1 00:00:07,200 --> 00:00:10,360 どうもトニーです。 エブリー・フレーム・ア・ペインティングの始まりです。 2 00:00:10,360 --> 00:00:14,480 見てて退屈ですよね?こういうシーン 3 00:00:14,480 --> 00:00:18,500 何の工夫もなく、ダラダラ写してるだけ 4 00:00:18,500 --> 00:00:20,770 誰も動かず、一人ずつアップになる 5 00:00:20,790 --> 00:00:23,430 たっぷり5分間はこの繰り返し "博士と彼女のセオリー(2014)" 6 00:00:23,500 --> 00:00:27,000 最近の映画はみんなこんな感じ 7 00:00:27,000 --> 00:00:29,500 まるでしゃべる写真です 8 00:00:30,090 --> 00:00:33,120 映画的技法とはとても言えませんね "アルフレッド・ヒッチコック(1974年7月)" 9 00:00:33,120 --> 00:00:36,550 そこで今日は黒澤明の技法を紹介しましょう 10 00:00:36,630 --> 00:00:40,809 ダラダラ写すのではなく、 単純な図形を描くように撮影するのです 11 00:00:45,760 --> 00:00:49,300 「悪い奴ほどよく眠る」のこのシーンは 四角形と三角形を意識しています 12 00:00:49,300 --> 00:00:53,079 西が白井にカバンを渡して 13 00:00:53,079 --> 00:00:55,670 イスに戻りました。 これでとても単純な三角形ができあがります 14 00:00:55,670 --> 00:00:58,000 二人の目と盗まれた金の入ったカバンです 15 00:01:00,800 --> 00:01:03,300 黒澤は二人が反応するカットを 個別に見せていません 16 00:01:03,300 --> 00:01:06,820 観客は自然に二人の顔を見比べます 17 00:01:06,820 --> 00:01:09,250 白井の恐れが高まるにつれ この三角形は広がっていきます 18 00:01:09,250 --> 00:01:12,170 観客は意識していませんが 19 00:01:12,170 --> 00:01:14,869 ドアは常に画面に写っており 20 00:01:17,869 --> 00:01:21,300 守山が近づくとカメラが移動して 白井を四角形の内側にとらえます 21 00:01:24,300 --> 00:01:25,820 こうして小柄な男が追い詰められていくと 22 00:01:25,820 --> 00:01:29,110 素晴らしい構図が生まれます。 3人の男、3つの視線 23 00:01:31,110 --> 00:01:34,020 立っている二人の間でしか会話は交わされませんが 24 00:01:34,020 --> 00:01:37,729 フレームの中心は西の顔です。 西の反応とその行為がバレていないことを 25 00:01:37,729 --> 00:01:39,530 観客は確かめたいからです 26 00:01:42,130 --> 00:01:45,273 黒澤はこの三角形を一本の腕で崩します。 27 00:01:47,133 --> 00:01:48,416 バレてしまいました 28 00:01:48,416 --> 00:01:51,560 西は視線を動かしただけですが、 観客の注意は彼に向けられます 29 00:01:51,560 --> 00:01:54,219 今や三角形は微妙に変化し 30 00:01:54,219 --> 00:01:55,979 左手の二人は重なるように寄り 31 00:01:55,979 --> 00:01:58,000 右手の一人が三角形を崩して金に集中します 32 00:02:02,000 --> 00:02:05,610 弁解の余地はありません 33 00:02:05,610 --> 00:02:08,729 白井は一瞬だけためらいますが 結局、場面は元に戻ります 34 00:02:08,729 --> 00:02:12,000 一人の男が次の手を考えている場面です 35 00:02:13,000 --> 00:02:14,930 三船敏郎は一言も言わずに 36 00:02:14,930 --> 00:02:18,549 姿勢と視線だけで この場面の主役となっています 37 00:02:18,549 --> 00:02:21,560 黒澤は三角形と四角形の構図を用い 38 00:02:21,560 --> 00:02:24,500 観客の視線をあちこちに操って 39 00:02:24,500 --> 00:02:26,000 2分半で話を片付けてしまいます 40 00:02:26,980 --> 00:02:29,390 これには幾何学的な美すら覚えます 41 00:02:29,390 --> 00:02:35,040 人が一人。二人。三、ニ、一。 視覚による物語りの傑作です 42 00:02:35,040 --> 00:02:38,549 もっと知りたい方は 他の黒澤作品も研究してみましょう 43 00:02:38,549 --> 00:02:42,320 どんな作品でも、大胆かつ単純な 視覚による物語りの技法が見つかります 44 00:02:42,320 --> 00:02:45,000 七人の侍では円と集団 45 00:02:46,280 --> 00:02:48,230 用心棒では水平線と斜線 46 00:02:49,230 --> 00:02:51,709 隠し砦の三悪人では三角形に次ぐ三角形 47 00:02:52,149 --> 00:02:54,739 一つのシーンに複数の人物を出すときは 48 00:02:54,739 --> 00:02:57,810 陳腐なクローズアップはやめて 工夫をしてみましょう 49 00:02:57,810 --> 00:03:00,000 どんな形が描けるか楽しみですね