薬でうつ病やPTSDを予防することは可能か? | レベッカ・ブラックマン | TEDxNewYork
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0:08 - 0:11ここは結核病棟です
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0:11 - 0:15この写真が撮影された
 1800年代後半には
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0:15 - 0:18全人口の7人に1人が
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0:18 - 0:19結核で亡くなっていました
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0:20 - 0:23原因はまったく不明でした
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0:23 - 0:25仮説はありましたが
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0:25 - 0:28この病気にかかるのは
 体質のせい というものでした
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0:28 - 0:31また 結核は美化された病でした
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0:31 - 0:34「労咳」とも呼ばれ
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0:34 - 0:37詩人や芸術家や知識人の
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0:37 - 0:40病とされました
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0:40 - 0:44結核が感受性を高め
 創造力を与えると
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0:44 - 0:46本気で考える人もいたほどです
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0:48 - 0:501950年代には
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0:50 - 0:52結核が感染力の高い
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0:52 - 0:56細菌による感染症と判明し
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0:56 - 0:58ロマンチックな面は
 薄れましたが
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0:58 - 1:00そのおかげで
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1:00 - 1:04治療薬を開発できる
 可能性が出てきました
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1:04 - 1:07その後 新薬イプロニアジドが
 発見されました
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1:07 - 1:10医師たちが 治療に
 大きな期待を持って
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1:10 - 1:12この薬を投与すると
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1:12 - 1:14患者が陽気になりました
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1:14 - 1:17患者は より社交的で
 活発になったのです
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1:17 - 1:22ある報告書には 患者が
 「廊下で踊っていた」と書いてあります
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1:22 - 1:24ただ 残念なことに
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1:24 - 1:27それは必ずしも回復の兆しではなく
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1:27 - 1:30多くの人が亡くなっていきました
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1:31 - 1:37別の報告書では 患者の「不自然な
 多幸感」を報告しています
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1:38 - 1:42こうして世界初の
 抗うつ薬が発見されたのです
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1:43 - 1:47科学の世界では
 偶然の発見は珍しくありませんが
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1:47 - 1:50それには単なる幸運を
 超えるものが必要です
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1:50 - 1:54発見するには 対象を
 認識できなければなりません
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1:54 - 1:57これからする話は
 私が神経学者として
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1:57 - 1:59実際に経験したことです
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1:59 - 2:02その経験には「思いがけない幸運」の
 正反対である
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2:02 - 2:04「必然的な幸運」が伴いました
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2:04 - 2:06その前に もう少し背景を
 説明しましょう
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2:07 - 2:101950年代以降 幸いなことに
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2:10 - 2:14別の薬品が開発されて
 結核治療が実現しました
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2:14 - 2:18他の国はともかく
 少なくともアメリカでは
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2:18 - 2:19結核療養所は閉鎖され
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2:19 - 2:23今では 結核を恐れる人など
 ほとんどいないでしょう
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2:24 - 2:27一方 1900年代初頭の
 感染症の状況と
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2:27 - 2:28ほぼ同じことが
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2:28 - 2:31現在の精神疾患をめぐる
 状況にも当てはまります
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2:32 - 2:35私たちの周りに
 まん延しているのは
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2:35 - 2:39うつ病や 心的外傷後ストレス障害
 PTSDといった気分障害です
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2:39 - 2:43アメリカでは
 成人の4人に1人が
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2:43 - 2:45精神疾患を患っているので
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2:45 - 2:48仮に自分自身や身内は
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2:48 - 2:51患者でなかったとしても
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2:51 - 2:54知り合いの中に
 公言はしていないけれど
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2:54 - 2:56経験がある人がいる
 可能性が高いのです
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2:57 - 3:01現在うつ病は 世界中で
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3:01 - 3:05HIV・エイズやマラリア
 糖尿病や戦争を超える
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3:05 - 3:09障害の主な原因になっています
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3:09 - 3:12また 1950年代の結核と同様
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3:12 - 3:14まだ原因はわかっていません
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3:14 - 3:16一度 発症すると慢性化し
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3:16 - 3:18生涯 続く上に
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3:18 - 3:20治療法も見つかっていません
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3:22 - 3:242番目に発見された抗うつ薬も
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3:24 - 3:261950年代に偶然見つかったもので
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3:26 - 3:30抗ヒスタミン薬として開発され
 人を躁状態にする作用がある薬 —
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3:31 - 3:32イミプラミンです
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3:33 - 3:37結核病棟の例でも
 抗ヒスタミン薬の例でも
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3:37 - 3:39ある効果を期待して
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3:39 - 3:41設計された薬 例えば
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3:41 - 3:44結核治療とか
 アレルギー反応を抑制する薬が
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3:44 - 3:46うつ病の治療のような
 まったく違うことに使えると
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3:46 - 3:48認識することが不可欠でした
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3:48 - 3:51そして このような薬の転用は
 実際は かなり難しいのです
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3:51 - 3:55医師たちは イプロニアジドが持つ
 気分を高揚させる効果を 最初目にした時
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3:55 - 3:58そういう風には
 まったく認識していませんでした
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3:58 - 4:00医師はこの薬を
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4:00 - 4:03結核治療薬として捉えることに
 慣れすぎていたため
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4:03 - 4:05その効果を単なる副作用
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4:05 - 4:07それも有害な副作用として
 記載しただけでした
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4:07 - 4:09ご覧の通り
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4:09 - 4:131954年に記録された患者の多くが
 過度の多幸感を経験しています
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4:14 - 4:18そして 医師たちは
 この多幸感が結核からの回復を
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4:18 - 4:20妨げるのではないかという
 懸念を抱きました
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4:20 - 4:27だからイプロニアジドの使用は
 患者が重症で
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4:27 - 4:30感情が安定している場合にのみ
 推奨されたのです
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4:31 - 4:35もちろん これは抗うつ薬として
 使う場合とは正反対です
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4:35 - 4:40医師は結核という1つの病気の視点から
 薬を見ることに慣れすぎて
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4:40 - 4:44他の病気に対する
 より大きな可能性を見逃していました
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4:44 - 4:47ただ公平に言えば
 医師だけのせいとは言えません
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4:47 - 4:50「機能的固着」がバイアスとして
 影響を与えるのです
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4:50 - 4:53これは ある物を
 習慣的な使用法や機能からしか
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4:53 - 4:56捉えられない傾向を指します
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4:57 - 4:59もう1つの問題は
 メンタルセットです
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4:59 - 5:01これは私たちが
 あらかじめ持っている
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5:01 - 5:03問題解決に向けての
 構想のようなものです
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5:03 - 5:06そして これが転用を
 とても難しくします
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5:06 - 5:09だからこそ 何でも転用できる
 能力を持った人間が
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5:09 - 5:11テレビドラマの主人公になったんです
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5:12 - 5:14(笑)
 [マクガイバー]
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5:14 - 5:19イプロニアジドもイミプラミンも
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5:19 - 5:20その効果は極めて強力で
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5:20 - 5:22躁状態になったり
 廊下で踊ったりするほどでした
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5:22 - 5:25これでは 目につくのも当然ですが
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5:25 - 5:29何か見落としてきたのでは
 という疑問が湧いてきます
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5:30 - 5:32イプロニアジドとイミプラミンは
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5:32 - 5:35単なる転用の一例というだけでなく
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5:35 - 5:38とても重要な
 2つの共通点があるのです
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5:38 - 5:401つ目は どちらにも
 重大な副作用があります
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5:40 - 5:43それには肝毒性
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5:43 - 5:4620kgを超える体重増加
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5:46 - 5:48自殺念慮が挙げられます
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5:48 - 5:522つ目に どちらも
 セロトニンの量を増やします
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5:52 - 5:54セロトニンとは
 脳の一種の化学信号すなわち
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5:54 - 5:55神経伝達物質です
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5:56 - 5:59この どちらか一方であれば
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5:59 - 6:01それほど重大では
 なかったかもしれませんが
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6:01 - 6:042つ揃うと より安全な薬の
 開発が必要になりました
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6:04 - 6:08そしてセロトニンが
 有力な手がかりに見えたのです
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6:09 - 6:13そこで セロトニン神経系に
 より直接 働きかける薬
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6:13 - 6:16「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」
 略して SSRI が開発され
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6:16 - 6:19中でも有名なのがプロザックです
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6:19 - 6:21これは30年前のことですが
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6:21 - 6:24それ以来 研究の中心は
 薬の最適化だけでした
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6:25 - 6:28SSRI はそれ以前の薬に
 比べるとましですが
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6:28 - 6:30それでも副作用が多く
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6:30 - 6:33体重増加や不眠や
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6:33 - 6:34自殺念慮があります
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6:35 - 6:37しかも効き目が現れるまで
 かなり時間がかかり
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6:37 - 6:404〜6週間くらいかかる
 患者も多いのです
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6:40 - 6:42それも効き目がある時の話で
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6:42 - 6:45こういう薬が効かない患者も
 たくさんいます
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6:45 - 6:48つまり 2016年現在
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6:48 - 6:52まだ どんな気分障害にも有効な
 治療法はなく
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6:52 - 6:54症状を抑える薬しかありません
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6:54 - 6:58これは 感染症に対して
 抗生物質の代わりに
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6:58 - 7:00鎮痛剤を使うようなものです
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7:00 - 7:02痛み止めを使うと
 症状は良くなりますが
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7:02 - 7:05原因である病気の治療には
 まったく役立ちません
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7:06 - 7:08私たちの思考が柔軟になったおかげで
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7:08 - 7:11イプロニアジドとイミプラミンが
 このように転用できると
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7:11 - 7:13認識することができ それが
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7:13 - 7:15セロトニン仮説に
 つながりましたが
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7:15 - 7:18皮肉にも 今度はその仮説に
 固執するようになったのです
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7:19 - 7:22これはSSRIの CMで描かれた
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7:22 - 7:23脳の信号 セロトニンです
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7:23 - 7:25一応 お伝えしますが
 これはイメージです
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7:26 - 7:30科学ではバイアスを取り除くために
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7:30 - 7:32二重盲検法による試験を行い
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7:32 - 7:36結果について統計的な先入観が
 入らないようにします
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7:36 - 7:40ところがバイアスは
 研究対象や研究方法の中に
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7:40 - 7:42ひそかに紛れ込んできます
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7:43 - 7:47私たちはこれまで30年に渡って
 セロトニンに注目し
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7:47 - 7:49他のものを しばしば無視してきました
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7:50 - 7:51まだ治療法はありませんが
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7:52 - 7:56もし うつ病がセロトニンだけの
 問題ではなかったら?
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7:56 - 7:58それが主な要因ですらなかったら?
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7:58 - 8:00そうなると どれだけ時間や
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8:00 - 8:03お金や努力を注ぎ込もうとも
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8:03 - 8:05治療法にはたどり着かないでしょう
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8:06 - 8:08ここ数年で医師たちが発見したのは
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8:08 - 8:13恐らくSSRI以来 初の
 本当に新しい抗うつ薬 —
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8:14 - 8:15カリプソルです
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8:15 - 8:18この薬は即効性があり
 数時間とか1日で効き目が現れ
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8:18 - 8:20セロトニンには作用しません
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8:20 - 8:23別の神経伝達物質である
 グルタミン酸に作用します
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8:23 - 8:25しかも これも転用されたものです
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8:25 - 8:28元々は外科手術の麻酔薬として
 使用されていました
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8:29 - 8:30ただ 他の薬では
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8:30 - 8:32すぐに効果が認識されたのに
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8:32 - 8:34カリプソルが抗うつ薬だと
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8:34 - 8:36判明するまでに
 20年かかりました
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8:36 - 8:39抗うつ薬として この薬は
 おそらく他の薬より
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8:39 - 8:41優れているにも関わらずです
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8:41 - 8:45たぶんカリプソルが
 抗うつ剤として あまりに優れすぎて
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8:45 - 8:47わかりにくかったのでしょう
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8:47 - 8:49効果の兆しである
 躁状態が見られなかったのです
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8:50 - 8:532013年にコロンビア大学で
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8:53 - 8:54私は同僚の
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8:54 - 8:56クリスティン・アン・デニー博士と
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8:56 - 9:00抗うつ薬としてのカリプソルの効果を
 マウスで研究していました
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9:01 - 9:03カリプソルは半減期が非常に短く
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9:04 - 9:07数時間で体内から排出されます
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9:07 - 9:08まだパイロット試験段階だったので
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9:08 - 9:10マウスに注射して
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9:10 - 9:121週間経ってから
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9:12 - 9:14別の実験をすることで
 経費を節約していました
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9:15 - 9:17私がやっていた実験に
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9:17 - 9:19マウスにストレスを与え
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9:19 - 9:21うつ病のモデルとして
 使うものがありました
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9:21 - 9:24最初は まったく効き目が
 ないようでした
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9:24 - 9:26だから そこで
 やめていたかもしれません
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9:27 - 9:29ただ何年も このうつ病モデルの
 実験を続けたところ
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9:29 - 9:31データが何かおかしいのです
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9:31 - 9:33どうも腑に落ちませんでした
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9:33 - 9:34そこで遡って
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9:34 - 9:36カリプソルを1週間前に
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9:36 - 9:40注射されていたかどうかという点から
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9:40 - 9:41データを再分析しました
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9:42 - 9:44すると結果は こうなりました
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9:44 - 9:46一番左を見てください
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9:46 - 9:49マウスを新しい環境である
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9:49 - 9:51この箱に入れると 興奮して
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9:51 - 9:53歩き回ったり 周囲を探ったりします
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9:53 - 9:57ピンクの線は実際にマウスが歩いた
 距離を表しています
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9:57 - 10:01さらに 鉛筆立てに
 もう1匹マウスを入れて
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10:01 - 10:032匹が交流できるようにします
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10:03 - 10:06念のため
 これもイメージです
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10:06 - 10:10普通のマウスなら周囲を探ります
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10:10 - 10:11交流もします
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10:12 - 10:13どうなるか 見てみましょう
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10:13 - 10:16うつ病モデルとして
 マウスにストレスを与えると
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10:16 - 10:17中央の箱が そうですが
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10:18 - 10:20交流はなく 周囲も探りません
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10:20 - 10:23だいたい後ろの隅
 カップの後ろに隠れています
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10:24 - 10:28ところがカリプソルを
 1回注射された右のマウスは
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10:29 - 10:31周囲を探り 交流しました
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10:32 - 10:34まるでストレスなど
 与えられなかったように見えますが
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10:35 - 10:36それは ありえません
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10:37 - 10:39さて ここでやめてもよかったのですが
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10:40 - 10:44クリスティンも 以前から
 カリプソルを麻酔として使っていて
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10:44 - 10:46数年前から気づいていました
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10:46 - 10:48この薬には
 細胞や ある行動に対して
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10:48 - 10:49奇妙な効果があって
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10:49 - 10:52しかも投与から数週間 程度
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10:52 - 10:54効果が続くらしいのです
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10:54 - 10:55私たちは
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10:55 - 10:57ありえない話ではないとは
 思いましたが
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10:57 - 10:59かなり疑っていました
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10:59 - 11:01そこで確証がない時に
 科学者がすること つまり
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11:01 - 11:02再実験したのです
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11:03 - 11:06覚えているのは
 私が動物実験室で
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11:06 - 11:10ネズミを箱から箱へと移しながら
 実験し クリスティンは
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11:10 - 11:14膝の上にパソコンを置いて
 ネズミの視界に入らないように
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11:14 - 11:15床に座りながら
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11:15 - 11:18リアルタイムでデータを
 分析していた様子です
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11:18 - 11:19それから 実験室で
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11:19 - 11:22本当はダメなんですが
 2人で叫んだのを覚えています
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11:22 - 11:24実験がうまくいったのです
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11:24 - 11:28対象のネズミは —
 言い方は色々あるでしょうが
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11:28 - 11:31ストレスから守られているというか
 不自然な多幸感を示していて
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11:31 - 11:34私たちはとても興奮しました
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11:35 - 11:38ただ うまくいき過ぎに思えて
 疑念がわいてきたので
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11:39 - 11:40再実験したのです
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11:41 - 11:43その後 PTSDモデルで実験し
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11:44 - 11:46ストレス・ホルモンを投与する
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11:46 - 11:48生理学的モデルでも試しました
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11:48 - 11:50授業でも学生に実験させ
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11:50 - 11:54地球の裏側 フランスの協力者にも
 実験してもらいました
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11:55 - 11:58そして実験の度に
 同じ結果が確認できたのです
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11:58 - 12:01どうもカリプソルを1度注射すると
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12:01 - 12:04何週間もストレスから
 守られるようでした
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12:04 - 12:06結果を公表したのは
 つい1年前ですが
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12:06 - 12:10それ以降 色々な研究施設が
 それぞれ効果を確認しています
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12:11 - 12:13さて うつ病の原因は不明ですが
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12:13 - 12:17わかっているのは
 症例の80%が
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12:17 - 12:20ストレスがきっかけで
 発症していることです
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12:20 - 12:22うつ病とPTSDは別の病気ですが
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12:22 - 12:24両者に共通するのは この点です
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12:24 - 12:26激しい戦闘や自然災害
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12:26 - 12:29地域社会での暴力や性的暴行といった
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12:29 - 12:31心的外傷性ストレスは
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12:31 - 12:33PTSDの原因になりますが
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12:34 - 12:40ストレスに晒された人が全員
 気分障害を発症するとは限りません
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12:40 - 12:43ストレスを経験しても
 立ち直って回復し
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12:43 - 12:47うつ病やPTSDを発症しない力を
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12:48 - 12:50「ストレス耐性」と呼びますが
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12:50 - 12:52これには個人差があります
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12:52 - 12:55ストレス耐性とは
 受動的特性のようなもので
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12:55 - 12:58気分障害の感受性因子や
 危険因子が欠如した状態だと
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12:58 - 13:00私たちは考えてきましたが
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13:01 - 13:02もしも身に付けられる
 ものだとしたら?
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13:03 - 13:05おそらく鎧をつけるように
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13:05 - 13:07ストレス耐性を
 強化できるかもしれません
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13:08 - 13:13私たちが偶然発見したのは
 ストレス耐性を強める 初の薬でした
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13:14 - 13:17先ほど お話しした通り
 この薬を少し与えるだけで
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13:17 - 13:18効果は何週間も 持続しますが
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13:18 - 13:21これは抗うつ薬には
 見られないことです
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13:21 - 13:26一方 これは免疫ワクチンの効果に
 少し似ています
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13:26 - 13:29免疫ワクチンでは
 注射を打ってから
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13:29 - 13:33何週間、何か月、何年も経って
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13:33 - 13:35実際に細菌に晒された時
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13:35 - 13:37体を守るのはワクチンではありません
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13:37 - 13:39自分の免疫システムが
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13:39 - 13:43抵抗力や耐性を高め
 細菌を撃退するので
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13:43 - 13:45感染しなくなるのです
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13:45 - 13:48これは 普通の治療法とは
 だいぶ違うでしょう?
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13:48 - 13:52普通の治療法では
 細菌に晒され 感染し
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13:52 - 13:56病気になると 治療するために
 例えば抗生物質を飲みますが
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13:56 - 13:59そういう薬は実際に細菌を
 殺す働きがあります
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14:00 - 14:02また 先ほど話した
 苦痛緩和剤のような
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14:02 - 14:05症状を抑えるものを
 飲むことになりますが
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14:05 - 14:08その薬は 原因である
 感染症は治療せず
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14:08 - 14:11気分が良いのは
 薬が効いている間だけなので
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14:11 - 14:13飲み続ける必要があります
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14:13 - 14:16うつ病やPTSDの場合
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14:16 - 14:18ストレスに晒され
 起きるのですが
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14:18 - 14:21苦痛緩和ケアだけが
 唯一の治療法です
- 
14:21 - 14:23抗うつ薬は症状を抑えるだけで
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14:23 - 14:26病気が続く限り
 基本的にはその薬を
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14:26 - 14:28飲み続ける必要があり
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14:28 - 14:30その期間は一生に及ぶ
 場合も多いのです
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14:31 - 14:35私たちは この耐性強化薬 カリプソルを
 「パラワクチン」つまり
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14:35 - 14:37ワクチンに似たものと呼んでいます
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14:37 - 14:39なぜなら これは
 ストレスから身を守ってくれる
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14:39 - 14:41可能性があるように見え
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14:41 - 14:45マウスが うつ病やPTSDを
 発症するのを
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14:45 - 14:47防いでくれている
 かもしれないからです
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14:48 - 14:51また 抗うつ薬が全部
 パラワクチンになるわけではありません
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14:52 - 14:54プロザックも試しましたが
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14:54 - 14:55効果は見られませんでした
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14:56 - 14:59もし実験結果が人間にも
 当てはまるとすれば
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14:59 - 15:02ストレスが原因となる
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15:02 - 15:04うつ病やPTSDといった疾患の
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15:04 - 15:08リスクがある人々を
 守れるかもしれません
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15:08 - 15:11緊急救急隊員や消防士
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15:11 - 15:15難民、受刑者と看守、兵士など
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15:15 - 15:17あらゆる人々です
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15:18 - 15:22こういった病気が
 どのくらい広がっているかというと
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15:23 - 15:262010年の世界の疾病負荷は
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15:26 - 15:30推定2.5兆ドルでしたが
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15:30 - 15:32これらは慢性の病気なので
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15:32 - 15:35コストは積み重なり
 わずか15年後には
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15:35 - 15:386兆ドルにも上ると
 予想されています
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15:39 - 15:41先程お話した通り
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15:41 - 15:45私たちにバイアスがあるせいで
 薬の転用が難しい場合があります
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15:46 - 15:47実は カリプソルは別名
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15:48 - 15:49ケタミンといいます
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15:50 - 15:52さらに もう1つの名前は
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15:52 - 15:54スペシャルK —
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15:54 - 15:56クラブドラッグで麻薬です
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15:58 - 16:01また 今でも世界中で麻酔薬として
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16:01 - 16:04子供にも戦場でも使われています
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16:04 - 16:07多くの新興国で
 この薬が使われているのは
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16:07 - 16:08呼吸を抑制しないという
 利点があるからです
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16:08 - 16:13世界保健機関の必須医薬品リストにも
 掲載されています
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16:14 - 16:17最初からパラワクチンとして
 ケタミンを発見していたら
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16:18 - 16:21開発は容易だったでしょうが
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16:21 - 16:25凝り固まった従来の思考法から
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16:25 - 16:27逃れる必要があるのが現状です
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16:29 - 16:33幸い これは私たちが発見した
 予防的でパラワクチンの効果を持つ
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16:33 - 16:36唯一の化合物というわけでは
 ありませんが
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16:37 - 16:39発見した他の薬
 あるいは化合物は
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16:40 - 16:42新たに発見されたものばかりで
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16:42 - 16:46人に投与できるようになるとしても
 それ以前に
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16:46 - 16:49FDAの認可プロセスを
 一通り経なければなりません
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16:49 - 16:51完了までには数年かかるでしょう
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16:51 - 16:53もっと早く手に入れたければ
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16:53 - 16:56既にFDAの認可を得た
 ケタミンがあります
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16:56 - 16:58ジェネリック医薬品があって
 広く利用可能です
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16:58 - 17:02つまり わずかな経費と時間で
 製造できます
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17:03 - 17:08ただ 実際には 機能的固着や
 メンタルセット以上に
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17:08 - 17:11薬の転用を妨げている
 ものがあります
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17:11 - 17:13政策です
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17:13 - 17:15薬の特許が切れて
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17:15 - 17:19ジェネリックになり独占できなくなると
 そういう薬を製造する
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17:19 - 17:22積極的な動機は薄れます
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17:22 - 17:23儲からないからです
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17:23 - 17:26これはケタミンに限らず
 どの薬にも当てはまります
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17:28 - 17:33それでも 薬を使って精神疾患を
 治療するのではなく
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17:33 - 17:37予防するという考え方自体は
 精神医学では
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17:37 - 17:39まったく新しいものです
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17:40 - 17:45この先 20年後、50年後、100年後には
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17:45 - 17:49現在のうつ病やPTSDにまつわる状況を
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17:49 - 17:52私たちが結核療養所を振り返るように
 過去の遺物として
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17:52 - 17:54振り返れるようになるでしょう
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17:54 - 17:59これは蔓延する精神障害を
 なくせる兆しかもしれません
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18:00 - 18:04ただ 科学に詳しい
 ある偉大な人は こう言いました
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18:05 - 18:07「確実と思うのは愚者 —
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18:07 - 18:09推測し続けるのが賢者」
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18:10 - 18:11[マクガイバー]
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18:11 - 18:12ありがとう
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18:12 - 18:15(拍手)
- Title:
- 薬でうつ病やPTSDを予防することは可能か? | レベッカ・ブラックマン | TEDxNewYork
- Description:
- 
    more » « lessより優れた医薬品の開発は、偶然でありながら、革新的な発見によって道が切り開かれてきました。科学がどう進歩するかを巧みに語りながら、神経学者レベッカ・ブラックマンが、広がりつつあるうつ病やPTSDといった精神疾患を解決する可能性を持つ、偶然発見された革新的な治療法について話します。さらに、その予想を超えた、物議をかもす展開をお聞きください。 このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。 
- Video Language:
- English
- Team:
 closed TED closed TED
- Project:
- TEDxTalks
- Duration:
- 18:18
|   | Retired user approved Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork | |
|   | Reiko Bovee accepted Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork | |
|   | Reiko Bovee edited Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork | |
|   | Retired user edited Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork | |
|   | Reiko Bovee declined Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork | |
|   | Reiko Bovee edited Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork | |
|   | Reiko Bovee edited Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork | |
|   | Reiko Bovee edited Japanese subtitles for Could a drug prevent depression? | Rebecca Brachman | TEDxNewYork |