1 00:00:01,206 --> 00:00:03,342 物語を伝える写真を撮るという 2 00:00:03,366 --> 00:00:06,199 その純粋な情熱に 私は突き動かされています 3 00:00:06,767 --> 00:00:11,245 一般的に写真とは ほんの刹那に捉えた— 4 00:00:11,269 --> 00:00:13,475 ある1つの瞬間を記録したものです 5 00:00:14,184 --> 00:00:18,337 どの瞬間も どの写真も 時間の流れの中の 6 00:00:18,361 --> 00:00:21,194 目に見える確かな記憶の断片を 表しています 7 00:00:21,547 --> 00:00:25,176 でも もし1枚の写真に 1つの瞬間以上の時間を捉えられたら? 8 00:00:25,551 --> 00:00:28,933 もし 写真を使って 時間という概念を崩し 9 00:00:29,222 --> 00:00:32,140 昼夜両方の最高の瞬間を 途切れなく ただ1枚の絵の中に 10 00:00:32,164 --> 00:00:34,663 詰め込むことができたら どうでしょうか? 11 00:00:35,395 --> 00:00:38,172 私が作ったコンセプト 「Day to Night(昼から夜へ)」 12 00:00:38,196 --> 00:00:41,173 これが 人々の世界の見方を変えると 信じています 13 00:00:41,188 --> 00:00:42,928 私にとってそうでしたから 14 00:00:43,260 --> 00:00:47,870 私の作業は 人々の記憶の中に散在する— 15 00:00:47,894 --> 00:00:51,025 象徴的な場所を撮影することから 始まります 16 00:00:51,570 --> 00:00:55,000 見晴らしの良い地点を1つ定め そこから片時も動かずに撮影します 17 00:00:55,024 --> 00:00:59,611 時間の経過とともに 人間と光が 移ろう瞬間の連続を捉えます 18 00:00:59,981 --> 00:01:02,848 撮影には 15時間から30時間をかけ 19 00:01:02,872 --> 00:01:05,367 1500枚以上の写真を撮影して 20 00:01:05,507 --> 00:01:08,593 その中から 昼と夜それぞれで 最高の瞬間を選びます 21 00:01:09,600 --> 00:01:11,010 時間を指標として 22 00:01:11,034 --> 00:01:15,327 昼から夜へと流れる時間を 滑らかにつなぎ合わせて1枚の写真にします 23 00:01:15,351 --> 00:01:18,229 時間と共に流れる 私たちの意識を描き出すのです 24 00:01:19,431 --> 00:01:21,400 パリのトゥルネル橋からの景色を 25 00:01:21,424 --> 00:01:23,263 ご覧ください 26 00:01:24,342 --> 00:01:26,456 こちらは 明け方 セーヌ川に沿って 27 00:01:26,480 --> 00:01:27,967 ボートを漕ぐ人たちです 28 00:01:28,554 --> 00:01:30,396 そして同時に 29 00:01:30,420 --> 00:01:33,104 ライトアップされた 夜のノートルダムが見えます 30 00:01:33,820 --> 00:01:38,509 そして朝と夜の中間には 光の都のロマンスが写ります 31 00:01:39,885 --> 00:01:43,177 地上15メートルからの撮影が 私の主なスタイルですが 32 00:01:43,201 --> 00:01:45,531 皆さんがご覧になった すべての写真が 33 00:01:45,555 --> 00:01:47,906 それぞれ同じ日に撮影されています 34 00:01:50,549 --> 00:01:52,702 「Day to Night」は グローバルなブロジェクトで 35 00:01:52,726 --> 00:01:55,279 私の作品は 常に歴史に関連しています 36 00:01:55,975 --> 00:01:59,417 私はヴェニスのような場所を訪れ 特定のイベントの際に 37 00:01:59,441 --> 00:02:01,969 自分の目で見るということに 強い興味を惹かれるので 38 00:02:01,993 --> 00:02:05,426 歴史ある「レガッタ」を 見にいくことに決めました 39 00:02:05,450 --> 00:02:09,209 1498年から続いているイベントです 40 00:02:09,906 --> 00:02:13,648 船と乗客は 当時と一切変わらぬ姿です 41 00:02:14,821 --> 00:02:18,323 ぜひ皆さんに ご理解いただきたいのですが 42 00:02:18,347 --> 00:02:20,375 単に隔たった2つの瞬間を撮るのではなく 43 00:02:20,385 --> 00:02:23,849 一日中 そして一晩中ずっと 撮影を続けます 44 00:02:25,181 --> 00:02:28,487 特別な瞬間を切り取り 貪欲に集めています 45 00:02:28,848 --> 00:02:32,796 そんな瞬間を1つたりとも逃したくないという 切迫感が私を突き動かしています 46 00:02:36,227 --> 00:02:40,869 「Day to Night」というコンセプト そのものは1996年に生まれました 47 00:02:40,893 --> 00:02:45,118 雑誌『LIFE』に バズ・ラーマンの映画 48 00:02:45,142 --> 00:02:49,797 『ロミオ+ジュリエット』の キャストとクルーのパノラマ写真を依頼され 49 00:02:50,710 --> 00:02:54,087 セットに着いたとき 真四角だと気付きました 50 00:02:54,111 --> 00:02:58,509 つまり パノラマ写真を作るには 250枚の写真を撮影して 51 00:02:58,533 --> 00:03:00,872 つなぎ合わせるという 方法しかありません 52 00:03:01,391 --> 00:03:04,949 ディカプリオとクレア・デーンズが 抱き合っている様子を撮り 53 00:03:04,973 --> 00:03:07,763 カメラを右へと寄せていくと 54 00:03:07,787 --> 00:03:10,385 鏡の存在に気が付きました 55 00:03:10,409 --> 00:03:12,824 その鏡にしっかり2人が見えました 56 00:03:12,848 --> 00:03:14,778 なので この瞬間と絵のために 57 00:03:14,802 --> 00:03:16,652 キスしてもらえるようにと お願いしました 58 00:03:16,652 --> 00:03:18,061 キスしてもらえるようにと お願いしました 59 00:03:18,085 --> 00:03:20,876 そして私は ニューヨークのスタジオへ戻り 60 00:03:20,900 --> 00:03:24,821 250枚の写真を 1つ1つ手で つなぎ合わせ 61 00:03:24,845 --> 00:03:27,670 全体を見て思いました 「これはすごいぞ! 62 00:03:27,694 --> 00:03:30,401 写真の中に時間の流れを描き出せている」 63 00:03:30,422 --> 00:03:34,612 そしてこのコンセプトを その後13年の間 64 00:03:34,636 --> 00:03:38,619 テクノロジーが私の夢に追いつくまで 温めていました 65 00:03:39,401 --> 00:03:42,674 これはサンタモニカ・ピアで撮った 「Day to Night」です 66 00:03:42,880 --> 00:03:44,809 これからお見せする短い映像で 67 00:03:44,833 --> 00:03:47,386 撮影中の私に同行すると どんな感じになるのか 68 00:03:47,410 --> 00:03:49,306 ご覧いただきたいと思います 69 00:03:49,330 --> 00:03:52,766 まず始めにご説明すると こういった景色を撮るには 70 00:03:52,790 --> 00:03:56,519 ほとんどの時間を高い所で過ごします 通常は高所作業車や 71 00:03:56,543 --> 00:03:57,694 クレーンの中です 72 00:03:57,718 --> 00:04:01,110 この日もいつも通り 12〜18時間 休みなく 73 00:04:01,134 --> 00:04:03,436 全日 撮影を続けました 74 00:04:04,290 --> 00:04:07,266 幸いなことに 人間観察が大好きなのです 75 00:04:07,290 --> 00:04:08,703 自信を持って言えることは 76 00:04:08,727 --> 00:04:11,385 もし家からの眺めだったら 最高だということです 77 00:04:12,226 --> 00:04:15,330 でもこれが 私がこういった 作品を撮る方法なのです 78 00:04:15,785 --> 00:04:19,497 さて いったん撮る景色と 撮影場所を決めたら 79 00:04:19,521 --> 00:04:22,680 朝の始まりと夜の終わりを 決めなくてはなりません 80 00:04:22,704 --> 00:04:25,136 「時間ベクトル」と呼んでいます 81 00:04:25,476 --> 00:04:28,959 アインシュタインは 時間を布地になぞらえたと言います 82 00:04:29,257 --> 00:04:31,635 トランポリンの表面を 思い浮かべてください 83 00:04:31,659 --> 00:04:34,526 重力の影響により 歪んだり伸びたりします 84 00:04:34,924 --> 00:04:37,718 私もまた時間を 布地のように考えています 85 00:04:37,742 --> 00:04:43,071 ただ私の場合は その生地を 平らな1枚の写真へと圧縮するわけです 86 00:04:43,095 --> 00:04:45,294 この仕事のユニークな側面は 87 00:04:45,318 --> 00:04:46,818 私の写真からお分かりの通り 88 00:04:46,842 --> 00:04:48,352 時間ベクトルが変化することです 89 00:04:48,376 --> 00:04:50,062 時に左から右へ 90 00:04:50,086 --> 00:04:54,464 また時には前から後ろ、上から下へ 場合によっては斜め移動です 91 00:04:55,249 --> 00:04:57,986 時間と空間を連続させる表現を 92 00:04:58,010 --> 00:05:00,379 二次元の静止写真の中で 模索しているのです 93 00:05:01,114 --> 00:05:03,018 写真を合成しているときは 94 00:05:03,042 --> 00:05:06,474 まさに心の中で並行して パズルをしているような感覚に陥ります 95 00:05:06,750 --> 00:05:09,408 時間を軸に写真を組み立てますが 96 00:05:09,432 --> 00:05:11,605 これを「原板」と呼んでいます 97 00:05:11,766 --> 00:05:14,647 この過程が完了するのに 数カ月を要します 98 00:05:15,126 --> 00:05:17,585 この仕事の面白い部分は 99 00:05:17,595 --> 00:05:20,779 どんな日に撮影しても 撮影場所に登った時点で 100 00:05:20,803 --> 00:05:23,194 自分の思い通りにできる要素が 何一つないことです 101 00:05:23,218 --> 00:05:25,512 つまり写真の中に 誰が映り込むかとか 102 00:05:25,536 --> 00:05:28,519 日の出や日没の光景がどうなるかなど 全てが未知数なのです 103 00:05:28,543 --> 00:05:30,361 では工程の最後の段階です 104 00:05:30,385 --> 00:05:33,393 一日中本当に調子が良くて 全てが変わりなければ 105 00:05:33,417 --> 00:05:36,026 写真の中に誰を残し 誰を消すか 106 00:05:36,050 --> 00:05:37,785 時間のみを基準にして決めます 107 00:05:37,809 --> 00:05:41,232 1ヶ月かけて選別した最高の瞬間を 108 00:05:41,256 --> 00:05:45,078 1枚の原板に継ぎ目なく 切り貼りしていきます 109 00:05:46,168 --> 00:05:48,463 自分の目で見た通りに 110 00:05:48,487 --> 00:05:49,717 昼と夜とを統合し 111 00:05:50,151 --> 00:05:54,097 全く相容れない2つの世界の間に 類まれな1つの調和を作り上げるのです 112 00:05:55,268 --> 00:05:59,106 私の作品はいつも 絵画に強く影響を受けてきました 113 00:05:59,130 --> 00:06:01,841 例えばハドソン・リバー派の アルバート・ビアスタットは 114 00:06:01,865 --> 00:06:03,699 素晴らしい画家です 115 00:06:03,723 --> 00:06:07,096 彼の作品に触発され 最近 国立公園シリーズを撮りました 116 00:06:07,120 --> 00:06:09,539 これは彼の描いたヨセミテ国立公園です 117 00:06:10,347 --> 00:06:13,182 そしてこれが 私が制作したヨセミテの写真です 118 00:06:13,427 --> 00:06:17,206 『ナショナルジオグラフィック』 2016年1月号の 119 00:06:17,230 --> 00:06:18,773 巻頭特集を飾りました 120 00:06:19,592 --> 00:06:22,347 この写真を撮るのに 30時間以上かけました 121 00:06:22,371 --> 00:06:24,482 私はそれこそ崖に張り付いた状態で 122 00:06:25,044 --> 00:06:29,085 星々と月が移りゆく中で エル・キャプテンの一枚岩を 123 00:06:29,109 --> 00:06:30,964 月の光が照らす様子を 撮り続けました 124 00:06:30,988 --> 00:06:35,152 そして風景の隅々にまでわたる 時間の変移を捉えました 125 00:06:35,641 --> 00:06:39,590 もちろん 見どころは 人々が見せるとびきりの瞬間が 126 00:06:39,614 --> 00:06:41,368 時間の流れに合わせ— 127 00:06:42,831 --> 00:06:44,621 昼から夜へ変容する様子です 128 00:06:46,072 --> 00:06:47,610 実のところを言えば 129 00:06:47,634 --> 00:06:51,759 ビアスタットの絵のコピーが ポケットに入っていました 130 00:06:51,783 --> 00:06:54,031 そして渓谷に太陽が登り始めたとき 131 00:06:54,055 --> 00:06:56,305 興奮で実際に体が震えてきました 132 00:06:56,329 --> 00:06:58,607 手元の絵を見て こう思ったんです 133 00:06:58,631 --> 00:07:04,180 「すごいぞ これこそビアスタットが 100年前に描いた光加減そのものだ」 134 00:07:05,757 --> 00:07:08,616 「Day to Night」とは つまるところ 135 00:07:08,640 --> 00:07:10,887 写真という媒体において 136 00:07:10,911 --> 00:07:13,047 私が大切に思うもの全ての結晶です 137 00:07:13,071 --> 00:07:14,724 それは風景であり 138 00:07:14,748 --> 00:07:16,347 同時にストリート写真であり 139 00:07:16,371 --> 00:07:18,673 色彩であり 建築でもあり 140 00:07:18,697 --> 00:07:21,814 遠近やスケール感や 特に歴史に関することです 141 00:07:22,371 --> 00:07:24,372 この写真は これまで撮ってきた中でも 142 00:07:24,396 --> 00:07:25,784 最も歴史的な1枚です 143 00:07:25,808 --> 00:07:29,157 2013年 バラク・オバマ大統領 就任式典の写真です 144 00:07:29,682 --> 00:07:31,807 よく見ていただければわかるのですが 145 00:07:31,831 --> 00:07:33,908 大型スクリーンそれぞれに 146 00:07:33,932 --> 00:07:35,877 時の経過が 映し出されています 147 00:07:35,901 --> 00:07:38,517 ミシェル夫人と 子供たちが待っている様子 148 00:07:38,541 --> 00:07:40,400 次に大統領のあいさつ 149 00:07:40,424 --> 00:07:41,676 そして宣誓 150 00:07:41,700 --> 00:07:43,707 最後はスピーチの様子です 151 00:07:44,698 --> 00:07:48,770 こうした写真の撮影には 本当に多くの課題が付き物です 152 00:07:49,096 --> 00:07:51,069 特にこの写真に関しては 153 00:07:51,093 --> 00:07:54,708 地上15メートルの高所作業台から 撮影していて 154 00:07:54,732 --> 00:07:56,026 足場が不安定でした 155 00:07:56,050 --> 00:07:59,218 私と助手が 重心を変えるたびに 156 00:07:59,242 --> 00:08:00,780 水平線が傾きました 157 00:08:00,804 --> 00:08:02,423 ご覧になっている写真には 158 00:08:02,447 --> 00:08:04,836 約1800枚の写真を使いましたが 159 00:08:04,860 --> 00:08:07,819 毎回のシャッターを切るごとに 両足をいちいち 160 00:08:07,843 --> 00:08:09,986 固定しなければなりませんでした 161 00:08:10,010 --> 00:08:14,178 (拍手) 162 00:08:14,202 --> 00:08:18,059 この仕事から素晴らしい学びを 本当にたくさん得てきました 163 00:08:18,868 --> 00:08:21,257 その中でも最も重要であると 私が思うのは 164 00:08:21,257 --> 00:08:24,569 忍耐と観察力です 165 00:08:24,958 --> 00:08:28,360 例えばニューヨークのような都市を 俯瞰撮影するとき 166 00:08:28,384 --> 00:08:30,498 日常生活に登場するような 167 00:08:30,522 --> 00:08:32,832 例えば車の中の人々は 168 00:08:32,856 --> 00:08:34,912 もはや「車の中の人々」ではありません 169 00:08:34,936 --> 00:08:37,414 まるで魚の大群のように 170 00:08:37,438 --> 00:08:39,548 群れとして同じような動きをします 171 00:08:40,063 --> 00:08:42,982 人々はよくニューヨークの 活気について語りますが 172 00:08:43,006 --> 00:08:46,003 私はこの写真がその一端を 的確に捉えていると思っています 173 00:08:46,260 --> 00:08:47,995 私の作品をよく見ていただくと 174 00:08:48,019 --> 00:08:50,211 そこには物語があります 175 00:08:50,235 --> 00:08:53,174 タイムズスクエアは 1つの渓谷に見えてきて 176 00:08:53,198 --> 00:08:55,554 光と影が 浮き上がります 177 00:08:55,883 --> 00:08:59,081 だから私はこの写真で 時間を格子状に並べる事にしました 178 00:08:59,105 --> 00:09:01,166 影のあるところは どこであれ夜なのであり 179 00:09:01,190 --> 00:09:03,621 そして太陽のあるところは 常に昼なのです 180 00:09:04,453 --> 00:09:06,703 時間とは とてつもないもので 181 00:09:06,727 --> 00:09:09,378 人智を超えた存在です 182 00:09:09,978 --> 00:09:11,942 しかし 私が制作している写真は 183 00:09:11,966 --> 00:09:15,798 独特かつ特殊な方法で 時間の姿を 捉え始めていると思っています 184 00:09:16,703 --> 00:09:21,233 新たな形而上の視覚的現実を 具現化しているのです 185 00:09:22,996 --> 00:09:25,810 15時間 ある場所を ひたすら眺めていると 186 00:09:26,917 --> 00:09:29,124 カメラを持ってきて写真を撮り その場を去るより 187 00:09:29,148 --> 00:09:31,156 少し違った角度で 188 00:09:31,180 --> 00:09:33,151 物事が見え始めるようになります 189 00:09:33,175 --> 00:09:34,906 これはその代表例です 190 00:09:35,175 --> 00:09:37,474 「サクレ・クール・セルフィー」 と呼んでいます 191 00:09:37,667 --> 00:09:39,445 15時間以上 観察していましたが 192 00:09:39,469 --> 00:09:42,017 サクレ・クール寺院自体には 誰も目もくれません 193 00:09:42,041 --> 00:09:44,701 写真の背景として寺院を使う方に 興味があったのです 194 00:09:45,106 --> 00:09:47,934 歩いて行って 写真を撮り 195 00:09:47,958 --> 00:09:49,644 そして去ります 196 00:09:50,089 --> 00:09:54,659 私たちが考える「経験」と 進化しつつある経験そのものとの 197 00:09:55,239 --> 00:09:59,294 甚大な隔たりを表した例として 198 00:09:59,723 --> 00:10:03,016 これ以上のものを 私は知りません 199 00:10:03,922 --> 00:10:08,764 シェアするという行為が 気がつけば 経験そのものよりも 200 00:10:08,788 --> 00:10:10,923 重視されるようになっていたのです 201 00:10:11,416 --> 00:10:14,657 (拍手) 202 00:10:14,681 --> 00:10:17,817 最後に 私の最新作ですが 203 00:10:17,841 --> 00:10:21,111 特別な思い入れのある作品です 204 00:10:21,135 --> 00:10:24,629 タンザニア セレンゲティ国立公園の 205 00:10:24,925 --> 00:10:27,497 セロネラ中心部で 撮影しました 206 00:10:27,521 --> 00:10:29,046 ここは保護区ではありません 207 00:10:29,532 --> 00:10:32,440 動物たちの大移動が 起こる時期を狙いました 208 00:10:32,464 --> 00:10:35,725 動物の多様性を最大幅で 捉えるのが目的でした 209 00:10:36,503 --> 00:10:38,083 不幸にも 私たちが訪れたとき 210 00:10:38,107 --> 00:10:40,687 移動のピークにもかかわらず 日照りが続いていました 211 00:10:40,711 --> 00:10:41,862 5週間の干ばつです 212 00:10:41,886 --> 00:10:44,479 よって どの動物も水を探していました 213 00:10:44,503 --> 00:10:46,744 私がこの水源を見つけたとき 214 00:10:46,768 --> 00:10:50,793 その場で起こっていることが 全てそのまま続けば 215 00:10:50,817 --> 00:10:54,301 何か特別な光景を撮る またとない機会だと感じました 216 00:10:54,325 --> 00:10:56,130 3日間かけ その水場を調べましたが 217 00:10:56,154 --> 00:10:57,821 実際に何を目にすることになるか 218 00:10:57,845 --> 00:10:59,845 この時点では知る由もありませんでした 219 00:11:00,438 --> 00:11:03,246 私は26時間 写真を撮り続けました 220 00:11:03,270 --> 00:11:06,682 地上6メートルに設置された 狩猟用の隠れ場所からです 221 00:11:07,340 --> 00:11:09,896 そして 想像もつかない景色を 目の当たりにしました 222 00:11:09,920 --> 00:11:11,584 聖書の1ページのようでした 223 00:11:11,601 --> 00:11:13,546 26時間の間 224 00:11:13,570 --> 00:11:18,800 生存を賭けて争う動物同士が 水という1つのを資源を共有していたのです 225 00:11:19,115 --> 00:11:22,975 同じ資源を巡り 人類は向こう50年にわたって 226 00:11:22,999 --> 00:11:24,833 戦争を続けると言われています 227 00:11:25,301 --> 00:11:28,827 動物たちは互いに 敵意を示すことさえありませんでした 228 00:11:29,515 --> 00:11:33,269 人間には分からない何かを 理解しているように思えます 229 00:11:33,650 --> 00:11:36,455 それはつまり 水という貴重な資源を誰もが 230 00:11:36,479 --> 00:11:38,586 共有しなくてはならないということです 231 00:11:39,699 --> 00:11:42,310 この写真が出来上がったとき 232 00:11:43,222 --> 00:11:47,476 「Day to Night」とは まさに 物事の新しい見方であり 233 00:11:48,127 --> 00:11:49,409 時間を集約し 234 00:11:50,349 --> 00:11:53,524 写真の秘める時空間の連続を 探求するものだと気付きました 235 00:11:54,809 --> 00:11:58,683 テクノロジーは 写真と共に発展します 236 00:11:59,229 --> 00:12:03,293 時間と記憶の深い意味合いを 写し出すだけではなく 237 00:12:03,920 --> 00:12:09,705 かつて知られなかった 新しい物語を紡ぎ出し 238 00:12:10,594 --> 00:12:14,554 時を超えて私たちの世界を覗く窓を 創り出しているのです 239 00:12:15,285 --> 00:12:16,436 ありがとうございました 240 00:12:16,460 --> 00:12:23,126 (拍手)