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僕にはふたつ
固く信じていることがある。
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1. デザイナーは、プレイヤーに
自分の望むプレイスタイルを強要できる。
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ダークソウルの難易度は
ひとつでいいし
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デッドライジングのタイムリミットは
解除できなくていい。
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銃が確率でジャムるのも……
このゲームのことはもういいか。
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こういったことは批判を受けがちだけど
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それがゲーム体験の一部だと
デザイナーが考えるならば
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プレイヤーに「設定変更できて当然だろ」と
主張する権利はない。
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変更は、デザイナーの意図をねじ曲げ
ひいてはゲームを台無しにしてしまうからだ。
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そうなっているのには
理由がある、ということだね。
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そしてふたつ目。
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2. プレイヤーは、自分の好きなように
プレイしていい。
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障害がある、ゲームが上手くない
ストーリーだけ楽しみたい
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アクション要素やタイムリミットのせいで
それ以外の部分も楽しめない。
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そういう場合のために、ボス戦のスキップや
難易度調整ができていいはずだ。
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誰かの楽しみを奪うわけじゃないんだから
好きにすればいい。
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うん、分かってる。
このふたつは矛盾してるって。
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だから「ダークソウルとイージーモード」
みたいな話になると
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「プレイヤーが必要とするなら
選択肢をあげればいい」という考えと
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「でも、そうすると
何が『正しい』遊び方なのか、分からなくなり
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「いちばん楽しい部分を、見逃すことにならないか」
という心配とで、板挟みになるんだ。
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でも、僕は気がついた。
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ダークソウルの動画でも
軽く触れたけど
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最近リリースされたゲームたちが
さらに理解を深めてくれた。
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要は「コミュニケーションの問題」なんだ。
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人がどんな風に遊ぼうが
彼らが自覚的なら、僕は気にしない。
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デザイナーが苦労して作り上げた
「意図された遊び方」とは別の
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「変則モード」で遊んでるんだと
分かっていてさえくれれば。
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かつて、変則モードは
「チートコード」と同義だった。
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Duke Nukem 3Dを
敵に怯えることなく楽しみたいなら
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「DNCORNHOLIO」と入力するだけで
無敵の体と、無限のジェットパックが手に入った。
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「チートコードの使用」が
意味するところは明らか。
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「これはチートであり
正しい遊び方ではない」
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でも、このチートコードのおかげで
8歳の僕にも、いろんなFPSを体験することができた。
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XCOM2の、タイマーを無効化するMODや
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敵から見えなくなる
SOMAの「弱虫MOD」にも、同じことが言える。
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「非公式のMOD」を
「自分でインストールした」のだから
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開発者の意図じゃないってことは
嫌でも自覚できる。
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とはいえ、チートコードはもう過去の物だし
当時だって、簡単に手に入る情報じゃなかった。
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MODにしても、PC版でしか使えないし
ゲーム内からアクセスできるわけじゃない。
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ところがここ数年、こういった要素を
ゲーム本体に実装する作品が増えてきた。
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ゲーム体験を根底から
変えてしまうような設定を提供しつつも
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「どんな人が、どんな理由で使うべきか」を
巧妙に伝えている作品が。
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最初に気づいたのは、とびきり難しくてアンフェアな
Darkest Dungeonだった。
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このゲームは
アーリーアクセスでリリースされた。
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未完成の状態で購入し、調整や、新要素の追加を
見ることができたってことだ。
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新要素には、反発の声もあった。
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たとえば、敵が死体を残して
破壊するまで消えないシステム。
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死体は攻撃の邪魔になるから
これはストレス要素だった。
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開発は、これがこのゲームにとって
最善だと考えたけど、ファンの一部は納得せず
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結果、死体の無効化が可能になる。
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これについて、開発は
ブログでこう述べた。
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「いままで、私たちは
難易度オプションの追加には消極的でした。
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「それは『私たちが目指しているゲーム』の製作に
集中したかったからで
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「アーリーアクセス中の実験・変更はすべて
そこへ注力したものでした。
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「しかし、このコミュニティは成長し
様々なプレイヤーを含むようになりました。
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「中には、別の遊び方を
求める方もいらっしゃるでしょう」
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僕がいいと思ったのは
これの実装方法だ。
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死体を無効にしたり
逃走の成功率を100%に変えるには
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オプションにある設定項目に
アクセスする必要があり
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その際、ツールチップには
このように表示される。
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「現在の設定: 意図された難易度。
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「無効にすることにより
以下の設定が可能になります」
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設定をメニューの深い場所に置き
「意図しない難易度」だと知らせることで
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プレイヤーに伝えているんだ。
「これはこのゲームの本来の遊び方じゃない。
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「でも、望むならどうぞ」と。
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ニューゲームと同時に難易度の選択肢が出る
よくある形式とは、これは対照的だ。
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それ自体が悪いわけじゃないけど
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FE覚醒で、ゲームの肝であるパーマデスを
いきなりオフにできたのは、さすがに変だと思った。
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パーマデスといえば
Heat Signatureが上手く扱っている。
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当初、開発者は消極的だった。
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「廃止するつもりはありません。
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「パーマデスがなければ、ゲームは別物になり
生まれる物語も、つまらなくなるからです」
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でも続けて「しかし、問題は
『パーマデス無しでゲームがよくなるか』ではなく
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「『それが嫌な人を楽しませるには?』
なのかもしれません」
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こうしてパーマデスは
オプションになったわけだけど
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設定をメニューの奥に置き
目的を明示したのは、先の例と同様だ。
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「パーマデスが、あなたのゲームプレイを大きく
損なっているのでない限り、おすすめしません。
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「これは物語をつまらなく
単調にするおそれがあります」
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彼はこう書き
これが他のオプションとは違うことを強調した。
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「ゲームのデザインを委託されたように
プレイヤーに感じさせたくはありません」
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うまい言い方だ。
あとでパクっちゃおう。
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ホラーゲーム、SOMAの例も興味深い。
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開発は、先述の「弱虫MOD」にインスパイアされ
同様の機能を公式化した。
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「見えなくなる」を
「気づかれても攻撃されない」に変え
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名前も「セーフモード」にしたけどね。
呼び方は重要だ。
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実はこれ、発売時の実装も考えられていたけど
中止になったそうだ。
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「特定の体験をお届けすることに
注力したかったからです。
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「意図されたものがなんであるかを
明確にする必要がありました」
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すなわち、海中施設の重苦しい恐怖
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君の顔面をおやつにせんとする
怪物の悪夢、だね。
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ところが、弱虫MODの人気が証明する。
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「ストーリーを楽しみたいけど
ゲームの難易度に耐えられない人もいる」と。
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これが公式実装への後押しとなった。
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ここで重要なのは
実装が発売の2年後になったことだ。
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「このタイミングでの実装は
気持ちが楽でした。
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「セーフモードがどんな体験をもたらすかについて
熟考する時間が持てたからです。
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「早すぎれば、それはあやふやなものに
なっていたでしょう」
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このように、発売後の「追加コンテンツ」
としての実装で、意図を伝えることもできる。
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発売と同時に出したいなら、BUTCHERのように
「フリーDLC」として提供してもいいだろう。
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ゲーム本体との分離が
本来のゲーム体験ではないと、語ってくれる。
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でも、僕に
この動画を作る決心をさせたのは
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Celesteの
よく考えられた「アシストモード」だった。
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このチャーミングなゲームの特徴は
卓越した操作感に、絶妙なレベルデザイン――
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そして非常に高い難易度だ。
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収集要素や、裏ステージを目指すなら
道はさらに過酷になる。
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「挑戦」が、ゲームとストーリー
両方のテーマになっているんだ。
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でも、難しすぎると感じたなら
アシストモードを使って
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ゲームの低速化、無限ダッシュ、無敵化といった
ゲームを大きく変える設定ができる。
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開発者のひとり、マット・ソーソンは
こう語っている。
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「デザイナーとして見るなら
アシストモードはゲームの破壊者です。
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「難易度の調整には
大変な時間をかけているので
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「本心から言えば
自分のデザインを大切にしたい。
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「しかし私たちの究極の目標は
すばらしい体験を与えることなので
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「ゴーサインを出しました」
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彼らに影響を与えたのは
Cupheadに関する “議論” だ。
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90年代メガドライブを思わせる
この高難度アクションゲームにも
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初心者のための「シンプルモード」はある。
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ただ、やり方がダメだった。
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まず、ステージ前にいちいち選ぶ必要があって
効果の説明もない。
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ボスのフェイズをまるまる飛ばすせいで
せっかくのアニメが楽しめないし
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おまけに、使うとクリア扱いにならず
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ラスボスと対峙するには、結局全ボスを
ノーマルモードで倒す必要がある。
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いっぽう、Celesteのアシストモードは
あらゆる面で、これと真逆だ。
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1. 使っても、ゲームの全てを体験できる。
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デメリットはなく
実績解除だってできる。
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やりすぎ?
でも実績を気にする人っているの?
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2. プレイヤーの思うがままに設定できる。
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設定項目は多岐にわたり
ゲームの速度を、ほんの10%だけ遅くしてもいいし
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苦手なチャプターを
飛ばしたっていい。
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3. 呼び方。
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当初の名前「チートモード」は
決めつけが過ぎると廃止になった。
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さすがカナダ人だ。
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どんな理由で
イージーモードが選ばれるのかも知らないで
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「赤ちゃんモード」なんて
呼んではいけないよね。
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名前が「アシストモード」に決まってすぐに
発売されたマリオオデッセイでも
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同じ呼び名が使われてるのを見て
開発は、選択が正しかったのを知った。
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話は逸れるけど
オデッセイのアシストモードも良かった。
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4歳の甥が
自力でクリアできたくらいだからね。
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Celesteに話を戻そう。
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4. 注意深く書かれた
アシストモードの説明文。
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アシストを有効にしようとすると
次の注意書きが出る。
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「アシストモードにより、ルールの変更と
難易度の軽減ができますが
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「高難度は、『難しくも、誰でも楽しめるゲーム』
としてデザインされたCelesteの
ゲーム体験の一部であり
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「初めて遊ぶときには
使わないことを推奨します。
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「しかしながら、プレイヤーは千差万別です。
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「もし難易度のせいで、Celesteが楽しめないのなら
このモードが助けになればと思います」
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これを読めば
意図を誤解する余地は全く無い。
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これは僕にとっては
必要のないものだと、すぐ分かったし
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じっさい、クリアするまで使わなかった。
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これは、僕も使ったかもしれない
「イージーモード」じゃなく
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本当に必要な人のためにある
「アシストモード」なんだ。
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プレイヤーの意のままに
なんでも設定できるゲームがある。
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でも、そう願うデザイナーがいる一方で
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ゲームによっては
単一のプレイスタイルが、最善ということもある。
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けれどそれは
一部の人にプレイ不可能になってもよく
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プレイヤーに、カスタマイズの余地を
与えるべきでない、という意味じゃない。
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全ては「コミュニケーションの問題」
だと、僕は思う。
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デザイナーの望む遊び方を
そうでない遊び方と同等に扱うのではなく
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言葉や配置、タイミングを駆使して
選択肢の意味を伝えるのが大事なんだ。
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選択の機会を与えているだけ。
デザインの委託をしているわけじゃない、と。
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今のは、僕が考えました。
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デザイナーは、好き勝手な設定を許さないことで
プレイヤーを守る義務がある。
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でもこうも思う。CelesteやHeat Signatureのように
うまく真意を伝えることは
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プレイヤーの選択を信頼する
ということでもあるんじゃないか、と。
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これが僕の意見だ。
君の意見も、コメントで聞かせてほしい。
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見てくれてありがとう。
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ちょっと
よくある質問への返事をするよ。
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Q: ゲームジャムは今年もやるの?
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A: やるよ!
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去年のは、2017年最大のitch.ioジャムになった。
次が待ちきれない。
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次は夏の終わりか
秋のはじめになるだろう。
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Q: Boss Keysの第2シーズンはいつ?
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A: 5月には続報をお伝えできる予定だ。
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Q: 生放送はいつやってるの?
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A: 水曜日、GMTで20時から
このチャンネルでだ。
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Q: Discordはある?
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A: あるよ。Patreon限定だけど。
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Q: ゲーム作ってるの?
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A: いや、ゲームジャーナリズムが専門だ。
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いつか作るかもだけど
今はこのチャンネルに集中したい。
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以上。じゃあね!