< Return to Video

ピーター・タイヤック: 海洋哺乳類の興味深い鳴き声

  • 0:00 - 0:03
    ありがとう 今日は皆さんを
  • 0:03 - 0:06
    クジラとイルカが奏でる水中音楽の世界へ
  • 0:06 - 0:08
    お連れしましょう
  • 0:08 - 0:10
    私たち視覚に頼る種族には
  • 0:10 - 0:12
    理解の難しい世界です
  • 0:12 - 0:14
    そこで 理解の助けになればと
  • 0:14 - 0:16
    図と音を用意しました
  • 0:16 - 0:19
    視覚的な種として私たちが
  • 0:19 - 0:21
    シュノーケリングやダイビングで
  • 0:21 - 0:23
    見る海の中は どんな感じでしょう
  • 0:23 - 0:25
    遠くまで良く見えませんね
  • 0:25 - 0:27
    人の目は 空気中では機能しますが
  • 0:27 - 0:30
    水中では制限され 視界が狭くなってしまいます
  • 0:30 - 0:32
    海洋哺乳類は
  • 0:32 - 0:35
    水中世界の探索や仲間との交信に
  • 0:35 - 0:37
    音を使う方法を
  • 0:37 - 0:39
    数千万年の歳月をかけて
  • 0:39 - 0:41
    進化させてきました
  • 0:41 - 0:43
    イルカやハクジラは エコロケーションを使い
  • 0:43 - 0:45
    大きなクリック音を出して
  • 0:45 - 0:48
    海底からはね返る音を聞いて 泳ぐ方向を定めます
  • 0:48 - 0:50
    また獲物からの反響を聞き
  • 0:50 - 0:52
    食料の位置を確かめ
  • 0:52 - 0:55
    ターゲットとなる獲物を選んでいます
  • 0:55 - 0:57
    海中哺乳類はみんな音で交信します
  • 0:57 - 0:59
    大きなヒゲクジラは
  • 0:59 - 1:02
    長く美しい歌を
  • 1:02 - 1:04
    繁殖活動の際に用い
  • 1:04 - 1:06
    異性を探し
  • 1:06 - 1:08
    パートナーを選びます
  • 1:08 - 1:10
    母子や 互いに関係の深い個体は
  • 1:10 - 1:13
    鳴き声で互いの所在を確認します
  • 1:13 - 1:15
    生きる上で 音が非常に重要です
  • 1:15 - 1:17
    私にとっては未知の世界とも言える
  • 1:17 - 1:19
    海の動物達の発する音に興味を
  • 1:19 - 1:21
    持ったのは ある飼育されている
  • 1:21 - 1:23
    イルカのデータがきっかけでした
  • 1:23 - 1:26
    イルカが人の出す音を真似ていたのです
  • 1:26 - 1:28
    先ほど 音を視覚的に表現した図を
  • 1:28 - 1:30
    使用すると言いましたが
  • 1:30 - 1:32
    これが最初の例です
  • 1:32 - 1:34
    時間に対する周波数のグラフで
  • 1:34 - 1:36
    楽譜みたいなものです
  • 1:36 - 1:39
    高音は上方に 低音は下方に書かれ
  • 1:39 - 1:41
    時間の流れは右向きです
  • 1:41 - 1:43
    これはトレーナーの笛の音で
  • 1:43 - 1:45
    イルカが芸をちゃんとできたときに
  • 1:45 - 1:47
    これを鳴らし ご褒美の魚を与えます
  • 1:47 - 1:50
    「トゥイーーー」という感じの音です
  • 1:50 - 1:52
    そして こちらが
  • 1:52 - 1:54
    飼育されている子イルカが
  • 1:54 - 1:56
    その笛を真似た音です
  • 1:56 - 1:58
    この音を鼻歌で聞かせた犬や猫が
  • 1:58 - 2:00
    それを真似て応えたとしたら
  • 2:00 - 2:02
    とても驚くことでしょう
  • 2:02 - 2:04
    人間以外で音真似の出来る哺乳類は
  • 2:04 - 2:06
    稀です この能力は人間社会では
  • 2:06 - 2:08
    音楽や言語の発展に重要ですが
  • 2:08 - 2:11
    人間以外の哺乳類がどうして
  • 2:11 - 2:13
    そんなことをするのか 不思議です
  • 2:13 - 2:15
    私は研究生活の殆どを費やし
  • 2:15 - 2:17
    海洋哺乳類が 情報伝達において
  • 2:17 - 2:19
    どのように学習を活用し
  • 2:19 - 2:21
    聞いたことに基づいて応答の仕方を
  • 2:21 - 2:23
    どう変えているのか
  • 2:23 - 2:25
    研究してきました
  • 2:25 - 2:28
    人間以外の霊長類の鳴き声を聴いてみましょう
  • 2:28 - 2:30
    哺乳類の多くは「コンタクトコール」を持ち
  • 2:30 - 2:33
    母子がはぐれた時などに使っています
  • 2:33 - 2:36
    これは リスザルの母子がはぐれた時に用いる
  • 2:36 - 2:38
    コンタクトコールの例です
  • 2:38 - 2:40
    お分かりのように
  • 2:40 - 2:42
    個体差がほとんどありません
  • 2:42 - 2:44
    対照的に イルカが交信に用いる
  • 2:44 - 2:46
    「シグネチャーホイッスル」は
  • 2:46 - 2:49
    個体ごとに大きく異なっています
  • 2:49 - 2:52
    イルカは鳴き声を学ぶ能力によって
  • 2:52 - 2:55
    より複雑で特徴的な鳴き声を発展させ
  • 2:55 - 2:57
    個体を見分けているのです
  • 2:58 - 3:01
    どんな状況でイルカはこの鳴き声を使うのでしょう
  • 3:01 - 3:03
    母親と子供の生活を見てみましょう
  • 3:03 - 3:05
    日常生活の中で
  • 3:05 - 3:08
    母親が魚を追いかけるのに夢中になり
  • 3:08 - 3:10
    はぐれてしまうことも少なくありません
  • 3:10 - 3:12
    はぐれたら 合流しないといけません
  • 3:12 - 3:15
    この図は イルカの間の最大距離に対して
  • 3:15 - 3:17
    シグネチャーホイッスルが使われる
  • 3:17 - 3:19
    割合を示しています
  • 3:19 - 3:21
    距離が20メートル以下では
  • 3:21 - 3:23
    鳴き声を使う頻度は半分以下です
  • 3:23 - 3:25
    殆どの場合 泳ぎ回っているうちに
  • 3:25 - 3:27
    互いを見つけます
  • 3:27 - 3:30
    ところが 100メートル以上離れると
  • 3:30 - 3:33
    例外なしに全ての母子が
  • 3:33 - 3:36
    互いを探すのに固有の鳴き声を用いています
  • 3:36 - 3:38
    この特徴的なシグネチャーホイッスルは
  • 3:38 - 3:40
    殆どの場合 イルカの一生を通じ
  • 3:40 - 3:42
    ワンパターンで安定しています
  • 3:42 - 3:44
    しかし 例外もいくつかあります
  • 3:44 - 3:46
    母親から巣立った雄イルカは
  • 3:46 - 3:48
    他の雄イルカと合流することがあり
  • 3:48 - 3:51
    その協力関係が 何十年と続くこともあります
  • 3:51 - 3:54
    そして社会的な「絆」を築いたイルカたちの
  • 3:54 - 3:56
    固有の鳴き声は収斂していき
  • 3:56 - 3:58
    大変似通ったものになります
  • 3:58 - 4:01
    この図は組になった2匹の鳴き声を表しています
  • 4:01 - 4:03
    上の図では 2匹は
  • 4:03 - 4:05
    「ウープ ウープ ウープ」という
  • 4:05 - 4:07
    上向きの鳴き声を共有しています
  • 4:07 - 4:10
    一方 下図では「ウーウッ ウーウッ ウーウッ」という鳴き声です
  • 4:10 - 4:12
    何が起こっているのでしょう?
  • 4:12 - 4:14
    イルカは学習プロセスを用いて
  • 4:14 - 4:17
    新しい社会グループを識別する合図を 発展させているのです
  • 4:17 - 4:19
    新しい社会的グループのための
  • 4:19 - 4:21
    新しい識別子を形成する
  • 4:21 - 4:23
    とても面白いやり方です
  • 4:23 - 4:25
    少し視点を広げて イルカを
  • 4:25 - 4:27
    人間の干渉から保護するために
  • 4:27 - 4:29
    この情報から学べることを
  • 4:29 - 4:31
    探ってみましょう
  • 4:31 - 4:33
    この写真を見て下さい
  • 4:33 - 4:35
    イルカが船に囲まれ その行動が
  • 4:35 - 4:38
    阻害されているのがお分かりになるでしょう
  • 4:38 - 4:40
    まずい状況です
  • 4:40 - 4:42
    しかし イルカの群れに近づく船が
  • 4:42 - 4:44
    1隻だけの場合であっても
  • 4:44 - 4:46
    船が2、3百メートルまで近付くと
  • 4:46 - 4:48
    イルカは鳴き声を挙げ始め
  • 4:48 - 4:50
    していたことをやめて 寄り添い
  • 4:50 - 4:52
    船が通り過ぎるのをじっと待つのです
  • 4:52 - 4:54
    いなくなったら元の行動に戻ります
  • 4:54 - 4:56
    フロリダのサラソタのような場所では
  • 4:56 - 4:58
    イルカの群れの100メートル先を
  • 4:58 - 5:01
    平均して6分ごとに船が通り過ぎます
  • 5:01 - 5:03
    それが日常的な光景です
  • 5:03 - 5:06
    この写真よりはマシな状況と言えるでしょうが
  • 5:06 - 5:08
    それでもなおイルカの日常生活に
  • 5:08 - 5:10
    影響を与えているのです
  • 5:10 - 5:13
    手つかずの環境が残る西オーストラリアで
  • 5:13 - 5:15
    ラーズ・バイダー氏が研究しています
  • 5:15 - 5:18
    イルカウォッチングが始まる前と後での
  • 5:18 - 5:21
    イルカの行動と分布状況を比較したのです
  • 5:21 - 5:24
    船が1隻の場合 あまり影響はありません
  • 5:24 - 5:27
    しかし 船が2隻になると
  • 5:27 - 5:29
    何匹かのイルカは
  • 5:29 - 5:31
    その領域から去ってしまいました
  • 5:31 - 5:34
    残ったイルカの間でも 出生率の減少が見られました
  • 5:34 - 5:37
    船の存在は 全個体数に悪い影響を与えるのです
  • 5:37 - 5:40
    イルカなど動物の海洋保護区域において
  • 5:40 - 5:42
    私たちは今以上に 自らの行動に
  • 5:42 - 5:45
    気を付けなければなりません
  • 5:45 - 5:47
    これら問題を回避するために
  • 5:47 - 5:50
    遊覧船やクジラウォッチングの船の数を
  • 5:50 - 5:53
    制限する必要があるかもしれません
  • 5:53 - 5:55
    これも覚えておいてください
  • 5:55 - 5:57
    音は境界に関係なく伝搬します
  • 5:57 - 6:00
    境界線を引いて ある区域を保護はできますが
  • 6:00 - 6:02
    化学汚染や騒音は
  • 6:02 - 6:04
    境界を越えて入り続けるのです
  • 6:04 - 6:06
    さてここからは話を
  • 6:06 - 6:09
    局所的で馴染み深い 沿岸環境から
  • 6:09 - 6:12
    より広域の海で生活するヒゲクジラに変えましょう
  • 6:12 - 6:15
    よく見慣れているような世界地図です
  • 6:15 - 6:17
    世界は殆ど青です
  • 6:17 - 6:19
    海は私たちが思っている以上に
  • 6:19 - 6:21
    繋がっていることに注目してください
  • 6:21 - 6:24
    陸上での移動に比べ 海中での移動には
  • 6:24 - 6:26
    障害物がほとんどありません
  • 6:26 - 6:28
    海がひと続きであることを示す
  • 6:28 - 6:30
    ショッキングな実験があります
  • 6:30 - 6:32
    海洋学者が
  • 6:32 - 6:34
    南インド洋へ赴き
  • 6:34 - 6:37
    海中にスピーカーを設置して
  • 6:37 - 6:39
    音を再生するという
  • 6:39 - 6:41
    音響実験を行いました
  • 6:41 - 6:43
    スピーカーから発せられた音は
  • 6:43 - 6:46
    西はアメリカ東海岸沖合のバミューダ諸島まで届き
  • 6:46 - 6:49
    東はカリフォルニア州のモントレーへと到達し
  • 6:49 - 6:51
    同じ音が聞かれたのです
  • 6:51 - 6:53
    我々は衛星通信で全世界と
  • 6:53 - 6:55
    通信できる世界に暮らしていますが
  • 6:55 - 6:57
    それでも 低周波数の音を
  • 6:57 - 6:59
    地球規模で伝播させる
  • 6:59 - 7:01
    この海の性質には
  • 7:01 - 7:03
    とても驚かされます
  • 7:03 - 7:06
    それぞれの経路で音の伝わる時間は 約3時間です
  • 7:06 - 7:09
    殆ど地球を半周する距離です
  • 7:09 - 7:11
    70年代前半に
  • 7:11 - 7:13
    海洋音響学者のロジャー・ペイン氏が
  • 7:13 - 7:15
    理論的な論文を発表し
  • 7:15 - 7:17
    音はこのような広範囲に
  • 7:17 - 7:20
    伝搬しうることを指摘しましたが
  • 7:20 - 7:23
    生物学者の多くは信じませんでした
  • 7:23 - 7:25
    人間が この事実を知ったのは
  • 7:25 - 7:28
    数十年前に過ぎませんが
  • 7:28 - 7:31
    クジラたちは 数千万年かけて この海の
  • 7:31 - 7:33
    驚くべき性質の利用法を
  • 7:33 - 7:36
    進化させてきたのです
  • 7:36 - 7:38
    シロナガスクジラと ナガスクジラは
  • 7:38 - 7:40
    遠くまで伝えることのできる
  • 7:40 - 7:42
    低周波の音を発します
  • 7:42 - 7:44
    上の図は
  • 7:44 - 7:46
    雄が繰り返し発する
  • 7:46 - 7:48
    一連の複雑な鳴き声です
  • 7:48 - 7:51
    歌を作るのは繁殖活動の一部で
  • 7:51 - 7:53
    鳥が歌を歌うようなものです
  • 7:53 - 7:56
    下図は雄と雌の鳴き声です
  • 7:56 - 7:59
    これもかなり広範囲に届きます
  • 8:00 - 8:02
    生物学者たちは
  • 8:02 - 8:04
    このクジラ達の広域通信について
  • 8:04 - 8:06
    懐疑的で それは70年代を経て
  • 8:06 - 8:08
    冷戦が終わるまで続きました
  • 8:08 - 8:10
    何がそれを覆すことになったかですが
  • 8:10 - 8:13
    冷戦中のこと 当時は秘密でしたが アメリカ海軍は
  • 8:13 - 8:16
    ロシアの潜水艦を追跡するシステムを持っていました
  • 8:16 - 8:18
    陸まで伸びたケーブルに繋がる
  • 8:18 - 8:20
    深海に設置された水中聴音器があり
  • 8:20 - 8:22
    ケーブルの先にある基地では
  • 8:22 - 8:24
    北大西洋全体の音を聞けました
  • 8:24 - 8:27
    ベルリンの壁が崩壊した後 海軍はこのシステムを
  • 8:27 - 8:29
    どんな音が聞けるのか調べる
  • 8:29 - 8:31
    クジラ専門の音響学者たちに開放しました
  • 8:31 - 8:33
    これはクリス・クラーク氏によるもので
  • 8:33 - 8:36
    1頭のシロナガスクジラを追跡しています
  • 8:36 - 8:38
    クジラはバミューダ諸島を通過して
  • 8:38 - 8:41
    マイアミの緯度まで南下し そして戻ってきています
  • 8:41 - 8:43
    追跡は43日間続けられ
  • 8:43 - 8:45
    距離にすると1700キロ
  • 8:45 - 8:47
    1000マイル以上ですね
  • 8:47 - 8:49
    この実験でわかったのは
  • 8:49 - 8:51
    鳴き声は数百マイル先まで届き
  • 8:51 - 8:53
    クジラは普段 何百マイルも泳ぐことです
  • 8:53 - 8:55
    クジラは 我々の予想以上に
  • 8:55 - 8:57
    長距離交信ができる
  • 8:57 - 8:59
    スケールの大きな海の動物だったのです
  • 8:59 - 9:01
    温帯や熱帯の海に生息する
  • 9:01 - 9:03
    シロナガスクジラや ナガスクジラとは異なり
  • 9:03 - 9:05
    ザトウクジラは 馴染みのある
  • 9:05 - 9:08
    限られた繁殖地に集中しています
  • 9:08 - 9:11
    比較的高い 広範囲の周波数を使い
  • 9:11 - 9:13
    複雑な音を作ります
  • 9:13 - 9:15
    今お聞きいただいているのは
  • 9:15 - 9:17
    ザトウクジラによる複雑な歌です
  • 9:17 - 9:19
    ザトウクジラは歌う能力を発展させる過程で
  • 9:19 - 9:21
    他のクジラの歌を聞き
  • 9:21 - 9:23
    聞いた歌に基づいて
  • 9:23 - 9:26
    自分の歌を変えるのです
  • 9:26 - 9:29
    鳴き鳥や 先ほどの鳴き真似するイルカと同じですね
  • 9:29 - 9:31
    だから ザトウクジラの歌は
  • 9:31 - 9:33
    人間にとっての音楽と同じように
  • 9:33 - 9:35
    一種の文化なのです
  • 9:35 - 9:38
    これを示す とても面白い例が
  • 9:38 - 9:40
    オーストラリアで見つかりました
  • 9:40 - 9:42
    オーストラリア東海岸の生物学者が
  • 9:42 - 9:45
    その地域のザトウクジラの歌を録音していました
  • 9:45 - 9:48
    このオレンジの棒は 東海岸ザトウクジラの
  • 9:48 - 9:50
    典型的な歌を示します
  • 9:50 - 9:52
    1995年にはみんな同じ歌でしたが
  • 9:52 - 9:54
    1996年に違う歌が現れました
  • 9:54 - 9:57
    この変わった歌は西海岸のクジラに
  • 9:57 - 9:59
    典型的な歌だったのです
  • 9:59 - 10:02
    西海岸のクジラの歌は大ヒットし どんどん歌われるようになり
  • 10:02 - 10:04
    そして 1998年までには
  • 10:04 - 10:07
    東海岸の歌はすっかり消えて クールで新しい西海岸の歌ばかりを
  • 10:07 - 10:09
    クジラたちは歌うようになったのです
  • 10:09 - 10:11
    ちょうど新しい流行のスタイルが
  • 10:11 - 10:13
    それまでの古くさいスタイルを
  • 10:13 - 10:15
    すっかり駆逐してしまい
  • 10:15 - 10:17
    どの局もオールディーズを流さなくなったように
  • 10:17 - 10:20
    懐メロを歌うクジラは いなくなったのです
  • 10:20 - 10:23
    これらの歌に対する海の役割をこれからお話します
  • 10:23 - 10:26
    この音は ザトウクジラから0.2マイル離れた場所で
  • 10:26 - 10:29
    クリス・クラーク氏が録音したものです
  • 10:29 - 10:32
    全周波数帯域の音が聞こえます とても大きい音です
  • 10:32 - 10:34
    すごく近くに聞こえますね
  • 10:34 - 10:36
    さてお次は 同じザトウクジラの歌ですが
  • 10:36 - 10:38
    50マイル離れて録音したものです
  • 10:38 - 10:40
    聞いてみてください
  • 10:40 - 10:42
    これです
  • 10:42 - 10:44
    低周波の音しか聞こえませんね
  • 10:44 - 10:46
    海の中を長い距離通ってきた
  • 10:46 - 10:48
    音の残響です
  • 10:48 - 10:51
    音も大きくありません
  • 10:51 - 10:54
    ザトウクジラの鳴き声の次に
  • 10:54 - 10:57
    シロナガスクジラの鳴き声を再生します 少し早回ししています
  • 10:57 - 10:59
    かなり低周波の音なので
  • 10:59 - 11:01
    早回ししなければ聞こえません
  • 11:01 - 11:03
    50マイル先のシロナガスクジラの声です
  • 11:03 - 11:05
    ザトウクジラには遠すぎましたが
  • 11:05 - 11:08
    こちらは大きくクリアに聞こえます
  • 11:08 - 11:11
    同じ声を 500マイル離れた水中聴音機で
  • 11:11 - 11:13
    録音した音です
  • 11:13 - 11:16
    他のクジラのノイズが多く入ってますが
  • 11:16 - 11:19
    微かに聞こえます
  • 11:19 - 11:21
    さて 今からは
  • 11:21 - 11:23
    人間が及ぼす影響を考えてみましょう
  • 11:23 - 11:26
    海で人間が出す騒音といえば
  • 11:26 - 11:28
    ほとんどは船からのものです
  • 11:28 - 11:30
    これが船の音です
  • 11:30 - 11:32
    声を大きくしないと聞こえませんよね
  • 11:32 - 11:35
    クジラが500マイル先の音に耳を澄ましているところを
  • 11:35 - 11:37
    想像してみてください
  • 11:37 - 11:39
    船の音は クジラ同士の交信を
  • 11:39 - 11:41
    阻害する可能性があるのです
  • 11:41 - 11:43
    この問題は結構前から知られていました
  • 11:43 - 11:46
    この図は海中音のテキストからの抜粋です
  • 11:46 - 11:48
    Y軸は
  • 11:48 - 11:51
    深海の平均的な環境雑音の音量です
  • 11:51 - 11:53
    X軸は周波数です
  • 11:53 - 11:56
    そして 低周波数にある この線は
  • 11:56 - 11:59
    地球の地震活動による音です
  • 11:59 - 12:01
    高周波帯にある これらの線は
  • 12:01 - 12:04
    この周波数帯で大きくなる
  • 12:04 - 12:06
    上方からの風や波によるノイズです
  • 12:06 - 12:09
    その中間の 本来は音が良く聞こえる周波数域が
  • 12:09 - 12:11
    人間の船の騒音に満たされています
  • 12:11 - 12:13
    考えてみてください 驚くべきことです
  • 12:13 - 12:16
    クジラが交信するこの周波数域で
  • 12:16 - 12:19
    全地球的に 騒音の主な源になっているのは
  • 12:19 - 12:21
    人間の船なのです
  • 12:21 - 12:24
    遠く離れた何千もの人間の船の音が
  • 12:24 - 12:26
    集積したものです
  • 12:26 - 12:29
    次のスライドで クジラの交信範囲に
  • 12:29 - 12:31
    船の騒音が与える影響を説明します
  • 12:31 - 12:34
    これがクジラの鳴き声の大きさで
  • 12:34 - 12:36
    遠くへ行けば行くほど
  • 12:36 - 12:38
    その音は小さくなっていきます
  • 12:38 - 12:41
    産業革命以前の海では
  • 12:41 - 12:43
    このクジラの鳴き声は簡単に検知できました
  • 12:43 - 12:45
    1000キロ離れても 鳴き声が
  • 12:45 - 12:47
    騒音よりも大きかったからです
  • 12:47 - 12:50
    船が発する騒音を
  • 12:50 - 12:52
    これに加えてみましょう
  • 12:52 - 12:54
    そうすると 交信可能な範囲は 一気に
  • 12:54 - 12:57
    1000キロから10キロへ狭まりました
  • 12:57 - 12:59
    広く散らばった雄と雌が
  • 12:59 - 13:02
    つがいの相手を見つけるのに この信号を使っているなら
  • 13:02 - 13:04
    これが絶滅の危機にある種の存続に
  • 13:04 - 13:07
    与えうる影響を考えてみてください
  • 13:07 - 13:09
    クジラはまた イルカ同様に
  • 13:09 - 13:12
    コンタクトコールを使います
  • 13:12 - 13:14
    ここで セミクジラが交信に用いる
  • 13:14 - 13:16
    コンタクトコールの音を再生します
  • 13:16 - 13:18
    この鳴き声は
  • 13:18 - 13:20
    母子がはぐれてしまったときに
  • 13:20 - 13:22
    互いを見つけるために用いられます
  • 13:22 - 13:24
    そこに船の騒音があったらどうなるでしょう
  • 13:24 - 13:26
    子とはぐれたときに船が来たら
  • 13:26 - 13:28
    母クジラはどうすると思いますか?
  • 13:28 - 13:31
    母親の戦略を説明しましょう
  • 13:31 - 13:33
    母イルカの鳴き声が 下の周波数帯にあり
  • 13:33 - 13:35
    騒音が重なる帯域にあると
  • 13:35 - 13:38
    騒音帯域からはずれるように 鳴き声を高くするのです
  • 13:38 - 13:40
    そうすれば交信はうまくいきます
  • 13:40 - 13:43
    ペンシルベニア州立大学のスーザン・パークス氏がこの研究をしています
  • 13:43 - 13:46
    こちらは南大西洋のデータで
  • 13:46 - 13:49
    70年代に典型的だったコンタクトコールです
  • 13:49 - 13:52
    2000年には 平均的なコンタクトコールはこうなりました
  • 13:52 - 13:54
    北大西洋でも同様です
  • 13:54 - 13:56
    50年代と 2000年
  • 13:56 - 13:58
    50年を経た比較です
  • 13:58 - 14:00
    海における人工騒音が酷くなればなるほど
  • 14:00 - 14:02
    クジラは鳴き声の高くしなければならず
  • 14:02 - 14:04
    クジラがみんな バスからテノールへと
  • 14:04 - 14:07
    切り替えたようなものです
  • 14:07 - 14:09
    時間的にも空間的にもスケールの大きな
  • 14:09 - 14:11
    人間によって引き起こされた
  • 14:11 - 14:13
    驚くべき変化です
  • 14:13 - 14:15
    クジラは騒音を相殺するために
  • 14:15 - 14:18
    さっき船の音を流したときみたいに 声を大きくするか
  • 14:18 - 14:20
    静かになるのを待つか
  • 14:20 - 14:23
    騒音の周波数帯から 音をずらすのがわかりました
  • 14:23 - 14:25
    大きな声を出したり 高さを変えるのは
  • 14:25 - 14:27
    相応のコストがかかるだろうし
  • 14:27 - 14:29
    それでチャンスを逃すこともあり得ます
  • 14:29 - 14:31
    静寂を待っている間に
  • 14:31 - 14:34
    交信の決定的なチャンスを逃す可能性もあるのです
  • 14:34 - 14:36
    私たちは動物たちについて
  • 14:36 - 14:38
    騒音による生息環境の悪化や
  • 14:38 - 14:40
    騒音に対して払う多大なコストや
  • 14:40 - 14:43
    重要な行動を行えなくなる可能性を
  • 14:43 - 14:45
    懸念する必要があります
  • 14:45 - 14:48
    とても重要な問題です
  • 14:48 - 14:50
    喜ばしいことに
  • 14:50 - 14:53
    船のクジラへの影響を配慮するという面で
  • 14:53 - 14:56
    心強い進展があります
  • 14:56 - 14:58
    国連の国際海事機関は
  • 14:58 - 15:01
    船の静穏化に関するガイドラインを設定する
  • 15:01 - 15:04
    組織を作り 産業界に対して
  • 15:04 - 15:06
    船の騒音を小さくする方法を
  • 15:06 - 15:08
    示すようになりました
  • 15:08 - 15:10
    そして既に
  • 15:10 - 15:13
    スクリューのデザインを工夫することで
  • 15:13 - 15:16
    騒音を90パーセントも減らせることを発見しました
  • 15:16 - 15:19
    さらに 動力装置を防音し
  • 15:19 - 15:21
    船体と隔てることで
  • 15:21 - 15:24
    騒音は99パーセント減らすことが出来ます
  • 15:24 - 15:27
    取り入れるかどうかは コストと基準の問題です
  • 15:27 - 15:29
    この組織が船の規格を作り
  • 15:29 - 15:32
    造船業界が規格に準じて船を作れば
  • 15:32 - 15:34
    少しずつ 潜在的な問題は
  • 15:34 - 15:36
    減っていくでしょう
  • 15:36 - 15:39
    しかし まだ別の問題があります
  • 15:39 - 15:41
    衝突の問題です
  • 15:41 - 15:44
    このクジラは 高速で走るコンテナ船を
  • 15:44 - 15:47
    かろうじてよけて衝突を避けました
  • 15:47 - 15:49
    衝突に関する問題は深刻です
  • 15:49 - 15:52
    絶滅危惧種のクジラが毎年 船との衝突で死んでいます
  • 15:52 - 15:55
    このような事故を減らすことはとても重要なことです
  • 15:55 - 15:58
    この問題に対する期待のできる2つの対処法をお話します
  • 15:58 - 16:00
    1つ目はファンディ湾のケースです
  • 16:00 - 16:02
    これら黒い線は ファンディ湾を
  • 16:02 - 16:04
    出入りする航路です
  • 16:04 - 16:06
    色つき部分は航路上で
  • 16:06 - 16:09
    絶滅危惧種のセミクジラと船が衝突する
  • 16:09 - 16:11
    リスクのあるエリアを示します
  • 16:11 - 16:14
    この航路はセミクジラが
  • 16:14 - 16:17
    夏季に利用する餌場と重なっており
  • 16:17 - 16:20
    そのことが衝突のリスクを高くしているのです
  • 16:20 - 16:22
    この事実を放っておけない
  • 16:22 - 16:24
    生物学者たちは
  • 16:24 - 16:26
    国際海事機関へ行き
  • 16:26 - 16:28
    嘆願書を提出しました
  • 16:28 - 16:30
    「航路を移動してくれませんか?
  • 16:30 - 16:32
    大事な場所を通っているんです
  • 16:32 - 16:34
    リスクの少ない所に移せませんか?」
  • 16:34 - 16:36
    国際海事機関は力強く回答しました
  • 16:36 - 16:38
    「これが新しい航路です」
  • 16:38 - 16:40
    航路は移動され
  • 16:40 - 16:43
    ご覧のように衝突のリスクは減りました
  • 16:43 - 16:45
    実際に効果が期待できます
  • 16:45 - 16:47
    リスク回避のため様々な方法を
  • 16:47 - 16:49
    クリエイティブに 考えられるのです
  • 16:49 - 16:51
    もう1つ 輸送会社自身による
  • 16:51 - 16:54
    自主的なアクションをご紹介しましょう
  • 16:54 - 16:57
    元々は 地球温暖化にかかわる温室ガス排出量を
  • 16:57 - 17:00
    考慮して取られたアクションです
  • 17:00 - 17:03
    マースクライン社は競合他社を見て 造船業界では
  • 17:03 - 17:06
    時間が何よりも重視されていることに注目しました
  • 17:06 - 17:08
    船はできるだけ急いで目的地に向かいますが
  • 17:08 - 17:10
    着くと 大抵は待つことになるのです
  • 17:10 - 17:12
    そこで彼らはスピードを下げる工夫をし
  • 17:12 - 17:15
    50パーセントも速度を落とすことに成功しました
  • 17:15 - 17:18
    燃料消費量が30パーセントも減少し
  • 17:18 - 17:20
    大いに節約することができました
  • 17:20 - 17:23
    同時に クジラにも恩恵があったのです
  • 17:23 - 17:26
    速度を落とせば 騒音が減り
  • 17:26 - 17:28
    衝突のリスクも下げることが出来ます
  • 17:28 - 17:30
    まとめとして こう言いたいです
  • 17:30 - 17:32
    クジラは 驚異的な音の世界に
  • 17:32 - 17:34
    住んでおり 海の音響環境を
  • 17:34 - 17:36
    利用するよう 数千万年もかけて
  • 17:36 - 17:38
    進化してきたのです
  • 17:38 - 17:41
    私たちの行動が 知らず知らずのうちに
  • 17:41 - 17:43
    彼らにとって極めて重要な活動を
  • 17:43 - 17:45
    阻害している可能性を
  • 17:45 - 17:48
    私たちは真摯に考える必要があります
  • 17:48 - 17:50
    同時に 様々な問題を軽減するため
  • 17:50 - 17:53
    クリエイティブに解決方法を模索する必要があります
  • 17:53 - 17:55
    これまで見てきた例は
  • 17:55 - 17:57
    保護区以外にも我々に取れる方法が
  • 17:57 - 17:59
    いろいろあることを示していると思います
  • 17:59 - 18:02
    クジラが安全に交信できる海の環境を 皆で守っていきましょう
  • 18:02 - 18:04
    有難うございました
  • 18:04 - 18:06
    (拍手)
Title:
ピーター・タイヤック: 海洋哺乳類の興味深い鳴き声
Speaker:
Peter Tyack
Description:

ウッズホール海洋研究所のピーター・タイヤック氏が海に隠された秘密「海中の音」について語ります。何百マイルも離れた仲間との交信に、クジラは音や鳴き声をどのように用いているのか?その驚くべき方法を、ミッション・ブルーのステージ上で説明します。

more » « less
Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TEDTalks
Duration:
18:07
kie ikeda added a translation

Japanese subtitles

Revisions