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【26分解説】ツァラトゥストラ|ニーチェ ~無敵の自己肯定感を生み出す、究極の思想とは?~

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    はい!どうもアバタローです。
    本日は、ドイツの哲学者。
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    ニーチェの[ツァラトゥストラ]
    こちらをご紹介いたします。
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    どんな作品かと言いますと...
    人生を前向きに
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    肯定的に生きぬく力を与えてくれる
    世界的名著でございます。
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    まず、どういった方にお役に立ちそうな
    内容なのかをお伝えいたします。
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    [自分の人生に意義を見出せない]
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    [気の弱い自分を吹き飛ばしたい]
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    [もう一回人生をやり直したい]
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    [自己肯定感の低さをどうにかしたい]
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    これに1個でも当て嵌まれば
    ニーチェについて、全くご存じない方でも
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    今回の動画は見ていただく価値は
    あると思います。
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    ここ数年、自己肯定感について悩んでいる方が多く
    巷には、そういったジャンルの本が
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    溢れていますよね。
    ただ、色んなテクニックや知識を仕入れても
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    あまり効果が見られなかったのであれば
    ニーチェという「劇薬」に頼るのも
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    1つの解決策です。
    ...と言いますのも、ニーチェ哲学のテーマは
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    [生の肯定]であり、徹底的に自分の人生を
    肯定することを説いているんです。
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    そして、本日ご紹介をさせていただく
    [ツァラトゥストラ]は
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    ニーチェ哲学の集大成であり
    人生のネガティブループを強制終了させる
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    「最強の劇薬である」という訳です。
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    ニーチェは本書について
    次のように述べています。
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    私は、[ツァラトゥストラ]を書くことにより
    これまで人類に贈られた
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    [最大の贈物]をした。
    何千年先にも届く、声を持ったこの本は
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    およそ、ありうる限り最高の書物である。
    ここで彼が、何故こういった独特な表現を使い
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    自信に満ち溢れた発言をしているかについては
    動画の後半に行くにつれて見えてくると思います。
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    因みに、”難しい話かもしれない” とご心配の方。
    大丈夫です。
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    哲学に関する知識は一切要りません。
    手ぶらでオーケーでございます。
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    お茶でも飲みながらリラックスして
    ぜひ最後まで、楽しんで行ってください。
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    それでは参りましょう。
    ニーチェ[ツァラトゥストラ]
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    まず、どういった流れでお話をさせていただくか
    整理をしておきたいと思います。
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    大きく3つです。
    [1. ニーチェの生涯]
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    [2. ツァラトゥストラについて]
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    [3. 運命愛]
    以上、3つのテーマに沿って進めてまいります。
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    ...というわけで、早速
    1つ目から見て行きましょう。
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    フリードリヒ・ニーチェ。
    彼は1844年。
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    ドイツの前身である
    プロイセンの東部にある
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    レッケンという小さな村で
    牧師の息子として生まれました。
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    ただ彼は、見た目は子供。
    頭脳は大人という、所謂「天才少年」でして...
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    勉強はできる。
    作曲もできる。
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    詩も書ける。
    しかもセンスは抜群。
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    ...と言うように、始めから
    普通の子供ではなかったと言います。
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    そして、20代の半ばという若さで
    スイスにあるバーゼル大学の教授に就任します。
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    しかも、当時の彼は「教員資格」も
    「博士号」もなく
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    ただの学生という立場で
    教授に推薦されたそうです。
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    如何にニーチェが並外れた存在であったかが
    よく分かります。
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    ただ、常に「右肩上がり」といかないのが
    人生でございます。
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    ニーチェの快進撃は
    30歳手前ぐらいでピタッと止まり
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    そこから、数々の試練が
    怒涛の如く彼を襲います。
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    苦労して書き上げた書籍は
    ことごとく売れない。
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    授業をやっても学生は来ない。
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    教授に推薦してくれた恩師。
    そして、友人からも見放され
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    更に、慢性的な頭痛に加え
    胃の痛み、吐き気も治まらない。
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    その上、女性関係も上手く行かない。
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    もう、絶不調が止まりません。
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    そして、そんな呪いがかかったような状態の中。
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    彼は渾身の力を込めて1冊の本を生み落とします。
    それが、[ツァラトゥストラ]
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    ただこの本...タイトルがちょっと怪しすぎて
    余り手に取る気が起きません。
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    しかも内容も正直言って、理解しにくいです。
    ...ですので、本人の期待とは裏腹に
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    当時、全く売れなかったんです。
    しかも、よりによって
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    4部構成にして、4冊に分けて
    気合を入れて出版したんです。
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    その結果、爆死です!
    特に最後の第4部は、余りに売れなさ過ぎて
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    自分で知り合いに「これを貰ってやってくれないか」
    と、配り歩いていたそうです。
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    そんな状況の中、流石のニーチェも
    ”もう本なんか書くか!” と
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    腐ってしまうのかと思いきや
    なんと彼は、そのまま筆を握り続け
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    次々と、著作を生み出していきます。
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    しかも、それらの作品のほとんどが
    あの滑りに滑った[ツァラトゥストラ]を補足し
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    解説する、という書籍なんです。
    凄い執念です。
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    どれだけ、彼が本作に
    魂を込めていたかが伺えます。
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    しかし、そんな力強い精神を持ったニーチェも
    遂に、限界を迎えます。
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    1889年、彼が45歳を迎える年の頃です。
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    滞在していたイタリア、トリノの広場で
    事件は起こりました。
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    一説によると鞭でバンバン叩かれている馬に駆け寄り
    その馬の首を泣いて抱きしめながら発狂し
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    そして、意識を失ってしまったと言われています。
    幸い意識は戻ったのですが
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    彼の心は完全にこの時、壊れてしまい
    二度と元のニーチェに戻ることはありませんでした。
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    ただ、運命とは皮肉なもので
    実は、このタイミングになって
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    ようやくニーチェの著作に対する評価が
    高まって来るんです。
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    「ニーチェ文庫」という出版社まで出来て
    本もバンバン売れていきます。
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    しかし、ニーチェにどれだけ今の状況を
    言い聞かせても何も認識することが出来ないのです。
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    そして、精神に異常がで始めてから約10年後。
    55歳という若さで
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    ニーチェは天に
    旅立って行ったという訳です。
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    ニーチェの人生について超高速で見てきましたが
    ここまで、よろしいでしょうか?
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    以上のストーリーを踏まえた上で
    彼が渾身の力を込めて生み落とした最高傑作。
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    [ツァラトゥストラ]について
    見て行きたいと思います。
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    まず簡単に、どういったお話かといいますと
    ツァラトゥストラというオジサンが
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    10年間山籠もりをし、孤独の中で知恵を蓄え
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    それを他の人間たちにも
    「分けてやりたい」と言って下山をする。
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    そして、その中で様々な人と出会い...
    語り合いながら自分の知恵を
  • 5:25 - 5:29
    分け与えて行くといったお話です。
    因みに、この[ツァラトゥストラ]というのは
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    ゾロアスター教の開祖であるゾロアスターを
    ドイツ語読みしたものです。
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    ただ、ニーチェ哲学とゾロアスター教は
    全然関係がありませんので
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    ここはスルーしていただいて大丈夫です。
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    大事なのは、ツァラトゥストラというオジサンが
    ニーチェの分身であるということです。
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    ...ですから、山から下りて来た
    ツァラトゥストラが人々に語っていることは全て
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    ニーチェの言葉として
    捉えていただく必要があるわけです。
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    では早速、見て行きましょう。
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    まず、山から下りて来たツァラトゥストラは
    森の麓で、一人の老人と出会います。
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    そして、あなたは森で
    「何をしているのか?」と尋ねるのです。
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    すると、その老人は
    「歌を歌ったりして神様を讃えたりしているんですよ」
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    と答えるのですが、これに対しツァラトゥストラは
    とんでもない衝撃を受けます。
  • 6:12 - 6:15
    そして、心の中で
    次のように呟きました。
  • 6:15 - 6:20
    「あり得ない!この老人は...まだあのことを
    誰からも聞いていないのか?
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    [神は死んだ]ということを...」
  • 6:22 - 6:27
    はい!ここでストップします。
    早速、有名なセリフが出てきました。
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    「神は死んだ」
    ニーチェを知らない方も
  • 6:30 - 6:32
    このパワーワードは聞いたことが
    あるんじゃないでしょうか?
  • 6:32 - 6:37
    では、この「神は死んだ」というこの言葉。
    これは一体、どういう意味なんでしょうか?
  • 6:37 - 6:40
    簡単に言ってしまいますと...
    もうこの世の中には
  • 6:40 - 6:43
    絶対的な「真理」や「価値」なんてものは
    ”ない” と言っているんです。
  • 6:44 - 6:49
    自然科学が発達する前の人類は
    自分たちの頭で理解できない事柄については
  • 6:49 - 6:54
    「神のなせる業」「神の意図である」と
    解釈をし納得をしてきました。
  • 6:54 - 6:59
    ところが、その深遠なる「神の意図」を解明しようと
    人類は、科学技術を発達させ
  • 6:59 - 7:04
    神の存在を前提とする世界観を
    自らの手によって破壊してしまった訳です。
  • 7:04 - 7:07
    例えば「天動説」
    地球は宇宙の中心であり
  • 7:07 - 7:12
    その他の天体は、この地球の周りを
    グルグル回っているだけだというこの説は
  • 7:12 - 7:16
    中世のキリスト教世界においては
    正に絶対的真理でした。
  • 7:16 - 7:19
    反対意見を言おうものなら
    もう、大変なことになってしまいます。
  • 7:19 - 7:24
    しかし、「地動説」という科学に基づいた
    新たな解釈が生まれたことによって
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    ジワリジワリと、神を前提とする世界観が
    崩れていったわけです。
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    人間の存在も同様です。
    神が天地を創造し
  • 7:32 - 7:36
    自分を模って
    男と女を作り上げたという「創造論」
  • 7:36 - 7:40
    これも旧約聖書をベースとしたストーリーですが
    「進化論」という
  • 7:40 - 7:42
    新たな学説によって、揺らいでしまいました。
  • 7:42 - 7:48
    つまりニーチェは、人間は自分たちの手で
    「絶対的真理はない」と証明してしまった。
  • 7:48 - 7:53
    もっと乱暴に言えば、自分たちの手で
    「神を殺してしまったのだ」という主張をし
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    西洋世界のこれまでの常識を
    丸々ひっくり返しに行ったわけです。
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    ...となりますと
    その影響は「哲学」にも及んできます。
  • 8:00 - 8:05
    ニーチェ以前の哲学は、「神の存在」
    「絶対的真理」の存在を
  • 8:05 - 8:08
    前提として成り立っていました。
    例えば、哲学の父[ソクラテス]
  • 8:08 - 8:11
    彼は、街の人に話しかけては
    「善とは何か」
  • 8:11 - 8:15
    「徳とは何か」とその答えを求めて
    問い続けていました。
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    そして、弟子のプラトンはその問いの答えに対し
    「イデア」という概念を用いて、説明を試みました。
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    要するに、ニーチェ以前の哲学者は
    それぞれの説明、解釈の仕方は違えど
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    「普遍的な ”徳” もあるね」
    「普遍的な ”善” ってあるよね」というように
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    絶対的な「真理の存在」を前提に
    物事を考えていたんです。
  • 8:35 - 8:38
    ところが、ニーチェは
    「ない!」「そんなものは、ない!」
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    絶対的な「価値」
    絶対的な「基準」
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    絶対的な「真理」
    そんなものは、あるわけない!と主張しました。
  • 8:44 - 8:48
    それ故、彼は...これまでの哲学を
    ”破壊した人物” とされているわけです。
  • 8:48 - 8:50
    ここで、話を元に戻しましょう。
  • 8:50 - 8:54
    では、この世界に絶対的な「価値」
    絶対的「真理」がない状態だと
  • 8:54 - 8:57
    何がいけないんでしょうか?
    どんな問題が生じるんでしょうか?
  • 8:58 - 9:03
    別に私は、何の宗教も信じてはいないし
    哲学のこととか、絶対的ナンチャラとか
  • 9:03 - 9:07
    そんな難しいことを考えて
    生きているわけじゃないし、関係ないね!
  • 9:07 - 9:11
    もしかしたら...そう思われる方も
    いるかもしれませんが、実はこの問題。
  • 9:11 - 9:16
    人間が人間として生きている以上
    誰にでも関係してきてしまう大事なお話なのです。
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    絶対的なものが存在しない、ということは
    言ってしまえば
  • 9:19 - 9:23
    ”何も信じるものがない” ということです。
    例えば、想像してみてください。
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    高度経済成長期の日本。
    バブル絶頂だった時の日本。
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    この時代は、『21世紀の資本』でもやりましたが
    頑張ったら頑張った分だけ、報われる時代でした。
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    たくさん勉強をして、名門大学に入って
    一流企業に入ってしまえば、一生安泰。
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    人をたくさん雇い、物をたくさん作れば
    売り上げも上がる。
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    働けば働くほど、給料も上がる。
    そんな時代です。
  • 9:45 - 9:49
    つまり、頑張れば人生どうにかなる
    という道筋が、間違いなくあったわけです。
  • 9:49 - 9:52
    だから、自分の夢や希望。
    そして、家族の為に。
  • 9:52 - 9:55
    出世の為に...辛いことも
    苦しいことも耐えられたし
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    歯を食いしばって、努力が出来ました。
    ところが、今はどうでしょうか?
  • 9:59 - 10:04
    企業を神の如く、絶対的な存在とみなし
    定年まで面倒をみて貰おうという
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    終身雇用神話は、最早
    過去のものとなりました。
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    いつ職を失うか...
    いつ食いっぱぐれるか分からない。
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    そして、将来何を目指し
    何に希望を持ち頑張ればいいのか分からない。
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    そういった漠然とした不安だけが
    日に日に大きくなっている。
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    それが、今の状態です。
  • 10:19 - 10:24
    このように、人が絶対的に信じるものを失い
    何のために生きるのか。
  • 10:24 - 10:28
    その「意義」を見出せなくなる状態のことを
    [ニヒリズム]と言います。
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    そして、この[ニヒリズム]が蔓延していきますと
    [末人]と呼ばれる人間が
  • 10:33 - 10:36
    大量発生すると
    ニーチェは警鐘を鳴らしたのです。
  • 10:36 - 10:40
    [末人]というのは
    ”最後の人間” とも訳されるのですが
  • 10:40 - 10:44
    簡単に言ってしまえば
    将来に対して、何の憧れも希望もなく
  • 10:44 - 10:49
    ただ、楽に無難に惰性的に生きることを
    よし!とする人のことを指します。
  • 10:49 - 10:52
    これは勿論、本人だけに
    原因がある訳ではないと思います。
  • 10:52 - 10:58
    ただ、この末人にだけは、絶対になっちゃダメ!
    これが、ニーチェの揺るぎないスタンスなんです。
  • 10:58 - 11:01
    イヤイヤ、私だって好きで
    希望を失ってるわけじゃないんです。
  • 11:01 - 11:05
    [末人]になるな!って言うんだったら
    私等一体、何人になればいいんですか?
  • 11:05 - 11:08
    そう突っ込みたくなりますが...結論
    「超人になってください!」
  • 11:08 - 11:10
    これが、ニーチェの回答でございます。
  • 11:10 - 11:11
    えっ!?超人ですか?
  • 11:11 - 11:13
    はい!超人です。
  • 11:13 - 11:17
    そして、今から紹介しますニーチェの[超人思想]
    これが[ツァラトゥストラ]の前半。
  • 11:17 - 11:20
    第1部、第2部の
    メインテーマとなるわけです。
  • 11:20 - 11:25
    ここは、非常に重要で面白いテーマなので
    是非、抑えていただきたいところでございます。
  • 11:25 - 11:30
    では、早速作品の中で[超人]について
    語られるシーンについて、見て行きましょう。
  • 11:30 - 11:32
    先程、ツァラトゥストラは
    老人と会話をしていましたが
  • 11:32 - 11:35
    それが終わると、森を抜けて街に向かいます。
  • 11:35 - 11:39
    すると、街の市場の方で
    なんか、ザワザワしているんですね。
  • 11:39 - 11:44
    なんだろう?と思って近づいてみますと
    町内イベントで、綱渡りのショーが行われるらしく
  • 11:44 - 11:47
    それで町中の人が
    集まって来ていた、という訳です。
  • 11:47 - 11:49
    「楽しみだなぁ」「まだかなぁ?」
    そんな声が聞こえる中...
  • 11:49 - 11:53
    山籠もりで蓄えた知恵を
    吐き出したくてしょうがない「ツァラトゥストラ」が
  • 11:53 - 11:56
    フラフラしながら
    その群衆の中に近づいて行きます。
  • 11:56 - 12:01
    誰か適当な人を捕まえて説教でも始めちゃうのかな?
    と思いきや、そうではないんです。
  • 12:01 - 12:03
    何と彼は、その民衆全員に向けて
    叫んでしまうんです。
  • 12:03 - 12:05
    「皆さん、よく聞きなさい!
  • 12:05 - 12:08
    私は、今から皆さんに
    [超人]について教えます。
  • 12:08 - 12:09
    皆さんは、かつて猿でした。
  • 12:09 - 12:13
    しかし、今の人間は
    猿以上に猿なのであります!」
  • 12:13 - 12:18
    なるほど...これは怪しいおじさんが
    意味不明なことを叫んでるようにしか聞こえません。
  • 12:18 - 12:22
    当然、そこにいた人々は、そんな彼を
    全く相手にしませんでした。
  • 12:22 - 12:26
    しかし、ツァラトゥストラは
    気にせず、奇妙な演説を続けます。
  • 12:26 - 12:30
    そして、[超人]について話を終えたところで
    群衆の中の一人が大声で叫びました。
  • 12:30 - 12:36
    「よし!これで綱渡り芸の前口上は、バッチリだ!
    それじゃあ、早速...超人に登場して貰って
  • 12:36 - 12:41
    その超人技とやらを披露して貰おう」
    すると、この人のボケが、ドカン!とウケてしまい
  • 12:41 - 12:44
    ツァラトゥストラは、皆から馬鹿にされ
    大笑いされてしまうのです。
  • 12:44 - 12:49
    そんな中、綱渡り芸が始まりました。
    人々もその様子を固唾を呑んで見守っています。
  • 12:49 - 12:50
    ここで、ツァラトゥストラ...
  • 12:50 - 12:54
    馬鹿にされたショックで、黙り込むのかと思いきや
    なんと!まだ喋り続けています。
  • 12:54 - 12:58
    そして、ここで
    非常に重要なセリフを口にするのです。
  • 12:58 - 13:04
    「人間という生き物は...
    動物と超人との間に張り渡された、1本の綱である。
  • 13:04 - 13:08
    渡って彼方に進むのも危うく
    途上にあるのも危うく。
  • 13:08 - 13:12
    後ろを振り返るのも危うく
    おののいて、立ちすくむのも危うい」
  • 13:12 - 13:14
    はい!ここで一旦止めましょう。
  • 13:14 - 13:17
    彼が何を言わんとしているのか
    考えてみたいと思います。
  • 13:17 - 13:20
    まず、超人って何?
    というところからお話をしていきます。
  • 13:20 - 13:23
    結論から言うと...
    不屈の精神力。
  • 13:23 - 13:27
    そして、力強い意志を持ち
    自らの人生を肯定しながら
  • 13:27 - 13:31
    より高みへ向かおうとする存在。
    それが、超人のイメージです。
  • 13:31 - 13:35
    なぜ、「イメージ」 と申し上げたかと言いますと
    実は、[ツァラトゥストラ]では
  • 13:35 - 13:39
    具体的に、「超人とはこういうものです」 と
    定義付けをしていないんですね。
  • 13:39 - 13:45
    もし、定義づけをしてしまえば、ニーチェは自ら
    絶対的な存在を認めたことになってしまいますから
  • 13:45 - 13:48
    ここは敢えて、読者の想像に
    委ねられているのかもしれません。
  • 13:48 - 13:52
    そして、人間というのは
    その[超人]という存在に向かって
  • 13:52 - 13:54
    綱渡りのような危険を
    乗り越えていく。
  • 13:54 - 13:57
    そういう存在なんですよ、と
    言っているわけです。
  • 13:57 - 14:00
    では、どうやったら超人の域に
    到達できるのでしょうか?
  • 14:00 - 14:04
    ツァラトゥストラが言うには
    人間の精神には「3段階」あって
  • 14:04 - 14:09
    どんどん、そのレベルを上げていくことで
    超人に近づくことが出来るそうです。
  • 14:09 - 14:13
    その段階には、名前がついており
    第一段階が[ラクダ]
  • 14:13 - 14:14
    第二段階が[獅子」
  • 14:14 - 14:17
    第三段階が[幼子]です。
  • 14:17 - 14:21
    順番に見て行きます。
    まず、初めの[ラクダ]の段階というのは
  • 14:21 - 14:23
    重い荷物を背負って
    我慢するステージです。
  • 14:23 - 14:28
    自分の身に積極的に負荷をかけ
    そこで自分の強みを獲得するわけです。
  • 14:28 - 14:32
    「学校での勉強」「会社での仕事」
    「体を鍛えること」
  • 14:32 - 14:35
    人それぞれに[ラクダ]のステージがあります。
  • 14:35 - 14:40
    そして、忍耐力や自分の強みが磨かれたのなら
    次の段階は[獅子]です。
  • 14:40 - 14:46
    このステージは、窮屈な状態から解放され
    自由を求める者が進む段階です。
  • 14:46 - 14:51
    「既存の価値観」「常識」「権威」に対して
    ハッキリと自分の言葉で「No」と言える。
  • 14:51 - 14:56
    そんな、独立の精神を持った段階。
    それが、この[獅子]のステージです。
  • 14:56 - 15:01
    そして最後、第三段階になると
    獅子は[幼子]に変身をします。
  • 15:01 - 15:05
    自らの想像力に身を委ね
    勝手に自由気ままに遊ぶ。
  • 15:05 - 15:11
    まるで、幼い子供のような無邪気な精神。
    それこそが、最終段階なのだという訳です。
  • 15:11 - 15:17
    どれだけ大人が世の中の理不尽さを嘆いていても
    将来を悲観しても、幼い子供には関係がありません。
  • 15:17 - 15:22
    彼ら、彼女らにとって
    世界は無条件に肯定されるものであり
  • 15:22 - 15:26
    心のままに戯れ、無心に遊び
    自由に、創造的に今
  • 15:26 - 15:32
    この瞬間、瞬間を生きています。
    つまり[超人]たる者は、この3つのプロセスを経て
  • 15:32 - 15:36
    最終的には「幼子」のような精神を
    その身に宿すものなのだという訳です。
  • 15:37 - 15:41
    さぁ!1部・2部のメインテーマである
    [超人]に関するお話は、ここでお終いですが
  • 15:41 - 15:45
    この内容が、第3部・第4部
    後半の内容へと繋がっていきます。
  • 15:45 - 15:50
    この、後半パートのテーマは[永遠回帰]と呼ばれる
    [ツァラトゥストラ]の中心思想でございます。
  • 15:50 - 15:55
    つまり、今からお話しするところが
    この動画の最も重要な箇所であり
  • 15:55 - 15:58
    ニーチェ哲学を学ぶ上で、絶対に
    外せないテーマというわけです。
  • 15:58 - 16:00
    では早速、見て行きましょう。
  • 16:00 - 16:02
    まず、[永遠回帰]とは
    一体、何なんでしょうか?
  • 16:02 - 16:04
    結論から言いますと...
  • 16:04 - 16:08
    同じことが無限に繰り返されるという
    仮説のことを指します。
  • 16:08 - 16:12
    もうちょっと、具体的に言うと...
    あなたは、今の人生を永遠に繰り返している。
  • 16:12 - 16:16
    前世も、来世も...
    ずっと、同じ人生を繰り返している。
  • 16:16 - 16:20
    無限ループの中をグルグル、グルグルと
    生き続けているんですよ、という「仮説」です。
  • 16:20 - 16:23
    繰り返しになりますが
    これは、「仮設」であり
  • 16:23 - 16:26
    事実か、事実でないかは
    あまり重要ではありません。
  • 16:26 - 16:29
    仏教の世界にも ”輪廻思想” という
    教えがありますが
  • 16:29 - 16:32
    「永遠回帰」とは
    全く異なる概念になります。
  • 16:32 - 16:37
    生命は、色んなものに無限に生まれ変わり続ける。
    これが、輪廻思想です。
  • 16:37 - 16:39
    例えば、私の来世は
    「大資産家」かもしれないし
  • 16:39 - 16:42
    「小さなクラゲ」 かもしれない。
    そういうお話です。
  • 16:42 - 16:48
    一方「永遠回帰」の場合は、同じ人が同じ人生を
    グルグル永遠にループし続けるというものです。
  • 16:48 - 16:49
    さて、ここで質問です。
  • 16:49 - 16:53
    皆さまは、この「永遠回帰」の思想を
    受け入れることが出来ますか?
  • 16:53 - 16:58
    それとも、同じ人生をループし続けるなんて
    「勘弁してくれ!」と、拒絶されますか?
  • 16:58 - 17:01
    勿論、正解はありませんし
    人それぞれです。
  • 17:01 - 17:04
    因みにニーチェは、別の著作で
    この「永遠回帰」の思想を
  • 17:04 - 17:08
    人間にとっての「最大の重しである」と
    表現しています。
  • 17:08 - 17:12
    要するに、人間というのは
    余程、幸せで恵まれた人でない限り
  • 17:12 - 17:17
    忘れ去りたい過去の「トラウマ」
    「失敗」「過ち」が1つや2つあるでしょう、と。
  • 17:17 - 17:23
    それを無限に経験し続けるのは、過去の記憶が
    消去されているとは言え「誰だって嫌でしょう」と。
  • 17:23 - 17:26
    そう言っているんですね。
    ただ、この思想というのは
  • 17:26 - 17:30
    その人の捉え方次第で
    人生を大きく変えるくらいの
  • 17:30 - 17:34
    強力な「武器」にもなるんです。
    仮に、本当にループし続けると
  • 17:34 - 17:37
    真剣に想像してみてください。
    どうでしょうか?
  • 17:37 - 17:40
    永遠にネガティブで
    否定的で「不幸」な人生か。
  • 17:40 - 17:44
    永遠にポジティブで
    肯定的で「幸福」な人生か。
  • 17:44 - 17:48
    極端な2つの選択肢が
    目の前に浮かび上がってくるはずです。
  • 17:48 - 17:50
    さぁ、選びたいのはどっちですか?
  • 17:50 - 17:52
    そう聞かれれば
    どう考えても後者しかありません。
  • 17:52 - 17:58
    そして、もし後者を選べば、永遠に繰り返しても
    良いと思えるような人生にしようと
  • 17:58 - 18:00
    前を向いて生きていくしかなくなるんです。
  • 18:00 - 18:04
    つまり、「永遠回帰」というのは
    神が死んだ後の世界。
  • 18:04 - 18:08
    絶対的に信じるものが失われた世界で
    [末人]に陥ることなく
  • 18:08 - 18:14
    人生を肯定的に、力強く前向きに歩んでいくための
    「思考法」と言えるわけです。
  • 18:14 - 18:19
    では、一体どうすれば「永遠回帰」の思想を
    受け入れることが出来るようになるのでしょうか?
  • 18:19 - 18:23
    頭で理屈は分かっても
    なかなか、自分のものにするのは難しそうです。
  • 18:23 - 18:27
    そこでニーチェは
    「永遠回帰」を自分のものとする条件として
  • 18:27 - 18:30
    「ニヒリズム」を克服する必要がある
    と説きました。
  • 18:30 - 18:35
    イメージし辛いと思いますので
    今から実際に「ニヒリズム」を克服し
  • 18:35 - 18:38
    「永遠回帰」を受け入れた人間を描いている
  • 18:38 - 18:41
    [ツァラトゥストラ]の重要なワンシーンを
    紹介いたします。
  • 18:41 - 18:45
    どんな場面かというと...
    1人の若い牧人が倒れているところを
  • 18:45 - 18:48
    ツァラトゥストラが
    発見するというシーンです。
  • 18:48 - 18:51
    牧人というのは、馬とか牛とか
    羊などのお世話をする人です。
  • 18:51 - 18:54
    その主人が倒れている横で
    犬がギャンギャンと、鳴いています。
  • 18:54 - 18:58
    そして、その声にツァラトゥストラが気付き
    「何事だ?」と言って近づいて行くんです。
  • 18:59 - 19:01
    そこで彼は、とんでもない光景を
    目の当たりにします。
  • 19:01 - 19:08
    なんと、倒れ込んでいる牧人の口から
    黒い蛇の尻尾がニョロッと出ていたんです。
  • 19:08 - 19:12
    牧人は、余りの苦しさに
    のたうち、喘ぎ、痙攣をおこしています。
  • 19:12 - 19:16
    そこで、ツァラトゥストラは、その牧人を
    助けなければと、うわぁぁっ!と近づいて行き
  • 19:16 - 19:20
    蛇の尻尾をギュッと掴み
    力いっぱい引っ張って、口から出そうとします。
  • 19:20 - 19:25
    ところが、全く蛇を引きずり出すことができません。
    何度やっても同じでした。
  • 19:25 - 19:27
    そこで、ツァラトゥストラは絶叫します。
  • 19:27 - 19:29
    「蛇の頭ごと、噛みちぎってしまえ!」
  • 19:29 - 19:31
    「さぁ!噛むんだ!噛んでしまえ!」
  • 19:31 - 19:34
    すると牧人は、言われるがままに
    蛇をガブッと噛みちぎり
  • 19:34 - 19:38
    その頭を吐き捨て、それと同時に
    パッ!と立ち上がります。
  • 19:38 - 19:41
    そして、この様子を見たツァラトゥストラは
    次のように語ります。
  • 19:41 - 19:45
    「私の目の前にいた男は...最早
    牧人ではなかった。
  • 19:45 - 19:48
    イヤ、人間でもなかった。
    一人の変容した者。
  • 19:48 - 19:52
    光りに包まれた者だった。
    そして、彼は高らかに笑った。
  • 19:52 - 19:56
    今まで、地上のどんな人間も
    笑ったことがないほど高らかに...」
  • 19:56 - 19:58
    さぁ、いかがでしょうか。
    このシーン。
  • 19:58 - 20:02
    非常に重要な場面なんですが
    言わんとしている事、分かりましたでしょうか?
  • 20:02 - 20:06
    要するに、この七転八倒している牧人というのは
    「ニヒリズム」に捕らわれた
  • 20:06 - 20:09
    人間のことを描いているんです。
    もうちょっと、分かりやすく言いますと
  • 20:09 - 20:12
    こんな希望もない世界に
    生きている意味なんか、ないじゃないか。
  • 20:12 - 20:14
    頑張ったってどうせ...
    報われないじゃないか。
  • 20:14 - 20:16
    どうせ、私なんか...
    どうせ、私なんか!!
  • 20:16 - 20:20
    こういった「ニヒリズム」に陥ってしまいますと
    私たちは、あの牧人のように
  • 20:20 - 20:24
    息苦しい人生を送ることになってしまいますよ、と
    言っている訳ですね。
  • 20:24 - 20:29
    しかし、牧人は自分を苦しめる蛇を噛みちぎり
    窮地を脱しましたよね。
  • 20:29 - 20:32
    すなわち、これこそが
    「ニヒリズム」の克服なんです。
  • 20:32 - 20:36
    もっと、具体的に言えば
    「不安」「恐怖」「嫉妬」「失望」「自己不信」
  • 20:36 - 20:40
    といった、色んなことに捕らわれ
    人生を悲観的に捉えることしかできなかった
  • 20:40 - 20:42
    弱い自分を
    自ら噛み殺したんです。
  • 20:43 - 20:46
    そして新たな、力強い自分に
    生まれ変わる覚悟を決め
  • 20:46 - 20:51
    自分の人生を否定的なものから
    肯定的に捉えなおすことに成功し
  • 20:51 - 20:55
    高らかに笑った。
    これこそが「永遠回帰」の思想を受け入れ、実践し
  • 20:55 - 21:00
    自らの全生涯を肯定した者の
    姿であるという訳です。
  • 21:00 - 21:03
    また、ニーチェは
    「永遠回帰」の実践的態度として
  • 21:03 - 21:06
    最も重要なのは
    苦しい人生を目の前にし
  • 21:06 - 21:10
    死にたくなるほど絶望したとしても
    ”これこそが人生なのか。
  • 21:10 - 21:14
    だったら、もう一度掛かってこい!” と
    勇気を持って立ち向かうことである、と説きます。
  • 21:14 - 21:19
    今、生きているこの瞬間を
    「これこそ、私の人生なのだ!」と
  • 21:19 - 21:23
    自信を持って肯定できる人は
    これまで歩んできた過去を振り返っても
  • 21:23 - 21:26
    「これで良かったんだ」と
    肯定することが出来ます。
  • 21:26 - 21:32
    そして、未来に対しても臆することなく
    前向きに、肯定的に歩んで行くことが出来ます。
  • 21:32 - 21:36
    更に、これが永遠にループするとなれば
    「自分が生きる世界」
  • 21:36 - 21:42
    「自分の命」「自分の人生」その全てが...
    永遠に肯定され続けることを意味するわけです。
  • 21:42 - 21:49
    つまり今、この瞬間を肯定さえしてしまえば
    永遠の肯定ループが、生まれるというお話です。
  • 21:49 - 21:51
    それ故、ニーチェは
    「永遠回帰」の思想を
  • 21:51 - 21:56
    [およそ到達しうる限りの最高の肯定の定式]
    と名付けました。
  • 21:56 - 22:00
    そして、この思想を受け入れた者が
    辿り着く思考の領域。
  • 22:00 - 22:01
    それが[超人]なんです。
  • 22:01 - 22:04
    勿論、そこに至る道は
    決して楽ではありません。
  • 22:04 - 22:07
    1本の綱を渡るように
    大きな危険を伴います。
  • 22:07 - 22:12
    しかし、「絶対に安全な道がある」と
    頑なに信じ、何もせず
  • 22:12 - 22:14
    時が経つのを
    ただ、待っているだけでは
  • 22:14 - 22:16
    あの牧人のように
    苦しむしかないんです。
  • 22:16 - 22:19
    ...であれば
    自分の弱さを思い切って断ち切って
  • 22:19 - 22:23
    勇気をもって前進しましょう。
    そして、やれるだけのことを全部やって
  • 22:23 - 22:26
    自分の何もかもを「肯定してしまえ」と
    言っている訳です。
  • 22:26 - 22:27
    さぁ、いかがでしたでしょうか。
  • 22:27 - 22:29
    端折りに、端折って進めてきましたが
  • 22:29 - 22:31
    ツァラトゥストラに関しては
    ここでお終いです。
  • 22:31 - 22:35
    作品の肝となっている[超人思想]
    そして、[永遠回帰]
  • 22:35 - 22:37
    ざっくり、イメージ
    いただけたでしょうか?
  • 22:37 - 22:41
    最後にニーチェが提唱した[運命愛]について
    簡単に触れて終わりたいと思います。
  • 22:41 - 22:46
    [運命愛]というのは、一言で言ってしまえば
    自分の運命を全て受け入れ
  • 22:46 - 22:49
    肯定し、愛する
    「心の態度」のことを意味しています。
  • 22:49 - 22:56
    ニーチェの思想に基づくならば、この世界に絶対的な
    「善」も「悪」も存在しないということになります。
  • 22:56 - 22:59
    ...であれば、自分の人生で起こる
    様々な出来事一つ一つに
  • 22:59 - 23:03
    これは、楽しかったから「〇」(まる)
    これは、キツかったから「×」(バツ)
  • 23:03 - 23:09
    ...と、部分的に受け入れるのではなく
    その全てを愛することの大切さを説いた訳です。
  • 23:09 - 23:12
    ただ、そうやって綺麗サッパリ
    気持ちの整理がつけばいいんですが
  • 23:12 - 23:15
    それが出来なくて悩むのが
    我々、人間でございます。
  • 23:15 - 23:18
    自分の存在、自分の人生に
    価値を見出せず
  • 23:18 - 23:20
    できることなら、もう一回
    過去に戻ってやり直したい。
  • 23:20 - 23:24
    そんな気持ちが、夜な夜な
    出てきてしまうことだってある訳です。
  • 23:24 - 23:26
    しかし、ニーチェは次のように言います。
  • 23:26 - 23:27
    [たった1度でいい]
  • 23:27 - 23:31
    [本当に魂が震えるほどの悦びを味わったのなら]
  • 23:31 - 23:33
    [その人生は生きるに値する]
  • 23:33 - 23:38
    つまり、生きている間に言葉では言い表せないような
    歓びを手に入れさえすれば
  • 23:38 - 23:41
    全ての苦しみ
    全ての悲しみを引き連れてでも
  • 23:41 - 23:45
    あなたは、自分の人生をもう一度
    生きることを望むはずだ!
  • 23:45 - 23:50
    だから、どんな運命だろうと愛し
    自分の人生を前向きに、肯定的に生きればいいのだ
  • 23:50 - 23:54
    と、言っている訳です。
    ニーチェ哲学のテーマは[生の肯定]ですが
  • 23:54 - 23:58
    この[運命愛]は正に
    その象徴的な概念と言えます。
  • 23:58 - 24:02
    しかし、そんな非常に前向きでパワフルな
    思想の持主であるニーチェですが
  • 24:02 - 24:07
    彼自身の人生と言えば
    実に「苦悩」と「悲哀」に満ちたものでした。
  • 24:07 - 24:11
    才能があっても仕事は評価されず
    発狂するほど苦しみ
  • 24:11 - 24:13
    精神を病んで
    この世を去るんです。
  • 24:13 - 24:18
    これが、永遠に回帰するのかと考えますと
    正直、ゾッとしてしまいます。
  • 24:18 - 24:21
    ただ、彼は
    晩年に書いた『自叙伝』において
  • 24:21 - 24:24
    自身の人生を
    次のように振り返っています。
  • 24:24 - 24:25
    [どうして私は]
  • 24:25 - 24:28
    [私の全生涯を感謝せずにおれようか?]
  • 24:29 - 24:31
    [そして、だからこそ私は私自身に]
  • 24:31 - 24:35
    [私の生涯を、語り聞かせようとしているのである]
  • 24:35 - 24:38
    ニーチェの精神が崩壊するのは
    この言葉を残した
  • 24:38 - 24:42
    わずか数ヶ月後と、言われています。
    つまり、彼は
  • 24:42 - 24:46
    最後の最後まで
    苦悩に満ちた自分自身の運命を愛し
  • 24:46 - 24:49
    「生の肯定」という
    自分の哲学を貫き通し
  • 24:49 - 24:51
    その人生を全うしたのです。
  • 24:52 - 24:53
    そして、ニーチェは
    自分の死後...
  • 24:53 - 24:56
    何百年か先に、きっと「ニヒリズム」が
    世界を覆い尽くし
  • 24:56 - 25:01
    人々から希望を奪い、生きる意味を
    失わせてしまうだろう、と予見していました。
  • 25:01 - 25:05
    だからこそ、彼は...
    自分の魂と声を宿した人格。
  • 25:05 - 25:08
    [ツァラトゥストラ]を作り上げ
    絶望の前に立ち尽くす
  • 25:08 - 25:10
    未来の人類への
    「贈り物」としたのです。
  • 25:10 - 25:15
    どこまでも、生を肯定し
    運命を愛した天才哲学者。
  • 25:15 - 25:18
    フリードリヒ・ニーチェ。
    彼の贈り物が開かれるべき時は
  • 25:18 - 25:20
    正に、今なのかもしれません。
  • 25:21 - 25:23
    ...というわけで
    ニーチェの[ツァラトゥストラ]
  • 25:23 - 25:25
    以上でございます。
    いかがでしたでしょうか?
  • 25:25 - 25:29
    ニーチェ哲学は、やはりパワーが凄いですね。
    圧倒されてしまいます。
  • 25:29 - 25:32
    もし、この後お時間があるようでしたら
    概要欄に貼ってあるリンクから
  • 25:32 - 25:37
    岡本太郎さんの[自分の中に毒を持て]
    こちらをチェックしていただきますと
  • 25:37 - 25:40
    また、新たな発見があると思います。
    ...と言いますのも
  • 25:40 - 25:45
    岡本太郎さんの思想に最も影響を与えたのは
    フランスの哲学者。
  • 25:45 - 25:50
    「バタイユ」という人物なんですが
    このバタイユに影響を与えたのがニーチェなんです。
  • 25:50 - 25:54
    ...ですから、岡本太郎さんの力強い言葉には
    何処か、ニーチェっぽさがあります。
  • 25:54 - 25:59
    そういったところに注目して観ていただきますと
    今日の内容の解釈の幅が広がって
  • 25:59 - 26:03
    更に、気持ちを高めていただけるのではないかな、と
    思います。
  • 26:03 - 26:08
    面白かった、参考になったという方は
    高評価・コメントなどいただけますと嬉しいです。
  • 26:08 - 26:10
    また、チャンネル登録も
    よろしくお願い致します。
  • 26:10 - 26:12
    ではまた、次の動画でお会いいたしましょう。
  • 26:12 - 26:13
    ありがとうございました。
Title:
【26分解説】ツァラトゥストラ|ニーチェ ~無敵の自己肯定感を生み出す、究極の思想とは?~
Description:

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Video Language:
Japanese
Duration:
26:14

Japanese subtitles

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