依存症の力、力への依存 | ガボール・マテ | TEDxRio+20
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0:10 - 0:14今日お話しするのは依存症について
特に依存の力についてですが -
0:14 - 0:17力への依存についてもお話しします
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0:17 - 0:20私はカナダのバンクーバーで
医師として働いています -
0:20 - 0:23極めて重度の依存症患者を
診てきました -
0:23 - 0:26ヘロインを使う者
コカインを注射する者 -
0:26 - 0:32アルコール 覚せい剤など
ありとあらゆる薬物の使用者たちです -
0:32 - 0:33苦しんでいる人たちです
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0:33 - 0:38もし医師の成功を測る基準が
患者の寿命を延ばすことなら -
0:38 - 0:40私は失格です
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0:40 - 0:44私の患者は相対的に
若くして亡くなるからです -
0:44 - 0:48死因はHIV、C型肝炎
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0:48 - 0:50心臓弁の感染症
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0:50 - 0:54脳や脊椎の感染症
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0:54 - 0:56心臓や血液の感染症などです
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0:56 - 1:02自殺や薬物の過剰摂取
暴力や事故による死亡もあります -
1:02 - 1:06彼らの姿を見たら
エジプトの偉大な作家― -
1:06 - 1:10ナギーブ・マフフーズの言葉を
思い起こすでしょう -
1:10 - 1:15「人間の体ほど 悲しい人生を
克明に記録するものはない」 -
1:15 - 1:17彼らはすべてを失っているからです
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1:17 - 1:20健康も 見た目の美しさも
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1:20 - 1:24歯も富も
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1:24 - 1:26他人との関係も失い
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1:26 - 1:29多くの場合 ついには
命をも失います -
1:29 - 1:32それでも彼らが依存から
足を洗うことは ないのです -
1:32 - 1:35彼らに依存をやめさせることは
力ずくでも できません -
1:35 - 1:39依存症には強い力があります
なぜでしょう -
1:39 - 1:41ある患者が私に言いました
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1:41 - 1:45「死ぬのは怖くない
生きることの方が怖い」 -
1:45 - 1:51我々が考えるべき問題はこれです
「なぜ彼らは生きることを恐れるのか」 -
1:51 - 1:54依存症を理解しようと思ったら
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1:54 - 1:56着目すべきは
依存の悪い点ではありません -
1:56 - 1:58依存の良い点に目を向けるのです
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1:58 - 2:01つまり患者が依存から得ているのは
何なのか -
2:01 - 2:04依存しなければ得られないものとは
何なのか -
2:04 - 2:08依存症患者たちが得ているのは
痛みからの解放です -
2:08 - 2:13安らぎやコントロール感
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2:13 - 2:16落ち着きが得られます
ただし ほんの一時です -
2:16 - 2:20問題は なぜこうした感覚が
彼らの人生に欠けているのか -
2:20 - 2:22彼らに何が起きたかです
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2:22 - 2:28ヘロインやモルヒネ
コデインなどの薬物や -
2:28 - 2:32コカインやアルコールには
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2:32 - 2:34どれも鎮痛作用があります
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2:34 - 2:36とにかく痛みが和らぐのです
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2:36 - 2:39だから 依存症における真の問題は
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2:39 - 2:43「なぜ依存するか」ではなく
「なぜ痛むのか」なのです -
2:43 - 2:46キース・リチャーズの自伝を
読み終えたところです -
2:46 - 2:48ローリング・ストーンズの
ギタリストですね -
2:48 - 2:51ご存じかと思いますが
彼が いまだ存命だというのは -
2:51 - 2:54やはり驚きです
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2:54 - 2:57彼は長期にわたり
重度のヘロイン依存でした -
2:57 - 3:01自伝には こう書いています
「依存とは -
3:01 - 3:05すなわち忘却を求めることであった」
すべてを忘れることだったのです -
3:05 - 3:08彼は言います
「薬物による感覚の歪みのおかげで -
3:08 - 3:12数時間は自分じゃない感覚が
味わえる」 -
3:12 - 3:14私には その気持ちがよく分かるのです
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3:14 - 3:17自分に対する不快感を
知っているからです -
3:17 - 3:20自分という存在に対する不快感も
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3:20 - 3:24自分の精神状態から
逃げ出したいという欲望も分かります -
3:24 - 3:30イギリスの偉大な精神科医
ロナルド・D・レインは -
3:30 - 3:33「人が恐れるものには3つある」
と言いました -
3:33 - 3:38人が恐れるのは 死、自分以外の人、
そして自分の心です -
3:38 - 3:42長いこと私は自分の心から
目を背けようとしてきました -
3:42 - 3:44向き合うのが怖かったのです
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3:44 - 3:46どうやって逃げていたかというと
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3:46 - 3:51薬物を使ったことはありませんが
仕事に逃げていました -
3:51 - 3:54様々な活動に身を投じました
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3:54 - 3:57買い物にも逃げました
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3:57 - 4:02私の場合はクラシック音楽の
コンパクトディスクでしたが -
4:02 - 4:04そうやって完全に依存症になりました
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4:04 - 4:071週間でコンパクトディスクに
8千ドルを費やしたこともあります -
4:07 - 4:08買いたかったわけではなく
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4:08 - 4:12店へ行かずには
いられなかったのです -
4:12 - 4:15その頃 私は医師として
多くの赤ん坊を取り上げていましたが -
4:15 - 4:17ある時
陣痛に苦しむ女性を病院に残して -
4:17 - 4:22CDを買いに行ってしまったことが
ありました -
4:22 - 4:26出産の時間までには
病院へ戻れるはずでしたが -
4:26 - 4:28いったん店に入ると出られないのです
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4:28 - 4:33売り場にはクラシック音楽の
販売員という悪魔がいるからです -
4:33 - 4:37「よぅ モーツァルトの交響曲の
最新のヤツ聴いたかい?」 -
4:37 - 4:38「まだ?それじゃあ...」
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4:38 - 4:40私は出産に間に合いませんでした
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4:40 - 4:43帰宅後 そのことで妻に嘘をつきました
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4:43 - 4:47嘘をつくのは依存者の特徴です
そして私は子どもたちを無視しました -
4:47 - 4:50仕事と音楽に
取りつかれていたからです -
4:50 - 4:53私には自己からの逃避がどんなものか
わかるのです -
4:53 - 4:55私は依存をこう定義しています
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4:55 - 5:01依存とは
一時的な安らぎや喜びを与えながら -
5:01 - 5:05長期的には害になり
悪影響をもたらす行動のことで -
5:05 - 5:09その悪影響にも関わらず
やめることができないものです -
5:09 - 5:12この観点から見ると
実に多くの依存があることが -
5:12 - 5:16お分かりになるでしょう
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5:16 - 5:18薬物依存はもちろんですが
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5:18 - 5:21消費依存もありますし
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5:21 - 5:26セックス依存も
インターネット依存も -
5:26 - 5:29買い物や食べ物への依存もあります
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5:30 - 5:33仏教には
「餓鬼」という考えがあります -
5:33 - 5:37餓鬼とは膨れ上がった空っぽの腹に
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5:37 - 5:40やせ細った首と小さな口を持つ
生き物です -
5:40 - 5:42餓鬼は常に飢えており
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5:42 - 5:44空虚感が満たされることは
あり得ません -
5:44 - 5:47我々は皆 この社会における餓鬼です
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5:47 - 5:48誰もが空虚感を抱えています
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5:48 - 5:52そして多くの人々がその空虚を
外から埋めようとしています -
5:52 - 5:57依存とは まさに その空虚を外から
埋めようとすることなのです -
5:58 - 6:03依存者が痛みに苦しんでいる理由に
取り組もうと思ったら -
6:03 - 6:06着目すべきは遺伝子ではありません
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6:06 - 6:08彼らの人生に目を向けるのです
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6:08 - 6:12私が診ている
常習の依存患者たちの場合 -
6:12 - 6:14彼らが痛みに苦しんでいる理由は
明白です -
6:14 - 6:17人生を通じて
ずっと虐待されてきたのです -
6:17 - 6:19生まれた時から虐待の日々です
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6:19 - 6:2312年の間に何百人もの女性を
診てきましたが -
6:23 - 6:25全員 幼少期に
性的虐待を受けていました -
6:25 - 6:27男性も精神的に傷ついていました
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6:27 - 6:30男性の場合は性的虐待を受けたり
ネグレクトされたり -
6:30 - 6:33身体的虐待を受けたり 捨てられたり
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6:33 - 6:36繰り返し心を傷つけられたり
しています -
6:36 - 6:38これが痛みの理由です
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6:38 - 6:42そして また別の理由もあります
人間の脳です -
6:42 - 6:45耳にしたことがあるでしょうが
人間の脳は -
6:45 - 6:48環境と相互に作用します
-
6:48 - 6:50遺伝的にプログラムされている
訳ではないのです -
6:50 - 6:53ですから子どもの頃の環境によって
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6:53 - 6:57実際に脳がどう発達するかが
決まってくるのです -
6:57 - 7:01マウスを使った実験を2つ
ご紹介しましょう -
7:01 - 7:04ある子どものマウスの口に
食べ物を入れると -
7:04 - 7:07マウスはそれを食べ 味わい
飲み込みますが -
7:07 - 7:11ほんの7~8センチ先に
食べ物を置くと -
7:11 - 7:13そこまで動いて食べようとはしません
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7:13 - 7:16食べには行かず餓死するのです
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7:16 - 7:18なぜでしょう?
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7:18 - 7:22このマウスの脳では
ドーパミンという物質の受容体が -
7:22 - 7:23遺伝的に不活化してあったからです
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7:23 - 7:26ドーパミンには報酬とやる気の
作用があります -
7:26 - 7:29ドーパミンが分泌されるのは
私たちがやる気になった時や -
7:29 - 7:33興奮したり 明るく元気になった時
興味がわいた時 -
7:33 - 7:36食べ物やセックスの相手を
探している時です -
7:36 - 7:38ドーパミンがなければ
やる気が起きません -
7:38 - 7:40では依存症患者の行動を
考えてみましょう -
7:40 - 7:42コカインや覚せい剤など
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7:42 - 7:45薬物を注入すると
依存症患者の脳では -
7:45 - 7:47ドーパミンの放出が見られます
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7:47 - 7:49問題は
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7:49 - 7:52そもそも彼らの脳に
何が起こっていたかです -
7:52 - 7:56薬物に依存性があるというのは
正しくないからです -
7:56 - 7:58薬物そのものに依存性はありません
-
7:58 - 8:01ほとんどの人は 薬物を使っても
依存症になることはありません -
8:01 - 8:02ですから問題は
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8:02 - 8:05なぜ一部の人は
依存症になりやすいのか? -
8:05 - 8:08食べ物に依存性はありませんが
依存症になる人はいます -
8:08 - 8:11買い物に依存性はありませんが
依存症になる人はいます -
8:11 - 8:14テレビに依存性はありませんが
依存症になる人はいます -
8:14 - 8:17このように依存症になりやすい理由は
何なのでしょう? -
8:19 - 8:22マウスを使った もう1つの実験では
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8:22 - 8:24マウスの赤ちゃんを使いました
-
8:24 - 8:28母親から引き離されても
赤ちゃんマウスは母を求めて鳴きません -
8:28 - 8:29自然界だったら どうなるでしょう?
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8:29 - 8:31赤ちゃんは死にます
-
8:31 - 8:34子どもの命を守り育てるのは
母親しかいないからです -
8:34 - 8:35なぜ 鳴かないのか?
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8:35 - 8:38このマウスでは 脳内で
エンドルフィンに結合する受容体が -
8:38 - 8:42遺伝的に不活性化してあったからです
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8:42 - 8:47エンドルフィンは脳内にある
モルヒネ様の物質で -
8:47 - 8:50我々が持つ天然の鎮痛剤です
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8:50 - 8:56またモルヒネやエンドルフィン類によって
愛を感じることや -
8:56 - 8:59親への愛着心や
親から子への愛着心を -
8:59 - 9:02感じることが可能になります
-
9:02 - 9:05ですから脳内のエンドルフィン受容体が
働かない赤ちゃんマウスたちは -
9:05 - 9:07母親を求めて鳴くことがない
というわけです -
9:07 - 9:09言い換えると
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9:09 - 9:14ヘロインやモルヒネなどの薬物への
依存というものは -
9:14 - 9:18このエンドルフィンの仕組みに
作用するのです -
9:18 - 9:20それで薬物の効果が
現れるというわけです -
9:20 - 9:23ですから問題は
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9:23 - 9:27この物質を外から取り入れなければ
ならない人たちの身に何が起きたのか― -
9:27 - 9:30彼らのように
虐待を受けている子どもの脳では -
9:30 - 9:33こうした回路が発達しないのです
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9:34 - 9:36乳幼児のうちに 暮らしの中で
-
9:36 - 9:38愛やつながりを感じていないと
-
9:38 - 9:42こうした脳の重要な回路が
正常に発達しません -
9:42 - 9:46虐待の環境にあれば
なにしろ正常に発達しませんから -
9:46 - 9:52薬物を使った場合
彼らの脳は影響を受けやすくなります -
9:52 - 9:54薬物によって ようやく
調子を取り戻し 痛みが和らぎ -
9:54 - 9:56愛を感じられるようになるのです
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9:56 - 10:00ある患者が こう言いました
「初めてヘロインをやった時 -
10:00 - 10:05優しいハグの温もりを感じたわ
母親が赤ん坊を抱くような感覚だった」 -
10:06 - 10:13さて患者たちほどではないにしろ
私も同じ空虚感を抱えていました -
10:13 - 10:17私の身に起きたことをお話ししましょう
私は1944年 ハンガリーの -
10:17 - 10:19ブダペストで
ユダヤ人の両親の元に生まれました -
10:19 - 10:22ドイツ人がハンガリーを占領する
直前のことです -
10:22 - 10:26東欧のユダヤ人に何が起きたかは
ご存じでしょう -
10:26 - 10:30ドイツ軍がブダペストへ侵攻してきた時
私は生後2ヶ月でした -
10:30 - 10:34そして侵攻された翌日
母は小児科医に電話をして -
10:34 - 10:35こう言いました
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10:35 - 10:39「ガボールが泣き止まないので
診に来ていただけませんか」 -
10:39 - 10:42小児科医は こう言いました
「もちろん 伺いますが -
10:42 - 10:46ただ 申し上げておきますと
ユダヤ人の赤ちゃんは皆 泣いてるんですよ」 -
10:46 - 10:47さあ なぜでしょう?
-
10:47 - 10:51赤ん坊がヒトラーや大虐殺や戦争の
何を知っているのでしょう? -
10:51 - 10:52何も知りません
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10:52 - 10:56赤ん坊は母親の感じている
ストレスや恐怖や -
10:56 - 10:58絶望に気づいていたのです
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10:58 - 11:03そのことが子どもの脳の発達を
方向付けるのです -
11:03 - 11:07そして当時の私は
「自分はこの世で望まれていない」 -
11:07 - 11:10というメッセージを
受け取っていたのでした -
11:10 - 11:13母が私のそばにいて 幸せでないなら
-
11:13 - 11:15母には私を求める気持ちが
ないに違いありません -
11:15 - 11:18のちに私が仕事中毒になった理由は
-
11:18 - 11:21気持ちとしては求められずとも
私を必要と思ってもらえるからです -
11:21 - 11:25有力な医者になれば
皆が私を必要としてくれます -
11:25 - 11:26そうすれば最初に感じた
-
11:26 - 11:29望まれていない感覚の
埋め合わせができると考えたのです -
11:29 - 11:31その結果 どうなったかと言えば
-
11:31 - 11:33私は 休みなく働き続け
-
11:33 - 11:38働いていない時は
音楽CDを買うことに没頭しました -
11:38 - 11:40私の子たちは どう感じたでしょう?
-
11:40 - 11:43私の時と同じく「自分は望まれていない」
と感じていました -
11:43 - 11:47こうして我々は
自分が受け取ったメッセージや -
11:47 - 11:49トラウマや苦痛を
無意識のうちに -
11:49 - 11:53次の世代へ伝えてしまうのです
-
11:53 - 11:56当然 この空虚感を埋める方法は
いろいろあり -
11:56 - 11:59人それぞれ 空虚感の埋め方は
異なりますが -
11:59 - 12:01結局のところ 空虚感は
-
12:01 - 12:08幼い頃に得られなかったものに
端を発しているのです -
12:08 - 12:11薬物依存者に出会うと
私たちは こう言います -
12:11 - 12:14「よく そんなことが
自分自身にできるもんだ -
12:14 - 12:17自分を殺すかもしれない悪い物質を
自分の身に注射するなんて -
12:17 - 12:19どうしてできるんだ?」
-
12:19 - 12:21でも我々が地球に対して
していることは? -
12:21 - 12:24我々は地球の大気圏や
海洋や環境に -
12:24 - 12:28様々なものを注射していますよね
-
12:28 - 12:30それが私たちや 地球を
殺しつつあるのに -
12:30 - 12:33どちらの依存が より深刻でしょう?
-
12:33 - 12:36石油への依存?
大量消費への依存? -
12:36 - 12:38より甚大な害をもたらすのは
どちらでしょう? -
12:38 - 12:40それでも我々は
薬物依存者を非難します -
12:40 - 12:44その理由は彼らが自分たちに
そっくりだと知っていて -
12:44 - 12:45そのことが嫌だからです
-
12:45 - 12:49だから言うのです「お前は我々とは違う
お前は我々より悪い」 -
12:49 - 12:54(拍手)
-
12:56 - 13:01サンパウロ そしてリオデジャネイロへ
来る飛行機で -
13:01 - 13:046月9日のニューヨーク・タイムズ紙を
読んでいると -
13:04 - 13:06ブラジルに関する記事がありました
-
13:06 - 13:10ニジオ・ゴメスという男性についての
記事です -
13:10 - 13:14彼はアマゾンに住む
グアラニー族の長で -
13:14 - 13:19去年11月に殺害されました
皆さんも お聞き及びでしょう -
13:19 - 13:22彼は大農場や企業から
自分の部族を守ろうとして -
13:22 - 13:25殺されました
-
13:25 - 13:29大農場や企業が熱帯雨林を買収し
破壊することによって -
13:29 - 13:32ブラジルの先住民の居住環境が
破壊されています -
13:32 - 13:36カナダ出身者として言いますが
あちらでも同じことが起きています -
13:36 - 13:40実際 私の患者の多くは
ファースト・ネーションという -
13:40 - 13:44カナダの先住民で
重度の依存症を患っています -
13:44 - 13:47彼らが人口全体に占める割合は
小さいのですが -
13:47 - 13:50受刑者や依存症患者や
精神疾患の患者や -
13:50 - 13:52自殺者の中では
-
13:52 - 13:54大きな割合を占めます
-
13:54 - 13:56なぜでしょうか
-
13:56 - 13:58その理由は 彼らが土地を奪われ
-
13:58 - 14:03何世代にもわたって
殺され 虐待されてきたからです -
14:03 - 14:04しかし 考えてみてください
-
14:04 - 14:07彼ら先住民の苦しみを理解でき
その苦しみが原因で -
14:07 - 14:12彼らが痛みからの解放を求めて
依存に向かうのだと理解できたなら -
14:12 - 14:14殺害や虐待をおこなう人間は
どうでしょう? -
14:14 - 14:16彼らは何に依存しているのか?
-
14:16 - 14:18彼らは権力に依存しているのであり
-
14:18 - 14:19富に依存しているのであり
-
14:19 - 14:21獲得することに依存しているのです
-
14:21 - 14:23より強大な力を手に入れたいのです
-
14:23 - 14:26権力への依存を理解しようと
私は歴史上 -
14:26 - 14:29最大級の力を得た人物を何人か
調べました -
14:29 - 14:34アレクサンダー大王や
ナポレオン、ヒトラー、 -
14:34 - 14:36チンギス・カンやスターリンを
調べました -
14:36 - 14:39この人たちを調べると
非常に面白いことが わかります -
14:39 - 14:42まず 彼らは なぜ あれほどまでに
権力を欲したのか? -
14:42 - 14:44興味深いことに
-
14:44 - 14:46身体的には 彼らは全員
とても背が低いのです -
14:46 - 14:52私と同じか 私より小柄なぐらいです
-
14:52 - 14:56また彼らは もともと よそ者です
-
14:56 - 14:59中心的な集団の出身者では
ありませんでした -
14:59 - 15:04スターリンはロシアでなくグルジア人
ナポレオンはフランスでなくコルシカ人 -
15:06 - 15:13アレクサンダーはギリシャでなくマケドニア人
ヒトラーはドイツでなくオーストリア人でした -
15:14 - 15:16ですから本質的に不安や
劣等感があったのでしょう -
15:16 - 15:20彼らが力を必要としたのは
「自分は大丈夫だ」と感じ -
15:20 - 15:21自分を大きく見せるためです
-
15:21 - 15:25その力を手に入れるために
彼らは進んで戦争をおこない -
15:25 - 15:28大勢の人々を殺したのです
すべては 自分の力を維持するためです -
15:29 - 15:32小柄な人だけが権力に貪欲なわけでは
ありませんよ -
15:32 - 15:35ただ 彼らのような例は興味深いです
-
15:35 - 15:39なぜなら権力への依存とは
例外なく自らの空虚感を -
15:39 - 15:41外から埋めようとすることだからです
-
15:41 - 15:45たとえば ナポレオンは
セントヘレナ島へ追放され -
15:45 - 15:50力を失った後も
自らの権力への愛を語り続けました -
15:50 - 15:53力を持たない自分の姿など
考えられなかったのです -
15:53 - 15:57他人の目に映る自分が もう力を
失っているとは思いもよりませんでした -
15:57 - 16:01これを釈迦やキリストのような人々と
比べてみると -
16:01 - 16:03大変に興味深く感じられます
-
16:03 - 16:06釈迦やキリストの物語を見ると
-
16:06 - 16:09どちらも悪魔に誘惑されていますが
-
16:09 - 16:14悪魔が様々な申し出をする中で
壮大な力を授けてやると言った時 -
16:14 - 16:172人とも断っているのです
-
16:17 - 16:18なぜ彼らは断るのでしょう?
-
16:18 - 16:24なぜなら彼らは自分の内側に
力を持っているからです -
16:24 - 16:26力を外側に求める必要がないのです
-
16:26 - 16:29また彼らは
人々を支配することを望まず -
16:29 - 16:30人々に教えを説くことを望みました
-
16:30 - 16:36手本を示し 穏やかな口調で
腕ずくではなく知恵でもって -
16:36 - 16:41人々に教えることを望みました
だから力を拒んだのです -
16:41 - 16:44これについて彼らは大変
興味深い言葉を残しています -
16:46 - 16:53キリストは「力と本当の姿は
自分の外ではなく内にある」と説きます -
16:53 - 16:57天国は人の心の中にあると説きます
-
16:57 - 17:01釈迦は入滅に際し
弟子たちが嘆き悲しみ 泣き -
17:01 - 17:03誰もが動揺している時
-
17:03 - 17:06こう言いました「私を悼んだり
崇拝したり してはならぬ -
17:06 - 17:13自らの内に灯明を見つけ 自らを灯し
その中に光を見出しなさい」 -
17:13 - 17:17ですから環境の損失や
地球温暖化や -
17:17 - 17:22海洋汚染などを抱える
この難しい世界について考える場合も -
17:22 - 17:25世の中を変えるため 権力者を
当てにするのは やめましょう -
17:25 - 17:29というのも 残念ながら
権力者とは 往々にして誰よりも深い― -
17:29 - 17:31空虚感に苛まれている人で
彼らが我々のために -
17:31 - 17:33世の中を変えてくれることは
ないからです -
17:33 - 17:36我々は自らの内に光を見出し
-
17:36 - 17:38コミュニティや自らの英知や
創造性の中に -
17:38 - 17:42光を見出さなければなりません
-
17:42 - 17:45権力者が世の中を良くしてくれるのを
待っても無駄です -
17:45 - 17:49私たちが強制しない限り
彼らは やってくれません -
17:53 - 17:58彼らは
人間の本質とは 野心的で攻撃的で -
17:58 - 18:00利己的だと言います
-
18:00 - 18:04まったく正反対です
人間の本質とは実に協力的で -
18:04 - 18:09実に寛容で
社会への貢献を目指すものなのです -
18:09 - 18:14このカンファレンスもそうです
ここに集まっているのは 情報を共有し -
18:14 - 18:17情報を受け取り 世界を良くしようと
尽力する人々です -
18:17 - 18:19それこそが人間の本質です
-
18:19 - 18:21最後に申し上げます
-
18:21 - 18:24もし皆さんが自分の内に光を見出し
自分らしさを見出せたら -
18:24 - 18:26我々はもっと自分に優しくなり
-
18:26 - 18:28自然に対しても優しくなれるでしょう
-
18:28 - 18:29ありがとうございました
-
18:29 - 18:32(歓声)(拍手)
- Title:
- 依存症の力、力への依存 | ガボール・マテ | TEDxRio+20
- Description:
-
もし医師の成功を測る基準が患者の寿命を延ばすことなら、ナチスによる大虐殺後のハンガリーで生まれカナダで育った精神科医ガボール・マテは失格です。彼が語るのは薬物や権力への依存です。「自分の本質を見つけ、自分に優しくしよう。」それが彼からの、一般に通用する寛容な処方箋です。
このビデオはTEDカンファレンスとは独立して運営されるTEDxイベントにおいて収録されたものです。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDxTalks
- Duration:
- 18:47
Emi Kamiya approved Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 | ||
Emi Kamiya edited Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 | ||
Emi Kamiya edited Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 | ||
Emi Kamiya edited Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 | ||
Masaki Yanagishita accepted Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 | ||
Masaki Yanagishita edited Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 | ||
Masaki Yanagishita edited Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 | ||
Emi Kamiya edited Japanese subtitles for Power of addiction and addiction to power | Gabor Maté | TEDxRio+20 |