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危険な行動がいかに若者の脳を変化させるのか

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    ティーンエイジャーを理解しようと
    したことはありますか?
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    大変ですよね
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    きっと困惑されている
    ことでしょう
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    成績優秀で
    クラブのリーダーを務め
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    地域ボランティアに
    参加する若者が
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    度胸試しで洗剤を食べる動画を
    ネットに投稿したり
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    メールしながら
    スピード運転したり
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    一気飲みしたり
    違法薬物に手を出すのですから
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    どうして多くの若者が 聡明で技能や
    責任感を身に付けていながら
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    軽はずみなリスクも
    冒そうとするのでしょうか?
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    私は16才の時
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    同年代の子たちの姿を
    直接 あるいはネット上で
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    たびたび観察しながら
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    なぜ沢山の若者が暴走するのか
    考え始めました
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    まるで5年生の時に受けた
    薬物乱用防止教育が
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    効かなかったとでも
    いうようです
  • 0:52 - 0:53
    (笑)
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    気に掛かったのは
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    若者はリスクを経験するほど
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    ますます安易にリスクを
    冒すようになるということです
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    このことに気付いて
    困惑しましたが
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    好奇心も掻き立てられました
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    私の名前の意味は
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    「知の探求」ですので
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    この事を科学的に
    解明することにしました
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    13~18歳の若者が
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    子供や大人より冒険を好むことは
    良く知られていますが
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    何が彼らを駆り立てるのでしょうか?
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    ある日突然
    向う見ずになるのか
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    それとも自然な成長の
    一段階に過ぎないのでしょうか?
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    神経科学者たちの研究によれば
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    若者の脳は まだ成熟途中で
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    このため 意思決定が極めて不得手であり
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    危険な行為の犠牲になるとのことです
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    でも 成熟中の脳が原因なら
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    なぜ若者は子供より
    危険に惹かれるのでしょう?
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    若者の脳は子供のそれよりは
    発達しているはずです
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    それに世界中の若者が同じだけ
    大胆な訳ではありません
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    他にも気づいていない原因があって
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    それによりリスクを冒すのでしょうか?
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    それが私の研究テーマになりました
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    この研究を ある心理プロセスに
    関連付けることにしました
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    「馴化」と呼ばれるもので
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    簡単に言うと「慣れること」です
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    嘘をつくことなどもそうですが
    脳は繰り返すことによって
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    その行動に順応します
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    この概念に刺激を受け
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    同じ原理が 若者の無鉄砲さにも
    働いているのか
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    調べることにしました
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    私が予想したのは
    リスクを冒すことへの馴化が
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    恐れや罪悪感など
    リスクへの否定的感情を
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    鈍らせたり
    時には消してしまうことで
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    元々無防備な
    若者の脳を
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    変化させる可能性でした
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    そして恐れや罪悪感を
    感じにくくなることが
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    より危険な行為に導くのだと
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    つまり 私は研究を通じて
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    一つの大きな疑問への
    回答を試みたのです
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    なぜ若者は常識外れの
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    自らの心身を危険に晒す
    選択をするのかということです
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    ですが 研究を行うには
    大きな障害がありました
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    この研究をするには
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    被験者となるティーンエイジャーや
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    脳の活動を計測するための
    実験室や機器
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    そして私の研究を監督し
    指導してくれる先生が必要でした
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    リソースが必要だったのです
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    でも 私はサウスダコタの高校に通う
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    科学研究を行う機会に
    恵まれない生徒でした
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    私の学校には運動部や
  • 3:34 - 3:38
    バンド 合唱団 ディベートなどの
    クラブはありましたが
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    STEM教育や研究指導制度は
    ありませんでした
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    それに 地元では高校生が
    科学の研究をして
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    発表会に参加するなんて
    全く異例のことでした
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    要は シェフ並みの料理をするには
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    食材がなかったのです
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    こうした障害は厄介でしたが
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    私もしぶとい性格でした
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    また バングラデシュ移民の娘であり
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    学校にはムスリムの生徒が
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    一握りしかいなかったので
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    中々周りに馴染めませんでした
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    でも 社会に何か貢献したかったし
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    白人ばかりの地元にあって
    スカーフを巻いた褐色肌の
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    単に 浮いた存在でいるのは
    嫌でした
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    私はこの研究を通して
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    自分を認めてもらい
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    また 科学的探究が私のような
    居場所のない子供にとって
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    どれほど大切か
    示したかったのです
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    リソースは限られていましたが
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    工夫することで どんな困難も
    乗り越えられました
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    様々な実験方法や器具や
    被験者と関わる中で
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    創造力が育まれました
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    ありきたりの学校の図書館を
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    実験室に作り替え
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    同級生をモルモットにしたんです
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    (笑)
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    熱血的な地理の先生が
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    アメフト部のコーチを務める傍ら
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    私の研究のチアリーダーになってくれ
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    指導者として
    必要書類に署名もして下さいました
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    また 使えそうにないと分かった
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    実験用の脳波計ー
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    EEGともいう
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    情動反応を計測する装置ですがー
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    携帯型EEGのヘッドセットを
    自費で購入しました
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    新型のiPhone Xを買おうと
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    他の子たちが貯金している時にです
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    こうして遂に私は研究を始めました
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    私の中学高等学校にいる13~18才の
    生徒86人が対象です
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    学校の図書館にある
    パソコンブースで
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    生徒に意思決定の
    模擬実験を受けてもらいました
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    飲酒や薬物乱用 賭博などの
    現実における状況と同様な
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    リスクを冒す行動を
    測定するためです
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    生徒は脳波測定ヘッドセットを着けて
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    この実験を12回
    3日に渡って受けました
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    繰り返しリスクに遭遇する状況を
    再現するためです
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    ヘッドセットの測定画面では
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    生徒の様々な感情が観測されました
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    注意や興味 興奮 イライラ
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    罪悪感 ストレス 安堵などです
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    また 生徒には感情を
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    確立された尺度に基づいて
    評価してもらいました
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    こうして馴化の経過と
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    意思決定への影響を計測しました
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    研究の完了には29日かかりました
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    何ヶ月も必死で研究報告書を推敲し
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    カフェインの力を借りて
    夜2時までデータを綿密に計算し
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    私は結果をまとめ上げました
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    その結果から
    リスクを冒すことへの馴化が
  • 6:33 - 6:37
    感情の強度を変え
    若者の脳を変化させることで
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    更なるリスクを冒させることが
    分かりました
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    リスクに結びつく生徒の感情ー
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    恐怖やストレス 罪悪感 緊張
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    注意などは
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    シミュレーターで 初めてリスクに
    直面した時は高値で
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    これが若者の衝動を抑え
    自制を促し
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    更にリスクを冒す行動が
    抑制されます
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    しかし リスクへの遭遇を
    繰り返すほど
  • 7:03 - 7:06
    恐怖や罪悪感 ストレスは
    薄れていきます
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    これにより 若者は
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    本来脳が感じるべき
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    自然な恐怖や 警戒的な本能を
    感じなくなってしまうのです
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    また 若者の脳は
    まだ発達不十分で
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    より刺激を求める行動に
    心を奪われてしまいます
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    結果として
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    理にかなった意思決定のための
    自制心を失い
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    より大きなリスクを冒し
  • 7:31 - 7:33
    より危険な選択を
    するようになります
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    つまり 脳が発達中であることだけが
    原因なのではなく
  • 7:37 - 7:40
    馴化の過程も
    リスクを冒す行動のエスカレートに
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    一枚噛んでいるのです
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    若者が抱くリスクへの意欲が
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    脳の発達に伴う構造的 機能的変化に
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    主に起因するのだとしても
  • 7:51 - 7:54
    今回私の研究が
    危険であると示した点は
  • 7:54 - 7:56
    リスクへの馴化が
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    若者の脳を物質的に変化させ
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    更なるリスク行動に仕向ける
    可能性があることです
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    つまり 若者の未熟な脳と
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    馴化の影響が合わさり
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    より有害な効果を生む
    格好の状況になっているのです
  • 8:11 - 8:15
    この研究から 親御さんや世間にも
    お分かり頂けるのは
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    若者はわざと警告を無視するのでも
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    反抗期だから火遊びにふける訳でも
    ないということです
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    若者の直面する最大の障害物は
    リスクへの馴化なのです
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    馴化に伴う身体と感情の
    機能の変化が
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    過度の危険行為へと
    駆り立てるのです
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    私達はより安全な環境を整え
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    リスクへの接触を
    制限しなければなりませんが
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    馴化の危険性を踏まえた
    対策も必要です
  • 8:47 - 8:50
    今回の研究結果は
    若者への警鐘でもあります
  • 8:50 - 8:54
    生来の恐怖や罪悪感といった
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    危険から身を守るのに必要な感情は
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    彼らが火遊びを続けるほど
    麻痺していくのですから
  • 9:02 - 9:07
    そこで 私の発見を他の若者や
    科学者と共有すべく
  • 9:07 - 9:08
    この研究結果を
  • 9:08 - 9:13
    インテル国際学生科学技術フェア(ISEF)で
    発表しました
  • 9:13 - 9:15
    1800人を超す生徒が
  • 9:15 - 9:19
    75の国や地域から集結し
  • 9:19 - 9:22
    最先端の研究や発明を
    発表する場です
  • 9:22 - 9:25
    科学コンテストの
    オリンピックみたいですね
  • 9:25 - 9:26
    (笑)
  • 9:26 - 9:31
    そこで私は神経科学や心理学の専門家に
    自分の研究を紹介し
  • 9:31 - 9:34
    貴重な意見を頂きました
  • 9:34 - 9:37
    しかしISEFが開催された1週間で
    最も忘れがたかったのは
  • 9:37 - 9:40
    表彰式の時に
    大音響のスピーカーから
  • 9:40 - 9:42
    私の名前が聞こえた瞬間でした
  • 9:42 - 9:45
    私は驚きのあまり
    つい疑ってしまいました
  • 9:45 - 9:48
    誤って『ラ・ラ・ランド』が呼ばれた
  • 9:48 - 9:50
    アカデミー賞の再来かと
  • 9:50 - 9:51
    (笑)
  • 9:51 - 9:53
    幸いにも違いました
  • 9:53 - 9:55
    最優秀賞をいただいたんです
  • 9:55 - 9:58
    「行動・社会科学」部門でした
  • 9:58 - 10:02
    (拍手)
  • 10:04 - 10:05
    当然のことですが
  • 10:05 - 10:08
    受賞した興奮だけでなく
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    私の努力が認められた
    フェアに参加した経験全体が
  • 10:13 - 10:15
    私の好奇心を保ち
  • 10:15 - 10:17
    また 創造性や
  • 10:17 - 10:20
    忍耐力 想像力を伸ばしてくれました
  • 10:21 - 10:25
    この学校の図書館で実験を行う
    私の姿は
  • 10:25 - 10:27
    ありふれたもの
    かもしれませんが
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    私にとっては
    インスピレーションの元です
  • 10:30 - 10:34
    リスクを冒すことの
    意義を思い出させてくれるのです
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    かなり皮肉なのは分かっています
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    ですが リスクを冒すことで
  • 10:39 - 10:44
    思いがけない機会が訪れることに
    私は気づいたのです
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    私が研究したような
    危険で良くないリスクではなく
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    有益で
  • 10:48 - 10:50
    好ましいリスクです
  • 10:50 - 10:52
    私はリスクを取るほど
  • 10:52 - 10:57
    普通と違う状況に
    耐える力が強くなり
  • 10:57 - 10:59
    研究の遂行に必要な
  • 10:59 - 11:02
    粘り強さや 打たれ強さ 忍耐力が
    身に付いたのです
  • 11:02 - 11:05
    こうした教訓から
    私は思うようになりました
  • 11:05 - 11:08
    有害なリスクを冒すことの
    逆もあるのではないか
  • 11:08 - 11:12
    好ましい冒険心も繰り返すことで
    増強されるのではないか
  • 11:12 - 11:17
    良い行動は良い脳機能を
    育むのではないかと
  • 11:17 - 11:20
    どうやら次の研究テーマが
    見つかったようです
  • 11:20 - 11:26
    (拍手)
Title:
危険な行動がいかに若者の脳を変化させるのか
Speaker:
カシュフィア・ラフマン
Description:

ティーンエイジャーの若者は、なぜ馬鹿げた危険を冒すのでしょうか?突然無謀になるのか、それとも成長の過程に過ぎないでしょうか?この調査を行うため、インテル国際学生科学技術フェアの最優秀賞受賞者(現ハーバード大学1年)のカシュフィア・ラフマンは実験を計画して実施しました。高校生がどのようにリスクに反応し、それに慣れてしまうのか、そしてそのことが発達中の彼らの脳にどのように影響するのか?ラフマンのリスクと意思決定に関する発見により、若者がなぜそういう行動をとるのかという私達の思い込みが変わるかもしれません。

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
11:39

Japanese subtitles

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