-
『トロン:レガシー』
-
ネオンが眩しいこのディズニー作品は
1982年の名作『トロン』の続編だ
-
この作品には、私を長年悩ませている
かなり厄介なトロープ(描写方法)の例が盛り込まれている
-
クオラ:私はクオラ!
-
SFファンにはすぐに分かる、
一方の性に偏った手法だ
-
それは何度も何度も
スペキュレイティブ作品に現れるが
-
名前が付いていなかったので
私はこう呼ぶことにする
-
"Born Sexy Yesterday"(純粋で無知でセクシーな女性)と
-
サム:彼女はISOなのか
-
クオラというキャラクターは
同型アルゴリズム、アイソー(ISO)だ
-
つまり彼女は女性の形をした、
感情を持つコンピュータプログラムなのだ
-
ケヴィン:彼女は奇跡だ
-
これまで全てをかけた
-
人間のありようを作り変える
デジタルの最先端だ
-
最後のISOとして
-
クオラはこう言い表されている
-
ケヴィン:非常に純粋で
-
想像できないほど賢い
-
もしこれが何となく、子どもについて
言っているように聞こえるなら
-
それは決して偶然ではない
-
なぜなら『トロン:レガシー』は
クオラをまさしくそのように表現しているからだ
-
クオラ:でも、ここだけの話
-
ジュール・ヴェルヌが好きなの
-
ジュール・ヴェルヌを知ってる?
-
サム:もちろん
-
クオラ:どんな人なの?
-
彼女は無邪気だが
-
非常に腕の立つ子どもの心を持っている
-
しかし、それは成熟した性的魅力のある女性の
肉体の中にある
-
彼女は男性主人公の
恋愛対象としての役割も果たす
-
「非常に純粋だが、想像できないほど賢い」は
このトロープの本質を捉えている
-
"Born Yesterday"というイディオムは
極めて純粋で未熟で無知という意味だ
-
ビリー:彼はアタシをバカだと思ってるのね?
-
ポール:そんなこと…
ビリー:そうよ アタシってバカだしそれでいいの
-
ポール:そうなのかい
ビリー:ええ、アタシ幸せ!
-
欲しいもの全部持ってる
ミンクのコート2着 全部よ
-
"Born Sexy Yesterday"というトロープは
-
比喩的な意味と、多くの場合
文字通りの意味を持っている
-
1997年のSFカルト傑作
-
『フィフス・エレメント』はおそらく
-
Born Sexy Yesterdayの最も典型的な例だろう
-
MACTILBURGH:言ったでしょう……完璧だ!
-
クオラのように
リー・ルーは風変わりで無邪気だが
-
彼女は意図的に性的に表現されている
-
デイビッド:彼女は本当に…
コーネリアス神父:完璧、だろ
-
このトロープで描かれる
女性キャラクターは特徴として
-
無知で世間のことに疎い
-
マディソン:キレイ!
-
特にセックスや恋愛や
基本的な社会的交流において
-
スティーヴ:キスしてもいいかい?
-
セレステ:それ痛い?
-
このSFの手法によって
-
彼女らは既に完全に形成され、
人間界に連れてこられる
-
子どもの心が
-
成熟した女性の肉体に現れる
-
彼女はアンドロイドやコンピュータプログラム
-
人魚、エイリアン、
不思議な生き物だったりする
-
そうでなければ、他の人間社会から
隔離された環境で育てられた
-
これら女性キャラクターの多くには
非常に明確な共通点が一つある
-
自分たちの性的魅力に全く気付いていない
というように意図的に書かれている
-
すると、これにより映画製作者には
口実が与えられる
-
少なくともワンシーン、
彼女が男たちの前で服を脱ぐが
-
彼女はとても純粋だから、この行動の意味合いを
理解しないという場面を入れるというものだ
-
アルティア:おはよう、こっちに来て!
-
ジョン:水着を持ってこなかった
-
アルティア:水着って何?
-
ジョン:勘弁してくれ
-
想像できることだが、
-
マニック・ピクシー・ドリーム・ガールという
トロープとかなりの共通点がある
-
ジゼル:魔法の部屋ね!
-
水はどこから来るの?
-
ロバート:えーっと、水はこのパイプから来てる
-
ジゼル:パイプはどこで水をもらうの?
-
Born Sexy Yesterdayのキャラクターは
-
男性が尊敬する高度な技術を
持っている場合が多いが
-
それは大抵、戦闘だ
-
さてこれまで、このトロープに関連した
女性キャラクターに注目してきたが
-
これは、実のところ
彼女たちについての話ではない
-
アラン:ドアが回転するんだ
-
ハリウッドの大抵のものと同様に
Born Sexy Yesterdayは男性のために書かれている
-
そして結局、これは関係のトロープなのだ
-
コーベン:175cm、青い目
-
長い脚、綺麗な肌……
-
完璧なんだ!
-
つまり、この方程式の反対側について
話す必要があるということだ
-
男性の主人公に
-
典型的に、彼は異性愛者の勇ましい男性で
様々な理由により
-
恋愛において孤独か
満たされていない
-
社会から取り残されるか
方向性を見失った状態だ
-
自分のいる世界では女性を見つけられない
-
愛と性において、自分と対等である女性を
-
彼には一つ有利なことがある
-
普通の人間として生活することは
全て知っている
-
スティーヴ:食べ物を口にしないなんて残念だね
-
すごく楽しいって思うかもよ
-
セレスタ:食べ物で楽しみを得るの?
-
スティーヴ:ほら
セレスタ:いいえ、要らない
-
スティーヴ:俺の秘密が知りたいなら、
サンドウィッチを食べるんだ
-
もちろん、地球上の他の男も同じだから
-
彼には特筆すべき点はない
-
スティーヴ:噛め!噛め!
-
Born Yesterdayの女性を除いては
-
彼女はおそらく他の男性を知らないため
-
彼は全宇宙で一番賢く
-
素晴らしい男性に見えるだろう
-
セレスタ:楽しい!
-
これは何?
-
スティーヴ:ライ麦パンに
ハムとチーズとマヨネーズ
-
このトロープが男性の空想として
構築されているのが見えてくる
-
まさに純粋さと無知によって
-
彼女は彼に、特別な何かを見出せるのだ
-
それほど無知でなく
経験豊かな女性が見出さないことを
-
機械:システム ノーマル
推定蘇生時間 600秒
-
カウントダウン開始
-
詳しく論じる時間はないが
-
日本のアニメには、実にあらゆるところに
Born Sexy Yesterdayがある
-
Born Sexy Yesterdayは現代のトロープではないと
述べておかねばならない
-
それどころか
ハリウッドのSF映画ではずっと定番だ
-
このジャンルの初めから
-
実に面白い
-
女性はどの程度まで
許してくれるだろうか?
-
ジョン:そんなに個人的なことじゃない
ただのキスだ
-
アルティア:どうしてお互い
キスしたいって思うの?
-
ジョン:古い習慣だよ
高度な文明では皆やっている
-
アルティア:でも馬鹿げてる
-
ジョン:でも体にいい
体全体が活性化する
-
実を言うと、それ無しでは
健康ではいられないよ
-
アルティア:本当?知らなかった
-
ジョン:喜んでお見せするよ
-
アルティア:どうもありがとう
-
ジョン:全く構わないさ
-
1956年の『禁断の惑星』はその一例だ
-
1960年『タイム・マシン 80万年後の世界へ』は
また別の例だ
-
アレクサンダー:名前は?
-
女性:ウィーナ
アレクサンダー:ウィーナ?
-
どういうスペル?
-
女性:スペル?
-
アレクサンダー:スペル、書く
書けないのか?
-
そして『猿の惑星』の
ノヴァというキャラクターがいる
-
テイラー:見てごらん
-
君に笑顔を教えた
-
言語の概念を理解しないにも関わらず
主人公の恋愛対象だ
-
このトロープは普通は白人女性を含むが
-
Born Sexy Yesterdayはもっと古い
メディア手法から派生している
-
白人冒険家が先住民の女性を
"発見"するというものだ
-
ただこの場合、SFは植民地主義に取って代わり
-
メカニズムが物語を動かすのだ
-
リー・ルー:[判読不能の古代の言葉]
-
リー・ルー:ブーン!
コーベン:うん、ビッグ バダ ブーン!
-
リー・ルー:バダ ブーン!
コーベン:ビッグ ブーン、ビッグ バダ ブーン!
-
両方が少しずつ混ざっていることもある
-
Born Sexy Yesterdayは
より賢く経験豊かな男と
-
世間知らずで未熟な女性の間にある
明確な力の不均衡への執着なのだ
-
究極の「先生と生徒」の力関係だ
-
カーク:困ったら助け合うのがしきたりだ
-
『スタートレック』は頻繁に
このトロープを用いることで"有名"だ
-
"悪名高い"の方が適切かもしれない
-
このトロープはオリジナルのシリーズと
その後のシリーズ全てに登場するからだ
-
エイリアン:じゃあ、これも助けてる?
-
カーク:そうとも言える
-
エイリアン:お願い、もう一度助けて
-
ドクター:髪型をどうにかすることから始めよう
-
『スタートレック:ヴォイジャー』の
セブン・オブ・ナインとドクターの関係は顕著な例だ
-
特に『誰かが君に恋してる』という
エピソードにおいて
-
ドクター:ちょっと頭を振ってごらん
-
セブン:これでいい?
-
このシリーズのファンは覚えているだろう
ドクターの純情さは
-
作品内で決してセクシーなものとして
表現されていない
-
セブン:どうやって選べばいいの
ドクター:これがとても似合うと思う
-
セブン:こういう服はどうやって
着るのかさっぱり
-
手伝って
-
ドクター:きっと自分でできる
-
私は準備に取り掛かる
覚えておいて、今夜は楽しむことだよ
-
朝には詳しいレポートを期待している
-
少なくとも当初、Born Sexy Yesterdayは
セブンの特徴の大部分を占めていたが
-
最終的に彼女は、それ以上になった
-
一部の気味の悪いエピソード以外では
-
セブンの物語は主に自己実現と自己発見だ
-
トロープの制約を見事に越えたのだ
-
これは『クラウド アトラス』のソンミ451のような
キャラクターにも大いに当てはまる
-
セブンのように、彼女の恋愛は重要視されず
-
人物形成が中心に置かれる
-
ソンミ:知識は鏡
生まれて初めて
-
私は自分が何者で
誰になれるかを見ることを許された
-
つまりこういうことだ
-
このトロープの問題は
必ずしも女性キャラクター自身ではない
-
ただ単に、純朴な地球外の女性が
-
愛や人間性について学んだ物語なら
それは問題ではない
-
同様に、男性側も未熟で、
二人の主人公が一緒に愛やセックスを見つける
-
それなら、厄介な力関係問題の大半は避けられる
-
ジョン:どうしたの
-
キャメロン:仕組みを理解しないと
-
ジョン:何?
-
キャメロン:このチップ この体
-
例えば『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』の
キャメロンはこのトロープに当てはまる
-
だが彼女とジョン・コナーとの関係は
もっと相互的なものとして表現されている
-
Born Sexy Yesterdayは
偏った力関係によるものなので
-
逆方向に描かれることはほとんどない
-
経験豊富な女性キャラが、純朴な男性に
セックスについて教えるのは非常に珍しい
-
スキップ:家に帰らないと、メアリー・スー
-
メアリー・スー:どうして?
-
スキップ:病気に……なるかもしれない
-
何か起こってるんだ
-
メアリー・スー:そういうもの
-
スキップ:そうなの?
-
メアリー・スー:ええ、信じて
-
ジェニー:ちょっとダメ、待って
-
それはデザート
-
フォークで食べるの
-
おそらく、多くの成人女性は
世間知らずで子どもっぽい少年と付き合うのは
-
それほど魅力的ではないと
感じるからだろう
-
ジェニー:違う違う 最後に食べるの
-
サンドイッチが先 デザートが最後
-
稀に性別が逆になった場合
男性の場違いな行動は笑いの的になる
-
イヴ:野球カードの店の者だけど
覚えてる?
-
アダム:あぁ勿論、やあ!
-
こんにちは、こいつはいいね!
-
電話かけてくれてありがとう
-
最終的に彼女は彼を
好きになるかもしれないが
-
彼女は彼の未熟さにも関わらず惚れるのであり
彼が未熟だから惚れるのではない
-
ごめんよ、オートウォッシュを忘れていた
-
Born Sexy Yesterdayは
不均衡な関係に関連するが
-
男らしさにも非常に関連が深い
-
このトロープが暗に示すのは、男性が根強く持つ
セックスとセクシュアリティについての不安感だ
-
このトロープの核心は
男性優位への執着なのだ
-
純粋な少女を支配することへの執着
-
しかしそれを社会的に
受け入れられるようにするため
-
その少女の心を、性的魅力のある
大人の女性の体に入れるという
-
SFが使われている
-
これは不安をベースにした空想だ
-
性体験や恋愛経験において
男性と対等な女性への不安
-
そして知性で女性に負けることへの不安
-
1973年製作 ウディ・アレンのコメディ映画
『スリーパー』では
-
主人公は冷凍保存され、
彼が未来で目覚めたときには
-
突然、非常に都合のいいことに
-
地球上に残された、セックスの方法を
覚えている唯一の男なのだ
-
全く同じことが『デモリションマン』の
スタローンのキャラクターにも起こる
-
ハックスリー:すごい!
いつもあんな感じ?
-
スパルタン:もっといい
ハックスリー:もっと?
-
つまりBorn Sexy Yesterdayとは
-
男性主人公が必然的に、女性の人生で
一番素晴らしい男性となるように
-
特別に作られたSFトロープなのだ
-
繰り返しになるが、つまり彼らは
彼女の人生における唯一の男だ
-
したがってこのトロープは
女性の純潔と処女性について
-
厄介な家父長制の考えに基づいている
-
当然のことながら
Born Sexy Yesterdayのキャラクターたちは
-
過去の恋人も性体験もない
-
彼女は性にも恋愛にも
純潔でうぶで
-
他の男性への関心によって
変わったり堕落したりしない
-
そのため男性主人公は
基準に達していないことを比べられたり
-
評価されたりする可能性すら免れる
-
結局のところ
-
これは拒否される屈辱からの逃避
という男性の空想なのだ
-
彼は女性の人生における
初めてで唯一の男性なので
-
最初から最高の存在になれるのだ
-
それは、良いパートナー
良い彼氏、良い恋人に
-
なろうと努力しなくていいことを
意味する
-
Peabody:これがキスというものだよ
-
もちろん実際には、人生経験は
恋愛関係においてプラスでありマイナスではない
-
それを反映するメディアが
もっと必要だ
-
男性が自分と対等な女性を
心から受け入れるメディアが
-
全てが対等
愛やセックスに関しても
-
SF作家志望の方々にこう言っておく
-
無知はセクシーではない
-
一方で、知識や経験はものすごくセクシーだ
-
メディアと男らしさについての動画を
もっと見たいなら
-
私のPatreonのページへ行って
-
Pop Culture Detective Agencyへの
クラウドファンディングにご協力ください