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Justice: What's The Right Thing To Do? Episode 01 "THE MORAL SIDE OF MURDER"

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    正しい殺人
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    これから「正義」の話をしよう
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    君は路面電車の運転手だとする
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    今 時速100キロで走っていると
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    前方に5人の労働者がいるのが見えた
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    止まろうとしたが ブレーキが利かない
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    君は絶望した
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    このままそこに突っ込めば 全員が死ぬ
  • 1:01 - 1:04
    これは確実なことだとしよう
  • 1:04 - 1:07
    君が諦めかけた その時
  • 1:08 - 1:12
    脇にそれる待避線があるのに気づく
  • 1:13 - 1:17
    そしてその先には1人の労働者がいる
  • 1:18 - 1:22
    望むなら ハンドルを回し
  • 1:22 - 1:27
    その待避線に入ることができる
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    1人は殺すが 5人は助かる
  • 1:33 - 1:35
    最初の質問だ
  • 1:35 - 1:38
    正しい行いはどちらか?
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    君ならどうする? 挙手してほしい
  • 1:42 - 1:46
    待避線に曲がるという人は?
  • 1:51 - 1:55
    曲がらず 直進するという人は?
  • 1:57 - 2:00
    遠慮せずに手を挙げて
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    少ないね 大多数は曲がる
  • 2:08 - 2:11
    ではその理由を聞いてみよう
  • 2:11 - 2:14
    なぜそうするのが正しいと思うのか
  • 2:15 - 2:18
    待避線に曲がるという
  • 2:18 - 2:21
    多数派から始めよう
  • 2:21 - 2:25
    なぜそうするのか? その理由は?
  • 2:25 - 2:28
    誰か理由を説明してほしい
  • 2:31 - 2:34
    1人殺せば済むところを
  • 2:34 - 2:37
    5人も殺すのは正しくないからです
  • 2:39 - 2:42
    1人殺せば済むところを
  • 2:42 - 2:44
    5人も殺すのは正しくない?
  • 2:46 - 2:48
    良い理由だ
  • 2:52 - 2:57
    他には? みんなこの理由に賛成かな?
  • 3:01 - 3:05
    9.11の時と同じだと思います
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    墜落した飛行機の乗客たちが英雄なのは
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    彼らが自らが死ぬことを選び
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    ビルの大勢の人を殺さなかったからです
  • 3:16 - 3:19
    9.11での原理と同じだと言うんだね
  • 3:19 - 3:20
    悲劇的な状況だが
  • 3:21 - 3:25
    5人が助かるなら1人を殺す方がいい
  • 3:25 - 3:28
    これが曲がるという人たちの理由かな?
  • 3:30 - 3:32
    では次は
  • 3:32 - 3:36
    曲がらないという少数派に聞こう
  • 3:40 - 3:44
    これは全体主義を正当化する論理です
  • 3:45 - 3:49
    そうやって他の人種を排除するんです
  • 3:50 - 3:53
    つまりこの場合 君はどうするのかな?
  • 3:53 - 3:57
    君は恐ろしい大虐殺を避けるために
  • 3:57 - 4:00
    5人の方に突っ込んで彼らを殺す?
  • 4:03 - 4:05
    ええ そうです
  • 4:07 - 4:11
    他には? 今のは勇気ある答えだね
  • 4:13 - 4:17
    では路面電車の別の例を考えてみよう
  • 4:20 - 4:22
    そして見てみよう
  • 4:23 - 4:26
    君たちの多数派が
  • 4:27 - 4:30
    5人が助かるなら1人死ぬ方が良い
  • 4:30 - 4:33
    という原理にこだわるかどうか
  • 4:33 - 4:37
    今度は君は運転手ではなく 傍観者だ
  • 4:37 - 4:41
    君は線路の上に架かる橋にいる
  • 4:42 - 4:45
    今 真下へと路面電車が来ていて
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    線路の先には5人の労働者がいる
  • 4:49 - 4:51
    ブレーキは掛かっていない
  • 4:51 - 4:55
    路面電車は5人に突っ込み 殺しそうだ
  • 4:55 - 5:00
    君が何もできないと諦めかけた その時
  • 5:00 - 5:03
    隣にいる
  • 5:06 - 5:09
    橋から身を乗り出した
  • 5:09 - 5:12
    とても太った男に気づく
  • 5:17 - 5:20
    君が彼を ちょいと押せば
  • 5:22 - 5:25
    彼は橋から線路の上に落ちる
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    ちょうど路面電車の前に
  • 5:32 - 5:35
    彼は死ぬだろうが 5人は助かる
  • 5:38 - 5:43
    男を橋から突き落とすという人は?
  • 5:47 - 5:53
    押さない人は? ほとんどが押さないね
  • 5:53 - 5:57
    質問だ さっきの原理はどうなったのか
  • 6:00 - 6:03
    1人を犠牲にしても5人助ける方が良い
  • 6:03 - 6:07
    最初の例で多くの人が支持した原理だ
  • 6:09 - 6:13
    両方とも多数派だった人に聞きたい
  • 6:13 - 6:16
    二つの違いをどう説明する?
  • 6:18 - 6:21
    二つ目では多分 人を落とすという
  • 6:21 - 6:24
    能動的な選択をしています
  • 6:24 - 6:27
    多分 最初その人自身は
  • 6:27 - 6:30
    その状況とは関係なかったでしょうし
  • 6:31 - 6:33
    その選択が 多分
  • 6:36 - 6:39
    無関係の彼を関わらせることになります
  • 6:39 - 6:42
    多分 最初の例では
  • 6:42 - 6:46
    運転手と二組の労働者という三者が
  • 6:47 - 6:50
    この状況では多分 既にいた
  • 6:50 - 6:53
    でも待避線にいた人だって
  • 6:55 - 6:59
    自分が犠牲になることは選んでないよね
  • 7:01 - 7:05
    そうですが 彼は線路の上にいた
  • 7:05 - 7:07
    男は橋の上にいた
  • 7:10 - 7:12
    出直して来なさい
  • 7:13 - 7:17
    これは難しい質問だ 君はまだまだだね
  • 7:19 - 7:20
    誰か他に
  • 7:22 - 7:25
    二つの例での多数派の矛盾した選択を
  • 7:25 - 7:28
    うまく説明できる人はいないかな?
  • 7:30 - 7:34
    一つ目の例では 1人か 5人か
  • 7:34 - 7:37
    どちらかを選ばなければなりませんが
  • 7:38 - 7:40
    彼らが死ぬのは路面電車が原因であって
  • 7:41 - 7:44
    自分の直接の行為のせいではありません
  • 7:44 - 7:47
    しかも一瞬で決めなきゃいけない
  • 7:47 - 7:51
    でも自分がデブを押すのは殺人行為です
  • 7:52 - 7:54
    自分自身はコントロールできますが
  • 7:54 - 7:57
    路面電車はコントロールできません
  • 7:57 - 7:59
    状況が違うと思います
  • 8:00 - 8:03
    反論はあるかな? 今のは良い意見だね
  • 8:04 - 8:08
    誰か反論は? これが正しいのだろうか
  • 8:09 - 8:12
    それは完全に間違っていると思います
  • 8:12 - 8:15
    どちらも死ぬ人を選ぶことになるんです
  • 8:15 - 8:18
    曲がって人を轢くのも意図的な行為だし
  • 8:18 - 8:21
    デブを突き落とすのも意図的な行為です
  • 8:22 - 8:26
    だからどちらも選択をしているんです
  • 8:27 - 8:28
    反論する?
  • 8:29 - 8:33
    間違ってるのはあなたの方だと思います
  • 8:33 - 8:36
    実際に人を突き落として殺すのは別です
  • 8:36 - 8:39
    自分自身が実際に彼を殺しているんです
  • 8:39 - 8:42
    自分の手で彼を押しているからね
  • 8:42 - 8:47
    運転してたら人が死んだってのとは違う
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    良い言い方じゃないかもしれないけど
  • 8:55 - 8:57
    質問してもいいかな
  • 8:58 - 9:03
    橋の上で隣に男がいるのは同じだが
  • 9:04 - 9:08
    男は扉型の罠の上に立っていて
  • 9:08 - 9:11
    君がハンドルを回せば開くとしよう
  • 9:16 - 9:18
    君は回す?
  • 9:18 - 9:22
    それはもっと悪いことな気がします
  • 9:23 - 9:28
    手が滑っちゃった とかならいいけど
  • 9:29 - 9:33
    それか落ちるのが死刑囚とかなら
  • 9:33 - 9:36
    認められるかもしれませんが
  • 9:38 - 9:42
    結構 それでも間違いだと思うんだね?
  • 9:43 - 9:45
    最初の状況で回すのは問題ないが
  • 9:46 - 9:50
    最初の状況では自分は当事者ですが
  • 9:50 - 9:52
    二つ目では傍観者です
  • 9:52 - 9:55
    デブを押すか 関わらないか選べます
  • 9:55 - 10:00
    この話は一旦やめて 次にいこう
  • 10:01 - 10:05
    今度は君は 緊急治療室の医者だとする
  • 10:06 - 10:10
    今 君の所に6人の患者が運ばれてきた
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    ひどい路面電車事故に遭ったのだ
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    5人は中程度のけが 1人は重傷だ
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    重傷の1人の治療には丸1日が必要で
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    そうした場合 5人は死ぬ
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    5人を治療すれば5人とも助かるが
  • 10:33 - 10:36
    その場合は重傷の1人が死んでしまう
  • 10:36 - 10:38
    5人を助けるという人は?
  • 10:40 - 10:42
    1人を助けるという人は?
  • 10:44 - 10:47
    とても少ないね 一握りだ
  • 10:49 - 10:53
    同じ理由かな? 1人より5人?
  • 10:55 - 10:58
    では次は 別の医者の例を考えよう
  • 10:59 - 11:01
    今度は君は 移植医だ
  • 11:01 - 11:05
    君は5人の患者を抱えていて
  • 11:06 - 11:09
    助かるためには臓器移植が必要だ
  • 11:09 - 11:14
    それぞれ心臓 肺 腎臓 肝臓
  • 11:15 - 11:18
    そして膵臓を必要としている
  • 11:20 - 11:22
    ドナーは見つからなかった
  • 11:22 - 11:26
    彼らの死を見届けるしかないのか
  • 11:27 - 11:30
    君が諦めかけた その時
  • 11:30 - 11:35
    1人の健康な男が健康診断にやってきた
  • 11:43 - 11:45
    ウケてるね
  • 11:46 - 11:48
    彼は今昼寝をしている
  • 11:53 - 11:56
    こっそり臓器を取り出せば
  • 11:56 - 11:59
    その男は死ぬだろうが
  • 12:00 - 12:03
    5人を助けることができる
  • 12:03 - 12:05
    そうする という人は?
  • 12:07 - 12:08
    いない?
  • 12:10 - 12:13
    さあ遠慮せずに手を挙げて
  • 12:17 - 12:19
    バルコニーは?
  • 12:20 - 12:25
    いた? 気を付けて 身を乗り出すと…
  • 12:26 - 12:28
    そうしないという人
  • 12:30 - 12:34
    臓器を抜き取るという君 なぜだい
  • 12:35 - 12:39
    俺頭良いから思いついちゃったんだけど
  • 12:39 - 12:42
    5人の中で最初に死んだ1人から
  • 12:42 - 12:46
    他の4人に臓器を分ければいいんじゃね
  • 12:49 - 12:51
    それはいいアイデアだ
  • 12:54 - 12:56
    そのアイデアは素晴らしい
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    しかし君は
  • 13:00 - 13:03
    哲学には向いてないようだ
  • 13:04 - 13:08
    たとえ話はこのくらいにしよう
  • 13:10 - 13:13
    これらの議論の展開の仕方から
  • 13:13 - 13:16
    いくつかのことが明らかになった
  • 13:17 - 13:21
    今私たちがした議論から既に
  • 13:21 - 13:25
    いくつかの道徳原理が現れている
  • 13:25 - 13:30
    その原理とはどんなものであるのか
  • 13:31 - 13:34
    議論から現れた一つ目の原理は
  • 13:35 - 13:38
    正しい行いや道徳的な行いは
  • 13:38 - 13:42
    その行為の帰結で決まる というものだ
  • 13:45 - 13:51
    1人が死んでも 5人助かる方が良い
  • 13:51 - 13:57
    これが帰結主義的道徳論法の例だ
  • 13:58 - 14:03
    帰結主義者は行為の帰結に道徳性を置く
  • 14:03 - 14:07
    行為の結果生じる世界の状態に置くのだ
  • 14:08 - 14:12
    しかしもう一歩進み 別の例を考えると
  • 14:12 - 14:15
    多くの人は信頼しなかった
  • 14:16 - 14:19
    帰結主義的道徳論法を
  • 14:20 - 14:22
    多くの人がためらった
  • 14:22 - 14:25
    男を橋から突き落としたり
  • 14:25 - 14:29
    無実の人から臓器を抜き取るのを
  • 14:29 - 14:31
    ためらった理由は
  • 14:33 - 14:36
    行為それ自体の
  • 14:36 - 14:39
    質と関係があるようだ
  • 14:39 - 14:42
    帰結とは関係なく
  • 14:42 - 14:44
    多くの人が間違いだと考えた
  • 14:44 - 14:48
    それは無条件に間違っている
  • 14:49 - 14:52
    5人を助けるためであっても
  • 14:53 - 14:56
    無実の人を殺すのは
  • 14:56 - 15:00
    先程の話のそれぞれ二つ目の型で
  • 15:00 - 15:03
    少なくともそう考えたのだ
  • 15:03 - 15:05
    これは二つ目の
  • 15:07 - 15:10
    道徳について考える上での
  • 15:12 - 15:15
    定言的な方法を示している
  • 15:15 - 15:19
    この定言的道徳論法では 道徳性を
  • 15:19 - 15:23
    ある種の絶対的な道徳的要請に置き
  • 15:23 - 15:26
    帰結を考慮することはない
  • 15:27 - 15:30
    これからの講義で見ていくのは
  • 15:30 - 15:33
    帰結主義的道徳原理と
  • 15:33 - 15:36
    定言的道徳原理の対比だ
  • 15:36 - 15:41
    帰結主義的道徳論法で最も強力なのは
  • 15:41 - 15:45
    功利主義だ 発明したのは18世紀
  • 15:45 - 15:49
    イギリスの哲学者ジェレミー・ベンサム
  • 15:51 - 15:56
    定言的道徳論法で最も重要な哲学者は
  • 15:56 - 16:02
    18世紀ドイツのイマヌエル・カントだ
  • 16:02 - 16:06
    これら二つの道徳論法の違いを見て
  • 16:07 - 16:10
    評価し そして他の論法も見ていく
  • 16:10 - 16:15
    この講義では数多くの名著を読んでいく
  • 16:15 - 16:19
    アリストテレス ジョン・ロック
  • 16:19 - 16:22
    イマヌエル・カント ミルらの著作だ
  • 16:23 - 16:27
    本を読むだけでなく
  • 16:28 - 16:32
    哲学的問題を提起する現代の問題や
  • 16:32 - 16:36
    政治的 法律的な論争も取り上げる
  • 16:36 - 16:39
    平等と不平等
  • 16:39 - 16:43
    格差是正措置 言論の自由
  • 16:43 - 16:46
    同性結婚 徴兵制など
  • 16:46 - 16:50
    現実的な問題を取り上げる なぜか?
  • 16:50 - 16:55
    過去の抽象的著作を蘇らせるだけでなく
  • 16:55 - 16:59
    私たちの日常生活や政治的生活において
  • 16:59 - 17:02
    何が哲学的に問題となるのか
  • 17:02 - 17:04
    明らかにするためだ
  • 17:05 - 17:08
    そして本を読み 問題を議論し
  • 17:09 - 17:14
    それらが互いにどう作用するか見ていく
  • 17:15 - 17:17
    楽しそうに聞こえるかもしれないが
  • 17:17 - 17:21
    ここで一つ警告しなければならない
  • 17:22 - 17:24
    警告とはこうだ
  • 17:25 - 17:27
    自己認識を鍛えるものとして
  • 17:31 - 17:34
    これらの本を読むことは
  • 17:34 - 17:37
    ある種のリスクを伴う
  • 17:38 - 17:41
    個人的 政治的なリスクがある
  • 17:41 - 17:46
    政治哲学を学ぶ者なら知っているだろう
  • 17:47 - 17:50
    これらのリスクが生じるのは
  • 17:50 - 17:53
    哲学が 私たちを
  • 17:54 - 17:57
    既に知っていることに直面させることで
  • 17:57 - 18:00
    私たちを教え 動揺させる学問だからだ
  • 18:01 - 18:02
    ここに皮肉がある
  • 18:03 - 18:05
    この講義の難しさは 君たちが
  • 18:06 - 18:09
    既に知っていることを教えることにある
  • 18:09 - 18:12
    それは慣れ親しんでいたものを
  • 18:12 - 18:15
    見知らぬものに変えてしまう
  • 18:20 - 18:24
    私たちが始めた 仮定の話がそうだ
  • 18:24 - 18:28
    遊び心と真面目さを交えた良い話だった
  • 18:28 - 18:31
    哲学の本もそうだ
  • 18:31 - 18:36
    哲学は私たちを親しいものから引き離す
  • 18:37 - 18:40
    新しい事を教えることによってではなく
  • 18:40 - 18:43
    新しい物の見方を
  • 18:43 - 18:45
    喚起することによって
  • 18:47 - 18:49
    しかし ここにはリスクがある
  • 18:49 - 18:53
    一度親しいものが不慣れなものになると
  • 18:54 - 18:57
    それは二度と同じものにはならない
  • 18:57 - 19:01
    自己認識とは純真さを失うようなものだ
  • 19:02 - 19:05
    不安に思うだろうが いつかわかる
  • 19:06 - 19:10
    哲学することからは逃がれられないのだ
  • 19:13 - 19:15
    この取り組みを難しく
  • 19:17 - 19:19
    しかし面白くしているのは
  • 19:20 - 19:24
    政治哲学は物語であるという事実だ
  • 19:25 - 19:28
    物語がどうなるのかはわからないが
  • 19:29 - 19:32
    これは君自身についての物語である
  • 19:34 - 19:36
    これが個人的なリスク
  • 19:37 - 19:39
    では政治的なリスクとは何か
  • 19:40 - 19:43
    君たちにこう約束することもできる
  • 19:44 - 19:47
    本を読み 問題を議論することで
  • 19:47 - 19:51
    責任感のある より良い市民になれると
  • 19:51 - 19:54
    君たちは公共政策の前提を検討し
  • 19:54 - 19:57
    自らの政治的判断に磨きをかけ
  • 19:57 - 20:01
    公的事項に効果的に参加できるだろう
  • 20:02 - 20:06
    しかしこれは誤解を招くような約束だ
  • 20:06 - 20:10
    政治哲学はそのように働いてこなかった
  • 20:11 - 20:14
    政治哲学は人を悪い市民するという
  • 20:14 - 20:18
    可能性を知っておく必要がある
  • 20:18 - 20:21
    たとえ良い市民になるとしても
  • 20:21 - 20:25
    その前に一度 悪い市民になる可能性だ
  • 20:27 - 20:32
    なぜなら哲学は 人を社会から遠ざけ
  • 20:32 - 20:35
    衰弱させるような活動だからだ
  • 20:36 - 20:39
    ソクラテスの時代もそうだった
  • 20:39 - 20:42
    「ゴルギアス」というの著作の中で
  • 20:42 - 20:45
    ソクラテスの友人カリクレスは
  • 20:45 - 20:49
    ソクラテスに哲学をやめさせようとする
  • 20:49 - 20:51
    カリクレスはこう言った
  • 20:51 - 20:54
    人生の適切な時期に適度に遊ぶなら
  • 20:55 - 20:57
    哲学は楽しいおもちゃだ
  • 20:57 - 21:02
    しかし節度を超えて追求すれば破滅する
  • 21:03 - 21:05
    私の忠告を聞け
  • 21:06 - 21:10
    議論を捨て 行動的人生の成果に学べ
  • 21:11 - 21:15
    下らぬ屁理屈に時間を費やす人でなく
  • 21:16 - 21:21
    多くの実りと共に暮らす人を手本にせよ
  • 21:22 - 21:25
    つまりカリクレスはこう言っているのだ
  • 21:26 - 21:29
    哲学なんてやめて 現実を見ろ
  • 21:30 - 21:32
    ビジネススクールに通え
  • 21:35 - 21:38
    カリクレスの言うことももっともだ
  • 21:38 - 21:42
    哲学は常識や約束事や信条から
  • 21:42 - 21:46
    私たちを引き離す活動だからだ
  • 21:46 - 21:49
    これは個人的 政治的にリスクである
  • 21:49 - 21:53
    このリスクに直面した時特有の言い訳
  • 21:54 - 21:56
    その言い訳の名は 懐疑主義だ
  • 21:56 - 21:58
    それはこういう考えだ
  • 21:58 - 22:02
    私たちは様々な事例や原理を議論したが
  • 22:03 - 22:06
    何も解決できていない
  • 22:09 - 22:13
    アリストテレスやロックやカントでさえ
  • 22:13 - 22:16
    長年かけても答えを出せていないのなら
  • 22:17 - 22:19
    誰がそう思えるのか
  • 22:19 - 22:24
    この講義で何かが解決できると
  • 22:26 - 22:28
    だからおそらくは各自が
  • 22:29 - 22:32
    自分なりの原理を持っていれば良く
  • 22:32 - 22:35
    それ以上はない 論じても無駄だ
  • 22:36 - 22:38
    これが懐疑主義の言い訳だ
  • 22:39 - 22:42
    これに対し 私はこう答えよう
  • 22:42 - 22:47
    確かに 議論は長年に渡り続いてきた
  • 22:47 - 22:51
    だがまさにその事実が示しているのは
  • 22:54 - 22:59
    不可能だが 不可避でもあるということだ
  • 22:59 - 23:03
    そしてそれが不可避である理由は
  • 23:04 - 23:08
    私たちがそれに答え 生きているからだ
  • 23:09 - 23:14
    だから道徳の熟考を諦めることは
  • 23:15 - 23:17
    解決にはならない
  • 23:18 - 23:22
    カントは懐疑主義についてこう書いた
  • 23:22 - 23:25
    懐疑主義は理性の休憩所である
  • 23:26 - 23:29
    そこは独善的な彷徨いを熟慮できる所だ
  • 23:29 - 23:32
    しかし永久に留まる場所ではない
  • 23:32 - 23:35
    単に懐疑主義を受け入れたとしても
  • 23:35 - 23:40
    理性の不安は決して克服できない
  • 23:42 - 23:46
    私は対話や議論を通じて
  • 23:46 - 23:50
    ある種の可能性を示そうと思う
  • 23:50 - 23:53
    最後にこう述べて終わろう
  • 23:55 - 23:57
    この講義の目的は
  • 23:58 - 24:01
    理性の不安を目覚めさせ
  • 24:02 - 24:05
    それがどこへ導くかを見ることである
  • 24:44 - 24:48
    前回の講義はいくつかの話で始まった
  • 24:48 - 24:50
    道徳的ジレンマの話だ
  • 24:50 - 24:54
    路面電車や医者
  • 24:54 - 24:57
    臓器移植の犠牲にされそうな
  • 24:57 - 25:00
    健康な男の話だった
  • 25:00 - 25:03
    そしてその議論から
  • 25:03 - 25:06
    二つのことがわかった
  • 25:06 - 25:09
    一つは議論の進み方と関係している
  • 25:09 - 25:13
    私たちはまず個別の事例に判断を下し
  • 25:13 - 25:16
    次に その判断の背後にある
  • 25:18 - 25:21
    理由や原理を明らかにしようとした
  • 25:22 - 25:25
    そして新たな事例に直面したとき
  • 25:25 - 25:28
    私たちはそれらの原理を再検討し
  • 25:30 - 25:33
    他と照らして修正した
  • 25:33 - 25:37
    そして 個別の事例での判断や
  • 25:38 - 25:41
    私たちが熟考して支持した原理を
  • 25:41 - 25:45
    一致させようとする圧力に気づいた
  • 25:46 - 25:50
    また 討論から浮かび上がってきた
  • 25:50 - 25:53
    議論の趣旨にも気がついた
  • 25:55 - 25:59
    時に 私たちは行為の道徳性を
  • 25:59 - 26:01
    帰結や結果や
  • 26:02 - 26:05
    もたらされる世界の状態に求めた
  • 26:06 - 26:10
    これを帰結主義者の道徳論法と呼んだ
  • 26:11 - 26:15
    しかしいくつかの事例では
  • 26:16 - 26:20
    私たちは単に結果には影響されなかった
  • 26:21 - 26:24
    時に 私たちの多くは
  • 26:25 - 26:27
    帰結だけではなく
  • 26:27 - 26:30
    行為の本質や性格も
  • 26:31 - 26:33
    道徳的に重要だと感じた
  • 26:35 - 26:40
    無条件に間違いだ と言った人もいた
  • 26:40 - 26:44
    たとえ良い結果をもたらすのでも
  • 26:44 - 26:49
    たとえ1人を犠牲に5人を助けるのでも
  • 26:49 - 26:53
    そうして帰結主義的道徳原理と
  • 26:54 - 26:57
    定言的道徳原理を比べた
  • 26:57 - 27:00
    今日とこれからの何回か
  • 27:00 - 27:04
    帰結主義的道徳理論でも
  • 27:05 - 27:09
    最も影響力のあるものを検討する
  • 27:10 - 27:14
    それは「功利主義」だ
  • 27:15 - 27:17
    ジェレミー・ベンサムは
  • 27:17 - 27:21
    18世紀イギリスの政治哲学者で
  • 27:21 - 27:25
    功利主義的な道徳理論に
  • 27:26 - 27:29
    最初に明快で系統だった説明を与えた
  • 27:31 - 27:34
    ベンサムの考え
  • 27:36 - 27:40
    彼の基本的な考えはとても単純だ
  • 27:42 - 27:47
    そして直感に訴える力がある
  • 27:48 - 27:50
    ベンサムの考えとはこうだ
  • 27:51 - 27:53
    正しい行いとは
  • 27:54 - 27:56
    正しい行いとは
  • 27:57 - 28:01
    効用を最大化することである
  • 28:02 - 28:04
    効用とは何か?
  • 28:06 - 28:08
    効用とはバランスのことだ
  • 28:11 - 28:15
    苦痛より快楽 苦難より幸福
  • 28:16 - 28:21
    彼は次のようにしてその原理に到達した
  • 28:22 - 28:26
    彼はまず 人間観察から始めた
  • 28:26 - 28:30
    人間は二人の主人に支配されている
  • 28:31 - 28:33
    苦痛と快楽だ
  • 28:34 - 28:36
    私たち人間は
  • 28:36 - 28:40
    快楽を好み 苦痛を嫌う
  • 28:42 - 28:45
    だから道徳性の基礎はそこに置くべきだ
  • 28:45 - 28:48
    人生で何をするか考えるとき
  • 28:50 - 28:54
    法律がどうあるべきか考えるときに
  • 28:56 - 29:00
    正しい行いとは 個人的にも全体的にも
  • 29:01 - 29:05
    全体の幸福を最大化するように
  • 29:05 - 29:08
    行動することである
  • 29:11 - 29:15
    彼の功利主義は次の標語に集約される
  • 29:15 - 29:18
    "最大多数の最大幸福"だ
  • 29:18 - 29:22
    この効用の基本原理を念頭に置きつつ
  • 29:22 - 29:26
    ある話について考えてみることで
  • 29:26 - 29:28
    これを検討していこう
  • 29:28 - 29:33
    今回は仮定の話ではない 本当の話だ
  • 29:34 - 29:37
    二人の船乗りに対する裁判となった
  • 29:38 - 29:41
    19世紀イギリスのこの事件は
  • 29:41 - 29:46
    ロースクールでもよく議論される
  • 29:47 - 29:49
    どんな事件だったのか
  • 29:49 - 29:53
    要約して話すので
  • 29:54 - 29:59
    陪審員になったつもりで聞いてほしい
  • 30:03 - 30:07
    当時の新聞に事件の背景が書かれている
  • 30:08 - 30:11
    悲劇的な海難事故は
  • 30:11 - 30:15
    生存者ほどに語られることはなかった
  • 30:16 - 30:21
    船は喜望峰から2000キロの地点で沈んだ
  • 30:21 - 30:23
    乗組員は4人
  • 30:23 - 30:25
    船長のダドリー
  • 30:25 - 30:27
    航海士のスティーブンズ
  • 30:28 - 30:29
    船員のブルックス
  • 30:30 - 30:34
    全員人格者だった と新聞は伝えている
  • 30:35 - 30:38
    4人目の乗組員は雑用係の
  • 30:38 - 30:41
    リチャード・パーカー 17才
  • 30:42 - 30:46
    彼は孤児で 家族はおらず
  • 30:46 - 30:50
    長い航海はこれが初めてであった
  • 30:51 - 30:56
    新聞によると 彼は友人の忠告を無視し
  • 30:56 - 30:59
    若者らしい希望を持って船に乗った
  • 30:59 - 31:02
    この旅が自分を漢にしてくれる と
  • 31:02 - 31:04
    残念だがそうはならなかった
  • 31:07 - 31:11
    強い波が打ち付け 船は沈没した
  • 31:11 - 31:14
    4人の乗組員は救命ボートで避難した
  • 31:14 - 31:17
    彼らが持っていた唯一の食糧は
  • 31:18 - 31:21
    カブの缶詰が二つだけ
  • 31:21 - 31:23
    水はなかった
  • 31:23 - 31:26
    最初の3日間は何も食べず
  • 31:26 - 31:31
    4日目にカブの缶を一つ開けて食べた
  • 31:31 - 31:33
    次の日 彼らは亀を捕まえた
  • 31:34 - 31:37
    カブの缶詰一個と亀で
  • 31:38 - 31:40
    数日間何とか凌いだが
  • 31:40 - 31:45
    その後8日間 彼らは何も食べなかった
  • 31:46 - 31:51
    その状況にいたら君ならどうする?
  • 31:52 - 31:54
    彼らはこうした
  • 31:55 - 31:59
    パーカーはボートの隅に横たわっていた
  • 32:00 - 32:05
    他の者の忠告を無視し 海水を飲んだのだ
  • 32:05 - 32:09
    具合を悪くし 死にそうになっていた
  • 32:10 - 32:14
    遭難19日目 船長のダドリーは
  • 32:14 - 32:18
    皆でくじ引きをしようと提案した
  • 32:18 - 32:22
    他の者のために 誰が死ぬか決めようと
  • 32:23 - 32:26
    ブルックスは断った
  • 32:26 - 32:28
    彼はくじ引きを嫌がった
  • 32:29 - 32:33
    彼がなぜくじを拒否したかはわからない
  • 32:33 - 32:36
    定言的に間違いだと思ったのか
  • 32:36 - 32:40
    いずれにせよくじ引きは行われなかった
  • 32:42 - 32:44
    翌日 助けの船はまだ現れなかったため
  • 32:45 - 32:47
    船長はブルックスに見ないように言い
  • 32:48 - 32:53
    スティーブンズに少年を殺すと合図した
  • 32:53 - 32:58
    船長は祈り 食事の時間が来たと告げ
  • 32:58 - 33:02
    ナイフでパーカーの首を刺した
  • 33:03 - 33:06
    ブルックスも良心の呵責を克服し
  • 33:06 - 33:09
    身の毛もよだつ恵みを共有した
  • 33:09 - 33:14
    それから4日間 彼らは少年の肉を食べた
  • 33:15 - 33:16
    本当の話だ
  • 33:17 - 33:18
    そして救助が来た
  • 33:19 - 33:21
    ダドリーは救助された時のことを
  • 33:22 - 33:26
    驚くべき婉曲表現で日記に書いている
  • 33:27 - 33:32
    "24日目 皆で朝食を取っていると"
  • 33:34 - 33:37
    "ついに船が現れた"
  • 33:38 - 33:42
    3人の生存者はドイツの船に拾われ
  • 33:42 - 33:46
    イギリスに戻ると逮捕され 裁判になった
  • 33:46 - 33:49
    ブルックスは国側の証人となり
  • 33:49 - 33:51
    ダドリーとスティーブンズは訴えられた
  • 33:52 - 33:54
    彼らは事実については争わず
  • 33:56 - 33:59
    必要に迫られた行為だったと主張した
  • 33:59 - 34:01
    実質的にはこういう主張だ
  • 34:01 - 34:05
    3人が生き残れるなら1人死ぬ方が良い
  • 34:06 - 34:10
    検察官はその議論には触れなかった
  • 34:10 - 34:13
    彼は殺人は殺人だと言い 判決となった
  • 34:13 - 34:15
    さあ君たちは陪審員だと思ってほしい
  • 34:16 - 34:18
    議論を単純にするために
  • 34:19 - 34:21
    法律的な問題は脇に置いて
  • 34:21 - 34:24
    君たちは陪審員として
  • 34:25 - 34:29
    彼らの行為が道徳的に許されるか否かを
  • 34:29 - 34:32
    判断しなければならないとしよう
  • 34:34 - 34:37
    無罪にする
  • 34:39 - 34:43
    道徳的に許される という人は?
  • 34:49 - 34:53
    有罪の人は? 道徳的に間違いだと思う人
  • 34:54 - 34:57
    かなり多いね
  • 34:58 - 34:59
    ではその理由を聞こう
  • 35:00 - 35:03
    少数派から始めたい
  • 35:03 - 35:06
    まずはダドリーとスティーブンズを
  • 35:07 - 35:09
    弁護する人から聞こう
  • 35:09 - 35:13
    なぜ彼らは道徳的に無罪なのか?
  • 35:18 - 35:20
    俺は道徳的には有罪だと思う
  • 35:20 - 35:23
    でも道徳的に有罪だというのと
  • 35:24 - 35:26
    法的に有罪だというのは違うし
  • 35:26 - 35:31
    道徳的でも法に違反することはある
  • 35:31 - 35:35
    必要性が違法行為を
  • 35:36 - 35:38
    正当化するとは思わないけど
  • 35:38 - 35:41
    必要性の度合いによっては
  • 35:41 - 35:44
    有罪が免れることはあると思う
  • 35:44 - 35:46
    そうか 他は?
  • 35:46 - 35:49
    ちゃんと私の話を聞いていた人で
  • 35:50 - 35:54
    彼らの行為が正当化できるという人
  • 35:58 - 36:02
    ここはやるべきことをやるべきです
  • 36:03 - 36:05
    やるべきことをやるべき?
  • 36:05 - 36:06
    そうです
  • 36:06 - 36:09
    食べ物なしで19日も過ごしたんです
  • 36:10 - 36:14
    一人の犠牲で他の人が生き残れます
  • 36:14 - 36:16
    で 彼らが生き残るだけじゃなく
  • 36:17 - 36:20
    国に帰って社会の生産者になって
  • 36:20 - 36:23
    慈善活動を始めるとか 色々
  • 36:23 - 36:25
    そうなれば結局は全員の利益になります
  • 36:25 - 36:28
    その後彼らがどうしたかは知りませんが
  • 36:32 - 36:35
    もし彼らが暗殺者になったら?
  • 36:35 - 36:38
    もし彼らが暗殺者になったら? んー?
  • 36:38 - 36:42
    誰を暗殺したかが問題だ
  • 36:42 - 36:45
    確かに そうですね
  • 36:50 - 36:53
    私たちは実質一つの弁護を聞いた
  • 36:53 - 36:56
    次は検察側から聞こう
  • 36:57 - 37:01
    大多数が彼らの行為は間違いだと言う
  • 37:01 - 37:02
    なぜ?
  • 37:04 - 37:06
    私が最初に思ったのは
  • 37:06 - 37:09
    長い間何も食べなければ
  • 37:12 - 37:14
    精神への影響が大きいので
  • 37:15 - 37:19
    それで弁護ができるということです
  • 37:20 - 37:25
    彼らは正常な精神状態ではなかった と
  • 37:25 - 37:28
    でももしそう主張するなら
  • 37:28 - 37:32
    本当は彼らの行為は間違いだと
  • 37:33 - 37:37
    思っていることになると思います
  • 37:37 - 37:39
    どういうことかな
  • 37:39 - 37:42
    弁護しているが 有罪派だよね?
  • 37:42 - 37:46
    彼らの行為が正しいとは思いません
  • 37:46 - 37:51
    それはなぜ? 君はマーカスに何て言う?
  • 37:52 - 37:55
    話を聞いていたよね?
  • 37:56 - 37:59
    やるべきことをやるべきだ
  • 37:59 - 38:02
    マーカスに何と言う?
  • 38:06 - 38:10
    それはわかりませんが
  • 38:13 - 38:16
    他人の運命を決めたら大変です
  • 38:17 - 38:20
    人にその権限はありません
  • 38:20 - 38:22
    よろしい 君の名前は?
  • 38:28 - 38:33
    おじさん二人が少年に同意を得ていれば
  • 38:33 - 38:35
    死ぬことの
  • 38:37 - 38:41
    それで殺人罪が免れるなら
  • 38:42 - 38:44
    道徳的に正当化されますか?
  • 38:45 - 38:49
    面白い 同意か 待って 君の名前は?
  • 38:51 - 38:56
    もしそういう話だったらどうなるかな
  • 38:56 - 38:59
    ダドリーがナイフを片手に
  • 39:00 - 39:03
    祈る代わりに または祈る前に
  • 39:04 - 39:08
    こう言う 「パーカー いいかな?」
  • 39:11 - 39:13
    腹ペコなんだ
  • 39:14 - 39:17
    マーカス流に言うと
  • 39:17 - 39:19
    死ぬほど腹ペコだ
  • 39:19 - 39:21
    どっちみち君は長くない
  • 39:22 - 39:23
    殉教者になれるぞ
  • 39:23 - 39:27
    殉教者になれるぞ どうかな? パーカー
  • 39:29 - 39:30
    それなら
  • 39:33 - 39:36
    それなら道徳的に正当化されるかな?
  • 39:36 - 39:41
    パーカーが食べていいよと言ったら?
  • 39:42 - 39:44
    私は正当化されるとは思いません
  • 39:45 - 39:47
    それでも正当化されない?
  • 39:47 - 39:52
    同意があっても正当化されないんだね
  • 39:52 - 39:57
    今キャサリンが言った同意によって
  • 39:57 - 39:59
    行為が正当化されると思う人は?
  • 40:00 - 40:03
    すると思う人は手を挙げて
  • 40:05 - 40:07
    これは興味深い
  • 40:07 - 40:10
    なぜ同意が道徳的違いを生むんだろう?
  • 40:15 - 40:20
    もし彼が自分から死ぬと言い出したなら
  • 40:20 - 40:25
    それなら何の問題もないと思います
  • 40:25 - 40:27
    状況的には
  • 40:28 - 40:32
    プレッシャーがあったかもしれないので
  • 40:32 - 40:37
    自分から進んで犠牲になったなら
  • 40:38 - 40:40
    私はカッコイイなって思います
  • 40:41 - 40:44
    ただし イケメンに限るけど
  • 40:45 - 40:48
    つまり彼自身がそう思い立てば
  • 40:48 - 40:51
    それは道徳的に問題ないと言える
  • 40:51 - 40:54
    唯一の種類の同意だと言うんだね
  • 40:54 - 40:56
    そうでなければ
  • 40:57 - 41:01
    状況の下で強制された同意になる
  • 41:05 - 41:10
    たとえパーカーの同意があったとしても
  • 41:10 - 41:14
    彼を殺すのは正しくないという人は?
  • 41:15 - 41:19
    誰かそう思う人 君 理由を言ってくれ
  • 41:19 - 41:22
    パーカーが殺されるのは
  • 41:22 - 41:25
    他の人の助かる望みのためですが
  • 41:26 - 41:29
    いつ助けが来るかはわからないのだから
  • 41:30 - 41:33
    彼を殺すべき明確な理由はありません
  • 41:34 - 41:38
    助けが来るまで殺し続けるんですか?
  • 41:39 - 41:44
    この状況の論理ではそうなるね
  • 41:45 - 41:49
    1人ずつ弱い者から殺していく
  • 41:50 - 41:53
    助けが来るまで この事件では幸運にも
  • 41:53 - 41:56
    3人がまだ生きているときに救助された
  • 41:57 - 42:00
    それで パーカーが同意したなら
  • 42:01 - 42:03
    君は問題ないと考えるのかな?
  • 42:03 - 42:05
    いえ 間違ってます
  • 42:06 - 42:08
    なぜ正しくないんだろう?
  • 42:08 - 42:11
    食人は道徳的に間違っています
  • 42:11 - 42:14
    人を食べるべきではありません
  • 42:16 - 42:18
    食人は道徳的にダメか
  • 42:19 - 42:21
    じゃあたとえ
  • 42:22 - 42:25
    誰かが死ぬのを待つのでもダメだ
  • 42:26 - 42:29
    はい 個人的にはそう感じます
  • 42:29 - 42:32
    すべて個人の道徳観次第であって
  • 42:33 - 42:35
    正解はありません
  • 42:35 - 42:38
    これは私の意見だし 反対の人もいる
  • 42:38 - 42:42
    じゃあ反対意見を見てみようか
  • 42:42 - 42:46
    君が納得するほどの理由があるかどうか
  • 42:50 - 42:54
    では誰か説明できる人はいないかな?
  • 42:54 - 42:57
    同意があれば良いという人で
  • 42:57 - 43:02
    なぜ同意が道徳的な違いを生むのか
  • 43:03 - 43:06
    くじ引きは同意とみなせないだろうか
  • 43:07 - 43:10
    最初 船長はくじ引きを提案した
  • 43:10 - 43:15
    彼らがくじ引きに同意したとしよう
  • 43:16 - 43:19
    それなら問題ない
  • 43:20 - 43:21
    という人は?
  • 43:21 - 43:25
    くじ引きをして 少年が負けた
  • 43:26 - 43:29
    それなら道徳的に許されるという人
  • 43:33 - 43:35
    くじ引きを加えたら人数が増えたね
  • 43:35 - 43:38
    くじ引きが違いを生むという人に聞こう
  • 43:41 - 43:42
    なぜ?
  • 43:43 - 43:46
    これが犯罪となる決定的な要素は
  • 43:46 - 43:49
    奴らがある時点で自分の命を
  • 43:49 - 43:52
    小僧よりも重要だと考えたことにある
  • 43:53 - 43:56
    どんな犯罪もそれが根本にある
  • 43:57 - 44:01
    自分の欲望を他人より優先しているのだ
  • 44:01 - 44:06
    だが奴らが死のくじ引きに同意したなら
  • 44:06 - 44:10
    誰もが犠牲になる可能性がある
  • 44:10 - 44:12
    その場合問題ない?
  • 44:12 - 44:14
    グロテスクだが
  • 44:15 - 44:17
    道徳的には許される?
  • 44:22 - 44:24
    マ 君にとって
  • 44:25 - 44:27
    問題は 人を食べることではなく
  • 44:28 - 44:30
    手続きの不足?
  • 44:31 - 44:33
    ま そうだな
  • 44:34 - 44:37
    マに賛成の人で
  • 44:38 - 44:40
    もう少し詳しく
  • 44:40 - 44:45
    なぜくじ引きをすれば許されるのか
  • 44:46 - 44:48
    説明できる人は?
  • 44:50 - 44:52
    私から見て 問題だと思うのは
  • 44:53 - 44:56
    少年が相談されなかったことです
  • 44:56 - 44:59
    くじ引きにしても何が決まるのかとか
  • 45:00 - 45:02
    それに参加するかどうかとか
  • 45:03 - 45:05
    勝手に彼が死ぬことに決められたんです
  • 45:05 - 45:07
    そうだ それが実際に起きたことだ
  • 45:08 - 45:11
    だがもし全員がくじ引きに同意したら?
  • 45:11 - 45:13
    それなら問題ない?
  • 45:13 - 45:16
    同意したなら問題はないでしょう
  • 45:17 - 45:20
    でも少年は何も知らされず
  • 45:20 - 45:25
    自分が死ぬという警告もなかった
  • 45:26 - 45:30
    では全員がくじ引きに同意したとして
  • 45:30 - 45:33
    少年が負けたが 彼の気が変わったら?
  • 45:34 - 45:38
    これは口頭の契約だから撤回は無理です
  • 45:38 - 45:41
    理由を理解した上で自分で決めたのです
  • 45:41 - 45:45
    自分が死ぬのは他の人が生きるためだと
  • 45:45 - 45:49
    他の人が死んだら自分だってその人を…
  • 45:51 - 45:55
    でもこう言うかも「くじは間違ってる」
  • 45:56 - 45:58
    道徳的問題のすべては
  • 45:58 - 46:02
    少年が相談されなかったことにあります
  • 46:02 - 46:06
    何も知らなかったことが恐ろしいんです
  • 46:06 - 46:12
    彼が知らされていたら理解できますけど
  • 46:12 - 46:14
    よろしい では聞きたい
  • 46:14 - 46:18
    彼らの行為が許されると思う人もいるが
  • 46:18 - 46:20
    たったの20%だ
  • 46:23 - 46:25
    マーカスを筆頭に
  • 46:26 - 46:31
    真の問題は同意の欠如だと言う人もいた
  • 46:32 - 46:36
    くじ引きや公正な手続きの欠如や
  • 46:38 - 46:42
    キャサリンが言った 死への同意の欠如だ
  • 46:44 - 46:48
    そして同意があったと仮定した場合
  • 46:48 - 46:53
    犠牲が正当化されると考える人は増えた
  • 46:54 - 46:58
    最後に こう考える人に聞きたい
  • 46:58 - 47:01
    たとえ同意があっても くじを引いても
  • 47:01 - 47:04
    たとえ今にも死にそうなパーカーが
  • 47:04 - 47:08
    かすかに同意をつぶやいたとしても
  • 47:09 - 47:12
    それでも間違っている
  • 47:12 - 47:15
    なぜ間違っているのか? それを聞きたい
  • 47:16 - 47:21
    私はずっと定言的道徳論法の立場です
  • 47:25 - 47:29
    くじ引きすれば問題ないと思います
  • 47:29 - 47:32
    負けたらその人が自分の手で自殺する
  • 47:33 - 47:36
    それなら殺人ではありませんから
  • 47:37 - 47:39
    強制かもしれませんけど
  • 47:39 - 47:42
    そもそも良心の呵責が感じられません
  • 47:43 - 47:47
    "朝食を取っていると"なんて書くのは
  • 47:47 - 47:51
    人の命を何とも思ってないからです
  • 47:51 - 47:55
    だから私は定言的に考えざるを得ません
  • 47:55 - 47:57
    罰したいんだね
  • 47:57 - 48:00
    自責の念が欠けているから
  • 48:02 - 48:07
    よろしい 他に弁護できる人で
  • 48:08 - 48:11
    同意に関係なく間違いだという人は?
  • 48:13 - 48:16
    私たちの社会では 殺人は殺人です
  • 48:17 - 48:19
    社会はいかなる殺人も区別しません
  • 48:20 - 48:22
    どんな場合でも何の違いもないんです
  • 48:23 - 48:27
    一つ質問だ ここでは3対1の命だが
  • 48:30 - 48:34
    1人は孤児で 家族もいない
  • 48:34 - 48:37
    3人には国に帰れば家族がいて
  • 48:37 - 48:40
    扶養すべき妻や子どもがいた
  • 48:41 - 48:43
    ベンサムに戻って考えてみよう
  • 48:44 - 48:47
    彼は全員の幸福を考えろと言った
  • 48:47 - 48:50
    すべてを合計しなければならない
  • 48:51 - 48:54
    だからこれは3対1ではない
  • 48:54 - 48:57
    故郷の人々もいる
  • 48:58 - 49:03
    当時の新聞や大衆は同情的だった
  • 49:05 - 49:07
    新聞にはこう書いてある
  • 49:07 - 49:10
    愛する人や家族への心配がなかったら
  • 49:10 - 49:13
    彼らもこんなことはしなかっただろう
  • 49:13 - 49:17
    でも社会の隅に追いやられた人だって
  • 49:17 - 49:21
    家族を養いたいという気持ちは同じです
  • 49:21 - 49:23
    人を殺せば殺人です
  • 49:23 - 49:26
    同じ犯罪は同じ様に扱うべきです
  • 49:26 - 49:30
    同じ犯罪でもある種の殺人は
  • 49:30 - 49:33
    より暴力的ですが
  • 49:33 - 49:36
    全部同じものは全部同じです
  • 49:36 - 49:39
    動機は関係ありません
  • 49:39 - 49:44
    仮にこれが3人ではなく30人 300人
  • 49:44 - 49:47
    300人を救うための1人の命だとしよう
  • 49:47 - 49:50
    さらに3000人とか もっと大勢なら?
  • 49:51 - 49:54
    もっと大勢でも同じことです
  • 49:54 - 49:58
    正義とは全体の幸福を増やすことだ
  • 49:58 - 50:02
    と言うベンサムは間違っている?
  • 50:02 - 50:04
    そうは思いませんが 殺人は殺人です
  • 50:05 - 50:07
    君が正しいならベンサムが間違っている
  • 50:08 - 50:09
    わかりました 彼が間違ってます
  • 50:10 - 50:11
    よく言った
  • 50:12 - 50:16
    さて 議論はこのくらいにして
  • 50:19 - 50:22
    どんな反論が出たか考えてみよう
  • 50:23 - 50:25
    彼らがしたことへの弁護も聞いた
  • 50:26 - 50:30
    それは必要性や状況と関係していて
  • 50:31 - 50:35
    暗黙には 数が重要だという考えだ
  • 50:35 - 50:39
    数だけではなく広がる影響も重要だ
  • 50:40 - 50:42
    彼らには扶養すべき家族がいたが
  • 50:43 - 50:46
    少年は孤児で 誰も気にしない
  • 50:47 - 50:50
    だからそれらを足し合わせ
  • 50:50 - 50:55
    幸福と苦難を計算したならば
  • 50:56 - 50:58
    この件についてはこう言えるだろう
  • 50:58 - 51:01
    彼らのしたことは正しかったと
  • 51:02 - 51:06
    ここで少なくとも三種類の反論があった
  • 51:09 - 51:13
    彼らのしたことは無条件に間違いだ
  • 51:13 - 51:16
    最後に聞いたように 定言的に間違いだ
  • 51:17 - 51:19
    殺人は殺人で常に間違っている
  • 51:19 - 51:23
    たとえ社会全体の幸福を増やすとしても
  • 51:25 - 51:27
    定言的反対意見だ
  • 51:28 - 51:30
    だがさらに検討する必要がある
  • 51:30 - 51:34
    なぜ殺人は定言的に間違っているのか
  • 51:35 - 51:37
    その理由は
  • 51:38 - 51:41
    人はある種の基本的権利を持つからか?
  • 51:42 - 51:46
    とすれば その権利はどこからくるのか
  • 51:46 - 51:50
    幸福の増大という考えからでないなら
  • 51:50 - 51:52
    これが質問その1だ
  • 51:52 - 51:54
    また
  • 51:56 - 52:01
    くじ引きをすれば変わるという人もいた
  • 52:04 - 52:07
    それに賛同する人もいたが
  • 52:08 - 52:12
    これは正確には定言的反対意見ではない
  • 52:13 - 52:18
    全体のため 誰かが犠牲になるとしても
  • 52:18 - 52:22
    皆平等に扱われるべきだという意見だ
  • 52:23 - 52:25
    これは検討すべき別の問題を提起する
  • 52:25 - 52:29
    なぜある公正な手続きに同意することは
  • 52:29 - 52:34
    その運用から生じるどんな結果をも
  • 52:34 - 52:36
    正当化するのか?
  • 52:37 - 52:42
    これが質問その2 そして質問その3は
  • 52:42 - 52:46
    同意の基本概念だ 提案はキャサリン
  • 52:48 - 52:52
    もし少年が死ぬことに同意したのなら
  • 52:52 - 52:56
    付け足されたように 強制でないのなら
  • 52:56 - 53:00
    その場合 彼の命を奪うことは問題ない
  • 53:01 - 53:04
    この考えに賛同した人は多かった
  • 53:04 - 53:08
    これは3つ目の哲学的問題を提起する
  • 53:08 - 53:12
    同意の道徳的な働きとは何か?
  • 53:14 - 53:18
    なぜ同意はそのような違いを生むのか?
  • 53:19 - 53:23
    同意がなければ間違いとされる行為が
  • 53:23 - 53:27
    同意があれば許されるというように
  • 53:29 - 53:33
    これら3つの問いを検討するために
  • 53:34 - 53:36
    次回から功利主義の哲学者
  • 53:36 - 53:40
    ベンサムとミルを読んでいこう
Title:
Justice: What's The Right Thing To Do? Episode 01 "THE MORAL SIDE OF MURDER"
Description:

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Video Language:
English
Team:
PACE
Duration:
54:56

Japanese subtitles

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