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損なわれる共感性 | サイモン・バロン=コーエン | TEDxHousesofParliament

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    この2人はダッハウ強制収容所で
    働いたナチ科学者です
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    第二次世界大戦時のことです
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    2人はある実験を行っていました
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    氷水の中で人間が
    どれ程生き長らえられるかという実験です
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    科学者なら誰でもそうするように
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    彼らも犠牲者が死に至るまでの期間を含め
    系統的な記録を残しました
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    このような人間の残酷さの例は
    大きな問題を投げかけます
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    どうして人を単なる物として
    扱うことができるのでしょうか?
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    人間の残酷さは「邪悪な精神」
    という言葉で解釈されていました
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    邪悪な精神という概念は
    説明にもならないし科学的でもありません
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    何か超自然的な力に取り憑かれたと
    言っているも同然だからです
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    さらに悪いことに
    そんな考えは循環論的です
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    もし邪悪を「善の心がない状態」と
    定義してしまうと
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    私たちは 要するに
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    「誰かが悪いことをしたのは
    善の心がないから」と言っているに過ぎず
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    これでは行き詰まってしまいます
  • 1:32 - 1:35
    これとは対照的に
    「共感性」という概念を使えば
  • 1:35 - 1:39
    科学的に検討しやすくなると
    私は考えています
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    共感能力は科学的な測定や
    研究の対象になるからです
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    共感性には認知的側面と
    情動的側面の2つがあります
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    認知的共感能力は
  • 1:52 - 1:55
    他人の考えや気持ちを想像し
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    相手の立場に立って考える能力で
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    認識に関わる部分です
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    情動的共感能力は
    他者の考えや感情にふさわしい
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    感情的な反応を促します
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    情動的共感能力の低さは
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    人間の残酷さを説明するために
    欠かせない要因です
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    共感性とは 有るか無いかではなく
    程度の問題で
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    個人差があります
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    これがそれを示す
    共感能力のベル曲線です
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    我々の大半は
    このスペクトラムの中央付近にいて
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    平均的な共感能力を持っています
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    中には平均以上の共感能力を
    持った人々がいます
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    しかし
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    一時的にせよ 永続的であるにせよ
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    共感能力を低下させる要因は何でしょう?
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    その社会的要因は?
    生物学的要因は?
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    社会的要因の1つが
    権威に対する従順さです
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    イェール大学 スタンレー・ミルグラムの
    実験によると
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    権威ある人から指示されると
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    人は学習を助ける目的で
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    進んで他人に電気ショックを
    与えるとのことです
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    これは
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    単に命令に従うことが
    共感力を損なう要因の1つだと示しています
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    2番目の社会的要因はイデオロギーです
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    テロリストが9月11日に
    世界貿易センターに旅客機で突入した時
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    彼らは
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    正しいことをしているという
    確固たる信念を持っていたと
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    考えざるを得ません
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    勿論
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    その行為に志願したテロリストの
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    共感能力が 元々低かったかどうかは
    わかりませんが
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    あり得ることは
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    イデオロギーへの信頼が要因となり
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    犠牲者たちへの共感能力が
    損なわれたことです
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    第3の社会的要因は
    集団内部の関係と 集団相互の関係です
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    ルワンダではある部族が
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    敵グループを単純化して
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    人間以下でゴキブリ並みだという
    プロパガンダを流しました
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    我々があるグループを
    敵として非人間化した時
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    共感能力を失ってしまう危険性があります
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    そして それが壊滅的な大虐殺を
    引き起こしたのを
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    我々は目撃しています
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    ただし どの社会要因を見ても
    テッド・バンディのような個人は説明できません
  • 4:35 - 4:37
    彼の成人としての生活は
    心理学を学ぶ
  • 4:37 - 4:40
    ワシントン大学の学生として始まり
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    ホットラインの電話相談を受ける
    ボランティア活動をしていました
  • 4:43 - 4:47
    彼は電話口で女性たちを
    口説いて会っていました
  • 4:47 - 4:49
    それ以降 数年に渡り
  • 4:49 - 4:54
    少なくとも30人の女性を
    レイプし殺害したのです
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    彼は認知的共感能力は
    持ち合わせていたのだと思われます
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    なぜなら犠牲者たちを
    騙せたのですから
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    しかし情動的共感能力が欠けていました
    —まったく関心がなかったのです
  • 5:07 - 5:10
    そして それは持続的でした
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    テッド・バンディのような精神病質者が
    情動的共感能力に欠けているということは
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    ブロードモア病院で行われた
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    ジェイムズ・ブレアの実験で
    検証されています
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    精神病質者とコントロールグループに
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    3種類のイメージ すなわち
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    脅威と感じられるもの 特徴のないもの
    苦しんでいる人の写真を見せたところ
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    精神病質者は
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    苦しんでいる人の写真を見て
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    わずかな生理的反応しか
    示さなかったのです
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    ここから 精神病質者は情動的共感能力が
    欠けていると考えられます
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    自閉症の人たちは
    認知的共感能力に困難を感じます
  • 5:55 - 5:58
    彼らにとって他人の考えや
    動機や意図や感情を
  • 5:58 - 6:02
    想像するのは難しいことですが
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    人を傷つけようとはせず
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    むしろ周りの人々に混乱させられ
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    予測可能な対象物からなる世界を好み
    引きこもってしまいます
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    自閉症の人は
    正常な情動的共感を持っています
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    というのは彼らが誰かが
    苦しんでいるのを知ると
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    動揺するからです
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    このことから
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    自閉症の人と精神病質者は
    正反対だと想像されます
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    精神病質者は認知的共感能力は高いのですが
    —彼らが人を騙す手段です—
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    情動的共感能力は低いのです
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    自閉症の人は
    正常の情動的共感能力はあるものの
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    神経学的な理由で
    認知的共感を感じることは難しいのです
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    精神病質者は突然現れるものではありません
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    彼らの多くは
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    非社会的な行動をとり
    ティーンエイジャーで非行に走ります
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    ロンドンにあるタビストック・クリニックの
    ジョン・ボウルビィが非行少年少女の調査で
  • 7:02 - 7:06
    幼年期精神的ネグレクトの経験を
    彼らの多くに見つけました
  • 7:07 - 7:10
    幼年期に親の愛情が欠如していることが
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    共感能力が損なわれる1要因だと
    ボウルビィは論じました
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    ただ 幼年期の経験が
    全てではないことが分かっています
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    幼年期に問題があるからと言って
  • 7:22 - 7:25
    誰もが共感能力がない訳ではないからです
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    キングス・カレッジ・ロンドン精神医学研究所の
    アブシャロム・カスピによると
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    子供の時 深刻な虐待を受けると
  • 7:36 - 7:39
    非行に走る傾向が高いが
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    その傾向をさらに高くするのは
  • 7:43 - 7:47
    ある種のMAO-A遺伝子を持つ場合です
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    赤いグラフで示しています
  • 7:50 - 7:52
    このように遺伝子と環境は相互作用します
  • 7:54 - 7:57
    もう1つ共感レベルと関係している
    生物学的要因は
  • 7:57 - 8:02
    ホルモンのひとつである
    テストステロンです
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    胎児ではテストステロンは
    脳の発達に働きかけます
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    検査のため羊水穿刺を受ける妊婦から
  • 8:10 - 8:13
    胎児を包む羊水を採取し
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    テストステロン量を測定しました
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    出生後 その子供たちを追跡調査しました
  • 8:23 - 8:26
    その子供たちが8才になった時
  • 8:26 - 8:28
    我々は彼らにどの言葉が
  • 8:28 - 8:32
    写真の人の考えや気持ちを
    最も良く表しているか尋ねました
  • 8:32 - 8:35
    この場合は「何かに興味を示している」
    というのが正解です
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    胎児の時にテストステロンレベルが
    高かった子供ほど
  • 8:41 - 8:45
    この認知的共感テストでのスコアが
  • 8:45 - 8:48
    低かったのです
  • 8:48 - 8:54
    示される共感度は
    その人の共感回路機能—
  • 8:54 - 8:57
    脳領野間のネットワークの
    機能程度を表します
  • 8:57 - 8:59
    ここにその2つがあります
  • 8:59 - 9:04
    赤は左腹内側前頭前野で
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    青は扁桃体です
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    この人はフィネアス・ゲイジです
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    彼は左腹内側前頭前野を損傷しました
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    ダイナマイトが爆発し鉄の棒が
    目の後ろから脳を貫いたのです
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    事故の前は 礼儀正しく思いやりのある
    人物という評判でした
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    その事故後 彼は粗野になり
  • 9:29 - 9:30
    もはや
  • 9:30 - 9:34
    状況に合った社会的に適切な行動を
    取れなくなったと言われています
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    彼は認知的共感能力を
    失ってしまったのです
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    シカゴ大学のジーン・ディセティは
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    fMRIを使い
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    非行少年少女たちの脳を
  • 9:49 - 9:54
    彼らに他者が苦痛を感じている動画を
    見せながら観察しました
  • 9:54 - 9:59
    例えばピアノを弾いている時に
    鍵盤の蓋が閉じ
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    指が潰される動画などです
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    非行少年少女の脳では
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    共感回路の一部である扁桃体が
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    健全な人の典型的な活動レベルに
    達しないことを発見しました
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    ただ 共感性の持つ良い面を
    忘れないようにしましょう
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    我々の大半は十分に共感能力を持っています
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    その能力がかなり高い人もいます
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    この2人が お互いに対する
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    尊敬の念と共感に基づいて
    関係を築き上げた時
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    南アフリカの人種隔離政策は
    終わりを告げました
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    共感は健全な民主主義には不可欠です
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    共感することで
    他の人たちの見解に耳を傾け
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    気持ちを感じとります
  • 10:48 - 10:52
    共感し合わずして
    民主主義はあり得ないでしょう
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    今週ケンブリッジで
    この2人の女性に会いました
  • 10:57 - 10:59
    私を訪ねて来てくれたのです
  • 10:59 - 11:03
    左はパレスチナ人のシハムです
  • 11:04 - 11:08
    彼女の弟は
    イスラエル人に撃たれ亡くなりました
  • 11:10 - 11:14
    右はイスラエル人のロビです
  • 11:14 - 11:18
    彼女の息子は
    パレスチナ人の弾丸に当たり亡くなりました
  • 11:20 - 11:23
    この2人の女性は
    勇気ある行動に出て
  • 11:23 - 11:27
    政治的分裂を超えた友情を育みました
  • 11:28 - 11:31
    2人は復讐の感情に
    身を任せることはなかったのです
  • 11:31 - 11:34
    その感情は暴力を
    繰り返させるだけに過ぎないからです
  • 11:34 - 11:39
    その代わり2人は共感し合うことで
  • 11:39 - 11:44
    お互いの愛する者を失った
    悲しみと痛みを分かち合ったのです
  • 11:47 - 11:53
    共感能力は争いの解決に最も重要な
    我々が生まれながらに持つ能力です
  • 11:54 - 11:57
    政治指導者たちが
  • 11:57 - 12:00
    自分たちの共感能力を使い
    —新鮮でしょうね—
  • 12:00 - 12:04
    我々も全員 その能力を
    使えばいいのです
  • 12:04 - 12:07
    シハムとロビが教えてくれたように
  • 12:07 - 12:10
    「共感し合い
    初めて争いは終わるのです」
  • 12:10 - 12:12
    ありがとうございます
  • 12:12 - 12:13
    (拍手)
Title:
損なわれる共感性 | サイモン・バロン=コーエン | TEDxHousesofParliament
Description:

知性のある人々が、なぜ他人に残虐なことができるのでしょうか。サイモン・バロン=コーエンは、その説明をするのに、ただ抽象的な「善」と「悪」という言葉で一括りにしてしまわず、人間の行動に対する共感の影響を、よく見つめるべきだと語ります。

このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
12:19

Japanese subtitles

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