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PlayStation 4 版『Spider-Man』に対する
最大の褒め言葉といえば―
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「スパイダーマンになった感じがする」だろう
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冗談抜きで、全く同じ言い回しの批評が山ほどある
(訳註 videogamedunkey の動画 Game Critics を参照)
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つまり映画館でスパイダーマンの映画を
観たことがあれば
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ピーター・パーカーの動き方、戦い方や
スイング移動を知り―
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ゲームを遊べば、それに
ぴったりな感覚が掴める訳だ
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だが実際は、多くのゲームが
似たようなことをやっている
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特に大規模予算の家庭用ソフトだ
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何故ならゲームは「空想の遊び(ごっこ遊び)」を
約束してくれるからだ
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例えばこれを Xbox で起動すれば
君はアサシンになった気分になるだろう
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あるいは第二次大戦の兵士や
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またはカウボーイに
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ただ、この空想はハリウッド映画に
裏付けられたものではなく
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ゲームの販売戦略によるものだ
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それは箱の外装にある絵や
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E3 で公開された見掛け倒しの
CG 映像のことだ
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例えばこの『Titanfall 2』の映像は
素早く策略に長けた兵士という空想を見せる
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敵の頭上を越え、道具で敵を欺き
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破壊の為に巨大メカに乗り込むのだ
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実際のプレイ方法はそうした空想を実現し
その機構を効果的に利用して
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箱に描かれた野郎のような
気分にさせている
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だが僕はこう問いたい
「その空想の実現はどれほど容易なのか?」
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例えば『Hitman』を見てみよう
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CG の予告映像は完全無欠の暗殺者としての
Agent 47 を提示する
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彼は決して見つかることなく標的を殺害し
それから影の中へ逃れる
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だがゲームを起動すると
初見プレイでは大抵の場合―
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全てをハゲ頭のアホのように
台無しにしてしまうだろう
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地形構造を学習し、潜伏機能に熟達し
少しだけ努力した時のみ―
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華麗な販売広告で約束された
空想上の遊びを実現できるようになる
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これが王道なのかもしれない というのは
こうした空想遊びをあまりに簡単に叶えてしまうと
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虚しく聞こえる可能性があるからだ
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これが Batman: Arkham 系列の
戦闘で発生した
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戦闘システムは非常に単純で
パンチボタンを何度も連打するだけだった
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またバットマンは
磁石のように敵に飛びかかるので
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まるで、ゴス系バレリーナが
そこら中を旋回するかのような光景だった
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そしてカウンターの発動タイミングは
寛容なので、ボタンを押せば
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闇の騎士(バットマン)は
容易に敵を倒すだろう
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確かに戦闘は映画っぽく見えるし
"バットマンになった気分が味わえる"
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だがそこへ至るまでに
大した努力が必要ない場合は
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ちょっと上から目線な感じがしないか?
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『Spider-Man』の戦闘は違う
Arkham の戦闘と多くの共通点があるものの―
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要求はかなり厳しく
多くの寛容さを欠いている
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スパイダーマンは多彩な技を持ち
解除可能なスキルがあり
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『Devil May Cry』のように
敵を空中で手玉に取れる
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さらにパンチしても
磁石のように敵へ飛びかからない
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敵は集団で襲いかかるので
回避やカウンターは難しくなる
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敵を空中で殴っている間も、敵は遠距離から
銃やロケットランチャーを使ってくる
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また格好良い技の途中であっても
敵は攻撃してくる
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例えば置物をブン回していてもだ
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この全てが原因で、暫くの間はそれほど
スパイダーマンになった気分を感じないだろう
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まるで無能なアホっぽく見えてしまうのだ
路上の不良に頭を殴られたり
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トドメ技は不器用だったり
無人の空間を殴ったりしてしまう
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プレイヤーが戦闘に上達した時のみ―
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映画で観られるように
ならず者の周囲で踊ることが可能になる
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だから本作の戦闘は
「スパイダーマンのような状態を生み出さない」
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だが戦闘に熟達した場合は
「スパイダーマンの気分になることを許可する」
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空想の遊び方を実現することは、実際には
ゲームが上手なことへの恩恵なのである
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しかし「蜘蛛糸のスイング移動」は
全く異なる
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公平の為に言うと、これは映画で観られる
スイング移動を完璧に再現している
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体の動き、効果音、速度の感覚から
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蜘蛛の糸が虚空ではなく
建物に接着しているという事実まで
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確実に、スパイダーマンの気分にさせてくれる
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それに都市をスイング移動するのは
本当に満足感がある
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だが操作も非常に簡単だ
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本作でスイングを開始する方法は単純で
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建物の付近に居るときに
[R2] を押すだけだ
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これはニューヨーク市のような
過密都市であればどこでも可能だ
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ボタン押すとスイング状態に入り
その後はいつ手を放すか選択できる
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速度が欲しければ振りが小さいところで手を放し
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高所へ行きたければ大きく振って
空まで飛べばよい
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[X] でスイングから飛び出せば
速度と高さを上げることも可能だ
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だがスイングの終了はそれほど重要ではない
空中でも機敏に操作できるからだ
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その為どこへでも行けるように
次のスイングを簡単に始められる
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例えば、カメラを左へ振ると
左へ急旋回するので
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左側の道路をスイング移動できる
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移動に使用できる他の技もある
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「ウェブ・ジップ」は前方向への勢いを
素早く与えてくれるし
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建物が少ない場所に来たときの為の
気の利いた安全策だ
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「ポイント・ジップ」では丸い記号が表示された
任意の地点へ飛び移り
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[X] をタイミング良く押すことで
さらに飛び出すことができる
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また「エア・トリック」を空中で行うと
フォーカス値と経験値を獲得できる
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このシステム全体によって
スパイダーマンの移動はほとんど容易になっている
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豊富な空中制御を駆使して
ドローンのように動かすのか あるいは―
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先述のスイング移動を一切使わず
ポイント・ジップだけで移動するのか
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プレイヤーは確かに
これを好意的に解釈できる
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あるいはゲームを
簡単にしすぎと思うかもしれない
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これは『マリオオデッセイ』とは大きく異る
マリオを適切な場所に移動させることは
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地形構造を読み、適切なアクションを連続的に行い
絶対的な精度で移動することを意味する
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またそれはかなり難しいので
達成できれば大きな恩恵が得られる
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プレイヤーに対する本作の要求は極めて少なく
移動を達成したときの充足感もずっと低い
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たとえ失敗したとしても
ゲームは極めて寛容だ
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落下ダメージは一切無く
空中に居続けることの報酬も無い
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これは Insomniac の最近のオープンワールド作品
『Sunset Overdrive』とは異なっている
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同作では高所に居るときに、スタイルポイントと
ゾンビからの安全が得られた
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また建物に接近したことへの報酬も無い
例えば中毒性のある『Superflight』では―
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岩壁に手が届く距離にいる間は
スコアが上がる
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それから本作で超高層ビルに激突しても
特に問題は無い
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『マリオオデッセイ』のように
ぶつかることは無く
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即座に「壁走り状態」へ遷移する
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速度は落ちるかもしれないが
大したことではない
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そしてスイング移動の速度や精密さが滅多に
要求されない時、誰がこれを気にするだろうか?
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プレイヤーはオープンワールドを
彷徨い歩いているか または―
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スイング移動が必要ないメインミッションを
進めているかのどちらかだ
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ミッションの大半は、不良共を殴るか
ゴミのような隠密かだ
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Okay Okay スイング移動を活用する
優れたミッションもある
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ここではスコーピオンに毒を注射されたので
常に上空にいる必要がある
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ピーターは地上が毒の海だと
錯覚しているからだ
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見事なミッションだ
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このエレクトロとの戦いでは
建物の周りを慎重にスイング移動しながら
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変圧器を撃つ必要がある
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僕はこれも好きだ
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だが大半の場合、ミッションは
次のような内容になる
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迅速に移動したり、このヘリに
素早く追いついたりする必要は皆無だ
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何故ならプレイヤーがこの格好良い爆発を
初めに見るまで、ヘリを掴むことを認めないからだ
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現在、ゲームのスイング移動をもう少し
技術的にしたり―
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思考を要したり、寛容さを減らすことは
不可能ではない
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スイング移動とは結局、基本的には
ただの「鉤縄(かぎなわ)」だ
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『Uncharted 4』から『Titanfall 2』まで
多くの作品でこの要素を見てきた
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だからこの仕掛けで遊んだゲームの
先例は数多くある
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例えば『Bionic Commando』を挙げる
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この堅苦しい射撃系ゲームは概してかなり悲惨だが
鉤縄の遊びは驚くほど楽しい
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『Spider-Man』のように建物に引っ掛けて
適切なタイミングで放すことができる
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だがより面白くしている点は
この終末後の荒廃世界に於いては―
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引っ掛ける場所が
かなり限定されている点である
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つまり地形を横断する経路を見つけることは
小さなパズルであり
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空中で引っ掛け穴に
再び引っ掛けるのは実際難しい
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実行可能な座標に自らを近付けて
このカーソルが示すように―
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正しい角度で勢いを維持する必要がある
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加えて、有毒なベトベトや底無し沼が
地面に触れることを妨げるし
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狙撃手のような特定の危険因子があるので
素早く移動せざるを得なくなる
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それから『Overwatch』では最近
「レッキング・ボール」という新キャラが追加された
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実際は球体ロボに搭乗した
超知能ハムスターだが
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鉤縄を使って
地形環境を掴んでスイングできる
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これは本当に面白い
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スイング中や空中にいる時はほとんど操作不可能だ
というのは―
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実際に縄で繋がれた重い物体のように
動作するからだ
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その為、目的地へ移動するには、初めに
鉤縄の速度・位置・角度を正確に把握する必要がある
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また引っ掛け穴に自動化は存在しない
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文字通りカーソルで狙う必要があるので―
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高速度や空中にいる場合は
引っ掛けるのが実に難しくなる
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最後にキャラ名が示すように
動作中は文字通り「破壊玉」になり
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敵に向かってスイングすると
大ダメージを与えることが可能だ
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この点はスイング移動と戦闘を明確に
区別している『Spider-Man』とは大きく異なっている
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とはいえ、スコーピオンとエレクトロとの戦いでは
遂に両方を同時に駆使するようになった
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僕は一人称視点ゲームの
『A Story About My Uncle』も楽しんだ
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この作品では、間抜けな磁力手袋が
プレイヤーを物体の方向へ引き寄せるが
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いつでも手放して、慣性を保ちながら
前方へ飛び続けることができる
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これは "移動する物体" を活用する場合は
特に楽しく―
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重力のパチンコのような推進力を得られる
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また空中で引っ掛けられる回数には限度があるので
着地するたびに慎重に計画を練り―
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"離陸" する前に経路を解明する必要がある
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この発想の微妙な差異は
『The Free Ones』に現れている
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この作品では木板に引っ掛けて
自分を引っ張ることができる
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ゼルダの伝説の
「フックショット」のような感じだ
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だがいつでもジャンプしてロープを外し
自分を前方へ飛ばすことができる
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空中でこれらの技を組み合わせることで
爽快な遊びを生み出せる
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とはいえ、最高速度で木板を狙おうとした時は
少し減速しても良いかもしれない
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さて、こうした発想は『Spider-Man』に
応用できない恐れがある
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本作には『A Story About My Uncle』にあるような
着地時に補充される有限の蜘蛛糸など存在しない
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映画に登場するニューヨーク市は
過密した大都市であって
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『Bionic Commando』のような
廃墟の荒れ地ではない
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ピーター・パーカーは
しなやかで壮健な体格であって
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『Overwatch』のレッキング・ボールのような
重量 500kg の鉄塊ではない
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こうした事実に反することは、実際『Spider-Man』が
約束した「ごっこ遊び」を壊すことになる
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だが本作がスイング移動をより難しくさせる為に
やれたことは沢山あったと思う しかも―
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映画作品に基づいた空想の遊びを
実現しながらだ
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そして他のスパイダーマン作品は
より技巧的なスイング移動を軽々と実装してる
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『The Amazing Spider-Man 2』には
クールな発想があり
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[L2] [R2] を押すと、それぞれ
右手・左手から蜘蛛の糸が出てくる
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影響力は大きくない 右手でスイングした後でも
左へ曲がれる空中制御が得られるのだが
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探索は面白くなるかもしれない
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『Ultimate Spider-Man』では
糸が接着している建物へプレイヤーを引っ張るので
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道路の中央に居続けるためには
リズム良く左右にスイングする必要がある
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繰り返すが、これは微妙な差異だが
大切な違いなのだ
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さらに本作は間違いなく『Sunset Overdrive』のように
スイングと戦闘を統合できたはずだ
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同作ではコンボシステム全体が
ゾンビとの戦い方に於いて―
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車のボンネットを跳ねたり
電線の上を滑ることを奨励している
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しかし最終的には、ゲーマーは「ごっこ遊び」を
実現する為にどれほど労力を費やすのか? に帰着する
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本作のスイング移動は
仕組み的に複雑化できた可能性があった
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『Tony Hawk’s』のコンボ維持や
『マリオオデッセイ』のジャンプと帽子投げの連携や
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『Mirror’s Edge』の高速走行と
同じ程度には
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だが Insomniac がシステムを
楽なものにしたかったのは明白で
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開発者は流れを壊すことを
明確に避けたのだった 曰く―
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「我々が話し合ったことは、プレイヤーを
止めたくなかったという点です」
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「うつ伏せに倒すのは嫌でした」
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「プレイヤーの勢いと流れを
維持したいと思いました」
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「彼は 8年間もスパイダーマンとして
活動しているので自分で移動を微調整できるし」
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「建物へ激突しても
そのまま走り続けられるのです」
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だから Insomniac がスイング移動の技巧的な側面を
任意の要素にしたのは正しいかもしれない
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例えばこの「爆弾チャレンジ」だ
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ここでは異なる座標間の
移動にかかる時間を採点する
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またこのミッションでは無人機を追跡して
青色の目標を通過しなければならない
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初めて挑んだ際は『Hitman』の初見プレイのように
大失敗に終わるだろう
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だが経路を覚え、建物の周りを進み
多彩な技を組み合わせれば
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最終的に金メダルを獲得して
正に「スパイダーマンの気分を感じる」だろう
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これは『マリオオデッセイ』の仕組みに似ている
クリアするだけなら単純なジャンプだけで済むのだが
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高度な操作を覚えれば、隠しコインを獲得したり
地形の一部を省略したり
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後半の金ノコノコレースで
役立つだろう
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残念だが、本作のこうしたサイドクエストは
作品の物理挙動がいかに繊細かを明らかにしているし
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建物からの跳躍が、通常のスイング移動よりも
断然速いことを明らかにしているし
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またスイング移動の "やりこみ上限" が
他の移動系ゲームと比較して―
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依然としてかなり低いことを
示すだろう
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だが無いよりはマシだ
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僕は『Overwatch』や『The Free Ones』に似た
深みのあるスイング移動を見たいと思っていたが
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僕が推察するに
『Spider-Man』を買った人の大半は―
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スタートボタンを押すと同時にスパイダーマンの
気分を感じることを望んでいるのだろう
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君はどう思う?
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君の考えを下のコメント欄に書いてもらいたい
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