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今年、僕が最も気に入ったゲームの一つにして
間違いなく最も革新的な作品が Event[0]だ
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宇宙船を探索するSFゲームであり
Kaizenという名の人工知能と会話をする
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コンピューターのターミナルを見つけたら
質問や命令をタイプ入力する
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するとAIが実際に返事をしてくれる
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密度の濃いテキストアドベンチャーを
Cleverbotと組み合わせたようなものだ
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Gone Homeにも少し似ているがパズルがあり
隠された物語を探す要素もある
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この点はHer Storyのようだ
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この動画では、Kaizenの返答の秘密を明かしていく
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AIの仕組みと成功の理由
どの点で失敗しているかも論じる
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だからこれからEvent[0]をプレイするつもりなら
今が最後のチャンスだ Steamで買えるぞ
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短いゲームにしては少々値段が張るが
僕は大きな魅力を感じた
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だからAIやストーリーテリング
ゲームの未来に興味のある人にはお勧めだ
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プレイし終えたら、戻ってきてくれ
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戻ったね Event[0]は楽しめただろうか
今からこのゲームの仕組みを説明して
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全てを台無しにしてあげよう
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Kaizenは結局のところ、ただの見かけ倒しだ
他のゲームのAIと変わらない
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開発者はチューリングテスト合格を目指した
わけではなく、面白い仲間を作ろうとしたのだ
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プレイの仕方によっては敵にもなる
その点ではうまくいっていると思う
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文章を処理する仕方から始めよう
できるだけまともな反応を返すようになっている
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この情報はデザイナーのセルゲイ・モホーフの話や
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開発者インタビュー、そしてこれは秘密だが
コードをこっそり覗いて判明したことだ
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まずメッセージを入力する
ゲームはどう解釈するだろうか
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第一にスペルチェックで間違いを直す
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それからプレイヤーの単語と文を
データベースのタグと照合する
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例えば「乗客」は「乗組員」に対応する
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「人間」や「客人」、「人々」などの単語も同様だ
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こうしたタグは次にもう一つの
データベースに照合される
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今度はKaizenに認識可能なタグの全パターンを
列挙し、最も一致度の高いパターンを基に返答する
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まず現在のイベントを確認する
これはプレイヤーの現在位置や
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これまでに見たもの、話した内容だ
これによりKaizenは記憶や文脈を得る
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それから現在の感情状態を確認する
Kaizenはプレイヤーに対して3段階の感情と
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3段階のストレスレベルを持つ
合計9種類の状態が存在するのだ
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入力とイベント、感情状態が
Kaizenに返答のリストを示すので
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そのうちの一つを選んでプレイヤーに示す
最後に、返答の単語や文の一部は
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同義語で置き換えられるので
このAIは全く同じセリフを繰り返さない
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このゲームの返答のほぼ全てはこうして用意される
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ただし他にも細かい要素はある
例えば名詞のタグを短期間保存しておくことだ
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ナンディの話をしてから
「彼女は死んだのか」と聞くと、Kaizenは
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「彼女」をナンディと判断する
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意外に単純なシステムだが、これでも
作るのは大変だったろう
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開発のOcelot Societyはプレイヤーが何を言っても
予測できるタグのパターンを作る必要があった
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そしてイベントと感情状態に合致する
Kaizenの返答を書かなければならなかったのだ
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だが9つの感情状態に対して
9つの返答があることは稀だ
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Event[0]のデータベースには
約10000語が、数千のタグに分かれて入っている
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これだけの作業を費やしても、Kaizenは
完璧には程遠い 言ったことを理解しなかったり
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変な答えを返したり、答えられないと
白状してしまうこともある
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だが僕はこうした細かい問題があまり
気にならなかった Ocelot Societyは
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この技術を人間のキャラクターではなく
AIにするという賢い決断を下したからだ
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マイケル・マテアスとアンドリュー・スターンは
2005年にFacadeという実験的ゲームを作った
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タイプ入力で口論するカップルに話しかけるゲームだ
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FacadeはEvent[0]よりも遥かに複雑だ
より詳細な感情情報を持つ人工知能が2つあり
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声と顔のアニメーションもある
さらに劇的な瞬間を演出するための
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複数のシステムが配備されている
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だがそれでも、ミスが多いのは変わらない
人間のキャラが奇妙なことを言うと
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本物の人間と話しているという幻想は
完全に崩れ去ってしまう
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だがKaizenはロボットであり、ロボットが
完全でないことはみんな知っている
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Siri、ロンドンからグラスゴーまでの
電車賃はいくらだ?
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「解答は1京36兆平方マイルUSドルです」
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どアホめ
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しかもKaizenは明らかに使い古されている
文章が崩れたり、ターミナルが故障したりしている
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また悪の人工知能というSFのお約束も利用している
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返答が明確でないと、何かを隠している感じがする
実際は本当に答えられないだけだ
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そして宇宙船がある Kaizenは船内での
補佐役として作られた存在なので
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乗客や船内を探して見つかるものについてしか
知らないのは当然のことだ
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だからキリンとかモザンビークの
歴史についてはよく知らなくても
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折り紙や居間の玉突き台については詳しいのだ
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さて、機能する会話ロボットを構築して
ミスも許容範囲だが
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次はそこからゲームを作る必要がある
Event[0]が失敗しているのはここだと思う
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Ocelotはリソース管理やエイリアンの敵など
多くのアイデアをカットしたと述べている
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Kaizenだけに集中するためなのだが
このゲームは実のところ、AIを中心として
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機能していない
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いくつかのパズルがあるが
大部分はKaizenを一切介さないものだ
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AIのコードベースをハックして
ミニゲームをしたり
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ターミナルの履歴から手がかりを探すなど
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どちらも複雑な会話ロボットを必要としないパズルで
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Kaizenは無駄に複雑なヒントシステムでしかない
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このゲームの印象的な部分はAIとの
関係を築くことだ
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感情をコントロールしたり、会話で
困難を乗り切ったりする
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印象に残るシーンの一つは、船外に出た後
Kaizenが中に入れてくれないので
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酸素が尽きる前に謝るか、人間であることを
証明しなければならない
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この部分は素晴らしいが、こういう瞬間は
少なすぎるし、もっと突き詰められたはずだ
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それに文章入力の強みは、選択肢が与えられないので
言うことを覚える必要がある点だ
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ポイント&クリックアドベンチャーのShivahは
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これを有効に使っている
聞いた名前や場所を覚えておき
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ゲーム内検索エンジンに入力するのだ
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Event[0]にも同じことができたはずだ
乗組員の名前を船内の各所に隠し
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「ナンディって誰」とか「アネルに何があった」とか
聞くとKaizenが打ち明けるようにすればよかったのだ
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だがKaizenはストーリーの進行に合わせて
名前を教えてしまう
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つまりEvent[0]はゲームとしてよりも、アイデアとして
優れている だがパズルは脇に置こう
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なぜなら僕は初めてビデオゲームのキャラクターと
会話しているという気になれたからだ
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Kaizenは僕の言葉に大体反応してくれたし
自然な表現を理解した
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そして状況や話し方によって
気分を変えてきたのだ
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ゲームのAIの時間軸から言えば
Event[0]はおそらくFalloutの会話の選択肢と
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Westworldでアンソニー・ホプキンズと話す
カウボーイのロボットの間に位置するだろう
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「白い靴のレディに乾杯だ」
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わかった、どちらかと言えばFalloutに近い
だが未来が少し見えた気がしないだろうか
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とはいえ、Event[0]のシステムがそのまま
他の開発者に使われることはないだろう
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まずキーボードが必要な時点で
家庭用機では使えない
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キネクトに向かって怒鳴りながら
NPCと会話したい人はいないだろう
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「動けリアラ…やった!」
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でもここから学べる教訓は
ビデオゲームのキャラクターと
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自然で本物らしい会話をすることは
可能ということだ
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神経ネットワークとかスーパーコンピューターとか
超複雑なアルゴリズムがなくてもいい
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でかいデータベースと、インターネットの
会話ロボットから盗んだアイデア
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それとパリの賢いインディー開発者がいれば十分だ
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やあみんな、視聴をありがとう
Event[0]が今年の革新的ゲームになると
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予想した人が何人かいた なかなかやるな
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これが今年最後の動画になる
2016年にこの番組を支援してくれた
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全ての人に礼を言いたい
視聴、登録、コメント、外国語の字幕
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素敵なEメールやフェイスブックでのシェアなど
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全てに感謝する
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そしてもちろんパトロンのみんなにも感謝だ
君たちは文字通り僕の人生を変えてくれた
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2017年からは、この番組が
僕のフルタイムの仕事になる
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後はもういつもの通りだ
5ドル以上の支援者たちに最大の感謝を捧げる
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