51 - 10:54何か特別な光景を撮る
またとない機会だと感じました -
10:54 - 10:563日間かけ
その水場を調べましたが -
10:56 - 10:58実際に何を目にすることになるか
-
10:58 - 11:00この時点では知る由もありませんでした
-
11:00 - 11:03私は26時間
写真を撮り続けました -
11:03 - 11:07地上6メートルに設置された
狩猟用の隠れ場所からです -
11:07 - 11:10そして 想像もつかない景色を
目の当たりにしました -
11:10 - 11:12聖書の1ページのようでした
-
11:12 - 11:1426時間の間
-
11:14 - 11:19生存を賭けて争う動物同士が
水という1つのを資源を共有していたのです -
11:19 - 11:23同じ資源を巡り
人類は向こう50年にわたって -
11:23 - 11:25戦争を続けると言われています
-
11:25 - 11:29動物たちは互いに
敵意を示すことさえありませんでした -
11:30 - 11:33人間には分からない何かを
理解しているように思えます -
11:34 - 11:36それはつまり
水という貴重な資源を誰もが -
11:36 - 11:39共有しなくてはならないということです
-
11:40 - 11:42この写真が出来上がったとき
-
11:43 - 11:47「Day to Night」とは まさに
物事の新しい見方であり -
11:48 - 11:49時間を集約し
-
11:50 - 11:54写真の秘める時空間の連続を
探求するものだと気付きました -
11:55 - 11:59テクノロジーは
写真と共に発展します -
11:59 - 12:03時間と記憶の深い意味合いを
写し出すだけではなく -
12:04 - 12:10かつて知られなかった
新しい物語を紡ぎ出し -
12:11 - 12:15時を超えて私たちの世界を覗く窓を
創り出しているのです -
12:15 - 12:16ありがとうございました
-
12:16 - 12:23(拍手)
- Title:
- 移りゆく時間を、一枚の写真の中に
- Speaker:
- スティーヴン・ウィルクス
- Description:
-
写真家スティーヴン・ウィルクスは、昼から夜への移り変わる様子が写り込む、目を見張るような素晴らしい風景写真を制作し、二次元の静止画写真の中に表せる時間と空間を探求しています。パリのトゥルネル橋、ヨセミテ国立公園のエル・キャピタン、そしてセレンゲティ国立公園中心に位置する、命を潤す水場などの、世界的に知られる絶景を、ウィルクスの作品と制作過程を通して巡るトークです。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 12:36
Riaki Ponist approved Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo | ||
Riaki Ponist accepted Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo | ||
Riaki Ponist edited Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo | ||
Riaki Ponist edited Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo | ||
Riaki Ponist edited Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo | ||
R Koyanagi edited Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo | ||
Riaki Ponist declined Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo | ||
Riaki Ponist edited Japanese subtitles for The passing of time, caught in a single photo |