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【名著】幸福について|ショーペンハウアー 今、人生がシンドイあなたへ

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    はい!どうもアバタローです。
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    本日は、19世紀に活躍した
    ドイツの哲学者 ショーペンハウアーの
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    [幸福について]を紹介致します。
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    どんな作品かと言いますと、
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    生きることの苦しみや痛みを
    緩和してくれる、古典的名著です。
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    特に毎日が退屈で、
    生きた心地がしないという方。
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    つい他人と自分を比べ、自信を失いがちな方。
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    現実社会に疲れてしまい、
    生き方を見直そうと考えている方に、
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    是非、手に取っていただきたい1冊です。
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    [人は幸福になるために生きている]
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    これは、世に出回っている
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    ほとんどの幸福論が導き出した
    結論のひとつです。
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    実際に、私たちの多くは、
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    その言葉の通り、たくさんの喜びや
    楽しみに包まれた幸福な未来を想像し、
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    それを追求しながら生きています。
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    しかし、今から約200年前、
    こういった幸福論の常識に、
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    真っ向から反対した哲学者がいました。
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    彼の名は、
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    [アルトゥール・ショーペンハウアー
    (1788-1860)]
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    後に「生の哲学の祖」と呼ばれ、
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    [ニーチェ]や[ワーグナー]
    [フロイト]や[トルストイ]といった、
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    一流の思想家たちに影響を与えた、
    哲学界の巨人です。
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    本書において、ショーペンハウアーは、
    多くの人が思い描いている
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    幸福な人生は単なる幻であり、
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    [あまり不幸ではない人生こそ
    満足に値する人生である]と、唱えました。
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    何もかも上手くいっている人からしてみれば、
    この考えはとても後ろ向きで、
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    受け入れ難いものに思われるかもしれません。
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    しかし、長い人生の中で、
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    本当に、苦しい状況に置かれてしまった時、
    きっと彼の幸福哲学が、
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    心の支えとして、役に立つ日が
    やって来ると思います。
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    ですから、いま苦しい人だけではなくて、
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    絶好調の人も、ぜひ興味をもって
    聞いていただけると嬉しいです。
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    もちろん、ご視聴に当たって
    難しい予備知識は要りません。
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    いつも通り手ぶらでOKです。
  • 1:50 - 1:53
    お茶でも飲みながら、リラックスして、
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    どうぞ、最後までお付き合いください。
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    それでは、参りましょう。
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    アルトゥール・ショーペンハウアー
    「幸福について」
  • 2:00 - 2:03
    まずは、この動画の全体像からお示し致します。
    [本日の内容]
  • 2:03 - 2:05
    はじめに背景知識として、
    [・背景知識]
  • 2:05 - 2:07
    著者について、簡単に紹介し、
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    そのあと本書の内容を
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    [1.運勢に差を生じさせる3つのもの]
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    [2.不幸を呼ぶ「承認欲求」の切り離し方]
  • 2:15 - 2:18
    [3.人生の幸福を測る、真の物差しとは]
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    という、3つのテーマに沿って進めて参ります。
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    では早速、「背景知識」から見て行きましょう。
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    アルトゥール・ショーペンハウアー。
    [アルトゥール・ショーペンハウアー/
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    彼は1788年、現在のポーランドの都市、
    /(1788-1860)]
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    グダニスクにて誕生しました。
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    父親は、一代で富を築いた商人で、
    [父親は一代で大きな富を築いた商人であった]
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    いずれ我が子にも、一流のビジネスマンとして、
    大成して欲しいと願っていたと言います。
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    そこで彼は、家族を連れだって、
    [ヨーロッパ周遊旅行]
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    1年にも及ぶヨーロッパ旅行に出かけ、
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    商売に必要なセンスを
    身に着けさせようとしました。
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    しかし、若きショーペンハウアーの
    [貧困や格差に塗れた世界]
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    純粋な心が捕らえたのは、
    上流階級の華やかな暮らしでも、
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    人や物の流れでもなく、貧困や格差にまみれた、
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    世界の現実でした。
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    みすぼらしい格好で路上で物を売る人。
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    薄暗く壊れそうな建物。
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    絞首刑が執行されている場面。
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    こういった、
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    今まで自分の目に映りこむことのなかった
    人間社会の真実は、
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    彼に強い衝撃を与えました。
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    それと同時に、なぜ世界はこんなにも悲惨なのか
    [なぜ世界はこんなにも悲惨なのか...]
  • 3:20 - 3:25
    という疑問が生まれ、父親の望む
    商売人としての人生ではなく、
  • 3:25 - 3:26
    自分自身が望む、
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    哲学者としての人生を
    志すようになっていったのです。
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    1809年、ゲッティンゲン大学医学部に進学した
    [1809年、ゲッティンゲン大学に進学]
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    ショーペンハウアーは、翌年哲学部に移り、
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    そこで、カントやプラトンの思想を研究。
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    それから約10年後、
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    彼は自身を代表する大著を発表します。
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    それが、
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    [意志と表象としての世界]
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    この中でショーペンハウアーは、私たち人間は、
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    終わりなき欲望を追いかけ、苦悩せざる負えない
    存在であることを主張しました。
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    また、この作品こそ、これまでの哲学体系に、
    新たな知見をもたらす歴史的書物だと、
  • 4:02 - 4:04
    確固たる自信をもっていたと言います。
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    しかし、彼を待っていたのは、厳しい現実でした。
    [全く売れない...]
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    大きな期待とは裏腹に、
    本は発表してから1年半経っても、
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    100部ほどしか売れず、その思想も
    ほとんど理解されなかったのです。
  • 4:16 - 4:20
    それからベルリン大学の講師として職を得るものの、
    [ベルリン大学の講師となったが...]
  • 4:20 - 4:24
    当時、絶大な人気を誇っていた
    カリスマ教授、ヘーゲルの力に圧倒され、
  • 4:24 - 4:26
    彼は自分の講義に、
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    学生を集めることに失敗してしまいます。
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    これによって自信を失い、深く傷ついた
    [講師を辞任し、孤独な研究者へ]
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    ショーペンハウアーは、
    講師を辞任することを決意し、
  • 4:35 - 4:37
    孤独な研究者として、
  • 4:37 - 4:39
    我が道を突き進んで行くことになります。
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    そんな彼が、
  • 4:41 - 4:45
    長年の苦労を経て、
    脚光を浴びるきっかけとなったのが
  • 4:45 - 4:49
    1851年、63歳の時に発表した、
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    余禄と補遺(よろくとほい)という作品です。
    [余禄と補遺]
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    一風変わったタイトルですが、これは彼の代表作、
    [「意志と表象としての世界」の注釈書]
  • 4:54 - 4:58
    「意志と表象としての世界」を
    補足する目的で誕生しました。
  • 4:58 - 5:00
    「意志と表象としての世界」は、
    [「意志と表象」は専門家向け/
  • 5:00 - 5:04
    哲学の専門家向けの、
    難しい内容であったのに対し、
  • 5:04 - 5:08
    この[余禄と補遺]は、彼の思想が
    一般の人にも理解されるよう、
  • 5:08 - 5:12
    分かりやすくエッセイ風に描かれた
    作品になります。
  • 5:12 - 5:14
    これがベストセラーになると、ようやく
    [晩年に名声を博し、72歳で他界]
  • 5:14 - 5:19
    ショーペンハウアーの哲学に、
    世間の注目が集まり、晩年に名声を博します。
  • 5:19 - 5:23
    そして1860年、72歳の時に、
  • 5:23 - 5:25
    その生涯に幕を閉じることになるのです。
  • 5:25 - 5:28
    今回、紹介させていただく
    [幸福について]は、
  • 5:28 - 5:33
    この[余禄と補遺]の中に収められた、
    さまざまな哲学エッセイの中でも、
  • 5:33 - 5:35
    最も人気があるものです。
  • 5:35 - 5:40
    また今日においても、世界各国で、
    幅広い読者から支持を得ており、
  • 5:40 - 5:44
    ショーペンハウアー哲学の入門書として、
    最適な1冊といえます。
  • 5:45 - 5:46
    ここまで、よろしいでしょうか。
    [そろそろ、はじまります]
  • 5:46 - 5:48
    では、以上の点を踏まえまして、
  • 5:48 - 5:51
    いよいよ、本書の中身に
    入って行きたいと思います。
  • 5:51 - 5:53
    ひとつ目のテーマは、
  • 5:53 - 5:55
    [運勢に差を生じさせる3つのもの]です。
  • 5:55 - 5:57
    では、行きましょう。
  • 5:57 - 6:00
    ショーペンハウアー:世の中には、
    運に恵まれている人と、
  • 6:00 - 6:02
    そうでない人がいる。
    [何が運勢に差を生じさせているのか]
  • 6:02 - 6:06
    では、何が我々の運勢に
    差を生じさせているのだろうか。
  • 6:06 - 6:07
    これについて私は、
  • 6:07 - 6:11
    大きく3つの要素が
    関わっていると考えている。
  • 6:11 - 6:14
    [第一に、その人が何ものであるか]
  • 6:14 - 6:16
    [第二に、その人が何を持っているか]
  • 6:16 - 6:20
    [第三に、その人はいかなる印象を与えるか]
    である。
  • 6:20 - 6:22
    はい、ここで止めます。
    [本書の核心は、冒頭に出ていくる]
  • 6:22 - 6:26
    早速、本書の確信とも言える
    主張が出て参りました。
  • 6:26 - 6:28
    大事なところですので、スライドをお出しします。
  • 6:28 - 6:31
    気持ち余裕のある方、画面をご覧ください。
  • 6:31 - 6:32
    ショーペンハウアーは、
    [運勢に差を生じさせる要素]
  • 6:32 - 6:35
    人間の運勢に差を生じさせるものとして、
  • 6:35 - 6:37
    本書の冒頭で、3つの要素を挙げました。
  • 6:37 - 6:39
    まず、第①の要素。
  • 6:39 - 6:42
    [その人が何者であるか]についてですが、
  • 6:42 - 6:43
    これは要するに、
  • 6:43 - 6:48
    その人物がもっている
    [品性・人柄・人間性]といった
  • 6:48 - 6:51
    内面的な「価値」のことを指しています。
  • 6:51 - 6:52
    また、健康であること。
  • 6:52 - 6:55
    心が清らかで美しいこと。
  • 6:55 - 6:57
    [徳]や[知性]を備えていることも、
  • 6:57 - 6:58
    ここに含まれています。
  • 6:58 - 7:01
    続いて真ん中、第②の要素。
  • 7:01 - 7:03
    「その人は、何を持っているか」についてです。
  • 7:03 - 7:04
    これは文字通り、
  • 7:04 - 7:08
    [家・車・衣服・資産]といった
  • 7:08 - 7:11
    本人の所有物や、財産のことを表しています。
  • 7:11 - 7:13
    そして最後、③つ目の要素が
  • 7:13 - 7:15
    「その人は、どんな印象を与えるか」
  • 7:15 - 7:18
    ということですが、
    これは、一言で言ってしまえば、
  • 7:18 - 7:20
    [他者評価]のことを意味しています。
  • 7:20 - 7:22
    例えば、賢そうに見えるとか、
  • 7:22 - 7:24
    誠実そうに見えるとか。
  • 7:24 - 7:28
    他人の目から見た時の、自分の
    イメージのことだとご理解ください。
  • 7:28 - 7:30
    一見、どの要素も、
  • 7:30 - 7:32
    人生において、重要なものと思われますが、
  • 7:32 - 7:33
    ショーペンハウアーは、
  • 7:33 - 7:36
    これら全ての獲得を
    勧めているわけではありません。
  • 7:36 - 7:38
    幸福になるためには、何よりもまず、
  • 7:38 - 7:40
    第①の要素。
  • 7:40 - 7:45
    「その人は何者であるか」という領域に
    集中して生きる必要がある。
  • 7:45 - 7:46
    これが、彼の主張であり、
  • 7:46 - 7:48
    本書のキーメッセージになります。
  • 7:48 - 7:52
    いやいや、資産も増やすことも、
    他者評価を上げることも、
  • 7:52 - 7:57
    幸福な人生を送るうえで、
    同じくらい大事なのではないか。
  • 7:57 - 8:00
    おそらく、そのように思われた方も
    いらっしゃると思います。
  • 8:00 - 8:03
    では一体、なぜショーペンハウアーは、
    自分の内面的価値に
  • 8:03 - 8:07
    拘って生きることが、
    幸福に繋がると考えたのでしょうか。
  • 8:08 - 8:09
    では、続きを読んで行きましょう。
  • 8:09 - 8:12
    ショーペンハウアー:どれほどの財産を持てば、
    [どれほどの財産があれば幸福か?]
  • 8:12 - 8:14
    人間は満足をするのだろう。
  • 8:14 - 8:17
    残念ながら、その答えを導き出すのは、
  • 8:17 - 8:18
    非常に困難なことだ。
  • 8:18 - 8:21
    なぜなら、財産に関する満足は、
    [絶対量ではなく、そう大量に基づく]
  • 8:21 - 8:25
    絶対量ではなく、相対量に基づくからである。
  • 8:25 - 8:29
    例えば、世の中には、
    他人よりも多少財産が少なくても、
  • 8:29 - 8:33
    何不自由なく、満足に暮らせる者がいる一方で、
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    あり余るほど財産があっても満足できず、
    不幸な毎日を送っている者がいるだろう。
  • 8:38 - 8:41
    富や名声とは、言わば海水のようなものであり、
    [富や名声は、海水のように/
  • 8:41 - 8:43
    飲めば飲むほど、心が渇いてくる。
    /飲むほどに渇きを与える]
  • 8:43 - 8:47
    このような、際限ない
    欲望に囚われてしまった人間は、
  • 8:47 - 8:51
    自分が手に入らないものを見つけるたびに、
    苦しい気持ちになり、
  • 8:51 - 8:56
    例え目の前に、巨万の富があったとしても、
    慰められることはないのである。
  • 8:56 - 8:58
    はい、ここで止めます。なるほど。
    [富や名声は、相対的なもの]
  • 8:58 - 9:03
    財産に関する満足は絶対量ではなく、
    相対量に基づく。
  • 9:03 - 9:07
    富や名声は海水のように、
    飲めば飲むほど、
  • 9:07 - 9:09
    心に渇きを与えるとありました。
  • 9:09 - 9:13
    これについて、先程のスライドを使って
    解説致しますので、
  • 9:13 - 9:15
    少し画面の方をご覧ください。
  • 9:15 - 9:17
    ショーペンハウアーの考えを整理しますと、
    [運勢に差を生じさせる要素]
  • 9:17 - 9:20
    赤枠で囲んだ第①の要素。
  • 9:20 - 9:24
    [品性・人柄・人間性]は、絶対的なもの。
  • 9:24 - 9:30
    一方、青枠で囲んだ[所有物]や
    [他者評価]といった第②・第③の要素は、
  • 9:30 - 9:32
    相対的なものということになります。
  • 9:32 - 9:37
    もう少し、分かりやすい言葉に変換しますと、
    [人柄・知性・徳]といった、
  • 9:37 - 9:41
    人間の内面的な財産は、
    誰かと比較するものでもなければ、
  • 9:41 - 9:45
    誰かによって奪われたり、価値を
    下げられたりするものでもないので、
  • 9:45 - 9:47
    絶対的なものである。
  • 9:47 - 9:53
    それに対し、[所有物・地位・名声]
    といった、第②・第③の要素は、
  • 9:53 - 9:58
    自分以外の誰かと比較してこそ、
    値打ちが出てくる相対的なものであり、
  • 9:58 - 10:01
    更に言えば、他人によって奪われることも、
  • 10:01 - 10:06
    価値を貶められる可能性もある、
    不安定なものである、というわけです。
  • 10:06 - 10:11
    このようなことからショーペンハウアーは、
    他人や環境によって、価値が変動してしまう
  • 10:11 - 10:16
    第②・第③の要素よりも、自分の努力次第で
    どこまでも高め続けていける
  • 10:16 - 10:20
    第①の要素に、力を
    注ぐべきだと主張したのです。
  • 10:20 - 10:23
    とは言え、私たちが日常生活を送るには、
  • 10:23 - 10:26
    当然ある程度のお金が要ります。
  • 10:26 - 10:30
    また、他人から認められたいという、
    いわゆる承認欲求を鎮めることは、
  • 10:30 - 10:33
    誰にとっても、そう簡単なことではありません。
  • 10:33 - 10:37
    これらの問題について、ショーペンハウアーは、
    どのように考えているのでしょうか。
  • 10:37 - 10:39
    それでは、ふたつ目のテーマ。
  • 10:39 - 10:42
    [不幸を呼ぶ「承認欲求」の切り離し方]に移り、
  • 10:42 - 10:45
    引き続き彼のアドバイスを
    聞いてみたいと思います。
  • 10:45 - 10:46
    では、行きましょう。
  • 10:46 - 10:49
    ショーペンハウアー:その人の
    身に備わっているものこそ、
  • 10:49 - 10:53
    幸福な人生を送るうえで、最も重要なものである。
    [健康に配慮し、自分を磨き続けよ]
  • 10:53 - 10:57
    健康に配慮し、
    自分の能力に磨きをかけること。
  • 10:57 - 11:01
    これは富の獲得よりも、
    遥かに賢明なことである。
  • 11:01 - 11:06
    もちろん生活には、必要最低限の
    経済的基盤が必要であり、
  • 11:06 - 11:08
    それまでも犠牲にすべきだと
    言いたいのではない。
  • 11:08 - 11:10
    私が強調したいのは、
  • 11:10 - 11:13
    有り余る富を得たところで、人間は
    [有り余るほど富があっても/
  • 11:13 - 11:15
    幸福にはなれないということなのだ。
    /人間は幸福になれない]
  • 11:15 - 11:16
    一体、世の中には、
  • 11:16 - 11:19
    不幸な金持ちがどれだけいることだろう。
  • 11:19 - 11:21
    彼らの多くは余った時間を、
  • 11:21 - 11:23
    浪費や贅沢に充てたがる。
    [浪費や贅沢にこだわる理由]
  • 11:23 - 11:27
    何故そんなことをするかと言えば、
    これまでの人生において、
  • 11:27 - 11:31
    教養の獲得を後回しにし、
    内面を磨いて来なかったからである。
  • 11:31 - 11:35
    知的な暇つぶしで、精神的な満足が得られないと、
    [内面が空っぽだと、生理的欲求を/
  • 11:35 - 11:38
    人間は生理的な欲求といった、
    /満たす以外になくなる]
  • 11:38 - 11:40
    低次元の欲求を満たす以外、なくなってしまう。
  • 11:40 - 11:42
    例えば、裕福な家の子供が、
  • 11:42 - 11:47
    親から受け継いだ莫大な財産を、アッという間に
    使い果たしてしまったという話は、
  • 11:47 - 11:49
    いつの時代もよくあることだ。
  • 11:49 - 11:52
    ショーペンハウアー:こういった
    救いがたい事例がなぜ起こるかと言えば、
  • 11:52 - 11:54
    その根本原因は「退屈」にある。
    [退屈が人間を腐敗させる]
  • 11:54 - 11:59
    つまり精神の貧しさが、耐え難いほどの
    退屈を呼び起こすのである。
  • 11:59 - 12:03
    金の力で、どれほど外見を磨き着飾ったところで、
    [どれだけ外見を着飾ったとしても//内面の豊かさは演出できない]
  • 12:03 - 12:07
    内面の豊かさを演出することは出来ないのだ。
  • 12:07 - 12:09
    且つて、偉大なる賢者ソクラテスは、
    [哲学の父:ソクラテス]
  • 12:09 - 12:13
    店に並べた数々の贅沢品を一瞥すると、
    次のように言った。
  • 12:13 - 12:17
    [私には不要なものが
    なんとたくさんあることだろう]
  • 12:17 - 12:23
    このような教えが古くからあるにも関わらず、
    世の多くの人は、教養の獲得を軽んじ、
  • 12:23 - 12:25
    富を得ることばかりに執着している。
  • 12:25 - 12:30
    既に持っている富を、もっと増やしてやろうと、
    自分に休みも与えず、
  • 12:30 - 12:33
    朝から晩まで、蟻のように働いている。
  • 12:33 - 12:37
    そんな暮らしを続けていれば、
    富の増やし方以外、何も知らず、
  • 12:37 - 12:42
    精神が空っぽで、知的な楽しみを
    一切受け付けない人間になってしまうだろう。
  • 12:42 - 12:47
    どれだけ奮発し、刹那的な快楽で
    自分を満たそうとしても、
  • 12:47 - 12:49
    虚しい気持ちは
    決して静まり返りはしない。
  • 12:49 - 12:53
    そして時が経ち、いよいよ
    人生の終わりが近づいた時、
  • 12:53 - 12:56
    総決算として、これまでの付けが
    回ってくるのである。
  • 12:56 - 12:58
    はい、ここで止めます。
    [人間としての中身を充実させよう]
  • 12:58 - 13:04
    要するに、どれだけお金があっても、
    中身が空っぽのまま歳をとって行ってしまうと
  • 13:04 - 13:06
    後で、痛い目を見るというお話でした。
  • 13:06 - 13:11
    なるほど、確かにそうかもしれないと、
    納得できる部分もありますが、
  • 13:11 - 13:15
    一方で、実際に大きな富を
    手に入れてみないと分からないし、
  • 13:15 - 13:20
    そんなことを言われても、腹に落ちてこない
    という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
  • 13:20 - 13:22
    そこで、イメージしていただきやすいよう、
  • 13:22 - 13:25
    アメリカの心理学者、アブラハム・マズローが唱えた
    [マズローの五段階欲求説]
  • 13:25 - 13:27
    「五段階欲求説」をもとに、
  • 13:27 - 13:30
    ショーペンハウアーの主張を
    整理していきたいと思います。
  • 13:30 - 13:36
    マズローによれば、人間の欲求は、
    [生理的欲求][安全欲求]
  • 13:36 - 13:40
    [社会的欲求][承認欲求][自己実現欲求]と
  • 13:40 - 13:44
    5つの段階があり、
    低次の欲求が満たされる毎に、
  • 13:44 - 13:47
    もうひとつ上の欲求を
    もつようになると言われています。
  • 13:47 - 13:51
    [生理的欲求]というのは、
    生命活動を維持するために不可欠な、
  • 13:51 - 13:56
    必要最低限の欲求を指しており、
    具体的には、人間の三大欲求、
  • 13:56 - 14:00
    「食欲」「睡眠欲」
    「性欲」などが含まれています。
  • 14:00 - 14:02
    ショーペンハウアーによれば、
  • 14:02 - 14:05
    どれだけ富がっても、
    人間としての中身が空っぽだと、
  • 14:05 - 14:09
    この一番低い欲求ばかり満たそうとしてしまう、
    ということでした。
  • 14:09 - 14:13
    そして、これらが満たされたら、
    今度は、身体的に安全で、
  • 14:13 - 14:16
    且つ、経済的にも安定した
    環境で暮らしたいという、
  • 14:16 - 14:20
    [安全性の欲求]が芽生え、
    その次の段階として、
  • 14:20 - 14:22
    [社会的欲求]が出てきます。
  • 14:22 - 14:26
    これは[・家族や組織など、
    何らかの社会集団に所属して
  • 14:26 - 14:29
    安心感を得たいという欲求]を指しており、
  • 14:29 - 14:32
    [・所属と愛の欲求 と呼ばれる]
    こともあります。
  • 14:32 - 14:34
    このステージで孤独が癒されてくると、
  • 14:34 - 14:38
    今度は、ただ集団に
    所属しているだけでは満足できなくなり、
  • 14:38 - 14:41
    その所属している集団の中で、
    「高く評価されたい」
  • 14:41 - 14:44
    「尊敬されたい」といった
    思いが込み上げてきます。
  • 14:44 - 14:46
    これが所謂、[承認欲求]です。
  • 14:46 - 14:50
    ここから先は、[高次の欲求]と呼ばれ、
    お金の力だけでは、
  • 14:50 - 14:53
    なかなか満たしきれない段階に
    進んで行きます。
  • 14:53 - 14:56
    細かい話をしますと、承認欲求は、
  • 14:56 - 15:02
    [低次の承認欲求]と[高次の承認欲求]と、
    2つに分類されるのですが、
  • 15:02 - 15:07
    前者は、他人に注目されたり、
    褒められたりすることを求める欲求のこと。
  • 15:07 - 15:10
    一方、[高次の承認欲求]は、
    他者からではなく、
  • 15:10 - 15:14
    自分で、自分を認めたいという、
    欲求のことを意味しています。
  • 15:14 - 15:15
    例えば、
  • 15:15 - 15:18
    私だって、やればできるじゃないかといった、
  • 15:18 - 15:21
    ちょっとした自己満足によって、
    気分が良くなるようなイメージです。
  • 15:21 - 15:26
    そして、これらが全て満たされると、
    ようやく自己実現欲求が出てくるのですが、
  • 15:26 - 15:30
    これは、自分にしか
    出来ないことを成し遂げたいとか。
  • 15:30 - 15:32
    自分らしく生きて行きたいといった、
  • 15:32 - 15:36
    理想の自分に近づこうとする
    欲求のことを意味しています。
  • 15:36 - 15:40
    この段階に入りますと、
    もはや富の力ではどうにもなりません。
  • 15:40 - 15:43
    日々、教養を蓄えながら、「生きるとは何なのか」
  • 15:43 - 15:46
    「自分は人として、どうありたいか」といった、
  • 15:46 - 15:52
    哲学的な問いと向き合って来た人だけが、
    最後の扉を開くことのできる領域なのです。
  • 15:52 - 15:55
    ただ富の力だけでは、幸福になれないということ。
    [承認欲求のコントロールは困難]
  • 15:55 - 16:00
    教養を身に着けて内面を磨いておくことの
    重要性もよく分かったけれど、
  • 16:00 - 16:04
    承認欲求だけは、
    どうしても収拾がつきませんと、
  • 16:04 - 16:06
    お困りの方もいらっしゃると思います。
  • 16:06 - 16:08
    この悩みについて、ショーペンハウアーは、
  • 16:08 - 16:11
    どのような考えを示してくれるのでしょうか。
  • 16:11 - 16:13
    では、続きを読んで、確認していきましょう。
  • 16:13 - 16:17
    ショーペンハウアー:人間は、
    自分が得意とする分野で褒められると、
  • 16:17 - 16:19
    たとえ見え透いたお世辞であっても、
    [他者から評価されると、誰でも喜ぶ]
  • 16:19 - 16:22
    喜びの表情を顔に浮かべるものだ。
  • 16:22 - 16:24
    しかし、よく考えてみるがいい。
  • 16:24 - 16:25
    他人にどう思われるかなど、
    [他人の意識の中の問題は/
  • 16:25 - 16:28
    他人の意識の中での問題であって、
    /あなた自身の問題か]
  • 16:28 - 16:30
    我々にとっては切り離された、
  • 16:30 - 16:32
    どうでもよい問題ではないだろうか。
  • 16:32 - 16:34
    自分がどうありたいかよりも、
    [人間は頼るべき内面が空っぽだと/
  • 16:34 - 16:37
    他人からどう思われたいかを気にしてしまう人は、
    /他者評価を当てにしたがる]
  • 16:37 - 16:43
    おそらく本来頼るべき、自分自身の内面の資源が、
    それだけ枯渇しているということなのだ。
  • 16:43 - 16:48
    人生という長い旅路は、
    多くの危険があり、困難がある。
  • 16:48 - 16:53
    そこで人々は、その壁を乗り越え、
    何かを成し遂げようと懸命に努力する。
  • 16:53 - 16:57
    ショーペンハウアー:だが、
    彼らの努力のほとんどは、他人から見た、
  • 16:57 - 16:59
    自分の印象を良くすることばかりに
    [他者評価のために頑張り過ぎている]
  • 16:59 - 17:01
    費やされているのが現実だ。
  • 17:01 - 17:05
    富を求めることも、学問や芸術の分野で、
  • 17:05 - 17:08
    成果を上げようとすることも、
    他人からもっと尊敬されたい。
  • 17:08 - 17:12
    もっと認められたいと、
    そんな欲求を満たすこと自体が、
  • 17:12 - 17:14
    究極の目的となっている。
  • 17:14 - 17:16
    なんと人間は、愚かな存在なのだろう。
  • 17:16 - 17:17
    思い返してみれば、
  • 17:17 - 17:19
    我われが、これまでに感じた、
    [気がかりや不安のほとんどは/
  • 17:19 - 17:22
    あらゆる気がかりと不安の大半は、
    /他人からどう思われているか]
  • 17:22 - 17:26
    他人からどう思われるかといった、
    他者評価が根本にあるのではないか。
  • 17:26 - 17:29
    そもそも、他人の目に自分がどう映ったかで、
  • 17:29 - 17:33
    人生の価値が決まるなんて、
    実に惨めすぎる考えだ。
  • 17:33 - 17:36
    どんな時でも、我々が大切にしなければならないのは
    [大切にすべきは、自分の在り方や生き方]
  • 17:36 - 17:39
    自分自身の在り方や、生き方である。
  • 17:39 - 17:42
    他人の頭脳の中に、自分の幸福が宿っているなど、
    [他人の頭脳の中に、自分の幸福はない]
  • 17:42 - 17:44
    断じてあり得ない。
  • 17:44 - 17:46
    確かに他人からの称賛が、
  • 17:46 - 17:49
    人間に喜びを与えてくれるのは事実である。
  • 17:49 - 17:50
    しかし、どんな理由であれ、
  • 17:50 - 17:54
    賞賛している人間は、心からの称賛ではなく、
  • 17:54 - 17:56
    渋々、称賛しているのである。
  • 17:56 - 17:58
    そのように冷静になってみれば、
  • 17:58 - 18:02
    自分で自分を、率直に称える境地に辿り着いた人こそ
    [自分で自分を率直に称えられる人]
  • 18:02 - 18:04
    最も幸福な人だと言える。
  • 18:04 - 18:08
    だから我われは、
    名声を得ることに執着するのではなく、
  • 18:08 - 18:12
    名声に値する者になろうと考えを
    改めるべきである。
  • 18:12 - 18:14
    且つて、偉大な哲学者アリストテレスは、
    [万学の祖:アリストテレス]
  • 18:14 - 18:16
    こんな言葉を残した。
  • 18:16 - 18:19
    [幸福とは自分に満足できる人のものである]
  • 18:19 - 18:22
    つまり我われは、自分の身に
    [自分の身に備えているものに満足せよ]
  • 18:22 - 18:25
    備えているものに満足すれば、
    それでよいのである。
  • 18:25 - 18:26
    はい、ここで止めます。
    [承認欲求から解き放つ名言の数々]
  • 18:26 - 18:31
    承認欲求から解き放ってくれるような、
    力強い名言をたくさんいただきました。
  • 18:31 - 18:35
    つまり私たちは、
    マズローが示したような欲求の段階を、
  • 18:35 - 18:40
    双六のようにひとつひとつ、満たしきって
    進んで行かないとダメかというと、
  • 18:40 - 18:42
    必ずしもそうではないのです。
  • 18:42 - 18:44
    ショーペンハウアーのように、
  • 18:44 - 18:49
    徹底して自分と向き合い、自分を磨き、
    自分の道をひたすら突き進んで、
  • 18:49 - 18:52
    自分だけの幸福を目指す
    といった選択肢もあるわけです。
  • 18:52 - 18:54
    ただ、こういった生き方は、見方によっては、
    [どんな状態が、幸福な状態なのか]
  • 18:54 - 18:57
    とても孤独で、寂しいようにも思われます。
  • 18:57 - 19:00
    一体、ショーペンハウアーにとって、
    幸福な状態とは、
  • 19:00 - 19:03
    どのような状態のことを
    指していたのでしょうか。
  • 19:03 - 19:05
    というわけで、最後みっつ目のテーマ。
  • 19:05 - 19:09
    [人生の幸福を測る、真の物差しとは?]に
    進んで行きたいと思います。
  • 19:09 - 19:11
    では、行きましょう。
  • 19:11 - 19:13
    ショーペンハウアー:
    [あらゆる生きる知恵の最高原則]は、
  • 19:13 - 19:17
    アリストテレスが
    「ニコマコス倫理学」で述べた
  • 19:17 - 19:18
    次の言葉に集約できる。
  • 19:18 - 19:19
    すなわち
  • 19:19 - 19:23
    [賢者は快楽を求めず、苦痛なきを求める]
    ということだ。
  • 19:23 - 19:25
    ショーペンハウアー:
    つまり、アリストテレスは、
  • 19:25 - 19:27
    人生において出来る限り、
    [出来るかぎり災難から逃れよ]
  • 19:27 - 19:31
    災難から逃れることに注目するべきだと
    説いているのである。
  • 19:31 - 19:34
    例えば体が、どれだけ健康であったとしても、
  • 19:34 - 19:38
    どこか小さな傷があったり、
    痛む箇所があったりするとしよう。
  • 19:38 - 19:39
    すると我々は、
  • 19:39 - 19:45
    自分の体が健康であるという事実を忘れ、
    その傷のことばかりに注意が向いてしまう。
  • 19:45 - 19:47
    これと同様に、
  • 19:47 - 19:52
    なに不自由ない充実した毎日を送っていても、
    たったひとつ嫌なことがあると、
  • 19:52 - 19:54
    そこに我われは、意識を奪われ、
  • 19:54 - 19:58
    いま本当にやるべきことに
    集中できないということがよく起こる。
  • 19:58 - 20:01
    且つて、フランスの哲学者ヴォルテールは、
    [フランスの哲学者:ヴォルテール]
  • 20:01 - 20:05
    [幸福は幻に過ぎず、苦痛こそ現実である]
    と説いたが、
  • 20:05 - 20:06
    まさに、その通りなのだ。
  • 20:06 - 20:08
    幸福な人生とは、
    [あまり不幸ではない人生こそ/
  • 20:08 - 20:10
    あまり不幸ではない人生のことであり、
    /幸福な人生である]
  • 20:10 - 20:13
    幸福論とは言わば、粉飾した表現である。
  • 20:13 - 20:18
    最も幸せな運命とは、最上級の喜びや
    快楽を得ることではない。
  • 20:18 - 20:20
    どれだけ苦痛が少なかったかが、
    [どれだけ苦痛が少なかったかが/
  • 20:20 - 20:24
    人生の幸福を測る、真の物差しなのである。
    /人生の幸福を測る、真の物差しなのだ]
  • 20:24 - 20:27
    はい、ここで止めます。要するに多くの人は、
    [結局、無病息災に勝るものはない]
  • 20:27 - 20:32
    人生の幸福を、喜びや楽しみの量で、
    単純に測ろうとするけれど、
  • 20:32 - 20:34
    それは、間違っていますと。
  • 20:34 - 20:38
    そうではなくて、危険な事故や災害に
    巻き込まれなかったとか。
  • 20:38 - 20:40
    大きな病気をしなかったとか。
  • 20:40 - 20:44
    そういった誰の人生でも起こりうる
    悲劇や苦痛を、
  • 20:44 - 20:47
    どれだけ回避できたのか、そこに注目して、
  • 20:47 - 20:50
    自分の人生の幸・不幸を
    総括してくださいと。
  • 20:50 - 20:52
    そのうえで、自分の人生、
    [そんなに悪くない人生だったと/
  • 20:52 - 20:54
    そんな悪いものじゃなかった。
    /総括できれば、それは大成功である]
  • 20:54 - 20:58
    まずまずの人生だったと、思うことが出来れば、
    それは、もう十分
  • 20:58 - 21:01
    幸福な人生を手にしたと
    思ってもらっても大丈夫ですと。
  • 21:01 - 21:03
    そのように仰っているわけです。
  • 21:03 - 21:06
    なるほど、それくらい幸福の基準を下げてくれると、
    [非常にありがたいお話ではあるのですが...]
  • 21:06 - 21:09
    少し気が楽になりますが、一方で、
  • 21:09 - 21:12
    ちょっとネガティブな印象を
    もたれた方もいるかもしれません。
  • 21:12 - 21:15
    しかしこれこそ、ショーペンハウアーの
    [ショーペンハウアーの哲学の真骨頂]
  • 21:15 - 21:17
    人生哲学の面白いところなのです。
  • 21:17 - 21:22
    彼は現実を直視したうえで、
    この世界は残酷で、悲惨な場所であり、
  • 21:22 - 21:27
    人間はその中で、苦悩に塗れながら
    生きる存在であるという、
  • 21:27 - 21:29
    揺るぎない思想をもっていました。
  • 21:29 - 21:32
    確かに言葉だけ聞くと、抵抗感を覚えますが、
  • 21:32 - 21:37
    今日の社会を冷静に観察してみますと、
    夢や希望といった明るい雰囲気はなく、
  • 21:37 - 21:42
    不安・疲労・絶望といった
    暗い雰囲気に包まれています。
  • 21:42 - 21:44
    仏教の思想にも、この世の一切は
  • 21:44 - 21:46
    苦であるという考えがありますが、
    [一切皆苦(この世の一切は苦である)]
  • 21:46 - 21:47
    まさに彼も、
  • 21:47 - 21:49
    自身の経験から同じ境地に達し、
    [苦痛を出来るかぎり避けることが/
  • 21:49 - 21:52
    苦痛をできる限り避けることが、
    /現実的な解決策である]
  • 21:52 - 21:57
    幸福な人生を送るうえで、現実的な
    解決策であるという結論を出したのです。
  • 21:57 - 21:59
    そのうえでショーペンハウアーは、
  • 21:59 - 22:03
    出来る限り苦痛の少ない人生を
    手に入れるための心得について、
  • 22:03 - 22:05
    次のように語っています。
  • 22:05 - 22:07
    ショーペンハウアー:生きて行くうえで
    何よりも大切なことは、
  • 22:07 - 22:10
    自分自身をよく理解しておくことだ。
    [汝自身を知れ]
  • 22:10 - 22:13
    自分が心から望んでいるものは何なのか。
  • 22:13 - 22:18
    自分の幸福にとって、
    一番なくてはならないものは何なのか。
  • 22:18 - 22:22
    自分はどんな役割を担っていて、
    何を果たさねばならないのか。
  • 22:22 - 22:25
    こういった自己理解が、人間に勇気を与え、
  • 22:25 - 22:29
    現在しなければならない活動へと、
    駆り立てるのである。
  • 22:29 - 22:31
    ショーペンハウアー:恐ろしい未来を想像したり、
    [現在に集中して生きよ]
  • 22:31 - 22:36
    望みが叶わなかった過去を恨んだりして、
    現在に集中せずに生きるのは、
  • 22:36 - 22:37
    愚かなことだ。
  • 22:37 - 22:39
    我われが心配すべき唯一のことは、
    [確実な災いだけを恐れよ]
  • 22:39 - 22:45
    未来の災いの中でも、来ることが確実で、
    更に、来る時期も確実なものだけである。
  • 22:45 - 22:47
    心の平穏が乱れてしまえば、
    [心の平穏こそ、あらゆる幸福の基礎となる]
  • 22:47 - 22:52
    人生を気持ちよく味わうことも出来ないし、
    幸福が遠ざかってしまう。
  • 22:52 - 22:53
    したがって我々は、
  • 22:53 - 22:58
    今日という一日は、ただ一度っきりで、
    二度と戻って来ないということを
  • 22:58 - 23:01
    絶えず肝に銘じながら
    生きなければならないのである。
  • 23:01 - 23:04
    はい、ここで止めます。なるほど。
    [1日を小さな一生だと思って/
  • 23:04 - 23:07
    いつ自分の生命が尽きても後悔のないよう、
    /現在に集中して生きること]
  • 23:07 - 23:12
    一日一日を、小さな一生だと思って、
    現在に集中して生きてくださいと。
  • 23:12 - 23:15
    そのためには、未来を恐れないこと。
  • 23:15 - 23:17
    過去を悔まないことに加え、
  • 23:17 - 23:20
    自分がどんな人間で、何者になろうとしているのかを
    [自己理解が勇気ある正しい行動に駆り立てる]
  • 23:20 - 23:24
    よく理解する必要がある、という内容でした。
  • 23:24 - 23:26
    つまり、本書の冒頭にあった、
    [運勢に差を生じさせる要素]
  • 23:26 - 23:30
    自分が何者であるか、という
    第①の要素に集中して生きることが、
  • 23:30 - 23:32
    結果として「現在」を生きること。
  • 23:32 - 23:35
    幸福に生きることに繋がって来る、
    というわけです。
  • 23:35 - 23:37
    また、今に集中して生きた方が、
    [人間は異常なほど退屈を嫌がる]
  • 23:37 - 23:41
    幸福になれるということの根拠として、
    ショーペンハウアーは、
  • 23:41 - 23:45
    「人間は異常なほど退屈を嫌がる」
    ということを挙げています。
  • 23:45 - 23:47
    つまり、自分にはすること、
  • 23:47 - 23:51
    やるべきことも何もないという状態が
    人間に苦痛を与え、
  • 23:51 - 23:53
    不幸な状態にしてしまうのです。
  • 23:53 - 23:57
    今は忙しすぎて、私には関係ないという方も
    いるかもしれませんが、
  • 23:57 - 24:02
    この問題は、10年後、20年後と
    老年に近づくにつれ、
  • 24:02 - 24:05
    他人事ではなくなってくる重要な問題なのです。
  • 24:05 - 24:07
    さて、これについてショーペンハウアーは、
    [いかにして退屈を避けるか]
  • 24:07 - 24:10
    本書で、どのような考えを示したのでしょうか。
  • 24:10 - 24:11
    それでは、続きを見て行きましょう。
  • 24:11 - 24:13
    ショーペンハウアー:
    [生命は動きにある]
  • 24:13 - 24:17
    これは、ギリシャの哲学者
    アリストテレスの言葉だが、
  • 24:17 - 24:18
    これこそ正に「真理」である。
  • 24:18 - 24:21
    如何なる生命も、運動を本質とし、
  • 24:21 - 24:23
    耐えず動きながら存在している。
  • 24:23 - 24:26
    その証拠に我われ人間を、見てみるがいい。
  • 24:26 - 24:29
    これといってすることがなく、
    手持ち無沙汰でいると、
  • 24:29 - 24:33
    恐ろしいほどの退屈に見舞われ、
    我慢できなくなってくるだろう。
  • 24:33 - 24:35
    ショーペンハウアー:
    つまり人間が幸福になるためには、
  • 24:35 - 24:36
    何かをする。
    [幸福には「活動」が欠かせない]
  • 24:36 - 24:37
    何かを成し遂げる。
  • 24:37 - 24:41
    或いは、何かを学ぶといった活動が
    欠かせないということだ。
  • 24:41 - 24:43
    我われは、自分のもっている能力を
    [能力を持て余すことは苦痛である]
  • 24:43 - 24:46
    活用して欲しいとか、その能力で、
  • 24:46 - 24:49
    何かを成し遂げたいと、常に願っているものだ。
  • 24:49 - 24:53
    もし、あなたの中に、
    そういった気持ちが少しでもあるのなら、
  • 24:53 - 24:57
    この点において、
    最大の満足が得られる方法を教えよう。
  • 24:57 - 24:58
    それは、
  • 24:58 - 25:00
    自らの手で、何かを作り上げるということだ。
  • 25:00 - 25:02
    籠でもいい、本でもいい。
  • 25:02 - 25:06
    あなた自身で、何かを仕上げてみるといいだろう。
    [生産的な活動が、退屈を忘れさせ/
  • 25:06 - 25:10
    ある一つの作品が、自分の手によって日々成長し、
    /自分に健全な幸福感を与える]
  • 25:10 - 25:12
    遂に、完成した姿を見ると、
  • 25:12 - 25:16
    我々はそこに、強烈な感動と、
    幸福を覚えるのである。
  • 25:16 - 25:18
    だから私は、それぞれの人が、
    [自分の能力を「活動」によって解放せよ]
  • 25:18 - 25:23
    それぞれの能力に従って、
    何らかの活動に励むべきだと考えている。
  • 25:23 - 25:27
    人間は自分の力を
    持て余しながら生きていると
  • 25:27 - 25:29
    ひどく不幸な気持ちに襲われるものだ。
  • 25:29 - 25:32
    これは、何年も仕事らしい仕事もなく、
  • 25:32 - 25:34
    ただ、遊び惚けて暮らしてみるとよく分かる。
  • 25:34 - 25:37
    モグラが土を掘らずにはいられないように、
    [人間は試行錯誤せずにはいられない]
  • 25:37 - 25:41
    人間もあれこれ骨を折り、
    試行錯誤せずにはいられないのだ。
  • 25:41 - 25:47
    行動する際の物理的な障害であれ、
    学習や研究における精神的な障害であれ、
  • 25:47 - 25:54
    人間はある一定のハードルを乗り越えながら、
    生きる喜びを獲得し、幸せになって行くのである。
  • 25:54 - 25:55
    はい、ここで止めます。
    [抑え込んでいた思い、考え、能力/
  • 25:55 - 25:57
    なるほど、簡単にまとめますと、
    /そのすべてを自由に開放させよう]
  • 25:57 - 26:02
    人間というのは、自分の中に、
    グッと抑え込んでいる思いや考えがあったり、
  • 26:02 - 26:05
    持て余している力が
    あったりするものなのですと。
  • 26:05 - 26:08
    ただ、それを表に出さずに
    溜め込んでいると、
  • 26:08 - 26:13
    次第に欲求不満になり、退屈し、
    生きた心地がしなくなってしまいますと。
  • 26:13 - 26:18
    だから趣味でもいいし、仕事でもいいので、
    自分の手で試行錯誤しながら、
  • 26:18 - 26:23
    コツコツ続けられる、
    生産的な活動を見つけてみてください、
  • 26:23 - 26:24
    という内容でございました。
  • 26:24 - 26:26
    このように、ショーペンハウアーは、
  • 26:26 - 26:29
    世界が苦しみで満たされていることを
    認めたうえで、
  • 26:29 - 26:31
    人としての理想の生き方。
  • 26:31 - 26:36
    そして、現実的な幸福の手に入れ方について
    示したというわけです。
  • 26:36 - 26:40
    どれだけ頑張っても、心が満たされない、
    幸せを感じないという方は、
  • 26:40 - 26:45
    一旦立ち止まっていただき、
    「自分は一体、何者なのか」という問いと、
  • 26:45 - 26:47
    じっくり向き合ってみては、いかがでしょうか。
  • 26:48 - 26:51
    というわけで、「幸福について」
    以上でございます。
  • 26:51 - 26:52
    いかがでしたでしょうか。
  • 26:52 - 26:56
    まさに逆境に立たされた人のための
    幸福哲学ということで、
  • 26:56 - 26:59
    とても勇気を与えてくれる内容でございました。
  • 26:59 - 27:00
    このチャンネルでは、
  • 27:00 - 27:04
    「幸福」をテーマにした名著を
    これまでたくさん紹介していおりますので、
  • 27:04 - 27:06
    一覧にして、動画概要欄に貼っておきます。
  • 27:06 - 27:09
    ご興味のある方は、
    是非チェックしてみてください。
  • 27:09 - 27:12
    この動画が面白かった、参考になったという方は、
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    高評価・コメントなどいただけますと嬉しいです。
  • 27:14 - 27:17
    また、チャンネル登録もよろしくお願い致します。
  • 27:17 - 27:19
    ではまた、次の動画でお会いしましょう。
  • 27:19 - 27:20
    ありがとうございました。
Title:
【名著】幸福について|ショーペンハウアー 今、人生がシンドイあなたへ
Description:

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Video Language:
Japanese
Duration:
27:26

Japanese subtitles

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