-
EAが出した一連の新作は
批評家とハードコアなゲーマーには評価された
-
だが売り上げはそれほどでもなかった
-
Mirror's EdgeとDead Spaceは
EA Gamesの重役フランク・ギボーによると
-
「それなりの成功」をあげたが
「期待したほどではなかった」
-
そこでRedwood ShoresはVisceral Gamesに名を変え
Dead Spaceを続編へ向けて仕立て直すことになった
-
ストーリーの比重を高め、多人数プレイを追加し
-
ホラー要素を弱め、アクションに集中したのだ
-
この変化が一番はっきりと表れているのは
ノンストップの進行ペースだろう
-
Dead Space 2はハリウッドのアクション映画並みの
息もつかせぬ勢いで進んでいく
-
前作Dead Spaceは「宇宙でバイオ」だったが
2は「宇宙でUncharted」に近い
-
この続編では、エリアを移動しながら
宇宙ステーションを一本道で進んでいく
-
キャンペーンは9時間でクリアできる
戦闘から固定イベント、カットシーン
-
ハッキングのミニゲームや無重力セクション
簡単な物理パズルへといった具合に
-
ほぼ隙間なく移り変わっていく
-
Dead Space 2はプレイヤーを飽きさせまいと
ものすごいスピードで進んでいく
-
このゲームのルーツである
ホラー要素にとっては明らかにマイナスだ
-
例えばこのセクションでは不気味なゴシック風の
暗い教会の中でネクロモーフを狩る
-
しかしドアを開けるとカットシーンが始まり
ガンシップの掃射を間一髪で避ける
-
さらに巨大モンスターに急襲される
-
そこから窓を破って宇宙に飛び出し
-
爆発する樽を撃ってモンスターを粉砕する
-
これだけのことをやった後ですぐに
窓から元の場所に戻ってきて
-
また不気味な廊下や影
不安をかき立てる音に逆戻りだ
-
Dead Space 1は静かな時間と雰囲気たっぷりの
サウンドを通じて緊張感を徐々に高めていたが
-
Dead Space 2にそんな暇はないので
静かな恐怖と全開のスリルを行ったり来たりする
-
これでは恐怖するというより
驚かされるだけだ
-
戦闘もまたアクション寄りに変化しているが
変化はそれほどあからさまではない
-
アイザックはさらに機敏になり、操作性も向上した
-
カメラ移動が速くなり、バイオ4の
止まって撃つリズムからさらに遠ざかった
-
またDead Space 1の戦闘には緊張感があった
-
ステイシスとリッパーブレード数発しかない時などに
各種のネクロモーフをどう倒すか
-
工夫する必要があったのだ
-
Dead Space 2の戦闘は大抵の場合
手あたり次第に撃つだけだ
-
これは時としてステージデザインにまで及んでいる
-
Dead Space 2の戦闘の多くは狭い場所で発生する
-
エレベーターや巨大ドリルの上などがそうだ
-
これでは移動の自由が利かない
-
アイテムに関しても同様だ
プレイヤーにもよるだろうが
-
僕は最高難度のモードを除いて
このゲームで弾切れをほぼ経験しなかった
-
今作ではキネシスの有用性が大きく
向上しているのに残念だ
-
敵を壁に釘付けにできる鋭い物体や
ダウン効果のある重い物体が多くあるのだが
-
弾が豊富にあるのであまり必要ないのだ
-
だがアクション寄りの戦闘は多くの場合
敵のデザインにも及んでいる
-
Dead Space 2には前作の敵がほぼ全て出現するが
-
プレグナントやディバイダ―といった
特殊な敵は出現頻度が減り
-
スラッシャーやリーパーのような
ザコの群れを相手にすることが多い
-
前作の敵で唯一出現しないのはトゥイッチャー
後半に出てきたゾンビ兵士だ
-
こいつはスーツのステイシスと融合し
高速で移動してくる
-
しかしDead Space 2の敵はデフォルトで
速くなっているので存在意義がないのだ
-
また2ではどの敵もアイザックに
向かって直進してくる
-
また敵の数は増えているものの
個々の敵は倒しやすくなっている
-
これがはっきりとわかるのは2で
新登場の敵であるパックだ
-
子供のようなモンスターの集団で
アイザックに突進してくる
-
しかし最高難度のZealotモードでさえ一撃で倒せる
-
手足を破壊して距離を取り
どう料理するか考えるといったことは不要だ
-
こいつらは撃ちまくって倒すしかない
-
素早いゾンビの群れに襲われる恐怖は確かにある
-
特に狭い部屋の隅で襲われると恐い
Left 4 Deadではそれが機能していた
-
だがこの力押しの恐怖は
前作の怖さと大きく異なっている
-
また都合のいいことに、この手の恐怖演出は
激しい銃撃戦に適している
-
むしろSerious Samに近いと言える
-
もちろん全ての戦闘がこうではない
ストーカーも新しい敵だが
-
こいつはジュラシックパークのラプターのようだ
集団で現れ、箱の裏に隠れる
-
定期的に顔を出し、隙を見せると突進してくる
-
これは静かな緊張から激しい混乱への移行を
うまく演出できている
-
2で初登場の武器デトネーターを持っていれば役立つ
-
他の新武器としては、発射後に
電流を流せるジャベリンガンは楽しい
-
シーカーライフルは実質的にスナイパーライフルだが
-
接近性の多いこの作品では実用性が薄い
-
Dead Space 1の問題の一つは
いったん武器を4つ入手してしまうと
-
もう武器を切り替える必要を感じないことだった
-
金は弾薬や回復に使う方がよかった
-
高価なアップグレードは武器ごとに個別だし
弾は装備中の銃のものしか拾えなかった
-
これは良くない プレイヤーが全てのツールを
使いたくなるように仕向けるべきだ
-
2はこの問題をある程度改善している
-
パワーノードは大量に手に入るようになったし
-
銃は強化をリセットしてノードを回収できる
-
装備していない銃の弾も拾えるようになった
-
このおかげで僕はゲーム全体を通して
色々な武器を自然に使うようになった
-
2には前作と比べていくつかの改良点がある
-
パズルは前作より面白くなった
-
死体を使って網膜スキャナーのある扉を開けたりする
-
地形のバラエティも増えた
-
気味の悪さが印象的な小学校
-
怪しい人工知能が管理するコンピューターエリア
-
宇宙空間が舞台になるパートなど
-
無重力セクションでは自由に飛び回ることができる
前作では壁から壁にジャンプするだけだった
-
あまり好評でなかった変化は
無言だったアイザックが喋るようになったことだ
-
初代Dead Spaceでは、開発者たちは
プレイヤーをゲームに没入させたかった
-
だから伝統的なゲージや弾薬表示を排し
アイザックを無言にした
-
プレイヤーが自分を入れ込めるようにするためだ
-
2でもHUDは残されているが
アイザックのセリフが雰囲気を壊している
-
まるでネイサン・ドレイクの出来損ないだ
-
「あいつらは医療デッキの穴から押し寄せてる
少なくともそこは行かなくていいわよ」
-
「前方に不測の障害あり 閉鎖します」
-
「医療デッキへようこそ」
-
「マジかよ」
-
アイザックを喋るようにしたのは
2ではちゃんとしたストーリーを目指したからだ
-
確かに前作のストーリーは微妙だった
-
だが前作は目立たない仕方でストーリーを語っていた
-
ネクロモーフやマーカー、ユニトロジーなどに
ついての情報が各地に散りばめられていた
-
2の物語は自己陶酔がひどく
プレイヤーに延々と情報を垂れ流してくる
-
ゲーム内設定に関する博物館まであるくらいだ
-
「…の歴史。彼が発見したのはユカタン半島付近の
クレーターに埋まった神聖なる…」
-
退屈極まりない
-
とはいえ、これに魅せられた人もいるのだろう
-
でなければアニメ映画2本、コミック3巻、小説2本
スピンオフのゲーム3つも出なかったはずだ
-
スピンオフにはWiiの良作ガンシューティング
デッドスペース エクストラクションも含む
-
Dead Space 2には前作から改善した点も多いし
単体で見ても良作と言える
-
ペース配分は素晴らしいし、バラエティも豊かだ
-
しかしDead Spaceのエッセンスからは
離れて、よりアクション寄りになってしまった
-
それがわかるのはアイザックの機動性の向上
敵が素早くなり、数も多くなったこと
-
マップが削除されたこと
-
ステイシスのリロード用ボタンができたので
戦闘中にアイテム欄を開く必要がなくなったことなど
-
また恐怖の再生する敵が出現するのは終盤で
その頃にはプレイヤーは完全武装しているので
-
子犬みたいなものだ
-
だがそれは悪いことなのだろうか
-
シリーズが時間と共に変化するのは
珍しいことではない
-
例えば映画のエイリアンでは
最初の二作がそれで成功した
-
エイリアン1は雰囲気重視のホラー映画
-
地球外の殺し屋に追われる女の物語だ
-
続編のエイリアン2では
リプリーは海兵隊員たちを味方につけ
-
ゼノモーフのクイーンと戦う
-
2もホラー映画ではあるが
よりアクションを重視したストーリーだ
-
Dead Space 2にも似たようなことが起きている
-
アイザックはより有能な戦闘員になっており
ネクロモーフを前にしても動揺しない
-
「手足を切断しないと
あの怪物たちは止められないわ」
-
「わかってる 何度もやったからな」
-
だからアクション重視はよくわかる
-
だがアイザックは前作の出来事と
恋人の喪失により精神的に傷ついている
-
なのでその恋人がゲームの各所で化けて出てくる
-
あるパートでは前作の宇宙船イシムラに戻って
前作と同じ不意打ちを受けるが
-
実はPTSD的なフラッシュバックだったと気づくのだ
-
以上のように考えると面白いが
この解釈にはやはり無理があるだろう
-
Dead Space 2はこうした単一のビジョンを
提示するには落ち着きがなさすぎる
-
心理的ホラーと同じくらい
気持ち悪いだけの演出や
-
びっくり箱系の恐怖、爆発する赤ん坊などがあり
-
眼球に針を突き刺すような
直線的なものばかりだ
-
2の関心は基本的に残虐表現と臓物にある
-
アイザックの死亡アニメーションは
バカバカしいぐらい派手だし
-
また今作ではネクロモーフは倒しただけだと
アイテムを落とさず
-
倒した後にもう一撃加える必要がある
-
敵を踏みつけて肉塊にすることを奨励しているのだ
-
今作の宣伝文句はこれをよく表している
「君のママが嫌がるゲーム」というやつだ
-
「気持ち悪いわ!大嫌いよ!」
-
しかし、続編を作るのは難しいものだ
ファンは前作と違う、新しいものを求めるが
-
前作の面白さが犠牲になることは嫌がる
-
期待には応えなければならないが
同時にそれを裏切る必要もある
-
Dead Space 2は大体において成功していると思う
-
だが進化と拡張をどこまで続けるべきなのか
-
初代のファンが愛想をつかす
その境界はどこにあるのか?
-
次回はDead Space 3だ