人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda
-
0:18 - 0:22みなさん こんにちは
矢倉大夢と申します -
0:22 - 0:25僕は中学1年の時に
プログラミングに出会って -
0:25 - 0:27そこからプログラマーとして
活動しておりまして -
0:27 - 0:30例えば第2セッションの
篠田さんの話に出てきた -
0:30 - 0:34デフコンの大会などにも
参加したりしてるんですけれども -
0:34 - 0:37こういったことをやっていると
よく聞かれる質問が1つありまして -
0:37 - 0:41「好きな教科は何ですか?」という
まぁベタな質問なんですけれども -
0:41 - 0:45「どうせ数学が好きなんでしょ?」
とよく言われますが -
0:45 - 0:50実は僕 社会の「倫理・政経」
という科目が好きなんですね -
0:52 - 0:56この「倫理・政経」特に「倫理」
と言われてパッとイメージできる方は -
0:56 - 0:59あまりいらっしゃらない
かもしれないんですけれども -
0:59 - 1:02一言で言うと「思想史」をやってます
-
1:02 - 1:05「思想史」というのは
-
1:05 - 1:08「人間とは何か?」であったり
-
1:08 - 1:10「世界はどのようにできているのか?」
-
1:10 - 1:13そういった問いかけに対する
-
1:13 - 1:16人類の考えてきた歴史を学ぶ
というもので -
1:16 - 1:20人間や世界に関する法則を
見つけ出していく — -
1:20 - 1:25人間や世界を相対化していく
試みを学んでいく — -
1:25 - 1:29そういうものになってるんですね
-
1:30 - 1:34古代ギリシャのタレスは
「万物の始原は 水である」 -
1:34 - 1:38つまり 世界は水からできている
という風に言いました -
1:38 - 1:41他にも同じくギリシャの
ヘラクレイトスは -
1:41 - 1:45「万物は流転する」であったり
-
1:45 - 1:47世界はどうとか 人間はどうとか
-
1:47 - 1:50色んな人が色んなことを
考えてきたんですね -
1:50 - 1:53こういった歴史を学んできたんですが
-
1:53 - 1:58その中で 僕は
1人の考えに惹かれました -
1:58 - 2:02それはヘーゲルという
ドイツの思想家で -
2:02 - 2:05人間の精神であったり
-
2:05 - 2:10国家 あるいは歴史や美学まで
様々な分野に渡る -
2:10 - 2:12色んな思想を
残してきているんですけれども -
2:12 - 2:16彼の色んなモノを
体系的にモデル化するという -
2:16 - 2:19そういう部分に僕は惹かれました
-
2:19 - 2:22このモデル化っていうものは
様々な事柄を -
2:22 - 2:25論理的に一貫性を持つように
まとめ上げることなんですけれども -
2:25 - 2:28例えば ニュートンは地球の上で
-
2:28 - 2:33モノを離すと落ちる
という現象や -
2:33 - 2:37太陽の周りを地球は回っているという
そういった現象について -
2:37 - 2:40「万有引力の法則」というものを
導き出すことによって -
2:40 - 2:44一貫的に説明出来る
そういうモデルを作り上げました -
2:44 - 2:46このモデル化という作業は
-
2:46 - 2:50実はプログラミングにも
かなり共通する部分がありまして -
2:50 - 2:51「カーナビ」ありますよね?
-
2:51 - 2:54多分 みなさんのお家の車にも
ついていると思うんですけれども -
2:54 - 2:59このカーナビ すごく簡単に
いい経路を見つけてくれますが -
2:59 - 3:03これも現実の世界の道や混雑状況を
モデル化してやって -
3:03 - 3:07数学的な仕組みの中で
扱えるようにすることによって -
3:07 - 3:10コンピューターがうまく経路を
見つけ出してくれるという -
3:10 - 3:13そういう仕組みになっています
-
3:14 - 3:18モデル化する上で
ヘーゲルが用いた手法が -
3:18 - 3:23「弁証法」と呼ばれるもので
非常に簡単に説明しますと -
3:23 - 3:26「何か」とそれに反する
「何か」があった時に -
3:26 - 3:30どちらか片方を信じ込んで
それに反するものを批判するのではなくて -
3:30 - 3:35その矛盾点を見つめ直して
それさえもカバーするような -
3:35 - 3:40より本質的でメタな部分を
取り出していくという -
3:40 - 3:43そういう考え方になります
-
3:43 - 3:47このヘーゲルの思想を学ぶ時に
僕は1つ頭に浮かんだことがありました -
3:47 - 3:52それは彼の考えを
今の 現代の時代に -
3:52 - 3:54適用するとどうなるのだろうかと
-
3:54 - 3:58つまりコンピューターが
人間に取って代わる時代において -
3:58 - 4:01これからどうなっていくんだろうと
そういう部分です -
4:01 - 4:06例えばこれは ある大学入試の過去問の
計算問題なんですけれども -
4:07 - 4:10これを手で解くと こうやって
ばーっていっぱい書いて -
4:10 - 4:14やっと答えが出る みたいな
そういう問題なんですけれども -
4:14 - 4:17これ「wolframalpha.com」
というウェブサイトに行って -
4:17 - 4:211行 式を入力してやるだけで
-
4:21 - 4:25こうやって答えはすぐ出て
グラフまでご丁寧に描いてくれると -
4:25 - 4:29こんなの 出ちゃうと あまり宿題を
やる気が起きなくなりますよね -
4:29 - 4:34別の例で言いますと 例えば
グーグルCEOのラリー・ペイジは -
4:34 - 4:38「人工知能の急速な発展によって
ロボットやコンピューターが -
4:38 - 4:42人間の仕事を奪っていくだろう」と
そういう風に言っています -
4:42 - 4:46実際に オックスフォード大学から
出た論文では -
4:46 - 4:51今後20年の間に
アメリカの雇用者の内 47%が -
4:51 - 4:55ロボットに取って代わられるだろうと
そういう予測をしています -
4:55 - 5:00例えばデータの入力作業であれば
99%の確率で -
5:00 - 5:03あと スポーツの審判は98%
-
5:03 - 5:06保険の審査も同じく98%の確率で
-
5:06 - 5:09ロボットがやるように
なるんじゃないかと -
5:09 - 5:12そういう風に予測されています
-
5:12 - 5:17これを さっきの話に
立ち戻って考えてみますと -
5:17 - 5:22人工知能や機械学習
あるいはロボット工学の発展によって -
5:22 - 5:25技術ができることが
格段に広がっていると -
5:25 - 5:29そういった中で 我々人間は
どうすればいいのだろうかと -
5:30 - 5:34完全に人間の存在意義は
無くなると悲観的になるのか -
5:34 - 5:38それとも 人間は
仕事なんてやることは無くなって -
5:38 - 5:42自由に生きていけるんだと
そう楽観的に考えるのか -
5:42 - 5:45そのどちらでもない考え方として
-
5:45 - 5:49僕は別の新しい考え方を
提示したいと思っています -
5:50 - 5:54それは コンピューターを通して
人間を相対化していく -
5:54 - 5:56そういったものになります
-
5:56 - 6:02これは ヒューマノイドロボットの研究の
第一人者の 石黒浩教授が造られた -
6:02 - 6:05ご自身そっくりの
アンドロイドなんですけれども -
6:05 - 6:09こういったアンドロイドを
造る意義として 石黒教授は -
6:09 - 6:14「リアルなアンドロイドと共に過ごすことで
『人間とは何か』を考察できる」 -
6:14 - 6:16そういう風に述べられています
-
6:16 - 6:18別の例で言いますと
-
6:18 - 6:21「仮想の音楽家」という
思考実験があります -
6:21 - 6:25これは 「コンピューターが
自動作曲した曲に対して -
6:25 - 6:28我々は感動できるのか」
という話なんですけれど -
6:28 - 6:32みなさんどう思われますか?
-
6:32 - 6:36自動作曲ということを知っていた上で
我々が感動できるのであれば -
6:36 - 6:40それは 曲のコンテンツ自体に
感動していると言えるでしょう -
6:40 - 6:43でも自動作曲だということを
知ってしまったら -
6:43 - 6:46全く感動できなくなって
しまうかもしれない -
6:46 - 6:50そういった場合は
我々は作曲の裏にある -
6:50 - 6:55人間の存在について
感動しているのではないかと言えると思います -
6:55 - 6:59つまり 例えばオリンピックで
ウサイン・ボルトが世界記録を出すと -
6:59 - 7:02我々は感動するんですけれども
-
7:02 - 7:05同じ速度で車が走っても
感動しませんよね? -
7:05 - 7:09それと同じようなことだと
言えるかもしれません -
7:09 - 7:13でも その上で
自動作曲を実現する上での -
7:13 - 7:17涙ぐましい努力や 苦労の話を聞くと
感動できるかもしれません -
7:17 - 7:22そういった場合は 作曲や
自動作曲の裏にある物語 — -
7:22 - 7:26つまりコンテキストに感動している
ということが言えるでしょう -
7:29 - 7:32コンピューターを通して人間を相対化
していくというのはどういうことかと言うと -
7:32 - 7:38つまり「人間の心にコンピューターで
実験的に迫る」ということだと思っています -
7:38 - 7:42実際に 僕がこれまで取り組んできたことの
1つを紹介したいと思います -
7:42 - 7:47それは 音楽の「サビ」を
検知するプログラムなんですが -
7:47 - 7:50「サビ」って何か
みなさん知ってますか? -
7:50 - 7:55一言で言うと 音楽の1番
盛り上がっている所を指す言葉でして -
7:55 - 7:58一般的に 今出てる曲の大部分は
-
7:58 - 8:03こうやって「Aメロ」「Bメロ」「サビ」
みたいな組み合わせが繰り返して -
8:03 - 8:06作られてることが多い
という風に言われています -
8:06 - 8:10これをプログラムで検知する時に
どうやっていたかと言いますと -
8:12 - 8:15つまり繰り返しを見つけてやれば
いいんじゃないか?と -
8:15 - 8:18曲があった時に「こことここが一緒」
みたいなのを見つけてやって -
8:18 - 8:21更にさっきの法則に則って
-
8:21 - 8:24「ここがAメロ Bメロ サビ
なんじゃないか?」と -
8:24 - 8:28そういう風に探して
これまでのプログラムはやっていました -
8:28 - 8:31でもこの手法には限界点がありました
-
8:31 - 8:36その一因は「ボーカロイド」
つまりコンピューター上で -
8:36 - 8:39曲を作ることのできる
ソフトウェアの登場です -
8:39 - 8:43これによりプロの作曲家でなくても
アマチュアの作曲家でも -
8:43 - 8:47より気軽に 自由に作曲することが
できるようになりました -
8:47 - 8:51その結果 より個性的で多様な曲が
生まれるようになって -
8:51 - 8:56さっきの法則に則っていないような曲も
たくさん作られるようになりました -
8:56 - 9:00更にその曲の大部分は
「ニコニコ動画」と呼ばれる -
9:00 - 9:03動画投稿サイトに
投稿されていました -
9:03 - 9:06つまり 曲の長さにも
制限が無くなって -
9:06 - 9:10すごく短い曲から
10分を超えるような大曲まで -
9:10 - 9:13ほんとに色んな曲が
作られるようになったんですね -
9:13 - 9:17そうなると さっきの手法では
太刀打ちできません -
9:17 - 9:20そこで僕が開発した手法では
-
9:20 - 9:23ニコニコ動画の
特徴的な機能の1つである -
9:23 - 9:27「コメント」というものを
組み合わせることによって -
9:27 - 9:31新たに精度を高く検知する
手法を作りました -
9:31 - 9:35簡単に言うと コメントの特徴的な要素を
独自の手法で取り出して -
9:35 - 9:38似てる部分やサビらしい部分を
見つけるという -
9:38 - 9:41そういう手法なんですけれども
-
9:41 - 9:45これに関して高校生向けの
科学技術の大会に出しまして -
9:45 - 9:48そこで
「科学技術政策担当大臣賞」という -
9:48 - 9:52ちょっと ややもすれば
噛んでしまいそうな名前の賞を頂きまして -
9:52 - 9:57そこから日本代表として参加した
インテルの国際大会では -
9:57 - 10:00「ブルーノ・ケスラー財団賞」
という賞を頂きました -
10:00 - 10:04技術というかテクノロジーの話で言うと
ここで終わりなんですけれども -
10:04 - 10:07こういった取り組みの中で1つ
僕が感じたことがありました -
10:07 - 10:10それは 人間にできることと
-
10:10 - 10:13コンピューターにできることの
境界線です -
10:15 - 10:17コメントを組み合わせるということは
-
10:17 - 10:20言わば人間の存在を
組み合わせることによって -
10:20 - 10:22検知できるようになっていると
-
10:22 - 10:25更にコメントを組み合わせてやっても
繰り返しがはっきりしないような曲だと -
10:25 - 10:28たまに 検知できないことがありました
-
10:28 - 10:32それでも人間は共通的に
サビを見つけることができるんです -
10:32 - 10:34そういった部分に
-
10:34 - 10:38人間の「人間らしさ」という部分が
あるんじゃないかという風に考えました -
10:39 - 10:44これからの時代 技術がどんどん
発展していくと言われる時代ですが -
10:44 - 10:47技術が発展したからこそ 迫っていける —
-
10:47 - 10:52人間にしかできないような
部分というのがあると思います -
10:53 - 10:56人間と技術の境界線 そこにこそ
-
10:56 - 11:01これからの時代を生き抜く答えがある
という風に思っています -
11:01 - 11:03ある思想家は言いました
-
11:03 - 11:08「労働からの疎外が
人間の 人間からの疎外を生む」 -
11:08 - 11:11つまり 人間の「人間」たる所以は
-
11:11 - 11:15「働くこと」こそに
あるんじゃないかと -
11:15 - 11:17でも僕はこう思います
-
11:17 - 11:21人間の人間たる所以は
クリエイティビティ つまり -
11:21 - 11:24創造にこそあるんじゃないかと
-
11:24 - 11:26ありがとうございました
-
11:26 - 11:30(拍手)
- Title:
- 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda
- Description:
-
技術の発展目覚ましい現代において、人間の仕事はコンピューターに代替されていくと言われています。高校生プログラマーの矢倉大夢が自身の取り組みの中で感じた、これからの時代を生き抜くための人間の可能性について語ります。
このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。 - Video Language:
- Japanese
- Team:
closed TED
- Project:
- TEDxTalks
- Duration:
- 11:43
![]() |
Retired user approved Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda | |
![]() |
Retired user edited Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda | |
![]() |
Retired user edited Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda | |
![]() |
Retired user edited Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda | |
![]() |
Hiroko Kawano accepted Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda | |
![]() |
Hiroyoshi Tsujiura edited Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda | |
![]() |
Hiroko Kawano declined Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda | |
![]() |
Hiroko Kawano edited Japanese subtitles for 人間の人間たる所似は、クリエイティビティにこそある | 矢倉 大夢 | TEDxKids@Chiyoda |