芝居を通じて人生をよりよく生きる | 奈良橋陽子 | TEDxTokyo
-
0:17 - 0:22明日の朝6時までしか 生きられないとしたら
あなたは何をしますか? -
0:24 - 0:29私が演出した
『THE WINDS OF GOD』という舞台で -
0:29 - 0:31特攻隊員を演じた若い日本の役者たちには
-
0:32 - 0:35このような質問を投げかけました
-
0:36 - 0:42すると役者たちは 心の中を見つめ
何が大切かを考え -
0:43 - 0:46選択をし
行動を起こすよう迫られます -
0:46 - 0:50私が役者に求めるのは
このようなことです -
0:51 - 0:53役者は 時に―
-
0:53 - 0:57暗く傷つくかもしれない場所に
行かねばなりません -
0:57 - 1:03私たちのような一般人は
行くのを躊躇することもあるでしょう -
1:04 - 1:09だから役者に代わりに行ってもらい
表現したくてもできないことを -
1:09 - 1:12代わりに表現してもらうのです
-
1:12 - 1:16だからたぶん役者は高い対価を得るのでしょう
-
1:17 - 1:21このようなことが
私のやってきた仕事です -
1:21 - 1:24先ほどの作品では 役者さんたちと
色々なところに行きました -
1:26 - 1:30オーストラリアやニュージーランド
ツアーで ロンドンにも行き -
1:31 - 1:35アクターズ・スタジオや
国連にも招待されました -
1:36 - 1:41公演のあと 一人の女性が
私に話しかけてきました -
1:41 - 1:46「父に日本人は敵視するよう
教えられてきましたが -
1:46 - 1:51この作品を拝見して 特攻隊員が
我が子のように思えました」 -
1:52 - 1:54心に響く感想でした
-
1:54 - 1:59この仕事に携わることに
大きな意義を感じました -
1:59 - 2:01今日 私がお話しするのは
-
2:01 - 2:05芝居への愛と この仕事―
-
2:05 - 2:11つまりアーティストたちとともに
人を感動させ 生きる糧となる瞬間を -
2:12 - 2:16ほんの僅かでも生み出すために
働くことについてお話しします -
2:21 - 2:24また 私がキャスティングに関わる
きっかけとなった -
2:24 - 2:26国際的な仕事についても
お話ししたいと思います -
2:26 - 2:31これもまた 皆さんにお伝えしたい
とても素晴らしい仕事です -
2:31 - 2:33なぜなら 配役を考えるときは
-
2:33 - 2:37脚本と その中の台詞
-
2:37 - 2:39それしか持ち合わせていません
-
2:39 - 2:42もちろん監督のビジョンも
自分の考えもあります -
2:42 - 2:44それと同時に脚本もある中で
-
2:44 - 2:50役に合う実際の役者を
見つけなければならないのです -
2:52 - 2:55それと同時に想像力を働かせて
-
2:55 - 2:58役者の可能性を見抜かなければなりません
-
2:59 - 3:01これらのピースを組み合わせると
-
3:01 - 3:04時々素晴らしいことが起こります
-
3:04 - 3:06まるで魔法です
-
3:06 - 3:09役がカリスマ性を放ち
-
3:10 - 3:13役者もさらにカリスマ的になります
-
3:14 - 3:19これらは私が携わった映画の例です
-
3:22 - 3:25是非お見せしたかったのは
先ほどお話しした特攻隊の作品 -
3:26 - 3:28私の手がけた作品です
-
3:29 - 3:33『ラスト・サムライ』には
まるまる2年関わりました -
3:34 - 3:36とても素晴らしい経験でした
-
3:38 - 3:42渡辺謙は
実際にオーディションを受け -
3:42 - 3:47他にも400人近い
日本の役者さんたちがいました -
3:49 - 3:51『SAYURI』
-
3:51 - 3:56さゆりを演じた少女は
写真を見た瞬間― -
3:56 - 3:58「この子だわ」と思いました
-
3:58 - 4:01私は ほとんど写真だけで選んだのです
-
4:03 - 4:09『バベル』の菊地凛子は
張り詰めた感じが -
4:10 - 4:13他の役者さんから際立っていました
-
4:16 - 4:19他にも現在いくつか手がけていますが
-
4:20 - 4:24『Unbroken』は
まだ日本で公開されていません -
4:24 - 4:28この作品には素晴らしいパフォーマー
Miyaviが登場します -
4:28 - 4:30これは『終戦のエンペラー』で
-
4:30 - 4:36ゲイリーと 私の息子である野村祐人と
共同製作した作品です -
4:39 - 4:43この作品を製作するのには
大きな意味があり -
4:43 - 4:45できるだけ多くの人に
見てほしいと思っています -
4:48 - 4:50キャスティングを除けば
-
4:51 - 4:57私の仕事は 指導 演出 コーチング
そしてキャスティングなどですが -
4:59 - 5:02芝居の要素は 次の3つの事柄―
-
5:02 - 5:06いわば3本の柱に
尽きるのではと思います -
5:06 - 5:08これらは役者の内に
私が見出そうとし -
5:08 - 5:14演技をより良くするための
拠り所となるものです -
5:18 - 5:211つ目の柱は 自分に向き合うこと
-
5:23 - 5:24これはそう簡単ではありません
-
5:24 - 5:28私たちはみな
人には良く思われたいですし -
5:28 - 5:32欠点を見られたくありません
-
5:34 - 5:36でも 役者は自分の全てを
使わなければ -
5:36 - 5:39観客に訴える力強さが伴いません
-
5:40 - 5:44だから役者は
隠しておきたいような欠点も含めて -
5:44 - 5:49自分の全てを受け入れなければならないのです
-
5:50 - 5:53これはアップルパイのようなものです
-
5:53 - 5:56パイのある一部分を捨て去ろうしても
無理なのです -
5:56 - 5:58だってそれはあなたの一部なのだから
-
5:58 - 6:02だからまず自分自身の全てを
受け入れる努力をします -
6:02 - 6:05一度やると 少しずつ楽になっていきます
-
6:05 - 6:10正直になることであり
真実に近づくことですから -
6:10 - 6:14これは私がとても大切に思っていることです
-
6:15 - 6:18特に現在の日本の若い人には
-
6:18 - 6:21私はこう言います
「あなたと同じDNAを持つ人も -
6:21 - 6:24同じ指紋を持つ人もいない
あなたは唯一の存在なの -
6:26 - 6:28あなたはそのままで完璧なのよ」
-
6:29 - 6:30役者にとって
-
6:31 - 6:33自分を他人と比べて
-
6:33 - 6:36相手の方が役者として
優れているなどと考えるよりも -
6:36 - 6:40自分が持っている全てを出し切って
役を演じたほうがいいのです -
6:42 - 6:45ジェームス・ディーンの作品を監督し
-
6:45 - 6:49役者の教典ともいうべきものを著した
-
6:49 - 6:53伝説的な映画監督エリア・カザンの言葉を
引用したいと思います -
6:55 - 6:58「心をひらく 傷つく覚悟で
-
6:58 - 7:02私が最も欲しているのは ただひとつ
自分自身であること」 -
7:03 - 7:05これはとても大切です
-
7:05 - 7:07そして2本目の柱は
-
7:10 - 7:13目的ある行動というべきものです
-
7:13 - 7:15例えば 芝居を見ているときに
-
7:15 - 7:19惹きつけられるのは
様々な障害に立ち向かい -
7:19 - 7:21求めるものを手に入れようとする人です
-
7:21 - 7:24これこそが 芝居の全てです
-
7:24 - 7:29つまり ある素晴らしい目的や心
願望 欲望があり -
7:29 - 7:34役者はそこに到達するために
様々な困難を乗り越えます -
7:37 - 7:39そして役者が自分の中に
見つけなければならないのは -
7:39 - 7:42自身の欲求・目的なのです
-
7:42 - 7:44そのためには本当に努力が必要で
-
7:44 - 7:48何度か失敗したとしても
それは問題ありません -
7:48 - 7:51目的に到達したいという情熱と
目的意識があるのですから -
7:53 - 8:00例えば 私の場合 どうしても
スティーヴィー・ワンダーに作曲して欲しいと思いました -
8:01 - 8:04私は作詞をするのですが
-
8:04 - 8:08ちょうど作詞していたミュージカル用に
曲をつけてほしいと思ったのです -
8:08 - 8:11もちろん それは難しくて
5年かかりました -
8:11 - 8:16詐欺師みたいな人もいますし
問題は山積していました -
8:16 - 8:21でも途中でオノヨーコに出会い
それも良かったのですが -
8:21 - 8:235年後
-
8:23 - 8:26スティーヴィー・ワンダーが
ホテルの部屋から出てきて -
8:26 - 8:30弟さんにピアノへと導かれ
私の隣に座ったのです -
8:30 - 8:35彼は曲を演奏し始めました
私はとても心打たれ -
8:38 - 8:42思わず涙がこぼれました
音を立てずに流した涙でしたが -
8:42 - 8:45彼には私の涙が聞こえたのです
-
8:45 - 8:47彼は途中で演奏をやめ
-
8:47 - 8:52その大きな手で私の涙をぬぐいました
-
8:54 - 9:00そう 信じ 求めれば
手に入れることができるのです -
9:01 - 9:04だから 目的を 大切にしたいのです
-
9:04 - 9:07まず 目的は前向きでなければなりません
-
9:07 - 9:10ネガティブなものに対して
行動は起こせません -
9:10 - 9:12「逃げ出したい」のを目的に据えるのは
-
9:12 - 9:13少し難しくても
-
9:13 - 9:15代わりに「あそこに行きたい」と言えば
-
9:15 - 9:17それが行動の源となるのです
-
9:17 - 9:20また前向きであると同時に
-
9:20 - 9:24自分がやりたいことに信念をもつことが
とても大切です -
9:25 - 9:28私のように
スティーヴィーに曲を作ってほしいとか -
9:28 - 9:30映画を作りたいとか 何でもいいのです
-
9:35 - 9:39次に引用するのは
トニー賞を受賞した劇作家― -
9:42 - 9:47サイモン・スティーヴンズの言葉です
とても感銘を受けました -
9:48 - 9:50「劇作家の仕事とは
-
9:50 - 9:55思考と感情の宇宙を
行為を通じて解き放つことだ」 -
9:56 - 9:58例えば「OK」というたった一語が
-
9:58 - 10:02劇中で最も面白い言葉だとも
言っています -
10:02 - 10:04つまり言葉単独で面白いのではなく
-
10:04 - 10:06ふるまいや行為によって面白くなるのです
-
10:10 - 10:12さて3本目の柱についてですが
-
10:12 - 10:17これは言うのはとても簡単ですが
実行するのはとても難しいものです -
10:17 - 10:22それは心から語り 聞くことです
-
10:23 - 10:27心から耳を傾けられるのは
特殊な技能だと思います -
10:28 - 10:32私たちは 何かを伝達しているつもりで
話していながらも -
10:32 - 10:34他のことが気になっていたり
-
10:34 - 10:37相手が別のことを考えていることがあります
-
10:37 - 10:39そういう場合は
-
10:39 - 10:44真に完全で生き生きとした
今を感じられる瞬間とは言えません -
10:45 - 10:50幸運なことに私はこのような瞬間を
数多く目にしてきました -
10:50 - 10:54それこそ 私が作中で
生みだそうとしている瞬間なのです -
10:55 - 10:59ここでお見せするのは
-
11:02 - 11:06私の教え子たちが真に話し
耳を傾けている瞬間を -
11:06 - 11:09捉えたものです
-
11:09 - 11:12ちょっといいかしら
パトリック 来てる? -
11:12 - 11:14ちょっとだけ来てもらえるかしら
-
11:14 - 11:16(男性の声)
-
11:16 - 11:19本当?えっ わかったわ
-
11:20 - 11:21(パトリック)もちろん
-
11:21 - 11:23(奈良橋)時間 押してる?
-
11:23 - 11:26(パトリック)いや 大丈夫
(奈良橋)そう? わかったわ -
11:26 - 11:28私が彼に頼もうとしているのは―
-
11:28 - 11:31(パトリック)どんな役をやるんだい?
-
11:31 - 11:35(奈良橋)次の映画 大作よ
(パトリック)OK -
11:35 - 11:36分かった いつでもいいよ
-
11:36 - 11:40(奈良橋)何でもいいわ 言ってみて
-
11:41 - 11:44(パトリック)Flow (流れ)
(奈良橋)フロー 分かったわ 言ってみて -
11:44 - 11:46(パトリック)フロー
-
11:46 - 11:49(奈良橋)わかったわ
何か想いがあるわよね? -
11:49 - 11:51今は言葉を投げ合っているだけですが
-
11:51 - 11:55今度は 私を見て
-
11:55 - 11:58私はどんな状況にいるか
-
11:58 - 12:00私がどんな所にいるかを見て
-
12:00 - 12:03その単語を使って
-
12:03 - 12:07私に何かを伝えてみてくれる?
-
12:07 - 12:09その言葉で私に
想起してもらいたいことがある? -
12:11 - 12:12(パトリック)フロー
-
12:12 - 12:17(奈良橋)わぁ (笑) フロー
素敵ね ありがとう (拍手) -
12:17 - 12:20とても素敵でした ありがとう
-
12:20 - 12:23(パトリック)「愛」を伝えたかったんですよ
(奈良橋)あら まぁ! -
12:23 - 12:25言葉の裏で
「愛」を伝えようとしたそうです -
12:25 - 12:28確かに感じたわ
どうもありがとう -
12:28 - 12:30私の仕事はこんな感じです
-
12:31 - 12:33最後にご紹介したいのは―
-
12:33 - 12:37あ! ここにそういう瞬間の
もうひとつの例があります -
12:38 - 12:40キリンとダチョウです
-
12:41 - 12:45最後にもう1つ引用をして
終わりたいと思います -
12:45 - 12:48というのもこの方よりも
上手い表現ができないからです -
12:48 - 12:52常に平和を望んでいた
スペインのチェロ奏者です -
12:53 - 12:56お芝居のどんな仕事をしているときでも
-
12:56 - 12:58これが私の想いを最もよく表しています
-
13:00 - 13:02「そうだ 君は奇跡なのだ
-
13:02 - 13:06だから大人になったとき
君と同じように奇跡である他人を -
13:06 - 13:09傷つけることができるだろうか
君たちは―われわれも皆― -
13:10 - 13:13この世界を 子供たちが
住むにふさわしい場所にするために -
13:13 - 13:16働かねばならないのだ」
(吉田秀和訳『パブロ・カザルス 喜びと悲しみ』) -
13:17 - 13:18パブロ・カザルスの言葉です
-
13:18 - 13:20ありがとうございました
-
13:20 - 13:21(拍手)
- Title:
- 芝居を通じて人生をよりよく生きる | 奈良橋陽子 | TEDxTokyo
- Description:
-
人は、自分の「役」を見つけると、輝き始めます。奈良橋陽子は、日本人のキャスティング・ディレクターとして、『ラスト・サムライ』、『SAYURI』、『バベル』、『47 Ronin』など多くのハリウッドの大作に携わってきました。彼女の情熱に満ちた、心温まるトークでは、彼女が仕事を通じて見つけた、「優れた役者になるための3本の柱」について、またそれがいかに日常生活にも通じるかについて語ります。
このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDxTalks
- Duration:
- 13:33
Moe Shoji approved Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo | ||
Moe Shoji accepted Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo | ||
Moe Shoji edited Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo | ||
Moe Shoji edited Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo | ||
Moe Shoji edited Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo | ||
Akiko Uchida edited Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo | ||
Akiko Uchida edited Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo | ||
Moe Shoji declined Japanese subtitles for Art of life through drama | Yoko Narahashi | TEDxTokyo |