恐竜の地球支配を可能にした秘密兵器
-
0:01 - 0:04恐竜がどのように滅んだのか
皆さんご存知ですね -
0:04 - 0:06これから私がするお話は
-
0:06 - 0:11恐竜が絶滅する2億年ほど前のことです
-
0:11 - 0:14物語の始まりは
-
0:14 - 0:17恐竜が現れた時です
-
0:17 - 0:20進化生物学における
大きな謎の1つは -
0:20 - 0:24なぜ恐竜はあんなに繁栄できたのか
ということです -
0:24 - 0:27長きにわたって地球に君臨できたのは
なぜなのでしょう -
0:28 - 0:31恐竜のすごさの理由を考えるとき
-
0:31 - 0:35多くの人が思い浮かべるのは
一番大きな恐竜や 小さな恐竜 -
0:35 - 0:37すばしっこい恐竜
-
0:37 - 0:38羽毛の多い恐竜
-
0:38 - 0:42すごく変わったヨロイやトゲや牙を
持った恐竜のことです -
0:42 - 0:46しかし 答えは恐竜の体の内部構造に
あったのかもしれません -
0:46 - 0:48言うなれば「秘密兵器」です
-
0:49 - 0:53私の研究仲間は
それが肺であったと考えています -
0:53 - 0:57古生物学者であり
比較解剖学者でもある私が -
0:57 - 0:59興味を持ち 解明しようとしているのは
-
0:59 - 1:03恐竜の独特な肺が 地球を支配するのに
どう役立ったのか ということです -
1:04 - 1:062億年以上前の
-
1:06 - 1:09三畳紀まで時を戻しましょう
-
1:09 - 1:12生物を取り巻く環境は
過酷なものでした -
1:12 - 1:13花を咲かせる植物はなく
-
1:13 - 1:16草も存在しなかった
ということです -
1:16 - 1:20マツやシダ類で覆われた大地を
想像してください -
1:21 - 1:24当時生息していたのは
小さなトカゲや -
1:24 - 1:26哺乳類や昆虫
-
1:26 - 1:31肉食性や草食性の爬虫類で
-
1:31 - 1:34限られた食料をめぐって
競い合っていました -
1:34 - 1:35この話に欠かすことができないのが
-
1:35 - 1:40大気中の酸素濃度が
15%と推定され -
1:40 - 1:43現在の21%より
ずっと低かったことです -
1:43 - 1:46恐竜にとって極めて重要だったのは
-
1:46 - 1:48この低酸素の環境で
呼吸しつつ -
1:48 - 1:50生存するだけでなく
-
1:50 - 1:53繁栄し 多様化するということでした
-
1:54 - 1:58では 恐竜の肺がどうなっていたかは
どうすれば分かるのでしょうか? -
1:58 - 2:03残された手掛かりは
化石化した骨格だけなのです -
2:03 - 2:09私たちが使う手法は
「現生系統ブラケッティング法」で -
2:09 - 2:13難しく聞こえますが
生物の構造を調べる手法です -
2:13 - 2:17今回のケースでは
特に肺と骨格に着目し -
2:17 - 2:21系統図上の現存する
恐竜の子孫を調べます -
2:21 - 2:24我々が注目するのは
鳥類の体の構造です -
2:24 - 2:27鳥類は
恐竜の直接の子孫と言えます -
2:27 - 2:29それからワニ類です
-
2:29 - 2:31現存する生物の中で
最も近い親戚です -
2:31 - 2:34そしてさらに
トカゲと亀が続きます -
2:34 - 2:37恐竜のいとことも
呼べる存在です -
2:37 - 2:41これらの生き物の体の構造を
恐竜の化石に照らし合わせることで -
2:41 - 2:44恐竜の肺の構造を
再構成できます -
2:44 - 2:46この例で言うと
-
2:46 - 2:51骨格が恐竜と最も似ているのは
現代の鳥類です -
2:52 - 2:56恐竜は当時 初期の哺乳類と
生存競争していたので -
2:56 - 3:00哺乳類の肺の基本的なしくみを
知っておくことが大切です -
3:01 - 3:03一般的な肺の構造を
理解するために -
3:03 - 3:06私の愛犬
トロイアのミラを使いましょう -
3:06 - 3:08千のおやつを招く顔の
-
3:08 - 3:09私たちのモデルです
-
3:09 - 3:11(笑)
-
3:11 - 3:15胸の内部にある空間が
舞台となります -
3:15 - 3:18犬の肋骨を思い描いてください
-
3:18 - 3:20ここで脊柱は
-
3:20 - 3:24地面に対して完全に
平行になっています -
3:24 - 3:28今から話に出てくる動物の脊柱は
みんなそうです -
3:28 - 3:30二足歩行であれ
-
3:30 - 3:31四足歩行であれ
-
3:31 - 3:36想像上の肋骨の内側に入り
上を見て下さい -
3:37 - 3:40これが胸郭の天井です
-
3:40 - 3:46肺の上部が 肋骨や脊椎に
直接触れる部分です -
3:46 - 3:50両者が交わるこの部分が
今からの話の舞台です -
3:50 - 3:53まず 犬の肺を
思い浮かべて下さい -
3:53 - 3:57肺の外側は
空気で膨らむ大きな袋のようです -
3:57 - 4:00息を吸うと
袋のすべての部分が膨らみ -
4:00 - 4:03息を吐くと縮みます
-
4:03 - 4:06袋の中には
枝分かれした管があり -
4:06 - 4:09「気管支樹」と言います
-
4:09 - 4:15吸い込んだ酸素は
この管を通って肺胞まで運ばれ -
4:15 - 4:21薄い膜を通って
血液の中へと拡散されます -
4:21 - 4:23重要なのはここです
-
4:23 - 4:27哺乳類の肺は 全体が動きます
-
4:27 - 4:32呼吸をしている間 ずっと
肺は動いていて -
4:32 - 4:35そのため この血液空気関門という膜は
-
4:35 - 4:38薄すぎると破れてしまいます
-
4:38 - 4:42血液空気関門のことは
また出てくるので 覚えていてください -
4:42 - 4:43ついて来れてますか?
-
4:43 - 4:46次は鳥類の話をしますが
本当にすごいことになるので -
4:46 - 4:47覚悟してください
-
4:47 - 4:49(笑)
-
4:50 - 4:53鳥類は哺乳類とは
全く異なります -
4:53 - 4:56鳥類をモデルにして
-
4:56 - 4:58恐竜の肺を再構成してみます
-
4:58 - 5:00鳥の体内では
-
5:00 - 5:04空気は肺を通りますが
肺は伸縮しません -
5:05 - 5:10動かない 密度の高いスポンジのようで
柔軟性はなく -
5:10 - 5:18上と横は肋骨で 下は水平な膜で
固定されています -
5:18 - 5:21空気の流れは一定方向で
-
5:21 - 5:25柔軟な袋状のものを使って
換気しています -
5:25 - 5:28この袋は 気管支樹から枝分かれして
-
5:28 - 5:30肺の先にあり
-
5:30 - 5:32気嚢と呼ばれています
-
5:32 - 5:36この非常にデリケートな
造りの全体が -
5:36 - 5:44胸郭の天井に沿って連なる
フォーク状の肋骨で固定されています -
5:44 - 5:47また 多くの鳥類の体内では
-
5:47 - 5:51肺や気嚢から伸び出した組織が
-
5:51 - 5:53骨組織にまで入り込んでいて
-
5:53 - 5:56通常は脊椎
時には肋骨にまで伸び -
5:56 - 5:59呼吸器官をしっかりと固定します
-
5:59 - 6:02これを「脊椎中空性」と言います
-
6:02 - 6:06分岐した肋骨と 脊椎中空性
-
6:06 - 6:09この2つの手がかりを
化石の中に探してみましょう -
6:09 - 6:12骨格にこれらの形質があれば
-
6:12 - 6:15恐竜の呼吸器官の部位が
-
6:15 - 6:19動かなかったことが分かります
-
6:21 - 6:24呼吸器官が固定されることにより
-
6:24 - 6:28血液空気関門が薄くなるという
進化が促進されました -
6:28 - 6:34あの酸素を血流中に拡散する
薄い膜のことです -
6:35 - 6:38動かないので 薄くてもよくなりました
-
6:38 - 6:48薄い 弱い膜だと 哺乳類の肺のように
呼吸の度に動けば 破れてしまいます -
6:48 - 6:50なぜ それを気にかけるのか?
-
6:50 - 6:52そもそも重要なことなのか?
-
6:52 - 6:57膜が薄いほど 酸素は
拡散しやすくなります -
6:58 - 7:04膜を薄くすると
呼吸し易くなるのです -
7:04 - 7:06酸素が薄くても
-
7:06 - 7:11三畳紀のような
酸素が薄い環境であっても -
7:11 - 7:16恐竜達が実際に
このような肺を備えていたとすれば -
7:16 - 7:20他のどの動物よりも
呼吸において有利だったでしょう -
7:20 - 7:23哺乳類もかないません
-
7:23 - 7:26「現生系統ブラケッティング法」は
覚えていますか -
7:26 - 7:29現存している動物の構造を
-
7:29 - 7:32恐竜の化石に照らし合わせる方法でしたね
-
7:32 - 7:37最初の手掛かりは 現在の鳥類に
見られる分岐した肋骨ですが -
7:37 - 7:41大半の恐竜は
肋骨が分岐していました -
7:42 - 7:47つまり
恐竜の肺の上面部は -
7:47 - 7:49しっかりと固定されていた
ということです -
7:49 - 7:52現在の鳥類と同様に
-
7:52 - 7:55次の手掛かりは「脊椎中空性」ですが
-
7:55 - 8:00こちらは竜脚類と
獣脚竜に見られます -
8:00 - 8:04後者は肉食性の恐竜を含み
-
8:04 - 8:06鳥類の祖先にあたります
-
8:06 - 8:11恐竜の肺組織の化石が
見つからなくとも -
8:11 - 8:16「脊椎中空性」は生きた恐竜の肺が
どういうものだったのかを -
8:16 - 8:19教えてくれます
-
8:19 - 8:25肺組織や気嚢は
脊椎にまで入り込み -
8:25 - 8:27現在の鳥類のような
空洞を作り出し -
8:27 - 8:31呼吸器官をしっかりと固定し
-
8:31 - 8:33動かないようにしたのです
-
8:34 - 8:36分岐した肋骨と
-
8:36 - 8:39脊椎中空性の2つが合わさって
-
8:39 - 8:44動かない固い枠を作り出し
-
8:44 - 8:47呼吸器官を固定することで
-
8:47 - 8:52ごく薄い繊細な血液空気関門が
進化することを可能にし -
8:52 - 8:55これは現在の鳥類に
受け継がれています -
8:55 - 8:59恐竜の この固定された
肺の痕跡は -
8:59 - 9:03そういう肺の進化が
可能だったことを示しています -
9:03 - 9:09三畳紀のような低酸素の大気中でも
よく呼吸が出来る肺です -
9:10 - 9:14恐竜の この固定された
骨格構造は -
9:14 - 9:21他の動物 特に哺乳類と比べて
適応上の大きな利点になりました -
9:21 - 9:27動く肺では 三畳紀の低酸素には
うまく適応できなかったのです -
9:28 - 9:33この体の構造こそが
恐竜の隠れた武器だったのかもしれません -
9:33 - 9:36他のどんな動物にも勝る武器です
-
9:36 - 9:39これを素晴らしい
取っ掛かりとして -
9:39 - 9:44恐竜の多様化の仮説を
検証していくことが出来ます -
9:44 - 9:48これは 恐竜の起源の物語ですが
-
9:48 - 9:53この分野の研究の物語の
始まりに過ぎないのです -
9:53 - 9:54ありがとうございました
-
9:54 - 9:57(拍手)
- Title:
- 恐竜の地球支配を可能にした秘密兵器
- Speaker:
- エマ・シャクナー
- Description:
-
皆さんは恐らく、恐竜の絶滅の物語を聞いたことがあるでしょう―では、そもそもなぜ恐竜はあんなにも長い間繁栄することができたのでしょうか?(ヒント:大きさ、スピード、トゲや素敵な羽は関係ありません)古生物学者のエマ・シャクナーと一緒に恐竜が絶滅する2億年ほど前へ、恐竜の歴史の新鮮なアプローチの旅にでかけましょう。
- Video Language:
- English
- Team:
closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 10:12
![]() |
Yasushi Aoki approved Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet | |
![]() |
Yasushi Aoki accepted Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet | |
![]() |
Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet | |
![]() |
Yoko Emori edited Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet | |
![]() |
Yoko Emori edited Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet | |
![]() |
Yoko Emori edited Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet | |
![]() |
Yoko Emori edited Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet | |
![]() |
Yasushi Aoki declined Japanese subtitles for The secret weapon that let dinosaurs take over the planet |