脳が「意識された現実」という幻覚を作り出す仕組み
-
0:01 - 0:02ちょうど1年ほど前
-
0:03 - 0:05人生で3回目なんですが
私は存在しなくなりました -
0:05 - 0:10ちょっとした手術を受けて
脳に麻酔がすっかり効いていたんです -
0:11 - 0:14切り離されて バラバラになった感じで
-
0:14 - 0:16寒かったのを覚えています
-
0:16 - 0:18その後 元に戻りました
ぼんやりして 混乱していましたが -
0:18 - 0:20確かに そこにいました
-
0:20 - 0:22深い眠りから覚めた時
-
0:22 - 0:26時間が分からなかったり
寝坊したのではと不安になるかもしれません -
0:26 - 0:27でも時間が過ぎたという
-
0:27 - 0:30過去と現在の連続性の
基本的な感覚は 常にあるものです -
0:30 - 0:33麻酔から醒めるのは
全く別物です -
0:33 - 0:355分間だったかもしれないし
5時間かもしれない -
0:35 - 0:375年 いや50年かもしれない
-
0:37 - 0:38私は単に存在せず
-
0:38 - 0:40意識はすっかり消失しました
-
0:40 - 0:42麻酔とは 現代の魔法です
-
0:42 - 0:45人間を物体に変えてしまい
-
0:45 - 0:48それから また人間に戻すのです
願わくば -
0:48 - 0:49そしてこの過程には
-
0:49 - 0:52科学や哲学で未だ
大きな謎とされるものがあります -
0:52 - 0:54意識はいかにして生じるのか
-
0:54 - 0:561人1人の脳内では
-
0:56 - 1:00それぞれが小さな生物学的マシンである
神経細胞が何十億個もあって -
1:00 - 1:02結びついて活動しており
-
1:02 - 1:04それが どのようにしてか
意識経験を生成しています -
1:04 - 1:06単なる意識の経験でなく
-
1:06 - 1:09今 ここにおける
皆さんの意識の経験です -
1:09 - 1:10これはいかにして起きるのか
-
1:11 - 1:13この問いに答えるのは
非常に重要です -
1:13 - 1:16なぜなら 我々の意識が
在るもののすべてだからです -
1:16 - 1:18意識がなければ
世界は存在しません -
1:18 - 1:20自分も存在しません
-
1:20 - 1:21何も存在しないのです
-
1:21 - 1:23苦しいときには
苦しいと意識します -
1:23 - 1:26心の病であれ 痛みであれ
-
1:26 - 1:29そして私たちが喜びや苦しみを
経験できるのであれば -
1:29 - 1:31他の動物はどうなのでしょう
-
1:31 - 1:33動物にも意識があるのか
-
1:33 - 1:35自分という感覚もあるのか
-
1:35 - 1:38そしてコンピューターが
もっと速く 賢くなっていったら -
1:38 - 1:40もしかすると
そう遠くない将来 -
1:40 - 1:43私のiPhone も 自分の存在の感覚を
持つようになるのか -
1:43 - 1:48実のところ 意識を持つAIの可能性は
低いと 私は考えています -
1:48 - 1:50それというのも
私の研究が示すところでは -
1:50 - 1:53意識というのは
純粋な知能とよりも -
1:53 - 1:58生きて呼吸する 生命体としての性質との
関わりが深いものだからです -
1:58 - 2:00意識と知能は全く別物なんです
-
2:00 - 2:04苦しむのに賢さは必要ありませんが
生きている必要はあるでしょう -
2:05 - 2:07これからお話しするのは
-
2:07 - 2:11自分の身の周りの世界と
その中にいる自分という意識経験は -
2:11 - 2:14ある意味 制御された幻覚であり
それは生きた身体があってこそ -
2:14 - 2:18生きた身体を通じ
生きた身体が故に 生じるということです -
2:18 - 2:21さて 脳や身体が
どのように意識を生み出すのかは -
2:21 - 2:24全く分かっていないと
聞いたことがあるかもしれません -
2:24 - 2:27それは科学を超えたものだとさえ
言う人もいます -
2:27 - 2:28しかし実際には
-
2:28 - 2:33ここ25年で この領域に関する
科学的研究は爆発的に増えました -
2:33 - 2:36皆さんがサセックス大学の
私の研究室にお越しになったら -
2:36 - 2:39あらゆる分野の科学者や
-
2:39 - 2:42時には哲学者まで
目にすることでしょう -
2:42 - 2:46私たちが理解を試みているのは
意識が生じる仕組みと -
2:46 - 2:48それが上手くいかないと
どうなるかです -
2:48 - 2:50その方法は非常に単純です
-
2:50 - 2:52意識について考えるには
-
2:52 - 2:54生物についてと
同じ考え方をすればいいんです -
2:54 - 2:57かつては 「生きている」
ということの特質は -
2:57 - 3:00物理学や化学では
説明できないと考えられていました -
3:00 - 3:02生命は単なるメカニズム以上の
ものであるはずだと -
3:02 - 3:04でも今や そうは考えられていません
-
3:04 - 3:05生物学者が
-
3:05 - 3:09生命システムの特質を
物理学や化学の観点から説明する― -
3:09 - 3:11研究を進めました
-
3:11 - 3:14代謝や生殖機構
ホメオスタシスなどですね -
3:14 - 3:18生命とは何かという基本的な謎は
それに伴い 姿を消していき -
3:18 - 3:20「生命の力」や「生命の飛躍」みたいな
-
3:20 - 3:23魔術的な答えが提案されることは
なくなりました -
3:23 - 3:26生命についてと同じく
意識についてもそうすべきです -
3:26 - 3:27意識の性質を
-
3:27 - 3:32脳や身体の内部で起きていることから
説明しようとし始めれば -
3:32 - 3:35意識とは何かという
解明不能と思われた謎は -
3:35 - 3:37姿を消していくはずです
-
3:37 - 3:39少なくとも 青写真ではそうです
-
3:39 - 3:41では始めましょう
-
3:41 - 3:42意識の性質とは
どんなものでしょうか -
3:42 - 3:46意識に関する科学が説明すべきことは
何なのでしょうか -
3:46 - 3:49今日は意識について
2つの方法で考えたいと思います -
3:49 - 3:52私たちの周りの世界に関する
経験というものがあります -
3:52 - 3:55光や 音や においに満ちていて
-
3:55 - 3:59多様な感覚を伴う パノラマ的で3Dの
完全に没入的な 心の中の映画があり -
3:59 - 4:01そして意識を持った自己があります
-
4:01 - 4:04「自分である」という独自の経験です
-
4:04 - 4:06それが この心の中の映画の
主人公であり -
4:06 - 4:10おそらく意識のその側面に
みんな最も強くしがみついているのです -
4:10 - 4:12まずは身の周りの世界
という経験と -
4:12 - 4:16予測エンジンとしての脳という
重要な考えについて考えてみましょう -
4:16 - 4:18脳の身になって
想像してください -
4:18 - 4:20固い頭蓋骨に
閉じ込められ -
4:20 - 4:23外の世界で何が起きているのか
理解しようとしています -
4:23 - 4:26頭蓋骨の中には 光はありません
音もありません -
4:26 - 4:29唯一利用できる電気的インパルスに
頼らざるを得ないのですが -
4:29 - 4:31これは何であれ
世界の事物とは -
4:31 - 4:33間接的に関わっているに
すぎません -
4:33 - 4:36ですから何がそこにあるかを
知るという「知覚」は -
4:36 - 4:39情報に基づく推測の過程に
ならざるを得ません -
4:39 - 4:41そこでは脳は
これらの感覚的な信号を -
4:41 - 4:46世界がどんなものかについての
事前の期待や信念と結びつけて -
4:46 - 4:49何がその信号を起こしたのか
最善の推測を構成します -
4:49 - 4:52脳が音を聞いたり光を見たり
している訳ではありません -
4:52 - 4:56私たちが知覚するのは
世界で起きていることに関する最善の推測です -
4:57 - 5:00ここまでお話ししたことの例を
いくつか挙げましょう -
5:00 - 5:02この目の錯覚は
ご存じかもしれませんが -
5:02 - 5:05新たな方向から
考えて頂きたいと思います -
5:05 - 5:07AとBの2つの区画を
見ていただくと -
5:07 - 5:10灰色の濃さが非常に異なって
見えるはずです -
5:11 - 5:14でも実際は全く同じ濃さなんです
-
5:14 - 5:16それを示すことができます
-
5:16 - 5:18第2バージョンの絵では
-
5:18 - 5:202つの区画を
灰色のバーで繋いでいて -
5:20 - 5:22全く違いがなく見えますね
-
5:22 - 5:24灰色の濃さは全く同じなんです
-
5:24 - 5:26もしまだ信じられないなら
-
5:26 - 5:29バーをずらして
区画に重ねてみましょう -
5:29 - 5:33一色の灰色の塊になり
違いは全くありません -
5:33 - 5:34これは手品でも何でもなく
-
5:34 - 5:36灰色の濃さは同じです
-
5:36 - 5:39でも バーを取りのけると
また違って見えるようになります -
5:39 - 5:41何が起きているのかというと
-
5:41 - 5:43脳は事前の期待を
用いているのです -
5:43 - 5:47それは視覚野の回路の中に
深く構築されており -
5:47 - 5:50「影がかかると 物の表面は
より暗く見える」ということです -
5:50 - 5:53それでBが実際より
明るく見えるんです -
5:54 - 5:55もう1つの例があります
-
5:55 - 5:58脳がいかに素早く
新しい予測を使って -
5:58 - 6:01意識経験を変化させられるかを
示すものです -
6:01 - 6:03これをお聴きください
-
6:03 - 6:06(ゆがんだ音声)
-
6:07 - 6:09なんか奇妙に聞こえますよね
-
6:09 - 6:12何か分かるか
もう一度聴いてみましょう -
6:12 - 6:15(ゆがんだ音声)
-
6:16 - 6:17やっぱり変ですよね
-
6:17 - 6:19ではこれをお聴きください
-
6:19 - 6:22(音声) I think Brexit is a really terrible idea.
(ブレグジットは全くひどい考えだなあ) -
6:22 - 6:23(笑)
-
6:23 - 6:25ほんとにそう思います
-
6:25 - 6:26言っていることが
聞き取れましたね -
6:26 - 6:30では最初の音声をもう一度聴いてください
同じものを再生します -
6:30 - 6:33(ゆがんだ音声)I think Brexit is a really terrible idea.
-
6:33 - 6:35今回は言葉が聞き取れたでしょう
-
6:35 - 6:37おまけで もう1回
-
6:37 - 6:40(ゆがんだ音声)
-
6:41 - 6:43ではここで
何が起きているのでしょう -
6:43 - 6:45注目すべきことは
-
6:45 - 6:49脳に届く感覚情報は
全く変わっていないことです -
6:49 - 6:50ここで変わったのは
-
6:50 - 6:53感覚情報の原因に対する
皆さんの脳の 最善の推測だけです -
6:53 - 6:56その推測が 意識して聞く内容を
変えるのです -
6:56 - 6:59このことは 知覚に関する
脳の基礎を考える上で -
6:59 - 7:01少し違った観点を
与えてくれます -
7:01 - 7:03知覚というのは
-
7:03 - 7:07外の世界から脳に入ってくる
信号に頼るだけでなく -
7:07 - 7:09それに勝るとも劣らず
-
7:09 - 7:14反対向きの知覚的な予測にも
依存しているのです -
7:14 - 7:16私たちは単に受動的に
世界を知覚するのではなく -
7:16 - 7:18能動的に世界を生成しています
-
7:18 - 7:20私たちが経験している世界は
-
7:20 - 7:22外側から来るだけでなく
-
7:22 - 7:24それに勝るとも劣らず
内側からも作られる訳です -
7:24 - 7:26例をもう1つ紹介しましょう
-
7:26 - 7:29この能動的な 構築の過程としての
知覚の例です -
7:29 - 7:35ここでは没入型バーチャル・リアリティと
画像処理を組み合わせて -
7:35 - 7:38過剰に強い知覚的予測が
経験に及ぼす効果を -
7:38 - 7:39シミュレーションしました
-
7:39 - 7:42このパノラマ映像では
世界が変容しています -
7:42 - 7:44この場合はサセックス大学構内を
-
7:44 - 7:46サイケデリックな遊び場に変えました
-
7:46 - 7:49Google の Deep Dream に基づく
アルゴリズムを用いて素材を処理し -
7:49 - 7:54過剰に強い知覚的予測の効果を
シミュレートしました -
7:54 - 7:55今回は 犬が見えるようにしました
-
7:55 - 7:57これは非常に奇妙に見えるでしょう
-
7:57 - 8:01こんなふうに
知覚的予測が強すぎると -
8:01 - 8:05薬物の影響下の人が報告する
幻覚のように見えます -
8:05 - 8:08精神病の状態にも
似ているかもしれません -
8:09 - 8:11これを少し考えてみましょう
-
8:11 - 8:16もし幻覚が ある種
制御を外れた知覚だとしたら -
8:16 - 8:20今ここにおける知覚もまた
一種の幻覚であり -
8:20 - 8:23ただ こちらの方は
制御が効いていて -
8:23 - 8:25脳の予測は
-
8:25 - 8:28外からの感覚情報に
従っています -
8:28 - 8:31実際には 私たちは皆
ずっと幻覚を見続けているんです -
8:31 - 8:33今ここでもです
-
8:33 - 8:35幻覚について
一同が合意している時 -
8:35 - 8:37それを「現実」と呼ぶんです
-
8:37 - 8:41(笑)
-
8:41 - 8:44次にお話しするのは
皆さんの「自己」という経験― -
8:44 - 8:47つまり 自分であるという
独自の経験も -
8:47 - 8:50脳によって生成された
制御された幻覚だということです -
8:50 - 8:52すごく奇妙な考えに思えるでしょう
-
8:52 - 8:54錯覚に目は欺かれるとしても
-
8:54 - 8:58「私である」という感覚が
欺かれるはずないと -
8:58 - 8:59私たちの大半にとって
-
8:59 - 9:011人の人間だという経験は
-
9:01 - 9:03とても馴染み深く ひとまとまりのもので
連続性もあるため -
9:03 - 9:05それが当然ではないと考えるのは
難しいものです -
9:05 - 9:07でも当然だと
受け取るべきではありません -
9:07 - 9:10実際 自分であるという経験には
様々な面があります -
9:10 - 9:14自分には身体があり その身体が自分である
という経験があります -
9:14 - 9:18世界を自分が知覚している
という経験があります -
9:18 - 9:21何かをしようとしている
という経験や -
9:21 - 9:24世界で起きることの原因になっている
という経験があります -
9:24 - 9:29時間を通じて 連続性のある
1人の人間であるという経験もあって -
9:29 - 9:32それは記憶や 人との関わりの
豊かな組み合わせから成っています -
9:32 - 9:34多くの実験が示しており
-
9:34 - 9:36精神科医や神経科学者なら
とても良く知っていることですが -
9:36 - 9:39このような様々な形の
自分であるという経験は -
9:39 - 9:41破綻してしまうこともあります
-
9:41 - 9:44つまり統一体としての自分である
ということの基本的な背景となる経験は -
9:44 - 9:48脳による 結構もろい構築物であり
-
9:48 - 9:50他のものと同じように
-
9:50 - 9:53説明を要する経験なのです
-
9:53 - 9:55身体的な自分の話に戻りましょう
-
9:55 - 9:57その身体が自分であるとか
自分には身体があるという経験を -
9:57 - 9:59脳はどうやって生成するのか
-
9:59 - 10:00全く同じ原理が適用されます
-
10:00 - 10:02脳は 何が自分の身体の一部で
-
10:02 - 10:05何がそうでないのか
最善の推測を行うのです -
10:05 - 10:09神経科学には これを例証する
素晴らしい実験があります -
10:09 - 10:11大半の神経科学的な実験と違って
-
10:11 - 10:12これは家でもできます
-
10:12 - 10:14必要なのはこのゴムの手だけ
-
10:14 - 10:15(笑)
-
10:15 - 10:18あとは絵筆2本です
-
10:19 - 10:20この「ゴムの手の錯覚」では
-
10:20 - 10:22本物の手は
見えないよう隠されていて -
10:22 - 10:25偽のゴム製の手が 参加者の
目の前に置かれています -
10:25 - 10:28そして本物と偽物の手が
同時に絵筆で撫でられる間 -
10:28 - 10:31その人は偽の手を見つめています
-
10:31 - 10:33すると 大抵の人は
しばらくすると -
10:33 - 10:35非常に奇妙な感覚を覚えます
-
10:35 - 10:39偽物の手を自分の身体の一部だと
感じるようになるのです -
10:40 - 10:44つまり 概ね手があるはずの場所にある
手に似た物体が撫でられるのを見て -
10:44 - 10:48それが撫でられる感覚と
一致しているなら -
10:48 - 10:51その偽物の手は
自分の身体の一部だという風に -
10:51 - 10:54脳が最善の推測を行うための
証拠としては 十分なのです -
10:54 - 10:57(突然 偽の手が突き刺される — 笑)
-
11:03 - 11:06巧妙な測定法はいろいろあるでしょう
-
11:06 - 11:09皮膚伝導反応や驚愕反応を
測ることもできます -
11:09 - 11:10でもそんな必要はありません
-
11:10 - 11:13青シャツの青年は明らかに
偽物の手を自分の手のように感じていました -
11:13 - 11:16つまり何が自分の身体か
という経験すら -
11:16 - 11:18一種の 最善の推測に過ぎず
-
11:18 - 11:21脳による 一種の
制御された幻覚なんです -
11:21 - 11:23もう1つあります
-
11:24 - 11:28私たちは自分の身体を 外界の中にある
物体としてだけ経験する訳ではありません -
11:28 - 11:30身体の経験は内部からも生じます
-
11:30 - 11:34その身体が自分であるという感覚を
私たちは皆 内側から経験しています -
11:35 - 11:38そして身体の内部から来る感覚信号は
-
11:38 - 11:42脳に内臓器官の状態を
継続的に伝えます -
11:42 - 11:44心臓の動きがどうか
血圧はどれ位かなど -
11:44 - 11:45多くの事柄をです
-
11:45 - 11:49この類の知覚は
「内受容」と呼ばれ -
11:49 - 11:50見逃されがちですが
-
11:50 - 11:52非常に重要なものです
-
11:52 - 11:55なぜなら身体内部状態の
知覚と調節によってこそ -
11:55 - 11:57私たちは生き続けられるのですから
-
11:57 - 12:00これは「ゴムの手の錯覚」の
別バージョンで -
12:00 - 12:01私たちの研究室でのものです
-
12:01 - 12:05ここで参加者は 自分の手の
仮想現実版を見ます -
12:05 - 12:07心拍に合った あるいは
外れたタイミングで -
12:07 - 12:09肌が赤みを帯びるように
なっています -
12:09 - 12:12心拍に同期して赤くなる時
-
12:12 - 12:15自分の身体の一部である
という感覚をより強く持ちます -
12:16 - 12:18ですから
自分には身体があるという経験は -
12:18 - 12:22内部からの身体の知覚に
深く根付いているんです -
12:24 - 12:26皆さんに注意を向けてほしいことが
最後にもう1つあります -
12:26 - 12:29内部から来る 身体の経験は
-
12:29 - 12:32身の周りの世界の経験と
大きく違うことです -
12:32 - 12:35周りを見回すと
世界には物体があふれているようです -
12:35 - 12:37テーブル、椅子、ゴムの手、
-
12:37 - 12:39皆さん しかも大勢
-
12:39 - 12:41私の身体さえも
世界の中にあります -
12:41 - 12:43自分の身体は外側の物体として
知覚することもできますが -
12:43 - 12:45内部からの身体の経験は
-
12:45 - 12:46それとは全く異なります
-
12:46 - 12:49別にこんな風に知覚はしません
「腎臓はここだな」とか -
12:49 - 12:50「肝臓はここ」とか
-
12:50 - 12:52それから脾臓は・・・
-
12:52 - 12:53どこか分かんないけど
-
12:53 - 12:55どっかにあるんでしょう
-
12:55 - 12:57私は自分の内部を
物体として知覚しません -
12:57 - 13:01何か問題がない限りは
意識もしません -
13:01 - 13:03これが重要なのだと思います
-
13:04 - 13:06身体内部の状態についての知覚は
-
13:06 - 13:08どこに何があるか知る
ということではなく -
13:08 - 13:10制御と調節に関するものです
-
13:10 - 13:12生理学的な変数を
-
13:12 - 13:16生存可能な狭い範囲内に
収めるということです -
13:17 - 13:20そこに何があるのかを理解しようと
脳が予測を用いる時 -
13:20 - 13:23私たちは物体を
感覚の原因として知覚します -
13:23 - 13:26脳が制御や調節のために
予測を用いる時は -
13:26 - 13:30私たちは制御が上手くいっているか
いないかを経験します -
13:30 - 13:33ですから自分であるという
私たちの最も基本的な経験― -
13:33 - 13:35肉体を持つ生命体である
という経験は -
13:35 - 13:39私たちを生かし続けている
生物学的機構に深く根ざしているのです -
13:41 - 13:43そしてこの考えに
すっかり従うならば -
13:43 - 13:47私たちの意識経験の全体が
どのようなものか見えてきます -
13:47 - 13:50全ては生きるという
基本的な衝動に由来する -
13:50 - 13:55予測に基づく知覚という
同じメカニズムに依存しているからです -
13:55 - 13:58私たちの世界や自分の経験は
生きた身体があってこそ -
13:58 - 14:01生きた身体を通じて
生きた身体が故に 生じるのです -
14:02 - 14:04少しずつ まとめをしていきましょう
-
14:05 - 14:06私たちが意識の上で
見ているものは -
14:06 - 14:09何があるかという
脳の最善の推測に依存しています -
14:09 - 14:11私たちが経験する世界は
外側からだけではなく -
14:11 - 14:13内側からも作られます
-
14:13 - 14:14「ゴムの手の錯覚」は
そのことが -
14:14 - 14:18何が自分の身体で 何がそうでないのかという
経験にも当てはまることを示しています -
14:18 - 14:22これらの自分に関係する事柄の予測は
身体内部の深いところから来る― -
14:22 - 14:24感覚信号に 強く依存しています
-
14:24 - 14:26そして最後に
-
14:26 - 14:29身体を持つという経験は
どこに何があるかよりも -
14:29 - 14:32制御や調節に関するものです
-
14:33 - 14:36ですから身の周りの世界の経験や
その中にいる自分自身の経験は -
14:36 - 14:38制御された幻覚のようなもので
-
14:38 - 14:41危険と機会に満ちた世界で
生き残るために -
14:41 - 14:44何百万年という進化の中で
形作られたものです -
14:44 - 14:48私たちは 予測によって
存在し続けられているのです -
14:49 - 14:52では最後に 3つのことを
示唆しておきたいと思います -
14:52 - 14:54その1 世界を誤って
知覚することがあるように -
14:54 - 14:56自分自身を
誤って知覚することもあります -
14:56 - 14:58予測のメカニズムが
うまく働かない時にです -
14:58 - 15:02これを理解することで 精神医学や神経科学に
多くの新しい可能性が開けます -
15:02 - 15:05抑うつや統合失調症などに対し
-
15:05 - 15:07症状に対処するだけではなく
-
15:07 - 15:10そのメカニズムに
たどりつけるかもしれません -
15:10 - 15:11その2
-
15:11 - 15:14「私である」ということは
ロボット内部のプログラムに -
15:14 - 15:17変換もできなければ
アップロードもできません -
15:17 - 15:19いくら賢く洗練された
ロボットでもです -
15:19 - 15:22私たちは生き物で
血も肉もあります -
15:22 - 15:25意識経験というのは 私たちを生かし続ける
生物学的メカニズムによって -
15:25 - 15:28あらゆる水準で形作られるものです
-
15:28 - 15:32コンピューターをただ賢くしても
感覚を持たせられる訳ではありません -
15:33 - 15:34その3
-
15:34 - 15:36私たち独自の
個人的な内的宇宙である -
15:36 - 15:38意識のありようは
-
15:38 - 15:41ほんの1つの形でしかありません
-
15:42 - 15:44そして人間が意識しているのも
-
15:44 - 15:48意識として考えうる領域のうち
ほんのわずかにすぎません -
15:48 - 15:511人1人の自己と世界は
その人に特有のものですが -
15:52 - 15:55誰の場合でも
生物学的メカニズムに基礎があり -
15:55 - 15:58そのことは多くの他の生物と
共通しています -
15:58 - 16:02さて これらは私たちがいかに
自分自身を理解するかを -
16:02 - 16:04根本的に変えるものですが
-
16:04 - 16:06これは喜ぶべきことだと思います
-
16:06 - 16:07科学ではよくあるように
-
16:07 - 16:10私たちは宇宙の中心にいる訳ではないとした
コペルニクスから -
16:10 - 16:13私たちは全ての生物と関係しているとした
ダーウィン -
16:13 - 16:16そして今日まで
それが続いているんですから -
16:16 - 16:19理解の感覚が強まれば
-
16:19 - 16:21不思議さに打たれる感覚も強くなり
-
16:22 - 16:24私たちは自然の構成要素であって
-
16:24 - 16:28切り離された存在ではないと
より強く認識するようにもなります -
16:29 - 16:30そして・・・
-
16:31 - 16:33意識の終わりが来ても
-
16:33 - 16:36恐れるべきことなんてー
-
16:36 - 16:38何もないのです
-
16:38 - 16:40ありがとうございました
-
16:40 - 16:48(拍手)
- Title:
- 脳が「意識された現実」という幻覚を作り出す仕組み
- Speaker:
- アニル・セス
- Description:
-
今まさに、あなたの脳内では何十億もの神経細胞が一緒に働いて意識経験を生成しています。ここで脳が生成しているのは、単に意識の経験というだけでなく、自分の身の周りの世界や、その中にいる自分自身という経験です。これはどのような仕組みで起きるのでしょうか?神経科学者のアニル・セスによると、私たちは皆、ずっと幻覚を見続けているのであり、一同が合意する幻覚が「現実」と呼ばれるのです。セスの楽しくも翻弄させられる話の輪に加わりましょう。自分の存在というものの本質に疑問を抱くことになるかもしれませんよ。
- Video Language:
- English
- Team:
closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 17:00
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Yasushi Aoki approved Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality | |
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Yasushi Aoki accepted Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality | |
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Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality | |
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Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality | |
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Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality | |
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Naoko Fujii edited Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality | |
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Naoko Fujii edited Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality | |
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Naoko Fujii edited Japanese subtitles for Your brain hallucinates your conscious reality |