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システミックゲームの隆盛 | Game Maker's Toolkit

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    『ゼルダの伝説 Breath of the Wild』で
    雨が降ると全てが変わる
  • 0:06 - 0:10
    岩肌はすべって登りづらくなる
  • 0:10 - 0:13
    だがリンクの足音は消えるので
    簡単に忍び寄れる
  • 0:13 - 0:17
    電気のダメージは劇的に増えるが
  • 0:17 - 0:21
    炎や爆弾の矢は
    普通の矢になってしまう
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    ビリビリヤンマなどの特定の生き物は
    雨のときだけ現れる
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    人間は走って雨宿りをするし
    焚き火は燃え尽きる
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    どこかで巨大な水溜りを見つけても
    太陽が昇ると蒸発してしまう
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    『BotW』の移りゆく天候システムは
    ただ見栄えを良くするだけでなく
  • 0:40 - 0:45
    他のほぼ全ての要素に手を伸ばして
    影響を与えるのだ
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    これが「システミックゲーム」の定義だ
  • 0:49 - 0:53
    Ubisoft の元リードプログラマー
    Aleissia Laidacker はこう述べる
  • 0:53 - 0:56
    「システミックとはゲームの全ての要素が
    繋がってることを意味します」
  • 0:56 - 1:01
    「これは1つの要素が他へ影響することを
    目的に開発・設計されています」
  • 1:01 - 1:06
    ここ数年で、この種の相互接続性を持つ
    ゲームが爆発的に増えている
  • 1:06 - 1:10
    『MGS V』や『ゼルダの伝説』などの
    日本製ゲームから
  • 1:10 - 1:14
    ヨーロッパ製の野心作
    『Kingdom Come: Deliverance』
  • 1:14 - 1:16
    『Mark of the Ninja』のような
    独立系ゲームや
  • 1:16 - 1:19
    Ubisoft のほぼ全ての
    最新ゲームまで
  • 1:19 - 1:23
    例えば『Far Cry 4』には
    とても嬉しい仕様があって
  • 1:23 - 1:27
    プレイヤーが敵や野生動物と
    戦うだけではなく
  • 1:27 - 1:31
    敵も動物と戦えるのだ
    逆もまたしかり
  • 1:31 - 1:35
    この戦いは開発者が手作りした台本ではない
  • 1:35 - 1:39
    敵のシステムと、野生動物のシステムが
    ただ相互作用して…
  • 1:39 - 1:41
    虎が見張りの顔を切り裂いたのだ
  • 1:42 - 1:45
    この仕組みは
    「認識」と「法則」のおかげだ
  • 1:45 - 1:47
    超単純化して言えば――
  • 1:47 - 1:52
    ゲームの全ての実体には「入力」がある
    これで聞くことができる
  • 1:52 - 1:58
    『Far Cry 4』の虎の場合、それはプレイヤーや
    エサ、炎、敵のことかもしれない
  • 1:59 - 2:01
    また実体には「出力」もあって
  • 2:01 - 2:04
    実体の存在を
    ゲーム世界へ発信している
  • 2:04 - 2:11
    入力と出力が一致し、実体が互いに
    見たり触れたりできるとき、接続が確立する
  • 2:11 - 2:14
    法則に従うのはその時だ
  • 2:14 - 2:18
    虎と見張りの場合
    法則上、顔が切り裂かれる
  • 2:18 - 2:23
    だが他のゲームでは
    木製の矢に着火して放火できたり
  • 2:23 - 2:27
    オレンジ色のアマガエルが爆発して
    地形を破壊したり
  • 2:27 - 2:30
    キャンプファイアに雨が降って
    火が消えたりする
  • 2:31 - 2:37
    システミックゲームでは、あらゆる種類の
    物体、キャラ、環境の断片と
  • 2:37 - 2:42
    ゲームシステムがお互いを認識し
    それが作用する法則が必要になる
  • 2:42 - 2:44
    だが重要なのか?
  • 2:44 - 2:50
    システムがそれほど繋がっていないゲームよりも
    こっちの方が面白いのはなぜだろう?
  • 2:50 - 2:55
    1つの大きな利点は、プレイヤーが
    面白い計画を立てられることだ
  • 2:55 - 3:01
    伝統的なゲームでは、実体が認識するのは
    プレイヤーだけで、他の要素はあまり認識しない
  • 3:01 - 3:06
    つまり敵に作用するためには
    直接的な手段を使うしかない
  • 3:06 - 3:08
    すなわち、敵を撃つことだ
  • 3:08 - 3:12
    だがシステミックゲームの実体は
    たくさんの要素を認識しているので
  • 3:12 - 3:15
    間接的な手段で敵に作用できる
  • 3:15 - 3:19
    例えば、檻の動物を解放して
    近くの見張りへ攻撃させる
  • 3:19 - 3:22
    つまりシステミックゲームの
    決定的な特徴は――
  • 3:22 - 3:27
    様々な実体やシステム同士の関係性を
    計画に利用できることにある
  • 3:27 - 3:30
    それらが一緒になったとき
    かなり知的な気分になる
  • 3:31 - 3:34
    『Watch Dogs 2』に良い見本がある
  • 3:34 - 3:38
    警察が追ってきたので
    僕はそのままギャングの縄張りへ誘導して
  • 3:38 - 3:41
    屋上から警察とギャングの戦いを
    眺めていた
  • 3:41 - 3:46
    警察が注意散漫になったので急いで立ち去り
    指名手配から逃げ切った
  • 3:46 - 3:51
    これは最高の気分だったし
    警官に撃ちまくるよりもずっと面白かった
  • 3:52 - 3:58
    システミックのもう1つの大きな利点は
    ドラマや驚きの瞬間を生み出せることだ
  • 3:58 - 4:04
    王立軍、反政府組織、怒れる像の
    三つ巴の戦いみたいな感じだ
  • 4:04 - 4:09
    繰り返すが、台本が無いのにこれが自然発生したのは
    色んな実体が
  • 4:09 - 4:15
    互いに認識し、互いに法則を持ち
    同じ場所にいることに気づいたからだ
  • 4:15 - 4:18
    こうした体験は
    2つの理由でクールだと思う
  • 4:18 - 4:25
    1つは、面白い物語構造になるからだ
    プレイヤーが計画を立てて実行しようとしても
  • 4:25 - 4:30
    予想外の事態が連鎖して計画が台無しになるので
    それに対応する必要がある
  • 4:30 - 4:34
    こうした出来事は
    完全に自分だけの体験なので
  • 4:34 - 4:41
    全員が目にする超壮大な場面よりも
    特別で記憶に残るものになると思う
  • 4:41 - 4:43
    誰もこの場面をツイートしてないだろ?
  • 4:45 - 4:48
    だからシステミックゲームでは
    プレイヤーが面白い計画を立てられるし
  • 4:48 - 4:50
    それが意外な体験になる
  • 4:51 - 4:53
    これは「創発的ゲームプレイ」と呼ばれている
  • 4:53 - 4:57
    開発者が意図的に
    設計したものではなく
  • 4:57 - 5:02
    複数のシステムが出会うことで出現する
    解決策や状況のことだ
  • 5:02 - 5:04
    とはいえ開発者の責任が
    消えるわけではない
  • 5:04 - 5:09
    開発者は創発を可能にするために
    何もかも準備しないといけない
  • 5:09 - 5:14
    そのためには色んな実体に「認識」を
    実装する必要がある
  • 5:14 - 5:17
    互いに認識する要素は
    多いほど良い
  • 5:17 - 5:20
    キャラ同士が戦うのも1つの手だが
  • 5:20 - 5:23
    敵が環境を破壊しても良いし
  • 5:23 - 5:26
    実体に昼夜の周期を認識させたり
  • 5:26 - 5:30
    ゼルダの場合は
    化学エンジンを丸ごと発明して
  • 5:30 - 5:33
    風、炎、氷などを実装したりしている
  • 5:33 - 5:36
    次に、一貫性のある「法則」が必要だ
  • 5:36 - 5:41
    なぜなら AI の動画でも話したように
    プレイヤーが良い計画を立てるには
  • 5:41 - 5:45
    自分の行動にシステムがどう反応するのか
    ハッキリ分かってる必要があるからだ
  • 5:45 - 5:49
    だが普遍的な法則も必要になる
  • 5:49 - 5:54
    例えば、木製のモノが燃えるなら
    木の物体は全て燃えるべきだ
  • 5:54 - 5:58
    こういう法則が破られるたび
    世界の信憑性は低下し
  • 5:59 - 6:02
    プレイヤーが今後
    何かを試す可能性は低くなる
  • 6:02 - 6:05
    そこで普遍的な接続性を
    容易にするために
  • 6:05 - 6:10
    『Dishonored』共同ディレクター Harvey Smith と
    Raphael Colantonio の助言を紹介しよう
  • 6:10 - 6:16
    実体が特定の物体やキャラを
    聞けるようにするのではなく
  • 6:16 - 6:22
    実体が「一般的な刺激」を出力できるようにする
    例えば炎、貫通、爆発ダメージなどだ
  • 6:22 - 6:26
    次にその刺激を他の要素に
    認識させるらしい
  • 6:26 - 6:30
    この抽象化した層が
    実体の追加や変更を容易にし
  • 6:30 - 6:34
    プレイヤーは開発者が考えもしなかった接続性を
    発見できるようになる
  • 6:34 - 6:37
    例えば Harvey Smith の代表作
    『Deus Ex』では
  • 6:37 - 6:43
    MIB が死に際に爆発することを利用して
    ドアを開けることができる
  • 6:43 - 6:48
    ゼルダでも金属の物体を床に置くと
    電気が流れて
  • 6:48 - 6:51
    自己流のやり方でパズルを解ける
  • 6:51 - 6:54
    ちょっとズルい感じだが
    これこそがシステミックゲームの楽しさだ
  • 6:54 - 6:58
    1個しかないパズルの解法を
    見つける代わりに
  • 6:58 - 7:03
    システム固有の振る舞いを活用して
    自分のやり方で目の前の問題を解決できるのだ
  • 7:04 - 7:07
    また、意外性のある出来事を
    定期的に発生させたいなら
  • 7:07 - 7:10
    システムが多少
    不安定であることが大切だ
  • 7:10 - 7:14
    プレイヤーが関与するまで
    完全な平衡状態にはならないが
  • 7:14 - 7:18
    システム単体で移動や変化を
    できるようにする
  • 7:18 - 7:21
    これでシステムを自動化できる
  • 7:21 - 7:25
    例えば『BotW』の変化する天候は
    予測不可能な雷雨を発生させる
  • 7:25 - 7:29
    または AI に独自の目標と欲求を与えれば
    AI が動き回って
  • 7:29 - 7:33
    上手くいけば他の実体と
    衝突させることができる
  • 7:33 - 7:36
    Okay 君はシステミックゲームを作った
  • 7:36 - 7:39
    ゲームの全ての実体同士に
    接続性を作って
  • 7:39 - 7:43
    一貫性がある普遍的な法則に
    従わせている
  • 7:43 - 7:47
    だが簡単に台無しになるので
    まだやるべき作業がある
  • 7:47 - 7:52
    多くのゲームは創発的な攻略を
    促すことに失敗している
  • 7:52 - 7:57
    『MGS V』にはワクワクする機会が
    たくさんあるにもかかわらず
  • 7:57 - 8:01
    僕は静音麻酔銃で
    多くのミッションを片付けてしまった
  • 8:01 - 8:07
    より確実な攻略法があるなら
    なんで馬鹿げた計画で危険を冒すんだ?
  • 8:07 - 8:11
    『Hitman』は創造力を促すために
    Agent 47 の銃撃戦を弱くしてる
  • 8:12 - 8:18
    ゼルダは物議を醸したが、武器が粉々になることで
    創造的な攻略法を試すように促している
  • 8:18 - 8:23
    また、あらゆる方法で
    世界と相互作用できることも重要だ
  • 8:23 - 8:25
    これは皆殺しよりも優れている
  • 8:25 - 8:29
    敵を殺すことは、本質的には
    空間から実体を消すことであって
  • 8:29 - 8:32
    大抵はシステムで楽しむ機会を
    減らしてしまう
  • 8:32 - 8:38
    実体をただ消すだけでなく
    変更や追加できる手段を用意したい
  • 8:38 - 8:41
    警備システムをハッキングして
    忠誠心を変えたり
  • 8:41 - 8:45
    デコイ人形を膨らませて
    敵を動揺させたりなどだ
  • 8:45 - 8:49
    一本道のミッションで選択肢が制限され
    台無しなゲームもある
  • 8:49 - 8:51
    『Grand Theft Auto』は
    この点が痛い
  • 8:51 - 8:57
    優れたシステムがいっぱいあって
    都市が活発で現実的に感じるし
  • 8:57 - 9:01
    警察の指名手配は、天才的な出来事だ
  • 9:01 - 9:06
    これが無かったら『GTA』で民間人を殺しても
    面白いことは起きないだろう
  • 9:06 - 9:11
    だが殺人が指名手配システムに影響して
    パトカーが追ってくるので
  • 9:11 - 9:16
    プレイヤーの行動の結果が
    ゲームの色んなシステムに波及する
  • 9:16 - 9:17
    最高だ
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    だがメインミッションは台本で
    ものすごく直線的になり
  • 9:21 - 9:26
    画面上の指示にしっかり従わないと
    ありとあらゆる失敗判定が出てくる
  • 9:26 - 9:32
    『Far Cry』にもこの問題がある
    野営地の面白さがメインミッションに無いのだ
  • 9:32 - 9:35
    野営地は色んなシステムのための
    自由な実験場だ
  • 9:35 - 9:42
    システミック用のステージはプレイヤーに目標を
    与えることであって攻略手段は気にしなくていい
  • 9:42 - 9:46
    自由な空間と、互いを認識し合う
    大量の実体を用意すれば
  • 9:46 - 9:50
    良い計画や印象的な体験が
    生まれる機会になる
  • 9:50 - 9:54
    システミックでも独自の体験を
    作れないゲームもある
  • 9:54 - 10:00
    Ubisoft はありがたいことに、全てのゲームを
    創発スリルの素材で満たそうとしているが
  • 10:00 - 10:06
    『Assassin’s Creed Origins』の野営地は
    『Far Cry 4』と驚くほど似ている
  • 10:06 - 10:10
    だから独自の体験を提供できるような
    システムの設定が大切だ
  • 10:10 - 10:13
    『Far Cry 2』の違いを見てくれ
  • 10:13 - 10:17
    火災の伝播や、悪者の徘徊などの
    システムがあるが
  • 10:18 - 10:22
    この設計の目的はプレイヤーの危険を
    煽ることだと思う
  • 10:22 - 10:26
    一方で暗殺シミュレーター
    『Hitman』の方向性は真逆だ
  • 10:26 - 10:30
    完璧に統制されたシステムに
    重点を置くことで
  • 10:30 - 10:33
    プレイヤーはそこで
    歯車を狂わせる役になるのだ
  • 10:33 - 10:36
    『Mafia 3』のようにシステムに
    メッセージを込めることだってできる
  • 10:36 - 10:41
    黒人地区の警察は、白人地区より
    駆けつけるのが遅いのだ
  • 10:41 - 10:44
    このゲームはシステムを通じて
    語りかけているのだ
  • 10:45 - 10:49
    ところで、こうしたシステミックの設計は
    今に始まったことではない
  • 10:49 - 10:54
    何十年もシミュレーションゲームは
    この種の相互接続性を使って
  • 10:54 - 10:56
    現実世界のシステムを模倣してきた
  • 10:56 - 11:01
    それは偶然にも、全知全能の存在として
    見下ろし視点で遊ぶゲームだった
  • 11:02 - 11:05
    現在でもこういうゲームはある
    例えば『Rimworld』や
  • 11:05 - 11:08
    相互接続性が馬鹿げてる
    『Dwarf Fortress』とかだ
  • 11:08 - 11:12
    このゲームでは緊急事態が起きる
    例えばネコが死んでしまうのだが
  • 11:12 - 11:19
    それはドワーフが飲酒中にワインをぶち撒け
    ネコが毛づくろいでワインを舐めてしまい
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    アルコール中毒で死ぬという経緯だ
    馬鹿げてるだろ
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    詳細は Eurogamer の
    「Here’s A Thing」を視聴してくれ
  • 11:27 - 11:32
    それから没入シムがある
    『Thief』や『Deus Ex』などのジャンルだが
  • 11:32 - 11:35
    その核心は
    シミュレーションの設計を
  • 11:35 - 11:40
    一人称視点で1人のキャラを操作する
    没入感のあるゲームに組み込むことだった
  • 11:40 - 11:42
    それでこんな名前になった
  • 11:42 - 11:46
    だからこそ僕は没入シムの復活に
    大喜びした
  • 11:46 - 11:49
    『Prey』や『Dishonored 2』などの
    傑作のことだ
  • 11:49 - 11:55
    でもこれらのゲームが商業的に
    上手くいかなかったのでかなり落胆した
  • 11:55 - 11:59
    だがこういう設計の人気が
    明らかになった現在では
  • 11:59 - 12:05
    『Ultima Underworld』や『System Shock』にまで遡る
    特定の遺産にゲームが限定される必要はない
  • 12:05 - 12:09
    大規模予算にも
    低品質ヨーロッパ作品にも
  • 12:09 - 12:16
    没入シムファンの独立系作品にも
    実に奇妙なことに、ゼルダの最新作の中にも
  • 12:16 - 12:22
    システミックの設計と、創発的ゲームプレイが
    あらゆるゲームの中に登場しつつある
  • 12:22 - 12:27
    そういうのが大好きな人間としては
    計画を立てて、それが大失敗するのを見るために
  • 12:27 - 12:31
    この流行が次にどこへ向かうのか
    非常に楽しみだ
  • 12:31 - 12:32
    (字幕翻訳:Nekofloor)
  • 12:33 - 12:34
    ご視聴ありがとう!
  • 12:34 - 12:39
    システミックの設計は超複雑な内容なので
    この動画では表面的な部分しか触れていないが
  • 12:39 - 12:45
    この分野の専門家からの大量の情報は
    下の説明欄にあるリンクを参照してくれ
Title:
システミックゲームの隆盛 | Game Maker's Toolkit
Description:

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Duration:
12:50

Japanese subtitles

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