Justice: What's The Right Thing To Do? Episode 01 "THE MORAL SIDE OF MURDER"
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0:24 - 0:27正しい殺人
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0:33 - 0:36これから「正義」の話をしよう
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0:37 - 0:40君は路面電車の運転手だとする
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0:40 - 0:44今 時速100キロで走っていると
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0:44 - 0:48前方に5人の労働者がいるのが見えた
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0:49 - 0:53止まろうとしたが ブレーキが利かない
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0:53 - 0:55君は絶望した
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0:56 - 1:01このままそこに突っ込めば 全員が死ぬ
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1:01 - 1:04これは確実なことだとしよう
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1:04 - 1:07君が諦めかけた その時
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1:08 - 1:12脇にそれる待避線があるのに気づく
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1:13 - 1:17そしてその先には1人の労働者がいる
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1:18 - 1:22望むなら ハンドルを回し
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1:22 - 1:27その待避線に入ることができる
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1:28 - 1:321人は殺すが 5人は助かる
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1:33 - 1:35最初の質問だ
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1:35 - 1:38正しい行いはどちらか?
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1:38 - 1:41君ならどうする? 挙手してほしい
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1:42 - 1:46待避線に曲がるという人は?
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1:51 - 1:55曲がらず 直進するという人は?
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1:57 - 2:00遠慮せずに手を挙げて
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2:04 - 2:07少ないね 大多数は曲がる
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2:08 - 2:11ではその理由を聞いてみよう
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2:11 - 2:14なぜそうするのが正しいと思うのか
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2:15 - 2:18待避線に曲がるという
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2:18 - 2:21多数派から始めよう
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2:21 - 2:25なぜそうするのか? その理由は?
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2:25 - 2:28誰か理由を説明してほしい
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2:31 - 2:341人殺せば済むところを
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2:34 - 2:375人も殺すのは正しくないからです
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2:39 - 2:421人殺せば済むところを
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2:42 - 2:445人も殺すのは正しくない?
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2:46 - 2:48良い理由だ
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2:52 - 2:57他には? みんなこの理由に賛成かな?
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3:01 - 3:059.11の時と同じだと思います
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3:05 - 3:09墜落した飛行機の乗客たちが英雄なのは
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3:09 - 3:12彼らが自らが死ぬことを選び
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3:12 - 3:15ビルの大勢の人を殺さなかったからです
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3:16 - 3:199.11での原理と同じだと言うんだね
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3:19 - 3:20悲劇的な状況だが
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3:21 - 3:255人が助かるなら1人を殺す方がいい
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3:25 - 3:28これが曲がるという人たちの理由かな?
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3:30 - 3:32では次は
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3:32 - 3:36曲がらないという少数派に聞こう
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3:40 - 3:44これは全体主義を正当化する論理です
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3:45 - 3:49そうやって他の人種を排除するんです
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3:50 - 3:53つまりこの場合 君はどうするのかな?
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3:53 - 3:57君は恐ろしい大虐殺を避けるために
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3:57 - 4:005人の方に突っ込んで彼らを殺す?
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4:03 - 4:05ええ そうです
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4:07 - 4:11他には? 今のは勇気ある答えだね
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4:13 - 4:17では路面電車の別の例を考えてみよう
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4:20 - 4:22そして見てみよう
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4:23 - 4:26君たちの多数派が
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4:27 - 4:305人が助かるなら1人死ぬ方が良い
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4:30 - 4:33という原理にこだわるかどうか
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4:33 - 4:37今度は君は運転手ではなく 傍観者だ
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4:37 - 4:41君は線路の上に架かる橋にいる
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4:42 - 4:45今 真下へと路面電車が来ていて
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4:45 - 4:48線路の先には5人の労働者がいる
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4:49 - 4:51ブレーキは掛かっていない
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4:51 - 4:55路面電車は5人に突っ込み 殺しそうだ
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4:55 - 5:00君が何もできないと諦めかけた その時
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5:00 - 5:03隣にいる
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5:06 - 5:09橋から身を乗り出した
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5:09 - 5:12とても太った男に気づく
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5:17 - 5:20君が彼を ちょいと押せば
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5:22 - 5:25彼は橋から線路の上に落ちる
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5:27 - 5:31ちょうど路面電車の前に
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5:32 - 5:35彼は死ぬだろうが 5人は助かる
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5:38 - 5:43男を橋から突き落とすという人は?
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5:47 - 5:53押さない人は? ほとんどが押さないね
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5:53 - 5:57質問だ さっきの原理はどうなったのか
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6:00 - 6:031人を犠牲にしても5人助ける方が良い
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6:03 - 6:07最初の例で多くの人が支持した原理だ
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6:09 - 6:13両方とも多数派だった人に聞きたい
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6:13 - 6:16二つの違いをどう説明する?
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6:18 - 6:21二つ目では多分 人を落とすという
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6:21 - 6:24能動的な選択をしています
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6:24 - 6:27多分 最初その人自身は
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6:27 - 6:30その状況とは関係なかったでしょうし
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6:31 - 6:33その選択が 多分
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6:36 - 6:39無関係の彼を関わらせることになります
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6:39 - 6:42多分 最初の例では
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6:42 - 6:46運転手と二組の労働者という三者が
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6:47 - 6:50この状況では多分 既にいた
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6:50 - 6:53でも待避線にいた人だって
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6:55 - 6:59自分が犠牲になることは選んでないよね
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7:01 - 7:05そうですが 彼は線路の上にいた
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7:05 - 7:07男は橋の上にいた
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7:10 - 7:12出直して来なさい
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7:13 - 7:17これは難しい質問だ 君はまだまだだね
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7:19 - 7:20誰か他に
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7:22 - 7:25二つの例での多数派の矛盾した選択を
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7:25 - 7:28うまく説明できる人はいないかな?
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7:30 - 7:34一つ目の例では 1人か 5人か
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7:34 - 7:37どちらかを選ばなければなりませんが
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7:38 - 7:40彼らが死ぬのは路面電車が原因であって
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7:41 - 7:44自分の直接の行為のせいではありません
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7:44 - 7:47しかも一瞬で決めなきゃいけない
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7:47 - 7:51でも自分がデブを押すのは殺人行為です
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7:52 - 7:54自分自身はコントロールできますが
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7:54 - 7:57路面電車はコントロールできません
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7:57 - 7:59状況が違うと思います
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8:00 - 8:03反論はあるかな? 今のは良い意見だね
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8:04 - 8:08誰か反論は? これが正しいのだろうか
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8:09 - 8:12それは完全に間違っていると思います
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8:12 - 8:15どちらも死ぬ人を選ぶことになるんです
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8:15 - 8:18曲がって人を轢くのも意図的な行為だし
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8:18 - 8:21デブを突き落とすのも意図的な行為です
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8:22 - 8:26だからどちらも選択をしているんです
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8:27 - 8:28反論する?
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8:29 - 8:33間違ってるのはあなたの方だと思います
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8:33 - 8:36実際に人を突き落として殺すのは別です
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8:36 - 8:39自分自身が実際に彼を殺しているんです
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8:39 - 8:42自分の手で彼を押しているからね
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8:42 - 8:47運転してたら人が死んだってのとは違う
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8:49 - 8:52良い言い方じゃないかもしれないけど
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8:55 - 8:57質問してもいいかな
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8:58 - 9:03橋の上で隣に男がいるのは同じだが
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9:04 - 9:08男は扉型の罠の上に立っていて
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9:08 - 9:11君がハンドルを回せば開くとしよう
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9:16 - 9:18君は回す?
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9:18 - 9:22それはもっと悪いことな気がします
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9:23 - 9:28手が滑っちゃった とかならいいけど
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9:29 - 9:33それか落ちるのが死刑囚とかなら
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9:33 - 9:36認められるかもしれませんが
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9:38 - 9:42結構 それでも間違いだと思うんだね?
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9:43 - 9:45最初の状況で回すのは問題ないが
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9:46 - 9:50最初の状況では自分は当事者ですが
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9:50 - 9:52二つ目では傍観者です
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9:52 - 9:55デブを押すか 関わらないか選べます
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9:55 - 10:00この話は一旦やめて 次にいこう
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10:01 - 10:05今度は君は 緊急治療室の医者だとする
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10:06 - 10:10今 君の所に6人の患者が運ばれてきた
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10:11 - 10:14ひどい路面電車事故に遭ったのだ
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10:18 - 10:215人は中程度のけが 1人は重傷だ
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10:21 - 10:26重傷の1人の治療には丸1日が必要で
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10:27 - 10:29そうした場合 5人は死ぬ
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10:29 - 10:325人を治療すれば5人とも助かるが
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10:33 - 10:36その場合は重傷の1人が死んでしまう
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10:36 - 10:385人を助けるという人は?
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10:40 - 10:421人を助けるという人は?
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10:44 - 10:47とても少ないね 一握りだ
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10:49 - 10:53同じ理由かな? 1人より5人?
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10:55 - 10:58では次は 別の医者の例を考えよう
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10:59 - 11:01今度は君は 移植医だ
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11:01 - 11:05君は5人の患者を抱えていて
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11:06 - 11:09助かるためには臓器移植が必要だ
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11:09 - 11:14それぞれ心臓 肺 腎臓 肝臓
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11:15 - 11:18そして膵臓を必要としている
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11:20 - 11:22ドナーは見つからなかった
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11:22 - 11:26彼らの死を見届けるしかないのか
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11:27 - 11:30君が諦めかけた その時
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11:30 - 11:351人の健康な男が健康診断にやってきた
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11:43 - 11:45ウケてるね
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11:46 - 11:48彼は今昼寝をしている
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11:53 - 11:56こっそり臓器を取り出せば
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11:56 - 11:59その男は死ぬだろうが
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12:00 - 12:035人を助けることができる
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12:03 - 12:05そうする という人は?
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12:07 - 12:08いない?
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12:10 - 12:13さあ遠慮せずに手を挙げて
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12:17 - 12:19バルコニーは?
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12:20 - 12:25いた? 気を付けて 身を乗り出すと…
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12:26 - 12:28そうしないという人
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12:30 - 12:34臓器を抜き取るという君 なぜだい
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12:35 - 12:39俺頭良いから思いついちゃったんだけど
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12:39 - 12:425人の中で最初に死んだ1人から
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12:42 - 12:46他の4人に臓器を分ければいいんじゃね
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12:49 - 12:51それはいいアイデアだ
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12:54 - 12:56そのアイデアは素晴らしい
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12:57 - 12:59しかし君は
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13:00 - 13:03哲学には向いてないようだ
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13:04 - 13:08たとえ話はこのくらいにしよう
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13:10 - 13:13これらの議論の展開の仕方から
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13:13 - 13:16いくつかのことが明らかになった
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13:17 - 13:21今私たちがした議論から既に
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13:21 - 13:25いくつかの道徳原理が現れている
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13:25 - 13:30その原理とはどんなものであるのか
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13:31 - 13:34議論から現れた一つ目の原理は
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13:35 - 13:38正しい行いや道徳的な行いは
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13:38 - 13:42その行為の帰結で決まる というものだ
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13:45 - 13:511人が死んでも 5人助かる方が良い
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13:51 - 13:57これが帰結主義的道徳論法の例だ
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13:58 - 14:03帰結主義者は行為の帰結に道徳性を置く
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14:03 - 14:07行為の結果生じる世界の状態に置くのだ
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14:08 - 14:12しかしもう一歩進み 別の例を考えると
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14:12 - 14:15多くの人は信頼しなかった
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14:16 - 14:19帰結主義的道徳論法を
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14:20 - 14:22多くの人がためらった
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14:22 - 14:25男を橋から突き落としたり
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14:25 - 14:29無実の人から臓器を抜き取るのを
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14:29 - 14:31ためらった理由は
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14:33 - 14:36行為それ自体の
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14:36 - 14:39質と関係があるようだ
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14:39 - 14:42帰結とは関係なく
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14:42 - 14:44多くの人が間違いだと考えた
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14:44 - 14:48それは無条件に間違っている
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14:49 - 14:525人を助けるためであっても
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14:53 - 14:56無実の人を殺すのは
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14:56 - 15:00先程の話のそれぞれ二つ目の型で
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15:00 - 15:03少なくともそう考えたのだ
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15:03 - 15:05これは二つ目の
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15:07 - 15:10道徳について考える上での
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15:12 - 15:15定言的な方法を示している
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15:15 - 15:19この定言的道徳論法では 道徳性を
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15:19 - 15:23ある種の絶対的な道徳的要請に置き
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15:23 - 15:26帰結を考慮することはない
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15:27 - 15:30これからの講義で見ていくのは
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15:30 - 15:33帰結主義的道徳原理と
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15:33 - 15:36定言的道徳原理の対比だ
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15:36 - 15:41帰結主義的道徳論法で最も強力なのは
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15:41 - 15:45功利主義だ 発明したのは18世紀
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15:45 - 15:49イギリスの哲学者ジェレミー・ベンサム
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15:51 - 15:56定言的道徳論法で最も重要な哲学者は
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15:56 - 16:0218世紀ドイツのイマヌエル・カントだ
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16:02 - 16:06これら二つの道徳論法の違いを見て
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16:07 - 16:10評価し そして他の論法も見ていく
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16:10 - 16:15この講義では数多くの名著を読んでいく
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16:15 - 16:19アリストテレス ジョン・ロック
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16:19 - 16:22イマヌエル・カント ミルらの著作だ
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16:23 - 16:27本を読むだけでなく
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16:28 - 16:32哲学的問題を提起する現代の問題や
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16:32 - 16:36政治的 法律的な論争も取り上げる
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16:36 - 16:39平等と不平等
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16:39 - 16:43格差是正措置 言論の自由
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16:43 - 16:46同性結婚 徴兵制など
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16:46 - 16:50現実的な問題を取り上げる なぜか?
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16:50 - 16:55過去の抽象的著作を蘇らせるだけでなく
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16:55 - 16:59私たちの日常生活や政治的生活において
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16:59 - 17:02何が哲学的に問題となるのか
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17:02 - 17:04明らかにするためだ
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17:05 - 17:08そして本を読み 問題を議論し
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17:09 - 17:14それらが互いにどう作用するか見ていく
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17:15 - 17:17楽しそうに聞こえるかもしれないが
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17:17 - 17:21ここで一つ警告しなければならない
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17:22 - 17:24警告とはこうだ
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17:25 - 17:27自己認識を鍛えるものとして
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17:31 - 17:34これらの本を読むことは
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17:34 - 17:37ある種のリスクを伴う
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17:38 - 17:41個人的 政治的なリスクがある
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17:41 - 17:46政治哲学を学ぶ者なら知っているだろう
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17:47 - 17:50これらのリスクが生じるのは
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17:50 - 17:53哲学が 私たちを
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17:54 - 17:57既に知っていることに直面させることで
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17:57 - 18:00私たちを教え 動揺させる学問だからだ
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18:01 - 18:02ここに皮肉がある
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18:03 - 18:05この講義の難しさは 君たちが
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18:06 - 18:09既に知っていることを教えることにある
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18:09 - 18:12それは慣れ親しんでいたものを
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18:12 - 18:15見知らぬものに変えてしまう
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18:20 - 18:24私たちが始めた 仮定の話がそうだ
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18:24 - 18:28遊び心と真面目さを交えた良い話だった
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18:28 - 18:31哲学の本もそうだ
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18:31 - 18:36哲学は私たちを親しいものから引き離す
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18:37 - 18:40新しい事を教えることによってではなく
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18:40 - 18:43新しい物の見方を
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18:43 - 18:45喚起することによって
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18:47 - 18:49しかし ここにはリスクがある
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18:49 - 18:53一度親しいものが不慣れなものになると
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18:54 - 18:57それは二度と同じものにはならない
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18:57 - 19:01自己認識とは純真さを失うようなものだ
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19:02 - 19:05不安に思うだろうが いつかわかる
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19:06 - 19:10哲学することからは逃がれられないのだ
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19:13 - 19:15この取り組みを難しく
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19:17 - 19:19しかし面白くしているのは
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19:20 - 19:24政治哲学は物語であるという事実だ
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19:25 - 19:28物語がどうなるのかはわからないが
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19:29 - 19:32これは君自身についての物語である
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19:34 - 19:36これが個人的なリスク
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19:37 - 19:39では政治的なリスクとは何か
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19:40 - 19:43君たちにこう約束することもできる
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19:44 - 19:47本を読み 問題を議論することで
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19:47 - 19:51責任感のある より良い市民になれると
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19:51 - 19:54君たちは公共政策の前提を検討し
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19:54 - 19:57自らの政治的判断に磨きをかけ
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19:57 - 20:01公的事項に効果的に参加できるだろう
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20:02 - 20:06しかしこれは誤解を招くような約束だ
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20:06 - 20:10政治哲学はそのように働いてこなかった
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20:11 - 20:14政治哲学は人を悪い市民するという
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20:14 - 20:18可能性を知っておく必要がある
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20:18 - 20:21たとえ良い市民になるとしても
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20:21 - 20:25その前に一度 悪い市民になる可能性だ
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20:27 - 20:32なぜなら哲学は 人を社会から遠ざけ
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20:32 - 20:35衰弱させるような活動だからだ
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20:36 - 20:39ソクラテスの時代もそうだった
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20:39 - 20:42「ゴルギアス」というの著作の中で
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20:42 - 20:45ソクラテスの友人カリクレスは
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20:45 - 20:49ソクラテスに哲学をやめさせようとする
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20:49 - 20:51カリクレスはこう言った
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20:51 - 20:54人生の適切な時期に適度に遊ぶなら
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20:55 - 20:57哲学は楽しいおもちゃだ
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20:57 - 21:02しかし節度を超えて追求すれば破滅する
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21:03 - 21:05私の忠告を聞け
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21:06 - 21:10議論を捨て 行動的人生の成果に学べ
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21:11 - 21:15下らぬ屁理屈に時間を費やす人でなく
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21:16 - 21:21多くの実りと共に暮らす人を手本にせよ
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21:22 - 21:25つまりカリクレスはこう言っているのだ
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21:26 - 21:29哲学なんてやめて 現実を見ろ
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21:30 - 21:32ビジネススクールに通え
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21:35 - 21:38カリクレスの言うことももっともだ
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21:38 - 21:42哲学は常識や約束事や信条から
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21:42 - 21:46私たちを引き離す活動だからだ
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21:46 - 21:49これは個人的 政治的にリスクである
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21:49 - 21:53このリスクに直面した時特有の言い訳
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21:54 - 21:56その言い訳の名は 懐疑主義だ
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21:56 - 21:58それはこういう考えだ
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21:58 - 22:02私たちは様々な事例や原理を議論したが
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22:03 - 22:06何も解決できていない
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22:09 - 22:13アリストテレスやロックやカントでさえ
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22:13 - 22:16長年かけても答えを出せていないのなら
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22:17 - 22:19誰がそう思えるのか
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22:19 - 22:24この講義で何かが解決できると
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22:26 - 22:28だからおそらくは各自が
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22:29 - 22:32自分なりの原理を持っていれば良く
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22:32 - 22:35それ以上はない 論じても無駄だ
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22:36 - 22:38これが懐疑主義の言い訳だ
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22:39 - 22:42これに対し 私はこう答えよう
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22:42 - 22:47確かに 議論は長年に渡り続いてきた
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22:47 - 22:51だがまさにその事実が示しているのは
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22:54 - 22:59不可能だが 不可避でもあるということだ
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22:59 - 23:03そしてそれが不可避である理由は
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23:04 - 23:08私たちがそれに答え 生きているからだ
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23:09 - 23:14だから道徳の熟考を諦めることは
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23:15 - 23:17解決にはならない
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23:18 - 23:22カントは懐疑主義についてこう書いた
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23:22 - 23:25懐疑主義は理性の休憩所である
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23:26 - 23:29そこは独善的な彷徨いを熟慮できる所だ
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23:29 - 23:32しかし永久に留まる場所ではない
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23:32 - 23:35単に懐疑主義を受け入れたとしても
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23:35 - 23:40理性の不安は決して克服できない
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23:42 - 23:46私は対話や議論を通じて
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23:46 - 23:50ある種の可能性を示そうと思う
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23:50 - 23:53最後にこう述べて終わろう
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23:55 - 23:57この講義の目的は
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23:58 - 24:01理性の不安を目覚めさせ
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24:02 - 24:05それがどこへ導くかを見ることである
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24:44 - 24:48前回の講義はいくつかの話で始まった
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24:48 - 24:50道徳的ジレンマの話だ
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24:50 - 24:54路面電車や医者
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24:54 - 24:57臓器移植の犠牲にされそうな
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24:57 - 25:00健康な男の話だった
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25:00 - 25:03そしてその議論から
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25:03 - 25:06二つのことがわかった
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25:06 - 25:09一つは議論の進み方と関係している
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25:09 - 25:13私たちはまず個別の事例に判断を下し
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25:13 - 25:16次に その判断の背後にある
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25:18 - 25:21理由や原理を明らかにしようとした
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25:22 - 25:25そして新たな事例に直面したとき
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25:25 - 25:28私たちはそれらの原理を再検討し
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25:30 - 25:33他と照らして修正した
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25:33 - 25:37そして 個別の事例での判断や
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25:38 - 25:41私たちが熟考して支持した原理を
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25:41 - 25:45一致させようとする圧力に気づいた
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25:46 - 25:50また 討論から浮かび上がってきた
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25:50 - 25:53議論の趣旨にも気がついた
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25:55 - 25:59時に 私たちは行為の道徳性を
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25:59 - 26:01帰結や結果や
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26:02 - 26:05もたらされる世界の状態に求めた
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26:06 - 26:10これを帰結主義者の道徳論法と呼んだ
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26:11 - 26:15しかしいくつかの事例では
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26:16 - 26:20私たちは単に結果には影響されなかった
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26:21 - 26:24時に 私たちの多くは
-
26:25 - 26:27帰結だけではなく
-
26:27 - 26:30行為の本質や性格も
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26:31 - 26:33道徳的に重要だと感じた
-
26:35 - 26:40無条件に間違いだ と言った人もいた
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26:40 - 26:44たとえ良い結果をもたらすのでも
-
26:44 - 26:49たとえ1人を犠牲に5人を助けるのでも
-
26:49 - 26:53そうして帰結主義的道徳原理と
-
26:54 - 26:57定言的道徳原理を比べた
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26:57 - 27:00今日とこれからの何回か
-
27:00 - 27:04帰結主義的道徳理論でも
-
27:05 - 27:09最も影響力のあるものを検討する
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27:10 - 27:14それは「功利主義」だ
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27:15 - 27:17ジェレミー・ベンサムは
-
27:17 - 27:2118世紀イギリスの政治哲学者で
-
27:21 - 27:25功利主義的な道徳理論に
-
27:26 - 27:29最初に明快で系統だった説明を与えた
-
27:31 - 27:34ベンサムの考え
-
27:36 - 27:40彼の基本的な考えはとても単純だ
-
27:42 - 27:47そして直感に訴える力がある
-
27:48 - 27:50ベンサムの考えとはこうだ
-
27:51 - 27:53正しい行いとは
-
27:54 - 27:56正しい行いとは
-
27:57 - 28:01効用を最大化することである
-
28:02 - 28:04効用とは何か?
-
28:06 - 28:08効用とはバランスのことだ
-
28:11 - 28:15苦痛より快楽 苦難より幸福
-
28:16 - 28:21彼は次のようにしてその原理に到達した
-
28:22 - 28:26彼はまず 人間観察から始めた
-
28:26 - 28:30人間は二人の主人に支配されている
-
28:31 - 28:33苦痛と快楽だ
-
28:34 - 28:36私たち人間は
-
28:36 - 28:40快楽を好み 苦痛を嫌う
-
28:42 - 28:45だから道徳性の基礎はそこに置くべきだ
-
28:45 - 28:48人生で何をするか考えるとき
-
28:50 - 28:54法律がどうあるべきか考えるときに
-
28:56 - 29:00正しい行いとは 個人的にも全体的にも
-
29:01 - 29:05全体の幸福を最大化するように
-
29:05 - 29:08行動することである
-
29:11 - 29:15彼の功利主義は次の標語に集約される
-
29:15 - 29:18"最大多数の最大幸福"だ
-
29:18 - 29:22この効用の基本原理を念頭に置きつつ
-
29:22 - 29:26ある話について考えてみることで
-
29:26 - 29:28これを検討していこう
-
29:28 - 29:33今回は仮定の話ではない 本当の話だ
-
29:34 - 29:37二人の船乗りに対する裁判となった
-
29:38 - 29:4119世紀イギリスのこの事件は
-
29:41 - 29:46ロースクールでもよく議論される
-
29:47 - 29:49どんな事件だったのか
-
29:49 - 29:53要約して話すので
-
29:54 - 29:59陪審員になったつもりで聞いてほしい
-
30:03 - 30:07当時の新聞に事件の背景が書かれている
-
30:08 - 30:11悲劇的な海難事故は
-
30:11 - 30:15生存者ほどに語られることはなかった
-
30:16 - 30:21船は喜望峰から2000キロの地点で沈んだ
-
30:21 - 30:23乗組員は4人
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30:23 - 30:25船長のダドリー
-
30:25 - 30:27航海士のスティーブンズ
-
30:28 - 30:29船員のブルックス
-
30:30 - 30:34全員人格者だった と新聞は伝えている
-
30:35 - 30:384人目の乗組員は雑用係の
-
30:38 - 30:41リチャード・パーカー 17才
-
30:42 - 30:46彼は孤児で 家族はおらず
-
30:46 - 30:50長い航海はこれが初めてであった
-
30:51 - 30:56新聞によると 彼は友人の忠告を無視し
-
30:56 - 30:59若者らしい希望を持って船に乗った
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30:59 - 31:02この旅が自分を漢にしてくれる と
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31:02 - 31:04残念だがそうはならなかった
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31:07 - 31:11強い波が打ち付け 船は沈没した
-
31:11 - 31:144人の乗組員は救命ボートで避難した
-
31:14 - 31:17彼らが持っていた唯一の食糧は
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31:18 - 31:21カブの缶詰が二つだけ
-
31:21 - 31:23水はなかった
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31:23 - 31:26最初の3日間は何も食べず
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31:26 - 31:314日目にカブの缶を一つ開けて食べた
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31:31 - 31:33次の日 彼らは亀を捕まえた
-
31:34 - 31:37カブの缶詰一個と亀で
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31:38 - 31:40数日間何とか凌いだが
-
31:40 - 31:45その後8日間 彼らは何も食べなかった
-
31:46 - 31:51その状況にいたら君ならどうする?
-
31:52 - 31:54彼らはこうした
-
31:55 - 31:59パーカーはボートの隅に横たわっていた
-
32:00 - 32:05他の者の忠告を無視し 海水を飲んだのだ
-
32:05 - 32:09具合を悪くし 死にそうになっていた
-
32:10 - 32:14遭難19日目 船長のダドリーは
-
32:14 - 32:18皆でくじ引きをしようと提案した
-
32:18 - 32:22他の者のために 誰が死ぬか決めようと
-
32:23 - 32:26ブルックスは断った
-
32:26 - 32:28彼はくじ引きを嫌がった
-
32:29 - 32:33彼がなぜくじを拒否したかはわからない
-
32:33 - 32:36定言的に間違いだと思ったのか
-
32:36 - 32:40いずれにせよくじ引きは行われなかった
-
32:42 - 32:44翌日 助けの船はまだ現れなかったため
-
32:45 - 32:47船長はブルックスに見ないように言い
-
32:48 - 32:53スティーブンズに少年を殺すと合図した
-
32:53 - 32:58船長は祈り 食事の時間が来たと告げ
-
32:58 - 33:02ナイフでパーカーの首を刺した
-
33:03 - 33:06ブルックスも良心の呵責を克服し
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33:06 - 33:09身の毛もよだつ恵みを共有した
-
33:09 - 33:14それから4日間 彼らは少年の肉を食べた
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33:15 - 33:16本当の話だ
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33:17 - 33:18そして救助が来た
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33:19 - 33:21ダドリーは救助された時のことを
-
33:22 - 33:26驚くべき婉曲表現で日記に書いている
-
33:27 - 33:32"24日目 皆で朝食を取っていると"
-
33:34 - 33:37"ついに船が現れた"
-
33:38 - 33:423人の生存者はドイツの船に拾われ
-
33:42 - 33:46イギリスに戻ると逮捕され 裁判になった
-
33:46 - 33:49ブルックスは国側の証人となり
-
33:49 - 33:51ダドリーとスティーブンズは訴えられた
-
33:52 - 33:54彼らは事実については争わず
-
33:56 - 33:59必要に迫られた行為だったと主張した
-
33:59 - 34:01実質的にはこういう主張だ
-
34:01 - 34:053人が生き残れるなら1人死ぬ方が良い
-
34:06 - 34:10検察官はその議論には触れなかった
-
34:10 - 34:13彼は殺人は殺人だと言い 判決となった
-
34:13 - 34:15さあ君たちは陪審員だと思ってほしい
-
34:16 - 34:18議論を単純にするために
-
34:19 - 34:21法律的な問題は脇に置いて
-
34:21 - 34:24君たちは陪審員として
-
34:25 - 34:29彼らの行為が道徳的に許されるか否かを
-
34:29 - 34:32判断しなければならないとしよう
-
34:34 - 34:37無罪にする
-
34:39 - 34:43道徳的に許される という人は?
-
34:49 - 34:53有罪の人は? 道徳的に間違いだと思う人
-
34:54 - 34:57かなり多いね
-
34:58 - 34:59ではその理由を聞こう
-
35:00 - 35:03少数派から始めたい
-
35:03 - 35:06まずはダドリーとスティーブンズを
-
35:07 - 35:09弁護する人から聞こう
-
35:09 - 35:13なぜ彼らは道徳的に無罪なのか?
-
35:18 - 35:20俺は道徳的には有罪だと思う
-
35:20 - 35:23でも道徳的に有罪だというのと
-
35:24 - 35:26法的に有罪だというのは違うし
-
35:26 - 35:31道徳的でも法に違反することはある
-
35:31 - 35:35必要性が違法行為を
-
35:36 - 35:38正当化するとは思わないけど
-
35:38 - 35:41必要性の度合いによっては
-
35:41 - 35:44有罪が免れることはあると思う
-
35:44 - 35:46そうか 他は?
-
35:46 - 35:49ちゃんと私の話を聞いていた人で
-
35:50 - 35:54彼らの行為が正当化できるという人
-
35:58 - 36:02ここはやるべきことをやるべきです
-
36:03 - 36:05やるべきことをやるべき?
-
36:05 - 36:06そうです
-
36:06 - 36:09食べ物なしで19日も過ごしたんです
-
36:10 - 36:14一人の犠牲で他の人が生き残れます
-
36:14 - 36:16で 彼らが生き残るだけじゃなく
-
36:17 - 36:20国に帰って社会の生産者になって
-
36:20 - 36:23慈善活動を始めるとか 色々
-
36:23 - 36:25そうなれば結局は全員の利益になります
-
36:25 - 36:28その後彼らがどうしたかは知りませんが
-
36:32 - 36:35もし彼らが暗殺者になったら?
-
36:35 - 36:38もし彼らが暗殺者になったら? んー?
-
36:38 - 36:42誰を暗殺したかが問題だ
-
36:42 - 36:45確かに そうですね
-
36:50 - 36:53私たちは実質一つの弁護を聞いた
-
36:53 - 36:56次は検察側から聞こう
-
36:57 - 37:01大多数が彼らの行為は間違いだと言う
-
37:01 - 37:02なぜ?
-
37:04 - 37:06私が最初に思ったのは
-
37:06 - 37:09長い間何も食べなければ
-
37:12 - 37:14精神への影響が大きいので
-
37:15 - 37:19それで弁護ができるということです
-
37:20 - 37:25彼らは正常な精神状態ではなかった と
-
37:25 - 37:28でももしそう主張するなら
-
37:28 - 37:32本当は彼らの行為は間違いだと
-
37:33 - 37:37思っていることになると思います
-
37:37 - 37:39どういうことかな
-
37:39 - 37:42弁護しているが 有罪派だよね?
-
37:42 - 37:46彼らの行為が正しいとは思いません
-
37:46 - 37:51それはなぜ? 君はマーカスに何て言う?
-
37:52 - 37:55話を聞いていたよね?
-
37:56 - 37:59やるべきことをやるべきだ
-
37:59 - 38:02マーカスに何と言う?
-
38:06 - 38:10それはわかりませんが
-
38:13 - 38:16他人の運命を決めたら大変です
-
38:17 - 38:20人にその権限はありません
-
38:20 - 38:22よろしい 君の名前は?
-
38:28 - 38:33おじさん二人が少年に同意を得ていれば
-
38:33 - 38:35死ぬことの
-
38:37 - 38:41それで殺人罪が免れるなら
-
38:42 - 38:44道徳的に正当化されますか?
-
38:45 - 38:49面白い 同意か 待って 君の名前は?
-
38:51 - 38:56もしそういう話だったらどうなるかな
-
38:56 - 38:59ダドリーがナイフを片手に
-
39:00 - 39:03祈る代わりに または祈る前に
-
39:04 - 39:08こう言う 「パーカー いいかな?」
-
39:11 - 39:13腹ペコなんだ
-
39:14 - 39:17マーカス流に言うと
-
39:17 - 39:19死ぬほど腹ペコだ
-
39:19 - 39:21どっちみち君は長くない
-
39:22 - 39:23殉教者になれるぞ
-
39:23 - 39:27殉教者になれるぞ どうかな? パーカー
-
39:29 - 39:30それなら
-
39:33 - 39:36それなら道徳的に正当化されるかな?
-
39:36 - 39:41パーカーが食べていいよと言ったら?
-
39:42 - 39:44私は正当化されるとは思いません
-
39:45 - 39:47それでも正当化されない?
-
39:47 - 39:52同意があっても正当化されないんだね
-
39:52 - 39:57今キャサリンが言った同意によって
-
39:57 - 39:59行為が正当化されると思う人は?
-
40:00 - 40:03すると思う人は手を挙げて
-
40:05 - 40:07これは興味深い
-
40:07 - 40:10なぜ同意が道徳的違いを生むんだろう?
-
40:15 - 40:20もし彼が自分から死ぬと言い出したなら
-
40:20 - 40:25それなら何の問題もないと思います
-
40:25 - 40:27状況的には
-
40:28 - 40:32プレッシャーがあったかもしれないので
-
40:32 - 40:37自分から進んで犠牲になったなら
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40:38 - 40:40私はカッコイイなって思います
-
40:41 - 40:44ただし イケメンに限るけど
-
40:45 - 40:48つまり彼自身がそう思い立てば
-
40:48 - 40:51それは道徳的に問題ないと言える
-
40:51 - 40:54唯一の種類の同意だと言うんだね
-
40:54 - 40:56そうでなければ
-
40:57 - 41:01状況の下で強制された同意になる
-
41:05 - 41:10たとえパーカーの同意があったとしても
-
41:10 - 41:14彼を殺すのは正しくないという人は?
-
41:15 - 41:19誰かそう思う人 君 理由を言ってくれ
-
41:19 - 41:22パーカーが殺されるのは
-
41:22 - 41:25他の人の助かる望みのためですが
-
41:26 - 41:29いつ助けが来るかはわからないのだから
-
41:30 - 41:33彼を殺すべき明確な理由はありません
-
41:34 - 41:38助けが来るまで殺し続けるんですか?
-
41:39 - 41:44この状況の論理ではそうなるね
-
41:45 - 41:491人ずつ弱い者から殺していく
-
41:50 - 41:53助けが来るまで この事件では幸運にも
-
41:53 - 41:563人がまだ生きているときに救助された
-
41:57 - 42:00それで パーカーが同意したなら
-
42:01 - 42:03君は問題ないと考えるのかな?
-
42:03 - 42:05いえ 間違ってます
-
42:06 - 42:08なぜ正しくないんだろう?
-
42:08 - 42:11食人は道徳的に間違っています
-
42:11 - 42:14人を食べるべきではありません
-
42:16 - 42:18食人は道徳的にダメか
-
42:19 - 42:21じゃあたとえ
-
42:22 - 42:25誰かが死ぬのを待つのでもダメだ
-
42:26 - 42:29はい 個人的にはそう感じます
-
42:29 - 42:32すべて個人の道徳観次第であって
-
42:33 - 42:35正解はありません
-
42:35 - 42:38これは私の意見だし 反対の人もいる
-
42:38 - 42:42じゃあ反対意見を見てみようか
-
42:42 - 42:46君が納得するほどの理由があるかどうか
-
42:50 - 42:54では誰か説明できる人はいないかな?
-
42:54 - 42:57同意があれば良いという人で
-
42:57 - 43:02なぜ同意が道徳的な違いを生むのか
-
43:03 - 43:06くじ引きは同意とみなせないだろうか
-
43:07 - 43:10最初 船長はくじ引きを提案した
-
43:10 - 43:15彼らがくじ引きに同意したとしよう
-
43:16 - 43:19それなら問題ない
-
43:20 - 43:21という人は?
-
43:21 - 43:25くじ引きをして 少年が負けた
-
43:26 - 43:29それなら道徳的に許されるという人
-
43:33 - 43:35くじ引きを加えたら人数が増えたね
-
43:35 - 43:38くじ引きが違いを生むという人に聞こう
-
43:41 - 43:42なぜ?
-
43:43 - 43:46これが犯罪となる決定的な要素は
-
43:46 - 43:49奴らがある時点で自分の命を
-
43:49 - 43:52小僧よりも重要だと考えたことにある
-
43:53 - 43:56どんな犯罪もそれが根本にある
-
43:57 - 44:01自分の欲望を他人より優先しているのだ
-
44:01 - 44:06だが奴らが死のくじ引きに同意したなら
-
44:06 - 44:10誰もが犠牲になる可能性がある
-
44:10 - 44:12その場合問題ない?
-
44:12 - 44:14グロテスクだが
-
44:15 - 44:17道徳的には許される?
-
44:22 - 44:24マ 君にとって
-
44:25 - 44:27問題は 人を食べることではなく
-
44:28 - 44:30手続きの不足?
-
44:31 - 44:33ま そうだな
-
44:34 - 44:37マに賛成の人で
-
44:38 - 44:40もう少し詳しく
-
44:40 - 44:45なぜくじ引きをすれば許されるのか
-
44:46 - 44:48説明できる人は?
-
44:50 - 44:52私から見て 問題だと思うのは
-
44:53 - 44:56少年が相談されなかったことです
-
44:56 - 44:59くじ引きにしても何が決まるのかとか
-
45:00 - 45:02それに参加するかどうかとか
-
45:03 - 45:05勝手に彼が死ぬことに決められたんです
-
45:05 - 45:07そうだ それが実際に起きたことだ
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45:08 - 45:11だがもし全員がくじ引きに同意したら?
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45:11 - 45:13それなら問題ない?
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45:13 - 45:16同意したなら問題はないでしょう
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45:17 - 45:20でも少年は何も知らされず
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45:20 - 45:25自分が死ぬという警告もなかった
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45:26 - 45:30では全員がくじ引きに同意したとして
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45:30 - 45:33少年が負けたが 彼の気が変わったら?
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45:34 - 45:38これは口頭の契約だから撤回は無理です
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45:38 - 45:41理由を理解した上で自分で決めたのです
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45:41 - 45:45自分が死ぬのは他の人が生きるためだと
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45:45 - 45:49他の人が死んだら自分だってその人を…
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45:51 - 45:55でもこう言うかも「くじは間違ってる」
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45:56 - 45:58道徳的問題のすべては
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45:58 - 46:02少年が相談されなかったことにあります
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46:02 - 46:06何も知らなかったことが恐ろしいんです
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46:06 - 46:12彼が知らされていたら理解できますけど
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46:12 - 46:14よろしい では聞きたい
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46:14 - 46:18彼らの行為が許されると思う人もいるが
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46:18 - 46:20たったの20%だ
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46:23 - 46:25マーカスを筆頭に
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46:26 - 46:31真の問題は同意の欠如だと言う人もいた
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46:32 - 46:36くじ引きや公正な手続きの欠如や
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46:38 - 46:42キャサリンが言った 死への同意の欠如だ
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46:44 - 46:48そして同意があったと仮定した場合
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46:48 - 46:53犠牲が正当化されると考える人は増えた
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46:54 - 46:58最後に こう考える人に聞きたい
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46:58 - 47:01たとえ同意があっても くじを引いても
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47:01 - 47:04たとえ今にも死にそうなパーカーが
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47:04 - 47:08かすかに同意をつぶやいたとしても
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47:09 - 47:12それでも間違っている
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47:12 - 47:15なぜ間違っているのか? それを聞きたい
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47:16 - 47:21私はずっと定言的道徳論法の立場です
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47:25 - 47:29くじ引きすれば問題ないと思います
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47:29 - 47:32負けたらその人が自分の手で自殺する
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47:33 - 47:36それなら殺人ではありませんから
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47:37 - 47:39強制かもしれませんけど
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47:39 - 47:42そもそも良心の呵責が感じられません
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47:43 - 47:47"朝食を取っていると"なんて書くのは
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47:47 - 47:51人の命を何とも思ってないからです
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47:51 - 47:55だから私は定言的に考えざるを得ません
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47:55 - 47:57罰したいんだね
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47:57 - 48:00自責の念が欠けているから
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48:02 - 48:07よろしい 他に弁護できる人で
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48:08 - 48:11同意に関係なく間違いだという人は?
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48:13 - 48:16私たちの社会では 殺人は殺人です
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48:17 - 48:19社会はいかなる殺人も区別しません
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48:20 - 48:22どんな場合でも何の違いもないんです
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48:23 - 48:27一つ質問だ ここでは3対1の命だが
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48:30 - 48:341人は孤児で 家族もいない
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48:34 - 48:373人には国に帰れば家族がいて
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48:37 - 48:40扶養すべき妻や子どもがいた
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48:41 - 48:43ベンサムに戻って考えてみよう
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48:44 - 48:47彼は全員の幸福を考えろと言った
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48:47 - 48:50すべてを合計しなければならない
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48:51 - 48:54だからこれは3対1ではない
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48:54 - 48:57故郷の人々もいる
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48:58 - 49:03当時の新聞や大衆は同情的だった
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49:05 - 49:07新聞にはこう書いてある
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49:07 - 49:10愛する人や家族への心配がなかったら
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49:10 - 49:13彼らもこんなことはしなかっただろう
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49:13 - 49:17でも社会の隅に追いやられた人だって
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49:17 - 49:21家族を養いたいという気持ちは同じです
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49:21 - 49:23人を殺せば殺人です
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49:23 - 49:26同じ犯罪は同じ様に扱うべきです
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49:26 - 49:30同じ犯罪でもある種の殺人は
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49:30 - 49:33より暴力的ですが
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49:33 - 49:36全部同じものは全部同じです
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49:36 - 49:39動機は関係ありません
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49:39 - 49:44仮にこれが3人ではなく30人 300人
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49:44 - 49:47300人を救うための1人の命だとしよう
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49:47 - 49:50さらに3000人とか もっと大勢なら?
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49:51 - 49:54もっと大勢でも同じことです
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49:54 - 49:58正義とは全体の幸福を増やすことだ
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49:58 - 50:02と言うベンサムは間違っている?
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50:02 - 50:04そうは思いませんが 殺人は殺人です
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50:05 - 50:07君が正しいならベンサムが間違っている
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50:08 - 50:09わかりました 彼が間違ってます
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50:10 - 50:11よく言った
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50:12 - 50:16さて 議論はこのくらいにして
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50:19 - 50:22どんな反論が出たか考えてみよう
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50:23 - 50:25彼らがしたことへの弁護も聞いた
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50:26 - 50:30それは必要性や状況と関係していて
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50:31 - 50:35暗黙には 数が重要だという考えだ
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50:35 - 50:39数だけではなく広がる影響も重要だ
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50:40 - 50:42彼らには扶養すべき家族がいたが
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50:43 - 50:46少年は孤児で 誰も気にしない
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50:47 - 50:50だからそれらを足し合わせ
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50:50 - 50:55幸福と苦難を計算したならば
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50:56 - 50:58この件についてはこう言えるだろう
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50:58 - 51:01彼らのしたことは正しかったと
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51:02 - 51:06ここで少なくとも三種類の反論があった
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51:09 - 51:13彼らのしたことは無条件に間違いだ
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51:13 - 51:16最後に聞いたように 定言的に間違いだ
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51:17 - 51:19殺人は殺人で常に間違っている
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51:19 - 51:23たとえ社会全体の幸福を増やすとしても
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51:25 - 51:27定言的反対意見だ
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51:28 - 51:30だがさらに検討する必要がある
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51:30 - 51:34なぜ殺人は定言的に間違っているのか
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51:35 - 51:37その理由は
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51:38 - 51:41人はある種の基本的権利を持つからか?
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51:42 - 51:46とすれば その権利はどこからくるのか
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51:46 - 51:50幸福の増大という考えからでないなら
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51:50 - 51:52これが質問その1だ
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51:52 - 51:54また
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51:56 - 52:01くじ引きをすれば変わるという人もいた
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52:04 - 52:07それに賛同する人もいたが
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52:08 - 52:12これは正確には定言的反対意見ではない
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52:13 - 52:18全体のため 誰かが犠牲になるとしても
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52:18 - 52:22皆平等に扱われるべきだという意見だ
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52:23 - 52:25これは検討すべき別の問題を提起する
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52:25 - 52:29なぜある公正な手続きに同意することは
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52:29 - 52:34その運用から生じるどんな結果をも
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52:34 - 52:36正当化するのか?
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52:37 - 52:42これが質問その2 そして質問その3は
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52:42 - 52:46同意の基本概念だ 提案はキャサリン
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52:48 - 52:52もし少年が死ぬことに同意したのなら
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52:52 - 52:56付け足されたように 強制でないのなら
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52:56 - 53:00その場合 彼の命を奪うことは問題ない
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53:01 - 53:04この考えに賛同した人は多かった
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53:04 - 53:08これは3つ目の哲学的問題を提起する
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53:08 - 53:12同意の道徳的な働きとは何か?
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53:14 - 53:18なぜ同意はそのような違いを生むのか?
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53:19 - 53:23同意がなければ間違いとされる行為が
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53:23 - 53:27同意があれば許されるというように
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53:29 - 53:33これら3つの問いを検討するために
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53:34 - 53:36次回から功利主義の哲学者
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53:36 - 53:40ベンサムとミルを読んでいこう