誰も聞いたことのない、システィーナ礼拝堂の物語
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0:01 - 0:03ローマにいる自分を想像してください
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0:03 - 0:06向かっているのは
バチカン美術館 -
0:06 - 0:10長い回廊をゆっくり歩き
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0:10 - 0:14彫刻やフレスコ画など
様々なものの横を過ぎます -
0:14 - 0:17目指しているのはシスティーナ礼拝堂
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0:17 - 0:22長い回廊と階段と扉を抜けた先に
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0:22 - 0:25礼拝堂の入り口が現れます
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0:25 - 0:27あなたなら何を期待しますか?
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0:27 - 0:29広々としたドーム?
天使の聖歌隊? -
0:30 - 0:32実はそういうものは ありません
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0:32 - 0:36こう考える方が いいかもしれません
何があるでしょうか? -
0:36 - 0:39礼拝堂の壁にかかっているのは
カーテンです -
0:39 - 0:42壁に描かれたカーテンに
文字通り 囲まれます -
0:42 - 0:44これが礼拝堂 本来の装飾です
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0:44 - 0:49教会では タペストリーを使って
長いミサの間 寒さをしのぐだけではなく -
0:49 - 0:52「偉大なる生の劇場」を表したのです
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0:53 - 0:58この人間ドラマは 私たち全員が
役割を与えられた壮大な物語 -
0:58 - 1:01全世界を組み込んだ物語であり
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1:01 - 1:04システィーナ礼拝堂の絵画は
3つの段階に沿って -
1:04 - 1:06展開していきます
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1:06 - 1:10ここは当初 富と教養を持つ
少数のキリスト教 聖職者用に -
1:10 - 1:12建てられた空間でした
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1:13 - 1:15彼らは ここで祈り
ここで教皇を選出しました -
1:15 - 1:16500年前 ここは
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1:16 - 1:19聖職者のための
究極の「男の隠れ家」でした -
1:20 - 1:25では なぜこの場所が
多種多様な文化を持つ人々を -
1:25 - 1:28毎年500万人も引きつけ
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1:28 - 1:30魅了するようになったのでしょうか
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1:30 - 1:35それは この狭い空間に
創造性が爆発しているからです -
1:35 - 1:40地政学的な新たな領域の発見という
熱狂的な興奮に触発されて -
1:40 - 1:44古くからの教会による
布教の伝統に火がつき -
1:44 - 1:47歴史上 最も偉大な芸術作品が
生まれたのです -
1:48 - 1:53この発展は大きな進歩であり
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1:53 - 1:55少数のエリート層に始まり
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1:55 - 1:59最終的には世界中の大衆という
観客に向けて -
1:59 - 2:01語りかけることになりました
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2:01 - 2:04この進歩は3つの段階を経ていて
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2:04 - 2:07それぞれが歴史的な出来事に
結びついていました -
2:07 - 2:09最初の段階は かなり限定的で
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2:09 - 2:12とても狭い見方しか
反映していませんでした -
2:12 - 2:162つ目の段階は
コロンブスの歴史的な航海によって -
2:16 - 2:19世界観が劇的に変わることで
生じたものです -
2:19 - 2:20そして3つ目の段階は
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2:21 - 2:23「発見の時代」が かなり進み
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2:24 - 2:26教会がグローバル化という試練に
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2:26 - 2:27立ち向かっていた頃でした
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2:28 - 2:32この教会の元々の装飾は
小さな世界を反映しています -
2:32 - 2:34キリストやモーゼの
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2:34 - 2:38人生を語る 活気に満ちた場面があり
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2:38 - 2:42ユダヤ教徒やキリスト教徒の
進歩を表しています -
2:42 - 2:44これを発注した教皇シクストゥス4世は
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2:44 - 2:47フィレンツェ画壇の
ドリームチームを結集しました -
2:47 - 2:50そこにいたのは
サンドロ・ボッティチェリや -
2:50 - 2:54後年ミケランジェロの師となる
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2:54 - 2:55ギルランダイオなどです
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2:55 - 3:01彼らは純粋な色の装飾で
壁を覆い尽くしました -
3:01 - 3:04この物語の中に 見慣れた光景が
あるのがわかるでしょう -
3:04 - 3:08ローマにある史跡や
トスカナの風景を取り入れることで -
3:08 - 3:11はるか彼方の物語を
親しみやすくしています -
3:11 - 3:15教皇自身の友人や家族も
描き加えられ -
3:15 - 3:18欧州大陸の小さな宮廷の装飾には
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3:18 - 3:20ぴったりでした
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3:20 - 3:25ところが1492年に
新世界が発見された頃には -
3:25 - 3:27世界が どんどん広がり
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3:27 - 3:33奥行き40m 幅14mの この小宇宙も
広がる必要に迫られました -
3:33 - 3:35そして それは実現しました
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3:35 - 3:37豊かな創造性とビジョンに恵まれた
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3:37 - 3:40一人の天才と
素晴らしい物語のおかげです -
3:40 - 3:43この天才こそ
ミケランジェロ・ブオナロッティ -
3:43 - 3:471,100平方メートルある天井の装飾を
依頼された時は33歳でした -
3:47 - 3:49彼は苦境に立っていました
-
3:49 - 3:52絵画の修行もしましたが
彫刻を極めるために辞めました -
3:52 - 3:55フィレンツェには 怒り狂った
依頼人が沢山いました -
3:56 - 3:57未完成の依頼を山のように残し
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3:57 - 4:01一大彫刻プロジェクトを期待して
ローマに行ってしまったからです -
4:01 - 4:03でも その計画は反故になってしまいました
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4:03 - 4:07彼に残されたのは
システィーナ礼拝堂の天井の -
4:07 - 4:10装飾的な背景に重ねて
十二使徒を描く契約だけでした -
4:10 - 4:13イタリア中 どこにでもあるような
装飾画です -
4:14 - 4:15ところが この天才は挑戦します
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4:15 - 4:19人間が勇敢にも大西洋を
横断した この時代に -
4:19 - 4:23ミケランジェロは 新しい芸術の
海図を作ろうしたのです -
4:23 - 4:25彼も物語を伝えようとしました
-
4:25 - 4:29ただし 使徒の物語ではなく
偉大な はじまりの物語 つまり -
4:29 - 4:31『創世記』の物語です
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4:31 - 4:34天井に物語を描くのは
容易な仕事ではありません -
4:34 - 4:39どうすれば19m下から 活気あふれる情景を
読み取ることができるでしょうか? -
4:39 - 4:42200年間フィレンツェの工房に
伝わってきた -
4:42 - 4:45絵画の技法は このような物語を
描くには不十分でした -
4:46 - 4:49ただミケランジェロの本職は
画家ではなかったので -
4:49 - 4:51自分の強みを生かすことにしたのです
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4:51 - 4:54彼は 空間を群衆で満たす技術を
身につける代わりに -
4:54 - 4:58ハンマーとノミを手に
大理石の塊を彫り -
4:58 - 5:01その中から人物像を取り出しました
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5:01 - 5:03ミケランジェロは本質を重視し
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5:03 - 5:07物語を伝えるために 躍動感あふれる
堂々たる肉体を使いました -
5:07 - 5:12この計画を支持したのは
非凡な教皇ユリウス2世でした -
5:12 - 5:16この教皇はミケランジェロの
大胆な才能を恐れませんでした -
5:16 - 5:18教皇シクストゥス4世の甥で
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5:18 - 5:2230年間 芸術にどっぷり浸かっていたので
その力を心得ていました -
5:22 - 5:25歴史上「戦う教皇」の異名をとった彼ですが
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5:25 - 5:29バチカンに残したのは
要塞でも 砲台でもなく -
5:29 - 5:30芸術でした
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5:30 - 5:33ラファエロの間や システィーナ礼拝堂
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5:33 - 5:34サン・ピエトロ大聖堂や
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5:34 - 5:40大規模なギリシャ・ローマ彫刻の
コレクションを後世に残したのです -
5:40 - 5:44確かにキリスト教的ではありませんが
このコレクションは -
5:44 - 5:48世界初の近代的美術館
バチカン美術館の基礎となりました -
5:49 - 5:50ユリウスという人物は
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5:50 - 5:54壮麗さと美を通して
バチカンに永遠の意義を -
5:54 - 5:56与えようと考えました
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5:56 - 5:58その判断は正解でした
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5:58 - 6:03ミケランジェロとユリウス2世という
2人の巨人が出会いが -
6:03 - 6:05システィーナ礼拝堂を産んだのです
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6:06 - 6:08ミケランジェロは この計画に没頭し
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6:08 - 6:133年半で完成させました
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6:13 - 6:17最小限の人員しか使わず
何時間にも渡って ほとんどの時間を -
6:17 - 6:21頭上に手を伸ばして
天井に物語を描いたのです -
6:21 - 6:23では この天井画を見ながら
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6:23 - 6:26物語が世界に広がる様子を
見ていきましょう -
6:26 - 6:31芸術と私たちの世界の間に
ありふれた関係は もう存在しません -
6:31 - 6:35そこにあるのは
空間と構造とエネルギーだけです -
6:35 - 6:409枚のパネルを取り囲むように
堂々たる枠が描かれ -
6:40 - 6:44絵画的な色彩というより
彫刻的な形態に突き動かされます -
6:44 - 6:48私たちは入り口の近く
部屋の端に立っています -
6:48 - 6:52祭壇から離れた場所
聖職者用の入り口がついた柵から -
6:52 - 6:57私たちは覗き込んで
遠くにある始まりを探します -
6:57 - 7:01科学的な探求であれ
聖書の伝統であれ -
7:01 - 7:05私たちは まず原初の光を考えます
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7:05 - 7:07ミケランジェロは原初のエネルギーを
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7:07 - 7:10光と闇が分かれる様と
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7:10 - 7:13遠くにぼんやりと躍動する姿を
狭いスペースに -
7:13 - 7:15描き込むことで表現しました
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7:15 - 7:18次にその姿は より大きくなり
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7:18 - 7:21左から右へ すごい勢いで
動いていくのが見えます -
7:21 - 7:26その後には 太陽と月と
植物が残されます -
7:26 - 7:30他の画家とは違い
ミケランジェロは創り出された物に -
7:30 - 7:32焦点は合わせません
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7:32 - 7:36創造という行為自体に注目したのです
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7:36 - 7:40そして詩の休止のように
動きは静まり -
7:40 - 7:41創造主は停止します
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7:41 - 7:43何をしているのでしょう?
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7:43 - 7:46造っているのは大地でしょうか
それとも海でしょうか? -
7:46 - 7:50あるいは自分が造った
宇宙や いろいろな宝物を振り返り -
7:50 - 7:52ミケランジェロと同じように
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7:52 - 7:55天井にある自分の創造物を振り返って
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7:55 - 7:57「良し」と言っているのでしょうか
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7:58 - 8:00これで場面は整い
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8:01 - 8:04いよいよ創造のクライマックス
男の創造に至ります -
8:04 - 8:09アダムは 暗い背景に明るく描かれ
際立っています -
8:09 - 8:10でも よく見ると
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8:10 - 8:13足は地面の上に力なく置かれ
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8:13 - 8:15腕は膝の上に 重く寄りかかっています
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8:15 - 8:19アダムには 偉大さへと突き進むような
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8:19 - 8:21内面の輝きがありません
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8:21 - 8:26創造主は その輝きを
指先から与えようとしています -
8:26 - 8:29アダムの手との間は わずか1ミリです
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8:29 - 8:31これを見て私たちは夢中になります
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8:31 - 8:34なぜなら もう少しで指が触れ
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8:34 - 8:37人間が自分の目的を見つけて
立ち上がり -
8:37 - 8:40創造物の頂点を
極めようとしているからです -
8:40 - 8:43ここでミケランジェロは
変化球を投げます -
8:43 - 8:45もう一方の腕の中にいる人物は?
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8:46 - 8:47最初の女性 イヴです
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8:47 - 8:50でもイヴは単なる思いつきではなく
筋書きの一部で -
8:50 - 8:53最初からミケランジェロの
頭にありました -
8:53 - 8:57イヴを見てください
腕を 神の腕に回すほど親しいのです -
8:57 - 9:0321世紀アメリカの美術史家である
私にとって この時がまさに -
9:03 - 9:06絵が語りかけてきた瞬間でした
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9:06 - 9:09ここで表現された人間ドラマは
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9:09 - 9:12男と女のドラマだと気づいたからです
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9:12 - 9:16だからこそ 天井の心臓部となる
中心にはアダムの創造ではなく -
9:16 - 9:18女性の創造が描かれているのです
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9:18 - 9:22確かにエデンの園では
2人は一緒でしたし -
9:22 - 9:24堕落する時も一緒
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9:24 - 9:28堂々とした姿が 恥ずかしさのあまり
前かがみになるのも一緒でした -
9:29 - 9:31今 天井の重要な地点に
差し掛かったところです -
9:31 - 9:34教会の中でも
これ以上 進めない地点に -
9:34 - 9:36いるのです
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9:36 - 9:39入り口のついた柵で
内部の祭壇には近づけないので -
9:39 - 9:42まるで追放されたアダムとイヴのようです
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9:42 - 9:44天井に描かれた 後の場面は
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9:44 - 9:46人でごった返す
私たちの周りの世界を反映しています -
9:46 - 9:49ノアと箱舟と洪水
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9:49 - 9:52生贄を捧げ 神と契約するノア
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9:52 - 9:54彼は救世主かもしれません
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9:54 - 9:58その一方でノアはブドウを育て
ワインを作って 泥酔し -
9:58 - 10:00納屋の中で 裸で眠りこみます
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10:00 - 10:03天井画のデザインとしては 奇妙です
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10:03 - 10:05生命を創造する神に始まり
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10:05 - 10:07納屋で泥酔する男に至るのですから
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10:07 - 10:10アダムと比べてみると ミケランジェロが
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10:10 - 10:12私たちをからかっていると思うでしょう
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10:13 - 10:15でも彼はノアの真下に
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10:15 - 10:18明るい色彩を配置して
暗さを吹き飛ばします -
10:18 - 10:22エメラルド色 橙色 緋色の
預言者ゼカリアです -
10:22 - 10:25ゼカリアは東から
光がさすことを預言し -
10:25 - 10:28その瞬間 私たちの目は
新たな方向へと向けられます -
10:28 - 10:32巫女や預言者たちが 列をなして
私たちを導いてくれます -
10:32 - 10:36道中の安全を確保する
英雄たちに導かれ -
10:36 - 10:38母親や父親にしたがって進みます
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10:38 - 10:42彼らが動力となって
偉大な人間のエンジンを前進させます -
10:42 - 10:45さて とうとう私たちは天井画の要
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10:45 - 10:47すべてが最高潮に達する場所に至ります
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10:47 - 10:51そこには 自分の領域から抜け出し
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10:51 - 10:52私たちの空間を
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10:52 - 10:53蝕む人物がいます
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10:53 - 10:56ここが最も大事な局面
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10:56 - 10:58過去が現在と出会う場所です
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10:58 - 11:01この人物 ヨナは
3日間クジラの腹の中で過ごしたので -
11:01 - 11:04キリスト教徒にとっては
イエスの犠牲を通した -
11:04 - 11:05人間の復活を象徴します
-
11:05 - 11:08ただ 毎日ここを訪れる
あらゆる信仰を持った -
11:08 - 11:11大勢の訪問者にとって
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11:11 - 11:17ヨナは 遠い過去が今の現実と
出会う瞬間を表しています -
11:18 - 11:23これらすべてに導かれ ぽっかりと
開いた祭壇のアーチにたどり着き -
11:23 - 11:25目にするのがミケランジェロの
『最後の審判』です -
11:25 - 11:29世界が再び変容した後の
1534年に制作されました -
11:29 - 11:31宗教改革により教会は分裂し
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11:31 - 11:34オスマン帝国はイスラムの名を
世に広め -
11:34 - 11:38マゼランが太平洋航路を
発見していました -
11:38 - 11:43ベニスより遠くに行ったこともない
59歳の芸術家は この新世界に -
11:43 - 11:45どう語りかけるのでしょう?
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11:45 - 11:48ミケランジェロが
描こうとしたのは 宿命であり -
11:48 - 11:50優れたものを
-
11:50 - 11:51後世に残したいという
-
11:51 - 11:54人類共通の普遍的な欲求です
-
11:54 - 11:57『最後の審判』という
キリスト教的な視点で -
11:57 - 11:59世界の終わりを語るため
-
11:59 - 12:02ミケランジェロは
驚くほど美しい肉体を持った -
12:02 - 12:05人々の姿を描きました
-
12:05 - 12:08いくつかの例外を除き
何も身につけておらず -
12:08 - 12:09誰かの肖像でもなく
-
12:09 - 12:12肉体だけで構成され
-
12:12 - 12:15この391人の中に
一人として同じ者はいません -
12:15 - 12:18私たちと同じで
それぞれが唯一の存在です -
12:18 - 12:22人々は下の隅にある
地面から抜け出し -
12:22 - 12:24上昇しようと もがきます
-
12:24 - 12:27昇天した人々は
他の人を救うため手を伸ばします -
12:27 - 12:29この素晴らしい場面では
-
12:29 - 12:32黒人と白人が
一緒に引き上げられていて -
12:32 - 12:34新しい世界における人間の調和を
-
12:34 - 12:36見事に表現しています
-
12:36 - 12:39画面で一番大きな部分は
勝者に与えられています -
12:39 - 12:44そこにはスポーツ選手のような
全裸の男女がいます -
12:44 - 12:47彼らこそ 困難を乗り越えた人々 つまり
-
12:47 - 12:50困難と戦い 障害を克服する人間像という
ミケランジェロの -
12:50 - 12:52想像の産物です
-
12:52 - 12:54まるでスポーツ選手のようです
-
12:54 - 12:57男性と女性が途方もない
スポットライトの中で -
12:57 - 12:59体を曲げ ポーズをとっています
-
13:00 - 13:02この集団を統率するのはイエスです
-
13:02 - 13:04十字架上で苦痛に耐えていた男が
-
13:04 - 13:07今では栄誉に満ちた天国の支配者なのです
-
13:07 - 13:10ミケランジェロが絵画で示したように
-
13:10 - 13:12苦難や挫折や障害は
-
13:12 - 13:15美徳を封じるどころか
生み出すのです -
13:16 - 13:19ところで これは奇妙な結果を招きます
-
13:19 - 13:21ここは教皇の私的な礼拝堂ですが
-
13:21 - 13:24「ひしめく裸体」と呼ぶのが
もっともふさわしいでしょう -
13:24 - 13:28それでもミケランジェロは
最高の芸術的言語を使おうとしました -
13:28 - 13:30考えうる最も普遍的な
芸術上の言語 つまり -
13:30 - 13:32人間の肉体です
-
13:32 - 13:38だから 不屈の精神や自制といった
美徳を示す方法を使うのではなく -
13:38 - 13:42ユリウス2世の見事な
彫刻コレクションからヒントを得て -
13:42 - 13:46内面的な強さを 外から見える力として
表したのです -
13:47 - 13:51ところで当時の人は
こう書き残しています -
13:51 - 13:55この礼拝堂は あまりにも美しいので
論争は避けられないだろう と -
13:55 - 13:56実際そうなりました
-
13:56 - 14:00印刷機のおかげで 裸体に対する
批判が広まっていることが -
14:00 - 14:03ミケランジェロの
知るところとなりました -
14:03 - 14:07すぐに この人間ドラマの傑作は
「ポルノ」というレッテルを貼られました -
14:07 - 14:09彼が肖像を2つ描き加えたのは その頃です
-
14:09 - 14:121つは彼を非難した儀典長の肖像
-
14:12 - 14:16もう1つは自分自身の肖像を
スポーツ選手ではなく 乾いた皮として -
14:16 - 14:18苦痛に耐える殉教者の手元に描きました
-
14:18 - 14:22彼が亡くなる年 数名の人物に
覆いが描き加えられました -
14:22 - 14:28彼が説いた栄光は
余計なものに邪魔されました -
14:28 - 14:30さて 私たちは今
-
14:30 - 14:32この世にいます
-
14:32 - 14:34始まりと終わりの間にある
-
14:34 - 14:36この空間
-
14:36 - 14:41壮大な人間の経験全体に
閉じ込められています -
14:41 - 14:45私たちは システィーナ礼拝堂で
鏡を覗くように周りを見ます -
14:45 - 14:46自分は この絵の中の誰だろう?
-
14:46 - 14:47群衆の中にいるのか?
-
14:47 - 14:49あの酔っ払いだろうか?
-
14:49 - 14:50あのスポーツ選手だろうか?
-
14:50 - 14:52そして心躍る美の楽園を出る頃には
-
14:52 - 14:56私たちは人生最大の疑問を
抱くようになります -
14:56 - 15:01自分は何者か 人生という大舞台で
自分はどの役なのか という疑問です -
15:02 - 15:03ありがとうございます
-
15:03 - 15:06(拍手)
-
15:06 - 15:09(ブルーノ・ジュッサーニ)
エリザベス・レヴ ありがとう -
15:09 - 15:13あなたはポルノの話題を
出していましたね -
15:13 - 15:18当時の人々にとって
ヌードや日常の場面や不適切なものが -
15:19 - 15:20多すぎたという点です
-
15:20 - 15:22ただ問題は より深刻です
-
15:22 - 15:25単に覆いを描き加えたことが
問題なのではなく -
15:25 - 15:28芸術が破壊される寸前だったんですから
-
15:28 - 15:31(エリザベス・レヴ)『最後の審判』は
大きな影響力を持ちました -
15:31 - 15:34印刷術によって 誰でも
見られるようになったためです -
15:34 - 15:38この問題も1〜2週間で
起こったわけではなく -
15:38 - 15:4220年もの期間に渡って
続いた問題でした -
15:42 - 15:44教会には こんな評論や
-
15:44 - 15:45批判が寄せられました
-
15:45 - 15:48「教会が 我々に生き方を
説けるわけがない -
15:48 - 15:51教皇の礼拝堂には
ポルノがあるではないか」 -
15:51 - 15:54こんな批判や
-
15:54 - 15:57作品を破壊しようする
主張がありましたが -
15:57 - 15:59ミケランジェロが亡くなった年に
-
15:59 - 16:01教会は やっと作品を守るための
-
16:01 - 16:02妥協案を思いつきました
-
16:02 - 16:06それが30枚の覆いを
描き加えるということでした -
16:06 - 16:08ちなみにイチジクの葉を描く習慣は
-
16:08 - 16:10ここから始まりました
-
16:10 - 16:14教会は芸術作品を
守ろうとしたのであって -
16:14 - 16:16汚したり破壊する気はなかったのです
-
16:17 - 16:20(ブルーノ)今の話は
システィーナ礼拝堂で -
16:20 - 16:23よく耳にするツアーガイドとは
まったく違いますね -
16:23 - 16:25(笑)
-
16:25 - 16:27(エリザベス)どうでしょう
それは宣伝ですか? -
16:27 - 16:28(笑)
-
16:28 - 16:31(ブルーノ)いえいえ そうではなく
私の意見なのですが -
16:31 - 16:35現在 芸術を体験する時
いくつか問題があります -
16:35 - 16:38その場で見ようとする人が
あまりにも多く -
16:38 - 16:41500万人が礼拝堂の
小さなドアをくぐりますが -
16:41 - 16:44それは私たちが今 経験したのとは
-
16:44 - 16:45まったく違うのです
-
16:45 - 16:48(エリザベス)そうですね
立ち止まって見るのは 確かにいいことです -
16:48 - 16:51ただ 理解して欲しいのは
-
16:51 - 16:53毎日2万8千人が訪れていた頃
-
16:53 - 16:56たくさんの人々が一緒に
周囲を見回しながら -
16:56 - 16:58素晴らしさを感じていた頃だって
-
16:58 - 17:02500年前の壁画が
自分の周りに立っている人々全員を -
17:02 - 17:05惹きつけ みんなが天井を見上げて
-
17:05 - 17:07感動していたのです
-
17:07 - 17:12これは 時間や地理的空間を超え
私たち全員に 本当の意味で -
17:12 - 17:15美が伝わることを
見事に証明しています -
17:15 - 17:16(ブルーノ)グラツィエ
-
17:16 - 17:17(エリザベス)グラツィエ
-
17:17 - 17:18(ブルーノ)ありがとう
-
17:18 - 17:20(拍手)
- Title:
- 誰も聞いたことのない、システィーナ礼拝堂の物語
- Speaker:
- エリザベス・レヴ
- Description:
-
システィーナ礼拝堂は地球上で最も象徴的な建物ですが、知られていないことも沢山あります。美術史家エリザベス・レヴが巧みに案内してくれるのは、この有名な建物の天井画の全体像、そしてミケランジェロが生き生きと描いた、いにしえの物語です。そして彼が当時の宗教的な図像を乗り越えて、新しい芸術の海図を作り上げていった様子を教えてくれます。レヴによれば、ミケランジェロがこの絵を描いて500年経った今、私たちはシスティーナ礼拝堂によって、鏡を覗くように世界を見て、自問するように仕向けられます。「自分は何者か、そして人生という大舞台で自分はどんな役を演じているのか?」と。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 17:33
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