言葉の豊かさを生み出す20%の空白 | 松本賢一 | TEDxKobe
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0:20 - 0:21それでは まず初めにですね
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0:22 - 0:23頭の体操からいきたいと思います
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0:23 - 0:25「何かいな?」と思うかも
しれませんけども -
0:25 - 0:27こちらポテトサラダ んー
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0:27 - 0:28えー これはですね
[ポテトサラダ 250円] -
0:28 - 0:31実は 私のビジネスのお仲間で
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0:32 - 0:35福島県はいわき市でね
回転寿司をやられている -
0:35 - 0:37出村さんという方が
考えたアイデアなんですけども -
0:37 - 0:39まあ 回転寿司ですから
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0:39 - 0:41いろんなサイドメニューが
あるわけですよね -
0:41 - 0:43その中で悩み事がありました
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0:43 - 0:44それが何かと言ったら
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0:44 - 0:46ポテトサラダ
売れへんのですよね -
0:47 - 0:48卵使っている
マヨネーズ使っている -
0:48 - 0:50だからまあ 作ったその日か
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0:50 - 0:53まあ翌日くらいには
売り切れて欲しいんですけども -
0:53 - 0:56こうメニュー表にね
「ポーン」と置いてるだけでは -
0:56 - 0:58お客さんの食指は動けへんと
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0:58 - 1:01さあ そこで出村さん
どういうふうにしたかというと -
1:01 - 1:03このポテトサラダの前に ね
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1:03 - 1:07このポテトサラダの前に
枕詞を付けて -
1:07 - 1:09売り上げをドーンと
上げることができた -
1:09 - 1:12「さあ ここでみなさんが
出村さんの立場だったら -
1:12 - 1:14どんな枕詞をつけて
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1:14 - 1:17売り上げ上げようとしますか?」
という頭の体操です -
1:17 - 1:19ちょっと頭の中で2~3個
思い描いてみてください -
1:19 - 1:21[○○なポテトサラダ 250円]
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1:21 - 1:24色んな言葉が出てきたんや
ないかなと思うんですが -
1:24 - 1:27実はこれね こんなふうにして
売り上げを上げたんですね -
1:27 - 1:31「お店の看板娘 みよちゃんが
作ったポテトサラダ 250円」と -
1:32 - 1:34面白いですよね
すごくユニークで -
1:35 - 1:37普通のポテトサラダから
何かね こう魅力的な -
1:37 - 1:39豊かなものが伝わったと
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1:39 - 1:41そういうふうになっていくと
思うんですよね -
1:41 - 1:43で まあおかげさまでね
こんな感じでね -
1:43 - 1:46企業さんの商品とかサービスとか
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1:46 - 1:49それをどういうふうに伝えればね
より広く伝わるか -
1:49 - 1:50そういう伝え方コーチ
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1:50 - 1:52最近ではね 学校の先生とか
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1:52 - 1:55あるいはその プレゼンテーションの
能力を上げたいとか -
1:55 - 1:57そういった人たちにも
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1:57 - 1:59指導させていただく
機会がずいぶん増えまして -
1:59 - 2:02今からですね 8年前ですわ
2010年ね -
2:02 - 2:05大阪は「天満天神繁昌亭」
という所で -
2:05 - 2:07落語家入門講座
というのがありました -
2:08 - 2:11そこでね プロの噺家さんに
お月謝を払って -
2:11 - 2:12稽古をつけていただくという
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2:12 - 2:14そこに入門いたしました
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2:14 - 2:15喋りのスキルを伸ばしたい
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2:15 - 2:19あるいはね ここぞというときに
笑いをどーんと取れるような -
2:19 - 2:20そんな人間になりたいと思いまして
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2:20 - 2:24入門しまして 半年が経ちまして
ちょうど修了式ですわ -
2:25 - 2:28当時ね 上方落語協会
会長でいらっしゃいました -
2:28 - 2:32桂三枝 現六代 文枝師匠で
ございますけども -
2:32 - 2:36その師匠からお名前を頂いて
「八軒家 けん市」という名前でね -
2:36 - 2:38アマチュアですけども
素人ですけども -
2:38 - 2:41ボランティアで
地元尼崎を中心に -
2:41 - 2:43落語をさしてもらってるんですね
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2:43 - 2:45で まあ 初めの2年ぐらいはね
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2:45 - 2:49身内とか知り合い相手に
落語をすることが多かったんで -
2:49 - 2:51まあ こんな私の
へたくそな話でも -
2:51 - 2:53みんな にこやかに
聞いてくれてたんですが -
2:54 - 2:58思い出しますね
2012年2月25日ですよ -
2:58 - 2:59今でも思い出しますね
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2:59 - 3:02全く縁もゆかりもない所からね
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3:03 - 3:04落語の依頼を受けたんですよ
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3:04 - 3:07私ね 気合入ってましてね
もう 小躍りして喜んだ -
3:07 - 3:11「よっしゃこれは何がなんでもね
笑わせたろやないか!」言うて -
3:12 - 3:14当日の衣装がこんな感じでね
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3:14 - 3:17紋付羽織でドーン!と
いったわけですよ -
3:18 - 3:22落語をやる場所を高い座と書いて
高座と言うんですけどね -
3:22 - 3:25その高座にビャーッ!と行ってね
バッ!と座ってね -
3:25 - 3:28「よっしゃ!笑わしたるでえ!」
と意気揚々と喋り始めたんです -
3:28 - 3:31そうすると 最初のうちはね
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3:31 - 3:33お爺ちゃん お婆ちゃん
30~40人が -
3:33 - 3:36「いや~ にいちゃん
よう来てくれたなあ」いう感じで -
3:36 - 3:39にこやかにこっちを
見てくれたんですけども -
3:39 - 3:42これが3分経ち
5分経ちなってきたら -
3:42 - 3:44どうなってきたかというと
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3:44 - 3:47だんだん みんな
そわそわ そわそわし始めた -
3:47 - 3:50中にはね 時計を見るような人も
出てきたりして -
3:50 - 3:52これね 話の半ばの
10分くらいになってくると -
3:53 - 3:56半分くらいの人が舟をこぎ始めた
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3:57 - 3:59話の終わりの18分になると
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3:59 - 4:02なんと 私を呼んだ
主催者ですら -
4:02 - 4:05みんな夢の中に
入ってしまったという -
4:05 - 4:08これはね 私 屈辱的でしたね
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4:08 - 4:10「噺家殺すのに刃物はいらぬ
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4:10 - 4:13あくび三つで即死する」
てなことを言いますけどもね -
4:13 - 4:15私 即死どころやございませんよ
こんなんね -
4:15 - 4:17もう 何回輪廻転生せな
あかんかいうぐらい -
4:17 - 4:20それぐらいの
屈辱的なことが起きた -
4:20 - 4:22そのとき思いましたね
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4:22 - 4:26「どうやったらあの時 お爺ちゃん
お婆ちゃん起こすことができたんやろ? -
4:26 - 4:28どうやったら笑わすことが
できたんやろ?」 -
4:28 - 4:32色々考えて 色んな人に
意見を聞いて 色んな本読んだ -
4:32 - 4:36そのときに 私 学生時代
演劇をやってたんで -
4:36 - 4:40つかこうへいさんというね
劇作家の方が書かれた文章が -
4:40 - 4:42ちょっと頭の中にパーン!と
蘇ってきたんです -
4:42 - 4:44そのとき つかさん
こんなふうに言うてるんですね -
4:45 - 4:48たとえばね 男と女の
海での別れのシーンがあると -
4:48 - 4:50ところがね 男と女の
別れを支えるような -
4:50 - 4:52そんな寒い海なんて
あるわけがないと -
4:52 - 4:54どこに行ったってね
日本海行ったって -
4:54 - 4:57アラスカ行ったって
南極行ったってあるわけがないと -
4:57 - 5:00でも これがお芝居で
演劇だったらね -
5:01 - 5:02役者がめっちゃ上手で
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5:02 - 5:04こうポケットに手
突っ込みながら遠く見て -
5:05 - 5:08「寒い海ですね」
ってこういうふうに呟けばね -
5:08 - 5:11波の音なんかなくても
十分寒い海になる -
5:11 - 5:14南極以上の二人の悲しい
海が出来上がる -
5:14 - 5:17これが観客のね
想像力を駆り立てて -
5:17 - 5:19豊饒な世界に
繋がるんだということを -
5:19 - 5:21まあ 書いてあったわけです
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5:21 - 5:24「なるほど そういうことか!」と
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5:24 - 5:27「私がお爺ちゃんお婆ちゃんを
起こすことができなかったのは -
5:27 - 5:30相手の想像力に働きかけることが
できひんかったから -
5:30 - 5:32なるほどなあ」と
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5:32 - 5:34そういうふうに思ったんですが
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5:34 - 5:37さあここで つかさんの言う
イメージの豊饒さ -
5:37 - 5:39つまり 相手の
想像力をかりたてる -
5:39 - 5:42イメージの豊饒さは 一体
どこから来るんかということを -
5:42 - 5:43ちょっと考え始めたわけです
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5:43 - 5:48そんなときに 一番有名な
俳句の句があるんですけども -
5:48 - 5:49これに出会ったわけですね
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5:49 - 5:52「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」
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5:52 - 5:57まあ 正岡子規が詠んだ句の中でも
一番有名な句やと言われてますけども -
5:57 - 5:59これね いつも私
よう聞くんですよ -
5:59 - 6:01みなさんにね
日本全国で聞くんですけども -
6:01 - 6:03さあ この正岡子規の句 ね
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6:03 - 6:07「1日24時間の中で
何時ぐらいに詠んだ句ですか?」と -
6:08 - 6:11「1日24時間 何時ぐらいですか?」
と聞きます -
6:11 - 6:14そうすると80%から90%の人は
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6:14 - 6:17「ああ 夕方ですか?」
というふうに答えるんですね -
6:17 - 6:21中にはね「真夜中ですか?」とか
「お三時ですか?」とか まぁまぁ -
6:21 - 6:25「明け方ですか?」というふうに
言われる方もたまにはいらっしゃいます -
6:25 - 6:26たまにはいるけども
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6:26 - 6:288割から9割の人は
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6:29 - 6:33「5時か6時くらいの夕方ですか?」
というふうに言われるんですよ -
6:33 - 6:34そういうとき
私 聞くんですね -
6:34 - 6:36「あ!なるほど!夕方ですか?
-
6:36 - 6:37ほう!そしたらこれね
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6:38 - 6:40どこに夕方って書いてますか?」
って聞くんです -
6:40 - 6:42書いてないんですよ
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6:42 - 6:45書いてないにも関わらず
今 みなさんの頭の中には -
6:45 - 6:49こうね 夕日が落ちていって
法隆寺がシルエットで映ってて -
6:49 - 6:51そこにカラスが飛んでって
ゴーンと鳴ってるような -
6:51 - 6:53なんかそういう
ノスタルジックなイメージを -
6:53 - 6:55頭の中に描いたんじゃないですか?
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6:56 - 6:58100% 全然伝えていないのに
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6:58 - 7:01なぜ そんな豊饒なイメージが
湧いて来るのか -
7:01 - 7:04そう 私が考えた結論は
こちらなんですね -
7:04 - 7:09実は 100%伝えるんじゃなくて
この20%の余白を残してあげること -
7:09 - 7:13これが実は豊かさを生み出す
源泉やないかなと -
7:13 - 7:15そんなふうに思い出したんですね
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7:15 - 7:18じゃあ 具体的にこれ
どういうふうなことになってるか -
7:18 - 7:19ちょっとお話をしたいと思いますが
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7:19 - 7:23今からお見せするのは『崇徳院』という
落語のネタの一節なんです -
7:24 - 7:28主人公の若旦那さんが
町の中で偶然出会った女性 -
7:28 - 7:29それに一目惚れしたんですね
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7:30 - 7:34そのときにこの女性を形容するのが
こんなふうな言い方なんです -
7:34 - 7:36「お年の頃なら 十七 八
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7:36 - 7:39お供を四 五人連れた それはそれは美しい
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7:39 - 7:41水も垂れるような綺麗なお方
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7:41 - 7:45世には うつやかな人も
あるもんやなぁと見とれてた」と -
7:45 - 7:47これが『崇徳院』の
一節なんですけども -
7:47 - 7:50あるいは男性を説明するときに
こんな感じですね -
7:50 - 7:53「旦さんは 背のスラっと高い
色の浅黒い 眼のパッチリとした -
7:53 - 7:56苦味の走ったいい男で」と
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7:56 - 7:58これは『悋気の独楽』という
ネタの一節です -
7:59 - 8:01今 男女の容姿の話をしました
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8:02 - 8:04たとえば 女性を形容するときに
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8:04 - 8:07「北川景子さんみたいな
シュッとして美人なんやで」 -
8:07 - 8:09あるいは「八千草薫さんみたいにな
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8:10 - 8:13ものごっつい上品でな
別嬪さんやったんやで」 -
8:13 - 8:15というふうに言われても
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8:15 - 8:18まあね 北川景子さんや八千草薫さんを
知っている人からすれば -
8:18 - 8:20「はあ!なるほど!
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8:20 - 8:23そんな美人で別嬪がおったんかいな!」
というふうになりますけども -
8:23 - 8:24これ知らない人からすると
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8:24 - 8:28「え?どんだけ美人で
別嬪なんかようわからん! -
8:28 - 8:31わからん!わからん!」と言って
-
8:31 - 8:33想像力は そこでストップ
してしまうわけですよね -
8:34 - 8:36あるいは 男性を
形容するときでもね -
8:36 - 8:39「○○さんに似て
ものごっついイケメンで -
8:39 - 8:42格好良くて ハンサムやねん!」
と言われても -
8:42 - 8:44それ聞いた本人が
○○さんのこと嫌いやったら -
8:44 - 8:47「えー?!あんなんに
似てんの?最悪!」 -
8:47 - 8:50みたいなことに
なってしまうわけです -
8:50 - 8:53だから 物事をぼかして
伝えるということが -
8:53 - 8:55実は 重要なスキルに
なってくるんですが -
8:55 - 8:57これは日常生活でも
使えるわけなんですね -
8:57 - 9:00たとえば 雨が降ってると
しましょうね -
9:00 - 9:01天気予報を見てた
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9:01 - 9:06「明日は1時間に100ミリの
雨が降るでしょう」と言われて -
9:06 - 9:07「ほお!なるほど!
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9:07 - 9:10そんなすごい雨が降るんか!」と
イメージできるのは -
9:10 - 9:12これは 気象予報士ぐらいしか
ないわけですよね -
9:12 - 9:15我々からすると 「うーん?
いまいちようわからんな!」 -
9:15 - 9:19まあ確かに この100ミリという
数字は事実を伝えている -
9:19 - 9:21正確無比なのかもしれませんけども
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9:21 - 9:25でもそこにね 雨のたたずまいとか
あるいは梅雨の匂いとか -
9:25 - 9:29そういうものは一切感じることが
できないわけなんですよね -
9:29 - 9:32だからこれをどういうふうに
言い換えるかというと たとえば -
9:32 - 9:34「滝のようにゴーゴーと
雨が降り出したで!」とか -
9:35 - 9:38あるいは「車軸を流すような雨が
ビャーッ!と降ってきた!」と -
9:38 - 9:40そんなふうに言われる方が
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9:40 - 9:43我々のイマジネーション
想像力を駆り立てるわけです -
9:44 - 9:46たとえば 心臓の音でもそうですよね
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9:46 - 9:49「心臓が今ドキドキしてんねん」
と言われるのと -
9:49 - 9:51「心臓がバクバクやねん!」
と言われるのと -
9:51 - 9:52どっちが緊張感ありますか?
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9:53 - 9:55そらバクバクの方じゃないですか
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9:55 - 9:58あるいは お歌の世界でも
同じことです -
9:58 - 10:01「兎追ひし 彼の山
小鮒釣りし 彼の川」 -
10:01 - 10:04有名な『ふるさと』の
一つの部分ですけども -
10:04 - 10:07これね 彼の山 彼の川ってね
ぼかしてくれてるから -
10:07 - 10:10我々は ノスタルジックな
イメージをすることができる -
10:10 - 10:11これ たとえばね
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10:11 - 10:13具体的な山 川
入れたらどうなるかって -
10:14 - 10:17たとえば「兎追ひし
甲山」 とかね -
10:17 - 10:20「小鮒釣りし 神崎川」
とか言われても -
10:20 - 10:23なんか 僕ら神戸とか
京阪神の人間やから -
10:23 - 10:25なんとなく「ああ なるほどなぁ」と
わかりますけども -
10:25 - 10:27これ 他所の人からすると
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10:27 - 10:30「どこの山 川やねん!」というふうに
なってしまうわけですよね -
10:31 - 10:34だから「彼の山 彼の川」で
ぼかすことによって -
10:34 - 10:37我々が幼いときに見た原風景
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10:37 - 10:39山 川がそこに
フラッシュバックして -
10:39 - 10:41イメージが豊饒になっていくと
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10:42 - 10:44でね 今から一つね
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10:44 - 10:47物事を100%伝えたとしても
伝わらない例というのを -
10:47 - 10:49今からお見せしますわ
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10:49 - 10:52どういったことかと言うと
こういう文章があるとしますね -
10:52 - 10:54「時は 2000年以上前
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10:55 - 10:57標高843メートルの山の麓
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10:58 - 11:0170歳の古希を超えたであろう
夫婦がいました -
11:01 - 11:04ある5月の13時頃
-
11:04 - 11:06のどかな田園風景の中
-
11:06 - 11:11川の幅300メートルの川岸で
おばあさんが一人 洗濯をしていると -
11:11 - 11:14はるか川上
580メートルほど前の所から -
11:15 - 11:18直径60センチの大きな桃が
-
11:18 - 11:23時速5キロメートル弱の
スピードで流れてきたー!」 -
11:23 - 11:26というのをたった一言で表すと
-
11:27 - 11:28「どんぶらこ」になる
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11:28 - 11:31(笑)
-
11:31 - 11:35すごいですよね 今 私あれね
読み上げたら250文字あるんですよ -
11:36 - 11:38その250文字がたったの
5文字で表現できるんです -
11:39 - 11:40みなさんよく考えてみてください
-
11:40 - 11:42今までの人生の中でね
-
11:42 - 11:45川で洗濯をしてて ひゅっと見たら
向こうから桃が流れてきて -
11:45 - 11:47それをキャッチして
家に持って帰った経験ある人? -
11:48 - 11:51いないんです!世界中
どこ探してもいないんですよ! -
11:51 - 11:55でも 我々はね 経験したことがないのに
このどんぶらこを聞いただけで -
11:55 - 11:58あれだけのことを
無意識的 意識的に関わらず -
11:58 - 12:00バーっと思い描くんですよ
-
12:00 - 12:03だからね 桃太郎は
世界的な名作って言われてるけども -
12:03 - 12:05海外からも評価が高い
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12:05 - 12:08そしてね このどんぶらこ
擬音語 擬態語なんですけども -
12:08 - 12:09海外の人からするとね
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12:09 - 12:12「日本語すごいよ!半端ねえよ!」
ってなるんですよ -
12:13 - 12:14それだけ評価が高いんです
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12:14 - 12:18じゃあ そんだけ評価が高いんやったら
私 ちょっとね 調べてみました -
12:18 - 12:19この「どんぶらこ」ね
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12:20 - 12:21Google先生に聞いてみたんですよ
-
12:22 - 12:25一体 英語でどんなふうに
訳されるんやと -
12:26 - 12:29そうするとみなさん
驚きの結果になりましたよ -
12:30 - 12:33刮目してください!
こうなりました! -
12:34 - 12:36(音声)(英語)ドンブラコ
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12:36 - 12:38[どんぶらこ Don Braco]
ドンブラコ -
12:38 - 12:40そのまんまやないかと
思うんですけどもね -
12:41 - 12:44ですからね オノマトペ
まあ 擬音語 擬態語 -
12:44 - 12:46これね 実は5,500種類あると
言われています -
12:46 - 12:49すごい数ですよね 日本語の中で
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12:49 - 12:53だからね 私はこのね 日本語って
ほんと素晴らしいなあと思うんです -
12:53 - 12:56でもね 時々こういうこと
言われたことないですか? -
12:56 - 12:58「日本人ってね
自己主張 下手くそやな」とか -
12:58 - 13:01「日本人ってなかなか
自己主張せえへんなあ」って -
13:01 - 13:04そんなふうに聞いたこと
一度や二度はあると思います -
13:04 - 13:06でもね 私から言わしたらね
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13:07 - 13:08これ自己主張せえへんのやない
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13:08 - 13:10もっと言うと自己主張
できへんのやないんですよ -
13:11 - 13:14相手の想像力を慮るがゆえにね
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13:15 - 13:18相手の中にあるものを
大切にしようとそういった姿勢が -
13:19 - 13:20そういうふうな空白を生み
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13:20 - 13:23そして世界にも類を見ないほどの
-
13:23 - 13:26膨大な擬音語 擬態語
オノマトペを作り出して -
13:26 - 13:29それらを利用して
我々の先祖というのは -
13:29 - 13:33いつの時代でも豊かな人間関係
豊かな地域社会 -
13:33 - 13:37あるいは国や 豊かな世界を
作り上げてきたんやないかなって -
13:37 - 13:39そんなふうに思い始めたんです
-
13:39 - 13:42だからね 相手の心を
つかむためには -
13:42 - 13:44あるいは聞き手のハートを
射止めるためには -
13:44 - 13:48相手の中に豊かなものを
植え付けてあげる -
13:48 - 13:50その植え付ける土壌が
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13:50 - 13:53実は 20%の空白
なんやないかなって -
13:53 - 13:54そんなふうに思います
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13:55 - 13:58「でもなぁ 俺 喋り下手やしなぁ」
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13:58 - 14:01そんなふうに思われた方も
中にはいるかもしれません -
14:01 - 14:05あるいはね 今まで何かを伝えようとして
上手くいかなかった -
14:05 - 14:08それがトラウマになって
尻込みしてしまう人とか -
14:08 - 14:10後ずさりしてしまう人とか
諦めてきた人とか -
14:10 - 14:12中にはいらっしゃるかも
しれないんですよ -
14:13 - 14:16でも 大丈夫です
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14:16 - 14:17どういったことか
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14:17 - 14:19今から二つ俳句を
見ていただきます -
14:19 - 14:21こんな俳句ですね
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14:21 - 14:24「初雪や かくれおおせぬ 馬の糞」
あるいは -
14:24 - 14:27「つくつくぼうし つくつくぼうし
ばかりなり」と -
14:27 - 14:30どちらかというと これ
もっちゃりした句なんですけども -
14:30 - 14:31一体 これ誰が詠んだんでしょう
-
14:32 - 14:35そう 正岡子規が詠んだんですよ
-
14:35 - 14:39正岡子規ね 18歳から34歳のね
17年間の間に -
14:39 - 14:42なんと短歌と俳句合わせて4万句
-
14:42 - 14:434万句詠んでるんですね
-
14:44 - 14:46残してるだけで4万ですから
ということは -
14:46 - 14:49書いて「こらあかん!」言うて
ポーイと捨ててしもたやつとか -
14:49 - 14:51頭に浮かんだけど
「こんなんあかんわ!」言うて -
14:51 - 14:52シュッと捨ててしまったやつとか
-
14:52 - 14:54そんなん合わしたら
4万句どころか -
14:54 - 14:57何十万句 たぶん
考えたんやないかなって -
14:57 - 15:00そんな失敗いっぱいしてきた中で
-
15:00 - 15:02あの「柿食えば」という
超人的な俳句が -
15:02 - 15:04生まれてきたんやないかなって
-
15:04 - 15:06失敗したからそんなんが
出てきたんやないかなって -
15:06 - 15:08思うようになったんですね
-
15:08 - 15:09なんでそんなことを言えるか
-
15:09 - 15:12そうなんです 私も実は
いっぱい失敗してるんですよ -
15:12 - 15:13恥をさらすようですけどね
-
15:13 - 15:15あっちこっちで失敗してます
-
15:15 - 15:17失敗の山ですわ
-
15:17 - 15:20でも その失敗することで
-
15:20 - 15:23実は 挑む価値っていうのが
存在するんですね -
15:23 - 15:24どういったことか
-
15:25 - 15:28一番最初に見ていただいた
みよちゃんの例 -
15:28 - 15:31みなさん これ一体「みよちゃん
どんな人なんかな?」って -
15:31 - 15:33たぶん 頭の中で
描いたと思うんです -
15:34 - 15:36さあ これ みよちゃんに
会いに行きました -
15:36 - 15:37すし八に会いに行きました
-
15:37 - 15:39「今日 みよちゃんいるの?」
-
15:39 - 15:40「ああ ごめんなさい
今日 お休みなんです」 -
15:40 - 15:44「今日はみよちゃんいるの?」
「ああ 今日もお休みなんです」 -
15:44 - 15:47そう みよちゃん
いつ行ってもこれね お休み -
15:48 - 15:49なんで?
-
15:49 - 15:50そう そのとおり!
-
15:50 - 15:53実在しない人物
架空の人物なんですよ -
15:53 - 15:55「えー なんやこれ 架空の人物
-
15:55 - 15:59実在せえへんのか 残念やなあ!」
と思ったかもしれませんが -
15:59 - 16:01でも 私がこの話を
一番最初にしたときに -
16:01 - 16:03みなさんの頭の中には
-
16:03 - 16:06一人ひとりのみよちゃん像が
浮かび上がって -
16:06 - 16:08そのみよちゃんがいたからこそ
-
16:08 - 16:12このポテトサラダが より魅力的な
より豊かな より豊饒な -
16:12 - 16:14品物に変わったんじゃないですか?
-
16:15 - 16:19だからね 空白から豊かさってのは
生まれるんです -
16:19 - 16:21ね その余白が
豊饒さを生み出すんです -
16:21 - 16:25ですから これから先の人生
少し 少しだけでいいんで -
16:25 - 16:28相手にとっての20%
聞き手にとっての20% -
16:29 - 16:32これを意識して伝えてみませんか?
-
16:32 - 16:37間違いなく挑む価値は
十分にあります -
16:38 - 16:39ありがとうございました
-
16:39 - 16:42(拍手)
- Title:
- 言葉の豊かさを生み出す20%の空白 | 松本賢一 | TEDxKobe
- Description:
-
話し方・伝え方コンサルタントとして活躍する松本賢一。
講師として、スキルアップのために始めた落語講座の奥深さにのめり込み、社会人落語家としての顔も持っている。落語を通じて日本語の持つリズムやテンポを体得する間に、「日本人は元来、プレゼンテーションや自己表現が得意である」ことを確信。
現在では、日本語特有の性質を生かした日本人のためのコミュニケーションについて研究し、そのアイデアを広めている。
このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。
- Video Language:
- Japanese
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDxTalks
- Duration:
- 16:50
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