-
どうもトニーです。
エブリー・フレーム・ア・ペインティングの始まりです。
-
見てて退屈ですよね?こういうシーン
-
何の工夫もなく、ダラダラ写してるだけ
-
誰も動かず、一人ずつアップになる
-
たっぷり5分間はこの繰り返し
"博士と彼女のセオリー(2014)"
-
最近の映画はみんなこんな感じ
-
まるでしゃべる写真です
-
映画的技法とはとても言えませんね
"アルフレッド・ヒッチコック(1974年7月)"
-
そこで今日は黒澤明の技法を紹介しましょう
-
ダラダラ写すのではなく、
単純な図形を描くように撮影するのです
-
「悪い奴ほどよく眠る」のこのシーンは
四角形と三角形を意識しています
-
西が白井にカバンを渡して
-
イスに戻りました。
これでとても単純な三角形ができあがります
-
二人の目と盗まれた金の入ったカバンです
-
黒澤は二人が反応するカットを
個別に見せていません
-
観客は自然に二人の顔を見比べます
-
白井の恐れが高まるにつれ
この三角形は広がっていきます
-
観客は意識していませんが
-
ドアは常に画面に写っており
-
守山が近づくとカメラが移動して
白井を四角形の内側にとらえます
-
こうして小柄な男が追い詰められていくと
-
素晴らしい構図が生まれます。
3人の男、3つの視線
-
立っている二人の間でしか会話は交わされませんが
-
フレームの中心は西の顔です。
西の反応とその行為がバレていないことを
-
観客は確かめたいからです
-
黒澤はこの三角形を一本の腕で崩します。
-
バレてしまいました
-
西は視線を動かしただけですが、
観客の注意は彼に向けられます
-
今や三角形は微妙に変化し
-
左手の二人は重なるように寄り
-
右手の一人が三角形を崩して金に集中します
-
弁解の余地はありません
-
白井は一瞬だけためらいますが
結局、場面は元に戻ります
-
一人の男が次の手を考えている場面です
-
三船敏郎は一言も言わずに
-
姿勢と視線だけで
この場面の主役となっています
-
黒澤は三角形と四角形の構図を用い
-
観客の視線をあちこちに操って
-
2分半で話を片付けてしまいます
-
これには幾何学的な美すら覚えます
-
人が一人。二人。三、ニ、一。
視覚による物語りの傑作です
-
もっと知りたい方は
他の黒澤作品も研究してみましょう
-
どんな作品でも、大胆かつ単純な
視覚による物語りの技法が見つかります
-
七人の侍では円と集団
-
用心棒では水平線と斜線
-
隠し砦の三悪人では三角形に次ぐ三角形
-
一つのシーンに複数の人物を出すときは
-
陳腐なクローズアップはやめて
工夫をしてみましょう
-
どんな形が描けるか楽しみですね