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はい!どうもアバタローです。
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本日は、19世紀に活躍した
ドイツの哲学者 ショーペンハウアーの
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[幸福について]を紹介致します。
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どんな作品かと言いますと、
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生きることの苦しみや痛みを
緩和してくれる、古典的名著です。
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特に毎日が退屈で、
生きた心地がしないという方。
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つい他人と自分を比べ、自信を失いがちな方。
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現実社会に疲れてしまい、
生き方を見直そうと考えている方に、
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是非、手に取っていただきたい1冊です。
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[人は幸福になるために生きている]
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これは、世に出回っている
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ほとんどの幸福論が導き出した
結論のひとつです。
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実際に、私たちの多くは、
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その言葉の通り、たくさんの喜びや
楽しみに包まれた幸福な未来を想像し、
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それを追求しながら生きています。
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しかし、今から約200年前、
こういった幸福論の常識に、
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真っ向から反対した哲学者がいました。
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彼の名は、
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[アルトゥール・ショーペンハウアー
(1788-1860)]
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後に「生の哲学の祖」と呼ばれ、
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[ニーチェ]や[ワーグナー]
[フロイト]や[トルストイ]といった、
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一流の思想家たちに影響を与えた、
哲学界の巨人です。
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本書において、ショーペンハウアーは、
多くの人が思い描いている
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幸福な人生は単なる幻であり、
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[あまり不幸ではない人生こそ
満足に値する人生である]と、唱えました。
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何もかも上手くいっている人からしてみれば、
この考えはとても後ろ向きで、
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受け入れ難いものに思われるかもしれません。
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しかし、長い人生の中で、
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本当に、苦しい状況に置かれてしまった時、
きっと彼の幸福哲学が、
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心の支えとして、役に立つ日が
やって来ると思います。
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ですから、いま苦しい人だけではなくて、
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絶好調の人も、ぜひ興味をもって
聞いていただけると嬉しいです。
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もちろん、ご視聴に当たって
難しい予備知識は要りません。
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いつも通り手ぶらでOKです。
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お茶でも飲みながら、リラックスして、
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どうぞ、最後までお付き合いください。
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それでは、参りましょう。
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アルトゥール・ショーペンハウアー
「幸福について」
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まずは、この動画の全体像からお示し致します。
[本日の内容]
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はじめに背景知識として、
[・背景知識]
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著者について、簡単に紹介し、
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そのあと本書の内容を
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[1.運勢に差を生じさせる3つのもの]
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[2.不幸を呼ぶ「承認欲求」の切り離し方]
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[3.人生の幸福を測る、真の物差しとは]
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という、3つのテーマに沿って進めて参ります。
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では早速、「背景知識」から見て行きましょう。
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アルトゥール・ショーペンハウアー。
[アルトゥール・ショーペンハウアー/
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彼は1788年、現在のポーランドの都市、
/(1788-1860)]
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グダニスクにて誕生しました。
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父親は、一代で富を築いた商人で、
[父親は一代で大きな富を築いた商人であった]
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いずれ我が子にも、一流のビジネスマンとして、
大成して欲しいと願っていたと言います。
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そこで彼は、家族を連れだって、
[ヨーロッパ周遊旅行]
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1年にも及ぶヨーロッパ旅行に出かけ、
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商売に必要なセンスを
身に着けさせようとしました。
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しかし、若きショーペンハウアーの
[貧困や格差に塗れた世界]
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純粋な心が捕らえたのは、
上流階級の華やかな暮らしでも、
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人や物の流れでもなく、貧困や格差にまみれた、
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世界の現実でした。
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みすぼらしい格好で路上で物を売る人。
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薄暗く壊れそうな建物。
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絞首刑が執行されている場面。
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こういった、
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今まで自分の目に映りこむことのなかった
人間社会の真実は、
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彼に強い衝撃を与えました。
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それと同時に、なぜ世界はこんなにも悲惨なのか
[なぜ世界はこんなにも悲惨なのか...]
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という疑問が生まれ、父親の望む
商売人としての人生ではなく、
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自分自身が望む、
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哲学者としての人生を
志すようになっていったのです。
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1809年、ゲッティンゲン大学医学部に進学した
[1809年、ゲッティンゲン大学に進学]
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ショーペンハウアーは、翌年哲学部に移り、
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そこで、カントやプラトンの思想を研究。
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それから約10年後、
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彼は自身を代表する大著を発表します。
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それが、
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[意志と表象としての世界]
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この中でショーペンハウアーは、私たち人間は、
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終わりなき欲望を追いかけ、苦悩せざる負えない
存在であることを主張しました。
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また、この作品こそ、これまでの哲学体系に、
新たな知見をもたらす歴史的書物だと、
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確固たる自信をもっていたと言います。
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しかし、彼を待っていたのは、厳しい現実でした。
[全く売れない...]
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大きな期待とは裏腹に、
本は発表してから1年半経っても、
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100部ほどしか売れず、その思想も
ほとんど理解されなかったのです。
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それからベルリン大学の講師として職を得るものの、
[ベルリン大学の講師となったが...]
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当時、絶大な人気を誇っていた
カリスマ教授、ヘーゲルの力に圧倒され、
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彼は自分の講義に、
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学生を集めることに失敗してしまいます。
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これによって自信を失い、深く傷ついた
[講師を辞任し、孤独な研究者へ]
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ショーペンハウアーは、
講師を辞任することを決意し、
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孤独な研究者として、
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我が道を突き進んで行くことになります。
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そんな彼が、
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長年の苦労を経て、
脚光を浴びるきっかけとなったのが
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1851年、63歳の時に発表した、
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余禄と補遺(よろくとほい)という作品です。
[余禄と補遺]
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一風変わったタイトルですが、これは彼の代表作、
[「意志と表象としての世界」の注釈書]
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「意志と表象としての世界」を
補足する目的で誕生しました。
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「意志と表象としての世界」は、
[「意志と表象」は専門家向け/
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哲学の専門家向けの、
難しい内容であったのに対し、
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この[余禄と補遺]は、彼の思想が
一般の人にも理解されるよう、
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分かりやすくエッセイ風に描かれた
作品になります。
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これがベストセラーになると、ようやく
[晩年に名声を博し、72歳で他界]
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ショーペンハウアーの哲学に、
世間の注目が集まり、晩年に名声を博します。
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そして1860年、72歳の時に、
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その生涯に幕を閉じることになるのです。
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今回、紹介させていただく
[幸福について]は、
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この[余禄と補遺]の中に収められた、
さまざまな哲学エッセイの中でも、
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最も人気があるものです。
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また今日においても、世界各国で、
幅広い読者から支持を得ており、
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ショーペンハウアー哲学の入門書として、
最適な1冊といえます。
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ここまで、よろしいでしょうか。
[そろそろ、はじまります]
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では、以上の点を踏まえまして、
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いよいよ、本書の中身に
入って行きたいと思います。
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ひとつ目のテーマは、
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[運勢に差を生じさせる3つのもの]です。
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では、行きましょう。
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ショーペンハウアー:世の中には、
運に恵まれている人と、
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そうでない人がいる。
[何が運勢に差を生じさせているのか]
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では、何が我々の運勢に
差を生じさせているのだろうか。
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これについて私は、
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大きく3つの要素が
関わっていると考えている。
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[第一に、その人が何ものであるか]
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[第二に、その人が何を持っているか]
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[第三に、その人はいかなる印象を与えるか]
である。
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はい、ここで止めます。
[本書の核心は、冒頭に出ていくる]
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早速、本書の確信とも言える
主張が出て参りました。
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大事なところですので、スライドをお出しします。
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気持ち余裕のある方、画面をご覧ください。
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ショーペンハウアーは、
[運勢に差を生じさせる要素]
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人間の運勢に差を生じさせるものとして、
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本書の冒頭で、3つの要素を挙げました。
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まず、第①の要素。
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[その人が何者であるか]についてですが、
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これは要するに、
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その人物がもっている
[品性・人柄・人間性]といった
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内面的な「価値」のことを指しています。
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また、健康であること。
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心が清らかで美しいこと。
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[徳]や[知性]を備えていることも、
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ここに含まれています。
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続いて真ん中、第②の要素。
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「その人は、何を持っているか」についてです。
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これは文字通り、
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[家・車・衣服・資産]といった
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本人の所有物や、財産のことを表しています。
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そして最後、③つ目の要素が
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「その人は、どんな印象を与えるか」
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ということですが、
これは、一言で言ってしまえば、
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[他者評価]のことを意味しています。
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例えば、賢そうに見えるとか、
-
誠実そうに見えるとか。
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他人の目から見た時の、自分の
イメージのことだとご理解ください。
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一見、どの要素も、
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人生において、重要なものと思われますが、
-
ショーペンハウアーは、
-
これら全ての獲得を
勧めているわけではありません。
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幸福になるためには、何よりもまず、
-
第①の要素。
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「その人は何者であるか」という領域に
集中して生きる必要がある。
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これが、彼の主張であり、
-
本書のキーメッセージになります。
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いやいや、資産も増やすことも、
他者評価を上げることも、
-
幸福な人生を送るうえで、
同じくらい大事なのではないか。
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おそらく、そのように思われた方も
いらっしゃると思います。
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では一体、なぜショーペンハウアーは、
自分の内面的価値に
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拘って生きることが、
幸福に繋がると考えたのでしょうか。
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では、続きを読んで行きましょう。
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ショーペンハウアー:どれほどの財産を持てば、
[どれほどの財産があれば幸福か?]
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人間は満足をするのだろう。
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残念ながら、その答えを導き出すのは、
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非常に困難なことだ。
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なぜなら、財産に関する満足は、
[絶対量ではなく、そう大量に基づく]
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絶対量ではなく、相対量に基づくからである。
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例えば、世の中には、
他人よりも多少財産が少なくても、
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何不自由なく、満足に暮らせる者がいる一方で、
-
あり余るほど財産があっても満足できず、
不幸な毎日を送っている者がいるだろう。
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富や名声とは、言わば海水のようなものであり、
[富や名声は、海水のように/
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飲めば飲むほど、心が渇いてくる。
/飲むほどに渇きを与える]
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このような、際限ない
欲望に囚われてしまった人間は、
-
自分が手に入らないものを見つけるたびに、
苦しい気持ちになり、
-
例え目の前に、巨万の富があったとしても、
慰められることはないのである。
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はい、ここで止めます。なるほど。
[富や名声は、相対的なもの]
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財産に関する満足は絶対量ではなく、
相対量に基づく。
-
富や名声は海水のように、
飲めば飲むほど、
-
心に渇きを与えるとありました。
-
これについて、先程のスライドを使って
解説致しますので、
-
少し画面の方をご覧ください。
-
ショーペンハウアーの考えを整理しますと、
[運勢に差を生じさせる要素]
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赤枠で囲んだ第①の要素。
-
[品性・人柄・人間性]は、絶対的なもの。
-
一方、青枠で囲んだ[所有物]や
[他者評価]といった第②・第③の要素は、
-
相対的なものということになります。
-
もう少し、分かりやすい言葉に変換しますと、
[人柄・知性・徳]といった、
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人間の内面的な財産は、
誰かと比較するものでもなければ、
-
誰かによって奪われたり、価値を
下げられたりするものでもないので、
-
絶対的なものである。
-
それに対し、[所有物・地位・名声]
といった、第②・第③の要素は、
-
自分以外の誰かと比較してこそ、
値打ちが出てくる相対的なものであり、
-
更に言えば、他人によって奪われることも、
-
価値を貶められる可能性もある、
不安定なものである、というわけです。
-
このようなことからショーペンハウアーは、
他人や環境によって、価値が変動してしまう
-
第②・第③の要素よりも、自分の努力次第で
どこまでも高め続けていける
-
第①の要素に、力を
注ぐべきだと主張したのです。
-
とは言え、私たちが日常生活を送るには、
-
当然ある程度のお金が要ります。
-
また、他人から認められたいという、
いわゆる承認欲求を鎮めることは、
-
誰にとっても、そう簡単なことではありません。
-
これらの問題について、ショーペンハウアーは、
どのように考えているのでしょうか。
-
それでは、ふたつ目のテーマ。
-
[不幸を呼ぶ「承認欲求」の切り離し方]に移り、
-
引き続き彼のアドバイスを
聞いてみたいと思います。
-
では、行きましょう。
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ショーペンハウアー:その人の
身に備わっているものこそ、
-
幸福な人生を送るうえで、最も重要なものである。
[健康に配慮し、自分を磨き続けよ]
-
健康に配慮し、
自分の能力に磨きをかけること。
-
これは富の獲得よりも、
遥かに賢明なことである。
-
もちろん生活には、必要最低限の
経済的基盤が必要であり、
-
それまでも犠牲にすべきだと
言いたいのではない。
-
私が強調したいのは、
-
有り余る富を得たところで、人間は
[有り余るほど富があっても/
-
幸福にはなれないということなのだ。
/人間は幸福になれない]
-
一体、世の中には、
-
不幸な金持ちがどれだけいることだろう。
-
彼らの多くは余った時間を、
-
浪費や贅沢に充てたがる。
[浪費や贅沢にこだわる理由]
-
何故そんなことをするかと言えば、
これまでの人生において、
-
教養の獲得を後回しにし、
内面を磨いて来なかったからである。
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知的な暇つぶしで、精神的な満足が得られないと、
[内面が空っぽだと、生理的欲求を/
-
人間は生理的な欲求といった、
/満たす以外になくなる]
-
低次元の欲求を満たす以外、なくなってしまう。
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例えば、裕福な家の子供が、
-
親から受け継いだ莫大な財産を、アッという間に
使い果たしてしまったという話は、
-
いつの時代もよくあることだ。
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ショーペンハウアー:こういった
救いがたい事例がなぜ起こるかと言えば、
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その根本原因は「退屈」にある。
[退屈が人間を腐敗させる]
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つまり精神の貧しさが、耐え難いほどの
退屈を呼び起こすのである。
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金の力で、どれほど外見を磨き着飾ったところで、
[どれだけ外見を着飾ったとしても//内面の豊かさは演出できない]
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内面の豊かさを演出することは出来ないのだ。
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且つて、偉大なる賢者ソクラテスは、
[哲学の父:ソクラテス]
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店に並べた数々の贅沢品を一瞥すると、
次のように言った。
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[私には不要なものが
なんとたくさんあることだろう]
-
このような教えが古くからあるにも関わらず、
世の多くの人は、教養の獲得を軽んじ、
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富を得ることばかりに執着している。
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既に持っている富を、もっと増やしてやろうと、
自分に休みも与えず、
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朝から晩まで、蟻のように働いている。
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そんな暮らしを続けていれば、
富の増やし方以外、何も知らず、
-
精神が空っぽで、知的な楽しみを
一切受け付けない人間になってしまうだろう。
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どれだけ奮発し、刹那的な快楽で
自分を満たそうとしても、
-
虚しい気持ちは
決して静まり返りはしない。
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そして時が経ち、いよいよ
人生の終わりが近づいた時、
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総決算として、これまでの付けが
回ってくるのである。
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はい、ここで止めます。
[人間としての中身を充実させよう]
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要するに、どれだけお金があっても、
中身が空っぽのまま歳をとって行ってしまうと
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後で、痛い目を見るというお話でした。
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なるほど、確かにそうかもしれないと、
納得できる部分もありますが、
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一方で、実際に大きな富を
手に入れてみないと分からないし、
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そんなことを言われても、腹に落ちてこない
という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
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そこで、イメージしていただきやすいよう、
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アメリカの心理学者、アブラハム・マズローが唱えた
[マズローの五段階欲求説]
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「五段階欲求説」をもとに、
-
ショーペンハウアーの主張を
整理していきたいと思います。
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マズローによれば、人間の欲求は、
[生理的欲求][安全欲求]
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[社会的欲求][承認欲求][自己実現欲求]と
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5つの段階があり、
低次の欲求が満たされる毎に、
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もうひとつ上の欲求を
もつようになると言われています。
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[生理的欲求]というのは、
生命活動を維持するために不可欠な、
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必要最低限の欲求を指しており、
具体的には、人間の三大欲求、
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「食欲」「睡眠欲」
「性欲」などが含まれています。
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ショーペンハウアーによれば、
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どれだけ富がっても、
人間としての中身が空っぽだと、
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この一番低い欲求ばかり満たそうとしてしまう、
ということでした。
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そして、これらが満たされたら、
今度は、身体的に安全で、
-
且つ、経済的にも安定した
環境で暮らしたいという、
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[安全性の欲求]が芽生え、
その次の段階として、
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[社会的欲求]が出てきます。
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これは[・家族や組織など、
何らかの社会集団に所属して
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安心感を得たいという欲求]を指しており、
-
[・所属と愛の欲求 と呼ばれる]
こともあります。
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このステージで孤独が癒されてくると、
-
今度は、ただ集団に
所属しているだけでは満足できなくなり、
-
その所属している集団の中で、
「高く評価されたい」
-
「尊敬されたい」といった
思いが込み上げてきます。
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これが所謂、[承認欲求]です。
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ここから先は、[高次の欲求]と呼ばれ、
お金の力だけでは、
-
なかなか満たしきれない段階に
進んで行きます。
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細かい話をしますと、承認欲求は、
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[低次の承認欲求]と[高次の承認欲求]と、
2つに分類されるのですが、
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前者は、他人に注目されたり、
褒められたりすることを求める欲求のこと。
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一方、[高次の承認欲求]は、
他者からではなく、
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自分で、自分を認めたいという、
欲求のことを意味しています。
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例えば、
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私だって、やればできるじゃないかといった、
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ちょっとした自己満足によって、
気分が良くなるようなイメージです。
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そして、これらが全て満たされると、
ようやく自己実現欲求が出てくるのですが、
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これは、自分にしか
出来ないことを成し遂げたいとか。
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自分らしく生きて行きたいといった、
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理想の自分に近づこうとする
欲求のことを意味しています。
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この段階に入りますと、
もはや富の力ではどうにもなりません。
-
日々、教養を蓄えながら、「生きるとは何なのか」
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「自分は人として、どうありたいか」といった、
-
哲学的な問いと向き合って来た人だけが、
最後の扉を開くことのできる領域なのです。
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ただ富の力だけでは、幸福になれないということ。
[承認欲求のコントロールは困難]
-
教養を身に着けて内面を磨いておくことの
重要性もよく分かったけれど、
-
承認欲求だけは、
どうしても収拾がつきませんと、
-
お困りの方もいらっしゃると思います。
-
この悩みについて、ショーペンハウアーは、
-
どのような考えを示してくれるのでしょうか。
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では、続きを読んで、確認していきましょう。
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ショーペンハウアー:人間は、
自分が得意とする分野で褒められると、
-
たとえ見え透いたお世辞であっても、
[他者から評価されると、誰でも喜ぶ]
-
喜びの表情を顔に浮かべるものだ。
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しかし、よく考えてみるがいい。
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他人にどう思われるかなど、
[他人の意識の中の問題は/
-
他人の意識の中での問題であって、
/あなた自身の問題か]
-
我々にとっては切り離された、
-
どうでもよい問題ではないだろうか。
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自分がどうありたいかよりも、
[人間は頼るべき内面が空っぽだと/
-
他人からどう思われたいかを気にしてしまう人は、
/他者評価を当てにしたがる]
-
おそらく本来頼るべき、自分自身の内面の資源が、
それだけ枯渇しているということなのだ。
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人生という長い旅路は、
多くの危険があり、困難がある。
-
そこで人々は、その壁を乗り越え、
何かを成し遂げようと懸命に努力する。
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ショーペンハウアー:だが、
彼らの努力のほとんどは、他人から見た、
-
自分の印象を良くすることばかりに
[他者評価のために頑張り過ぎている]
-
費やされているのが現実だ。
-
富を求めることも、学問や芸術の分野で、
-
成果を上げようとすることも、
他人からもっと尊敬されたい。
-
もっと認められたいと、
そんな欲求を満たすこと自体が、
-
究極の目的となっている。
-
なんと人間は、愚かな存在なのだろう。
-
思い返してみれば、
-
我われが、これまでに感じた、
[気がかりや不安のほとんどは/
-
あらゆる気がかりと不安の大半は、
/他人からどう思われているか]
-
他人からどう思われるかといった、
他者評価が根本にあるのではないか。
-
そもそも、他人の目に自分がどう映ったかで、
-
人生の価値が決まるなんて、
実に惨めすぎる考えだ。
-
どんな時でも、我々が大切にしなければならないのは
[大切にすべきは、自分の在り方や生き方]
-
自分自身の在り方や、生き方である。
-
他人の頭脳の中に、自分の幸福が宿っているなど、
[他人の頭脳の中に、自分の幸福はない]
-
断じてあり得ない。
-
確かに他人からの称賛が、
-
人間に喜びを与えてくれるのは事実である。
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しかし、どんな理由であれ、
-
賞賛している人間は、心からの称賛ではなく、
-
渋々、称賛しているのである。
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そのように冷静になってみれば、
-
自分で自分を、率直に称える境地に辿り着いた人こそ
[自分で自分を率直に称えられる人]
-
最も幸福な人だと言える。
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だから我われは、
名声を得ることに執着するのではなく、
-
名声に値する者になろうと考えを
改めるべきである。
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且つて、偉大な哲学者アリストテレスは、
[万学の祖:アリストテレス]
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こんな言葉を残した。
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[幸福とは自分に満足できる人のものである]
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つまり我われは、自分の身に
[自分の身に備えているものに満足せよ]
-
備えているものに満足すれば、
それでよいのである。
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はい、ここで止めます。
[承認欲求から解き放つ名言の数々]
-
承認欲求から解き放ってくれるような、
力強い名言をたくさんいただきました。
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つまり私たちは、
マズローが示したような欲求の段階を、
-
双六のようにひとつひとつ、満たしきって
進んで行かないとダメかというと、
-
必ずしもそうではないのです。
-
ショーペンハウアーのように、
-
徹底して自分と向き合い、自分を磨き、
自分の道をひたすら突き進んで、
-
自分だけの幸福を目指す
といった選択肢もあるわけです。
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ただ、こういった生き方は、見方によっては、
[どんな状態が、幸福な状態なのか]
-
とても孤独で、寂しいようにも思われます。
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一体、ショーペンハウアーにとって、
幸福な状態とは、
-
どのような状態のことを
指していたのでしょうか。
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というわけで、最後みっつ目のテーマ。
-
[人生の幸福を測る、真の物差しとは?]に
進んで行きたいと思います。
-
では、行きましょう。
-
ショーペンハウアー:
[あらゆる生きる知恵の最高原則]は、
-
アリストテレスが
「ニコマコス倫理学」で述べた
-
次の言葉に集約できる。
-
すなわち
-
[賢者は快楽を求めず、苦痛なきを求める]
ということだ。
-
ショーペンハウアー:
つまり、アリストテレスは、
-
人生において出来る限り、
[出来るかぎり災難から逃れよ]
-
災難から逃れることに注目するべきだと
説いているのである。
-
例えば体が、どれだけ健康であったとしても、
-
どこか小さな傷があったり、
痛む箇所があったりするとしよう。
-
すると我々は、
-
自分の体が健康であるという事実を忘れ、
その傷のことばかりに注意が向いてしまう。
-
これと同様に、
-
なに不自由ない充実した毎日を送っていても、
たったひとつ嫌なことがあると、
-
そこに我われは、意識を奪われ、
-
いま本当にやるべきことに
集中できないということがよく起こる。
-
且つて、フランスの哲学者ヴォルテールは、
[フランスの哲学者:ヴォルテール]
-
[幸福は幻に過ぎず、苦痛こそ現実である]
と説いたが、
-
まさに、その通りなのだ。
-
幸福な人生とは、
[あまり不幸ではない人生こそ/
-
あまり不幸ではない人生のことであり、
/幸福な人生である]
-
幸福論とは言わば、粉飾した表現である。
-
最も幸せな運命とは、最上級の喜びや
快楽を得ることではない。
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どれだけ苦痛が少なかったかが、
[どれだけ苦痛が少なかったかが/
-
人生の幸福を測る、真の物差しなのである。
/人生の幸福を測る、真の物差しなのだ]
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はい、ここで止めます。要するに多くの人は、
[結局、無病息災に勝るものはない]
-
人生の幸福を、喜びや楽しみの量で、
単純に測ろうとするけれど、
-
それは、間違っていますと。
-
そうではなくて、危険な事故や災害に
巻き込まれなかったとか。
-
大きな病気をしなかったとか。
-
そういった誰の人生でも起こりうる
悲劇や苦痛を、
-
どれだけ回避できたのか、そこに注目して、
-
自分の人生の幸・不幸を
総括してくださいと。
-
そのうえで、自分の人生、
[そんなに悪くない人生だったと/
-
そんな悪いものじゃなかった。
/総括できれば、それは大成功である]
-
まずまずの人生だったと、思うことが出来れば、
それは、もう十分
-
幸福な人生を手にしたと
思ってもらっても大丈夫ですと。
-
そのように仰っているわけです。
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なるほど、それくらい幸福の基準を下げてくれると、
[非常にありがたいお話ではあるのですが...]
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少し気が楽になりますが、一方で、
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ちょっとネガティブな印象を
もたれた方もいるかもしれません。
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しかしこれこそ、ショーペンハウアーの
[ショーペンハウアーの哲学の真骨頂]
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人生哲学の面白いところなのです。
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彼は現実を直視したうえで、
この世界は残酷で、悲惨な場所であり、
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人間はその中で、苦悩に塗れながら
生きる存在であるという、
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揺るぎない思想をもっていました。
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確かに言葉だけ聞くと、抵抗感を覚えますが、
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今日の社会を冷静に観察してみますと、
夢や希望といった明るい雰囲気はなく、
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不安・疲労・絶望といった
暗い雰囲気に包まれています。
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仏教の思想にも、この世の一切は
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苦であるという考えがありますが、
[一切皆苦(この世の一切は苦である)]
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まさに彼も、
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自身の経験から同じ境地に達し、
[苦痛を出来るかぎり避けることが/
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苦痛をできる限り避けることが、
/現実的な解決策である]
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幸福な人生を送るうえで、現実的な
解決策であるという結論を出したのです。
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そのうえでショーペンハウアーは、
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出来る限り苦痛の少ない人生を
手に入れるための心得について、
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次のように語っています。
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ショーペンハウアー:生きて行くうえで
何よりも大切なことは、
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自分自身をよく理解しておくことだ。
[汝自身を知れ]
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自分が心から望んでいるものは何なのか。
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自分の幸福にとって、
一番なくてはならないものは何なのか。
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自分はどんな役割を担っていて、
何を果たさねばならないのか。
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こういった自己理解が、人間に勇気を与え、
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現在しなければならない活動へと、
駆り立てるのである。
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ショーペンハウアー:恐ろしい未来を想像したり、
[現在に集中して生きよ]
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望みが叶わなかった過去を恨んだりして、
現在に集中せずに生きるのは、
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愚かなことだ。
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我われが心配すべき唯一のことは、
[確実な災いだけを恐れよ]
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未来の災いの中でも、来ることが確実で、
更に、来る時期も確実なものだけである。
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心の平穏が乱れてしまえば、
[心の平穏こそ、あらゆる幸福の基礎となる]
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人生を気持ちよく味わうことも出来ないし、
幸福が遠ざかってしまう。
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したがって我々は、
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今日という一日は、ただ一度っきりで、
二度と戻って来ないということを
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絶えず肝に銘じながら
生きなければならないのである。
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はい、ここで止めます。なるほど。
[1日を小さな一生だと思って/
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いつ自分の生命が尽きても後悔のないよう、
/現在に集中して生きること]
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一日一日を、小さな一生だと思って、
現在に集中して生きてくださいと。
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そのためには、未来を恐れないこと。
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過去を悔まないことに加え、
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自分がどんな人間で、何者になろうとしているのかを
[自己理解が勇気ある正しい行動に駆り立てる]
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よく理解する必要がある、という内容でした。
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つまり、本書の冒頭にあった、
[運勢に差を生じさせる要素]
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自分が何者であるか、という
第①の要素に集中して生きることが、
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結果として「現在」を生きること。
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幸福に生きることに繋がって来る、
というわけです。
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また、今に集中して生きた方が、
[人間は異常なほど退屈を嫌がる]
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幸福になれるということの根拠として、
ショーペンハウアーは、
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「人間は異常なほど退屈を嫌がる」
ということを挙げています。
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つまり、自分にはすること、
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やるべきことも何もないという状態が
人間に苦痛を与え、
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不幸な状態にしてしまうのです。
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今は忙しすぎて、私には関係ないという方も
いるかもしれませんが、
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この問題は、10年後、20年後と
老年に近づくにつれ、
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他人事ではなくなってくる重要な問題なのです。
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さて、これについてショーペンハウアーは、
[いかにして退屈を避けるか]
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本書で、どのような考えを示したのでしょうか。
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それでは、続きを見て行きましょう。
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ショーペンハウアー:
[生命は動きにある]
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これは、ギリシャの哲学者
アリストテレスの言葉だが、
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これこそ正に「真理」である。
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如何なる生命も、運動を本質とし、
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耐えず動きながら存在している。
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その証拠に我われ人間を、見てみるがいい。
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これといってすることがなく、
手持ち無沙汰でいると、
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恐ろしいほどの退屈に見舞われ、
我慢できなくなってくるだろう。
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ショーペンハウアー:
つまり人間が幸福になるためには、
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何かをする。
[幸福には「活動」が欠かせない]
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何かを成し遂げる。
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或いは、何かを学ぶといった活動が
欠かせないということだ。
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我われは、自分のもっている能力を
[能力を持て余すことは苦痛である]
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活用して欲しいとか、その能力で、
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何かを成し遂げたいと、常に願っているものだ。
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もし、あなたの中に、
そういった気持ちが少しでもあるのなら、
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この点において、
最大の満足が得られる方法を教えよう。
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それは、
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自らの手で、何かを作り上げるということだ。
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籠でもいい、本でもいい。
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あなた自身で、何かを仕上げてみるといいだろう。
[生産的な活動が、退屈を忘れさせ/
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ある一つの作品が、自分の手によって日々成長し、
/自分に健全な幸福感を与える]
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遂に、完成した姿を見ると、
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我々はそこに、強烈な感動と、
幸福を覚えるのである。
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だから私は、それぞれの人が、
[自分の能力を「活動」によって解放せよ]
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それぞれの能力に従って、
何らかの活動に励むべきだと考えている。
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人間は自分の力を
持て余しながら生きていると
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ひどく不幸な気持ちに襲われるものだ。
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これは、何年も仕事らしい仕事もなく、
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ただ、遊び惚けて暮らしてみるとよく分かる。
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モグラが土を掘らずにはいられないように、
[人間は試行錯誤せずにはいられない]
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人間もあれこれ骨を折り、
試行錯誤せずにはいられないのだ。
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行動する際の物理的な障害であれ、
学習や研究における精神的な障害であれ、
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人間はある一定のハードルを乗り越えながら、
生きる喜びを獲得し、幸せになって行くのである。
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はい、ここで止めます。
[抑え込んでいた思い、考え、能力/
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なるほど、簡単にまとめますと、
/そのすべてを自由に開放させよう]
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人間というのは、自分の中に、
グッと抑え込んでいる思いや考えがあったり、
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持て余している力が
あったりするものなのですと。
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ただ、それを表に出さずに
溜め込んでいると、
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次第に欲求不満になり、退屈し、
生きた心地がしなくなってしまいますと。
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だから趣味でもいいし、仕事でもいいので、
自分の手で試行錯誤しながら、
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コツコツ続けられる、
生産的な活動を見つけてみてください、
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という内容でございました。
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このように、ショーペンハウアーは、
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世界が苦しみで満たされていることを
認めたうえで、
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人としての理想の生き方。
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そして、現実的な幸福の手に入れ方について
示したというわけです。
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どれだけ頑張っても、心が満たされない、
幸せを感じないという方は、
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一旦立ち止まっていただき、
「自分は一体、何者なのか」という問いと、
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じっくり向き合ってみては、いかがでしょうか。
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というわけで、「幸福について」
以上でございます。
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いかがでしたでしょうか。
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まさに逆境に立たされた人のための
幸福哲学ということで、
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とても勇気を与えてくれる内容でございました。
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このチャンネルでは、
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「幸福」をテーマにした名著を
これまでたくさん紹介していおりますので、
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一覧にして、動画概要欄に貼っておきます。
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是非チェックしてみてください。
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