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命を懸ける勇気の源 | 佐藤康雄 | TEDxSeeds

  • 0:19 - 0:22
    こんにちは
    このような 素晴らしい場所で
  • 0:22 - 0:26
    またこのようにたくさんの
    素敵な皆さんの前で話せることを
  • 0:26 - 0:28
    楽しみにしてきました
  • 0:29 - 0:37
    この写真 3月19日 福島第一原発
    3号機 燃料棒貯蔵プール
  • 0:37 - 0:40
    これがカラカラになってしまったところへ
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    大量かつ継続的に充水するというミッションを
  • 0:44 - 0:48
    成し遂げた後の記者会見の写真であります
  • 0:48 - 0:51
    この写真ご覧になったことある方
    ちょっと手を挙げて頂けますか
  • 0:51 - 0:53
    ああ 嬉しいですね
  • 0:53 - 0:58
    見ていない方もいらっしゃるようですけど
    その方は後で YouTube ででもご覧ください
  • 0:58 - 1:01
    このミッション
    福島から帰りまして
  • 1:01 - 1:06
    すぐに この記者会見ということですので
    髭を剃る間もありませんでした
  • 1:06 - 1:10
    今日はしっかりと髭を剃って参りました
    (笑)
  • 1:10 - 1:17
    実は 今日はこの体験談を皆さんに
    お話ししながら
  • 1:17 - 1:24
    消防の世界に ほんの少しですけれども
    お招きできればな と考えています
  • 1:24 - 1:29
    と言いましても 時間があまりありませんので
    この舞台の上にいらっしゃる方には
  • 1:29 - 1:34
    東京消防庁のヘルメットを被っていただいて
    ご参加いただこうと思っていますので
  • 1:34 - 1:37
    ぜひお被りください
  • 1:37 - 1:40
    (拍手)
  • 1:41 - 1:44
    ご協力ありがとうございます
  • 1:44 - 1:51
    3月11日 14時46分
    東日本大震災が発生しました
  • 1:51 - 1:57
    マグニチュード9を超える
    史上4番目という超巨大地震
  • 1:57 - 2:03
    10メートルを越える
    千年に一度という 巨大津波
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    1万人の方がお亡くなりになり
    5000人を超える方が 今だ行方不明であります
  • 2:10 - 2:13
    お亡くなりになった方には
    ご冥福をお祈りいたします
  • 2:13 - 2:20
    また被災された皆さまには
    心からお悔やみを申し上げます
  • 2:21 - 2:25
    実はこの超巨大地震
  • 2:25 - 2:32
    東京にも被害を及ぼしたということは
    あまり認識されておりません
  • 2:32 - 2:34
    震度5強の地震があり
  • 2:34 - 2:39
    そして34件を超える同時延焼火災がありました
  • 2:39 - 2:48
    東京の防災を担う私としましては
    一刻も早くこの災害を終息させ
  • 2:48 - 2:52
    そして東北地方
    非常に被害があるということですので
  • 2:52 - 3:00
    少しでも早く緊急消防援助隊を東北に送りたい
    という気持ちで もう精一杯でした
  • 3:01 - 3:10
    ところが 徹夜が明けた 翌12日 なんと
    福島第一原発 一号機 爆発したじゃありませんか
  • 3:10 - 3:15
    絶対 飛行機がぶつかっても
    爆発しないと言われていたのに なんで
  • 3:15 - 3:17
    信じられませんでした
  • 3:18 - 3:23
    また14日になりますと三号機も爆発しました
  • 3:23 - 3:28
    福島第一原発 皆さんご存知のとおり
    6基の原子炉がありますが
  • 3:28 - 3:35
    そのうちの一号機から四号機までが
    連続的に爆発したんです
  • 3:35 - 3:40
    これは電源喪失による
    冷却装置が働かないことによって
  • 3:40 - 3:45
    水が充足されていないことに
    原因があるということでした
  • 3:45 - 3:51
    元々 原子力災害につきましては国家機密
    ということもありますので
  • 3:51 - 3:54
    国が対応することになっています
  • 3:54 - 3:57
    ということで自衛隊のヘリが2機
  • 3:57 - 4:02
    空中から充水しようということで
    果敢に向かってくれましたけれども
  • 4:02 - 4:08
    非常に高い放射のエネルギーで
    なかなか目的を達せられなかった
  • 4:08 - 4:11
    そして また警察も国家の範疇ですので
  • 4:11 - 4:15
    放水車を出してくれて
    そして放水しようとしましたけれども
  • 4:15 - 4:19
    これもなかなか 難しい
    こういう状況でした
  • 4:19 - 4:22
    このとき 我々 東京の消防は
  • 4:22 - 4:25
    本来東京の消防庁ですから
    東京をやるんですけども
  • 4:25 - 4:29
    原発というのは任務にありませんが
  • 4:29 - 4:34
    これは消防 放水の専門家
    われわれに依頼が来る可能性がある
  • 4:34 - 4:39
    じゃあ その研究を始めようということで
  • 4:39 - 4:44
    部下たちと同時に始めたのがこのときであります
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    東京消防庁には81の消防署があります
  • 4:48 - 4:52
    そしてそこには 全部レスキュー隊がいます
  • 4:52 - 4:58
    その中から精鋭を募りまして
    4つのハイパーレスキュー隊を作って
  • 4:58 - 5:03
    東京消防庁に10ある消防方面本部のうち
    4つの方面本部に配置しております
  • 5:03 - 5:05
    これは阪神大震災の経験から
  • 5:05 - 5:08
    大きな災害があったときに
    派遣するためであります
  • 5:08 - 5:14
    で このうちの一番下 右下にあります
    この第二消防方面本部 これにつきましては
  • 5:14 - 5:20
    もうあの 東北の方に
    気仙沼の方にすぐに行っております
  • 5:20 - 5:24
    残りは3部隊があります
  • 5:26 - 5:31
    実は消防は原発こそ
    任務に入っていませんけれども
  • 5:31 - 5:36
    東京で放射能を使ったテロ
    あるいは研究所で放射能が漏れた
  • 5:36 - 5:43
    こういったことを想定して 基準を作り
    装備を作り 日々訓練して参りました
  • 5:43 - 5:48
    どんな基準かと申しますと
    この三角の右側に書いてありますけれども
  • 5:48 - 5:57
    普通のときは1回で浴びる放射能 放射線の限度
    被ばく限度は 30 ミリシーベルトと決めております
  • 5:57 - 6:03
    ただし 人を助けるというようなときについては
    100 ミリシーベルトまで認めようと
  • 6:03 - 6:07
    ただし100 ミリシーベルトまで認めた場合には
    その職員は
  • 6:07 - 6:13
    もう決して一生涯 放射線災害には出さない
    という基準であります
  • 6:13 - 6:18
    じゃあ こんど 原発に行くときに
    どこまでを限界にしようかということを
  • 6:18 - 6:24
    これは先生にも入って頂いて検討しましたが
    半径2キロぐらいの構内です
  • 6:24 - 6:27
    危ないとなって100ミリで逃げたら
    100ミリ超えてしまいます
  • 6:27 - 6:30
    ということでそのときの限界は
  • 6:30 - 6:34
    80ミリシーベルトにしようということを
    まず決めました
  • 6:34 - 6:40
    それから 先ほど 装備がある
    この右上の方にあるのが放射線防護衣ですが
  • 6:40 - 6:43
    私から言わせればこれは防護衣ではありません
  • 6:43 - 6:45
    防塵服であります
  • 6:45 - 6:51
    なぜかというと 放射線の付いた
    そういう塵は防げるんです 体内に入れないために
  • 6:51 - 6:55
    でも放射能そのものは
    電子レンジに人を入れたようなものですから
  • 6:55 - 6:58
    どんどんそんなもの突き抜けてしまうんです
  • 6:58 - 7:03
    じゃあ何が大事か
    時間で管理するしかないんであります
  • 7:04 - 7:08
    3月17日
    もう 15日 16日になりますと
  • 7:08 - 7:12
    まず 燃料棒 冷やすことが喫緊の課題
  • 7:12 - 7:15
    国民の皆さんも
    どうやって冷やしてくれるんだろう
  • 7:15 - 7:17
    たぶん ご心配だったと思います
  • 7:17 - 7:24
    3月17日 今言いました 東京にいる
    全てのハイパーレスキュー隊を集めました
  • 7:24 - 7:27
    そして練っていた作戦
    ほんとうは3つあるんですけれども
  • 7:27 - 7:31
    それがいかに短時間で 人が少なく
  • 7:31 - 7:34
    被ばくを少なくできるか ということを
  • 7:34 - 7:37
    実際にやってみました
  • 7:37 - 7:42
    当日 まだ現地では小雪が降るような
    木枯らしの吹く寒いところです
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    原発も海沿いにあります
    風が強いんです
  • 7:45 - 7:48
    たまたま運よく木枯らしが吹くときですので
  • 7:48 - 7:52
    風向きに対する影響も調べてみました
  • 7:52 - 7:58
    実はこのとき 一番指揮官として
    悩みました
  • 7:58 - 8:02
    東京 3隊全部連れて行って留守にする
  • 8:02 - 8:04
    それは国難だからしょうがない
  • 8:04 - 8:10
    でもこのとき現地では
    400ミリシーベルトもの放射線濃度だったんです
  • 8:10 - 8:13
    毎日100ミリシーベルトぐらいずつ上がっていく
  • 8:13 - 8:15
    我々が行ったときには
  • 8:15 - 8:18
    600ミリシーベルトぐらいに
    なるんじゃないか 1時間でですね
  • 8:18 - 8:23
    そうすると80ミリシーベルトだと
    10分も活動できないかもしれません
  • 8:23 - 8:29
    ですから 先ほど言った81ある消防署から
    レスキュー隊をたくさん集めて
  • 8:29 - 8:32
    その人たちにこの操作を教えて
  • 8:32 - 8:37
    それでお前たちハイパーレスキュー隊は
    その先生になってくれ と
  • 8:37 - 8:40
    この場でお願いしました
  • 8:40 - 8:44
    どの隊長も 「いや俺たちにやらせてくれ」
    「俺たちが行く」
  • 8:44 - 8:48
    「いや だってお前たちには若い隊員もいるだろう」
    って言ったんですが
  • 8:48 - 8:50
    「俺たちが行く」
  • 8:50 - 8:53
    この日のために訓練して
    チームワークができているんだ
  • 8:53 - 8:56
    悩みましたね
  • 8:56 - 9:00
    でも悩んだ末
    ハイパーレスキューで行くことに決めました
  • 9:00 - 9:07
    それでその日は
    各部隊にそれぞれ 戻しました
  • 9:08 - 9:13
    ところが 戻ったその日の夜中
    深夜 0時50分
  • 9:13 - 9:16
    なんと内閣総理大臣から出場要請が来たんです
  • 9:16 - 9:19
    もっと本当は被害を少なくするために
  • 9:19 - 9:22
    縮小しよう 色々検討しようと思ってたんですが
  • 9:22 - 9:25
    その余裕はありません
  • 9:25 - 9:29
    2時に正式に出場命令をかけて
    またもとの位置に集まれ
  • 9:29 - 9:32
    そしてこのように発隊式をやりまして
  • 9:32 - 9:38
    8時には福島に着きました
  • 9:43 - 9:49
    これが三号機が爆発した直後の
    航空写真であります
  • 9:50 - 9:52
    どういう作戦を採ったかと言いますと
  • 9:52 - 9:56
    上の方にあります矢印
    あれ海側にありますけれども
  • 9:56 - 10:01
    あそこに巨大なスーパーポンパー
    というポンプを据えつけて
  • 10:01 - 10:07
    そして あの煙の出ている所
    ここが三号機でありますけれども
  • 10:07 - 10:12
    三号機の脇に屈折式放水塔車というものを設けて
  • 10:12 - 10:18
    そのノズルの角度 それから繋げるホースは事前に
    もう繋げるだけ繋いでおく
  • 10:18 - 10:23
    そしてあの青の線 まっすぐ
    これが一番最短ですから
  • 10:23 - 10:28
    車で ―150ミリというこんな太いホースは
    パタパタパタと延ばす
  • 10:28 - 10:33
    そして繋げば
    あっという間に設定が完了する
  • 10:33 - 10:37
    私の考えでは概ね7分ぐらいで
    できるんじゃないかなと
  • 10:37 - 10:42
    読んでいました
    この作業だけは
  • 10:42 - 10:46
    東京電力と政府等と打ち合わせをしまして
  • 10:46 - 10:50
    東京消防庁は 17時 夕方の5時から作業してくれ
  • 10:50 - 10:54
    ということになりましたので
    これはJビレッジ
  • 10:54 - 10:57
    原発から20キロ離れたところを
    前進指揮所にしたんですが
  • 10:57 - 11:02
    そこで準備をして
    みんな出場しました
  • 11:02 - 11:06
    ところが 私はそのJビレッジで待っていましたけれども
  • 11:06 - 11:12
    あそこは 人里離れたところに原発作りますので
    携帯無線も通じない 消防無線も通じない
  • 11:12 - 11:14
    衛星無線も通じないんです
  • 11:14 - 11:16
    じっと待ちました
    送り出して
  • 11:16 - 11:19
    その間政府から 5時過ぎると
    どうなっている まだか
  • 11:19 - 11:23
    そんなものは判らない ―蹴っ飛ばしたんですけど
    ガンガン来る
  • 11:23 - 11:28
    で 戻って来たの聞きますと
    想定以上に荒れてたんです
  • 11:28 - 11:30
    隊長 7時過ぎに戻ってきました
  • 11:30 - 11:33
    「どうした できたか」
    「放水できなかった」
  • 11:33 - 11:36
    何こんな時間までいて
    放水できなかったということは
  • 11:36 - 11:38
    全員被ばくして もう失敗か
  • 11:38 - 11:40
    絶望的になりました
  • 11:40 - 11:44
    「いや違う」
    入ったのは偵察隊だけだと
  • 11:44 - 11:48
    偵察隊が時間かかったのは
    できないと言うだけでなくて
  • 11:48 - 11:51
    どこなら放水するためにポンプを落とせるか
  • 11:51 - 11:54
    ホースを延ばせるか調べて
    こんなにかかったと
  • 11:54 - 11:55
    本隊は門の外にいる
  • 11:55 - 12:00
    そうか じゃあもう一回再チャレンジできるな
  • 12:01 - 12:04
    だけど800メートル延ばすんです
  • 12:04 - 12:09
    そのうちのあそこの赤で描いている部分
    ここは瓦礫や屋外タンクが多くて
  • 12:09 - 12:12
    とても車は入れません
  • 12:12 - 12:15
    手で延ばすしかありません
    ということです
  • 12:15 - 12:20
    何だよ こんなに放射能が濃くて
    真っ暗な中 しかも瓦礫のある中
  • 12:20 - 12:23
    あんな大きくて 普通
    人が延ばしたことがない物を
  • 12:23 - 12:28
    たくさんの人を晒して
    職員を晒して延ばすのかと
  • 12:28 - 12:32
    隊員にものすごく危険がかかるじゃないか
  • 12:32 - 12:37
    でも私には 一つは全く迷いはありませんでした
  • 12:37 - 12:40
    やらないという選択肢はないんです
  • 12:40 - 12:43
    先ほど言いましたように
    どんどん放射能上がっていますから
  • 12:43 - 12:47
    もしここで撤退して
    体制を立て直してやる暇はありません
  • 12:47 - 12:54
    じゃあ もう一つの選択肢は何かというと
    隊員の安全をいかに確保するか しかないんです
  • 12:54 - 12:58
    作戦をうんと 皆で練りました
  • 12:58 - 13:06
    2つの部隊をそれぞれ給水側
    それから放水する屈折式放水塔車側
  • 13:06 - 13:10
    両方から部隊を
    両方からホースを延ばそう
  • 13:10 - 13:13
    そしてなおかつ人手が沢山要りますから
  • 13:13 - 13:17
    両方の部隊にマイクロバスを
    一台ずつ増強しました
  • 13:17 - 13:22
    そこにはたくさん職員を乗せて
    いざというときには 80ミリシーベルトになったら
  • 13:22 - 13:25
    もう機材は全部置いて
    車に乗って戻ってこい
  • 13:25 - 13:28
    次に控えている部隊が行くから
  • 13:28 - 13:34
    こういう戦術を言い渡して
    第2回目の作戦に突入させました
  • 13:34 - 13:38
    先ほど 150ミリのホース
    車で延ばすと
  • 13:38 - 13:40
    本当は今日ここでお見せしたかったんですが
  • 13:40 - 13:43
    東京消防庁でも
    そんなものは手で延ばすもんではないし
  • 13:43 - 13:45
    手で三階まで上げられないから
  • 13:45 - 13:46
    写真で勘弁してくれと
  • 13:46 - 13:52
    今日皆さん あそこ 都知事に説明している
    実はこれ10分の1の長さですから
  • 13:52 - 13:56
    1本50メートルで 1つの重さが100キロあります
  • 13:56 - 14:00
    それを7本以上暗闇の中で延ばすわけです
  • 14:02 - 14:05
    これが第二回作戦の決行です
  • 14:05 - 14:10
    3時間半ぐらい検討しましたので
    夜中23時になりました
  • 14:10 - 14:16
    これは その門のところで
    打ち合わせをしているところです
  • 14:16 - 14:24
    そしてこれが 先ほど言いました屈折式放水塔車
    3万8000リットルも一分間で放水できます
  • 14:24 - 14:27
    それに対して延ばしているところです
  • 14:27 - 14:32
    実はここで皆さんに
    スペシャル・サプライズを用意しています
  • 14:32 - 14:34
    高山隊長 来てください
  • 14:34 - 14:39
    私が説明するよりも
    これは実際にこの現場で指揮を執った
  • 14:39 - 14:44
    高山 幸夫 隊長であります
  • 14:44 - 14:48
    (拍手)
  • 14:49 - 14:54
    高山隊長 隊長としてこのとき
    一番苦労したのはどんなところですか
  • 14:54 - 14:58
    (高山) やっぱりですね 任務の遂行と
    さっき部長がおっしゃった 隊員の安全管理
  • 14:58 - 15:01
    この両立をどう保って行くか
  • 15:01 - 15:04
    やれば危険が伴う
    逃げるわけにいかない
  • 15:04 - 15:07
    この辺のバランスが
    非常に私としては大変でした
  • 15:07 - 15:12
    (佐藤) 最後に 夜中の12時半に
    放水が完了しましたが
  • 15:12 - 15:16
    放水したときに成功したかどうかってのは
    どういうふうに判断しましたか
  • 15:16 - 15:20
    (高山) 目の前で「放水始め」という指示を出して
  • 15:20 - 15:24
    この150ミリのホースから
    水がぶわっと乗ってきまして
  • 15:24 - 15:31
    でホースからばっと水が出た瞬間は
    ほんと 天からの水のような 神の水のように思えて
  • 15:31 - 15:35
    隊員全員ガッツポーズをしてやったという
    満足感でいっぱいでした
  • 15:36 - 15:42
    (佐藤) 実は今日はこのスペシャル・サプライズで
    この会見のときの3人揃い踏みで
  • 15:42 - 15:45
    皆さんにお会いしたかったんです
  • 15:45 - 15:47
    (拍手)
  • 15:49 - 15:53
    ところがこの左にいますのが
    富岡隊長というんですが
  • 15:53 - 15:56
    実は今スペインに行っています
  • 15:56 - 16:03
    我々のこの勇敢な消防活動に対して
    スペインのアストリアス皇太子から
  • 16:03 - 16:08
    こういう共存共栄賞をいただけるということで
    昨日授賞式でございまして
  • 16:08 - 16:10
    (拍手)
  • 16:18 - 16:23
    3人がいるのに2人では
    まだ皆さんに申し訳ないので
  • 16:23 - 16:26
    もう一つスペシャル・サプライズ用意しました
  • 16:26 - 16:28
    どうぞ
  • 16:29 - 16:31
    (拍手)
  • 16:36 - 16:41
    実は先ほど 100キロのホース
    暗闇で延長したって言いましたが
  • 16:41 - 16:44
    この装備 25キロあるんです
  • 16:44 - 16:50
    ですからこの25キロの装備を背負って
    なおかつ 100キロのホースを延ばしたわけです
  • 16:50 - 16:52
    はい ごくろうさま
    じゃあ外してください
  • 16:54 - 17:00
    ご紹介します
    彼は三島 ケイ隊員であります
  • 17:01 - 17:02
    なぜサプライズか
  • 17:02 - 17:05
    (拍手)
  • 17:05 - 17:08
    まだ本当は拍手早いんですけどね
  • 17:08 - 17:12
    彼は 彼こそが先ほど三号機にへばりついた
  • 17:12 - 17:16
    屈折式放水塔車を操作してくれた機関員なんです
  • 17:16 - 17:19
    あの暗闇の中で 適切に
  • 17:19 - 17:25
    50メートル離れた
    30メートル高いホースに水を注入してくれたんです
  • 17:25 - 17:27
    (拍手)
  • 17:27 - 17:32
    実は彼には1歳の娘さんが3月のとき いました
  • 17:32 - 17:37
    そしてこの9月の22日に
    もう一人女の子が生まれました
  • 17:37 - 17:40
    3月に行ったときは小さなお子さんがいて
  • 17:40 - 17:45
    奥さんのお腹にも新しい命が宿ってた
  • 17:45 - 17:49
    それがあっても行ってくれた
    嬉しかった
  • 17:49 - 17:51
    (拍手)
  • 18:11 - 18:18
    実は先ほど こういう装備があるから
    しっかりしてるから 訓練もしっかりやってる
  • 18:18 - 18:21
    情報もお互いにしっかり共有する
  • 18:21 - 18:27
    でも 我々消防官がこういう
    命を懸けたところに行ける勇気というのは
  • 18:27 - 18:30
    実はそれだけではないんです
  • 18:30 - 18:34
    今 三島隊員のお子さんの話 しましたが
  • 18:34 - 18:36
    家族の愛があってなんです
  • 18:36 - 18:39
    私も先ほどのプロジェクトができたときに
  • 18:39 - 18:43
    家内に 「プロジェクトの発足に成功したよ」
    その答え
  • 18:43 - 18:46
    ―これ記者会見で
    ご覧になったかもしれませんけれど
  • 18:46 - 18:49
    「日本の救世主になって」という言葉を
  • 18:49 - 18:51
    家内からメールでもらいました
  • 18:51 - 18:57
    これが私に力を与えてくれて
    背中を押してくれました
  • 18:59 - 19:05
    東京消防庁には
    今 ちょうど今年で60年ですけれども
  • 19:05 - 19:10
    総隊長として警護部長がまず真っ先に
  • 19:10 - 19:15
    現場に行ったというのは
    今回が初めてだそうであります
  • 19:15 - 19:20
    そしてこれからもたぶん無いだろう
    ということであります
  • 19:22 - 19:24
    なぜ行ったのか
  • 19:24 - 19:26
    記者会見ではないのでお話できるんですが
  • 19:26 - 19:31
    実は私は指揮を執りに行ったのではありません
  • 19:31 - 19:35
    総監と相談してもう始めから
    2人だけで相談して
  • 19:35 - 19:37
    行こうということを言っていましたが
  • 19:37 - 19:41
    指揮は高山隊長が執った方が
    よっぽど上手いです
  • 19:41 - 19:47
    私が行った目的は
    隊員の安全管理が一つ
  • 19:47 - 19:52
    そしてもう一つ
    やはり死ぬ場所で状況が変わりますので
  • 19:52 - 19:56
    決断をすることが一つ
  • 19:56 - 19:58
    あと実はもう一つあります
  • 19:58 - 20:03
    責任を取るために行きました
  • 20:03 - 20:09
    これだけの場所ですから
    半分は戻れないと思った
  • 20:09 - 20:14
    彼らは終わってみると 結果ですけど
    家族の元に返せて 本当に良かった
  • 20:14 - 20:18
    (拍手)
  • 20:37 - 20:40
    実は福島の対応というのは
  • 20:40 - 20:45
    我々消防活動の正に ワン・オブ・ゼム であります
  • 20:45 - 20:48
    今回の東日本大震災では
  • 20:48 - 20:51
    日本全国から緊急消防援助隊が
  • 20:51 - 20:54
    2万7000部隊以上
  • 20:54 - 20:57
    そして なんと10万人以上の緊急援助隊が
  • 20:57 - 21:01
    東北の被災地に駆けつけました
  • 21:01 - 21:09
    そして世界各国から国、地域、機関で197ヶ国もの
  • 21:09 - 21:12
    支援の申し入れがありました
  • 21:12 - 21:16
    私も災害を担当してつくづく思いますけれども
  • 21:16 - 21:20
    今まで 文明 文化が発展してきたもの
  • 21:20 - 21:25
    これは正に人間の 絆によるものだと思います
  • 21:25 - 21:30
    今 東北地方 復興に向けて
    全力で頑張っていますけれども
  • 21:30 - 21:36
    消防もこういうふうに 皆と一緒に
    絆を作って支援しています
  • 21:36 - 21:39
    皆さんも一緒に支援してくれますよね
  • 21:39 - 21:41
    (拍手)
  • 21:45 - 21:49
    人類こそ こういう絆があって発展してきて
  • 21:49 - 21:53
    こういう幾多の災害を乗り切れたんだと思います
  • 21:53 - 22:00
    東日本大震災からも この気持ちさえあれば
    必ずや立ち直れると思います
  • 22:00 - 22:01
    がんばりましょう
  • 22:01 - 22:03
    今日は本当に短い時間でしたけれども
  • 22:03 - 22:07
    消防の世界に入って頂きまして
    ありがとうございました
  • 22:07 - 22:10
    (拍手)
  • 22:37 - 22:42
    (司会者) 佐藤さん ありがとうございました
  • 22:44 - 22:51
    ここで少し せっかくですので
    三島さんにお話しを伺いたいと思います
  • 22:51 - 22:54
    よろしいでしょうか
  • 22:57 - 23:01
    3月18日に出場が決まったとお聞きしたときに
  • 23:01 - 23:04
    いろんな思いがあったと思うんですけれど
  • 23:04 - 23:08
    そのときの心境を少しお話しい頂けますでしょうか
  • 23:08 - 23:14
    (三島)はい もう最初テレビで原発災害を見たときは
  • 23:14 - 23:18
    正直 行くことはないだろう
    というふうに思っていました
  • 23:18 - 23:21
    ただ この出場命令がかかった時というものは
  • 23:21 - 23:26
    正直 これはヤバいな
    どうしようかなっていう恐怖感と
  • 23:26 - 23:29
    もう誰もがやったことのないミッションだったので
  • 23:29 - 23:32
    絶対やってやる 俺らがやるんだっていう使命感
  • 23:32 - 23:38
    ほんとそれが 入り混じってた
    ―どうしていいかわからないような状態でした
  • 23:38 - 23:41
    (司会者) もちろん三島さん自身も
    そう思われたということは
  • 23:41 - 23:46
    それをご家族の方 お子さん
    ご報告されたと思うんですけれど
  • 23:46 - 23:50
    それはどんなご報告だったんですか
  • 23:50 - 23:54
    (三島)原発事故 イコール チェルノブイリ
  • 23:54 - 23:58
    もっと大きく言えば
    広島 長崎の原爆というようなイメージしか
  • 23:58 - 24:01
    私の家族含めて そういう思いがあったようです
  • 24:01 - 24:05
    私のかみさんも さっき言った通り
    当時妊娠初期だったもので
  • 24:05 - 24:07
    これで流産されたら困るなって
  • 24:07 - 24:10
    ほんとそういう思いで
    どうメールしたらいいのか
  • 24:10 - 24:13
    もう電話はとてもできなかったので
    どうしようと思った時に
  • 24:13 - 24:16
    軽く ちょっと飲みに行ってくるよ
    みたいな感覚で
  • 24:16 - 24:19
    総理大臣命令 出ちゃったから
    行ってくるよっていうような
  • 24:19 - 24:20
    メールを送りました
  • 24:20 - 24:23
    そしたらですね 皆から
    やってこい やってこいって
  • 24:23 - 24:26
    すごい命令だから行ってこい と
  • 24:26 - 24:30
    かみさんからも 国の為なんだから 一丁やってこいと
    偉そうなメールが来ました
  • 24:30 - 24:33
    それが 本当に力になったんですけど
  • 24:33 - 24:36
    出場当時の真っ暗闇で
    ほんとにやる気になっているときなのに
  • 24:36 - 24:40
    もう寝る っていうメールが来たときには ちょっと
    寂しかったんですけど (笑)
  • 24:40 - 24:43
    (拍手)
  • 24:48 - 24:52
    (司会者) ぜひ 三島さんに
    ここにいる260人の素晴らしい方々
  • 24:52 - 24:55
    そしてインターネットで見ている
    世界中の方がいらっしゃいますので
  • 24:55 - 24:58
    今 三島さんが思う 気持ちをですね
  • 24:58 - 25:01
    ひとこと頂いてもよろしいでしょうか
  • 25:01 - 25:06
    (三島) あのミッションを成功したときってのは
    正直 喜びました
  • 25:06 - 25:11
    で あのときの危機を取り去った
    というふうには思っています
  • 25:11 - 25:14
    ただ残念ながら現在まで
    原発は終息していませんし
  • 25:14 - 25:16
    本当に危ない現場で
  • 25:16 - 25:18
    作業されている方が今でもいます
  • 25:18 - 25:23
    また 津波災害 そういったもので被災された方々
    というものが 復興したかというと
  • 25:23 - 25:25
    とてもそういう状態じゃあありません
  • 25:25 - 25:29
    なので 両手を挙げて喜べる自分がいません
  • 25:29 - 25:33
    なんですけども あのときにちょっとでも
    被災された方々が
  • 25:33 - 25:35
    お やったじゃねーかよ
    じゃ 俺らもやろうかっていうふうに
  • 25:35 - 25:39
    思って頂いたときに始めて
    ミッション達成したんだなっていうふうに
  • 25:39 - 25:41
    思えるんじゃないか
    というふうに思っています
  • 25:41 - 25:44
    それともう一つ われわれ消防官っていうのは
    スーパーマンじゃないんですね
  • 25:44 - 25:48
    死んでしまっちゃあ 私らも 駄目なんですね
  • 25:48 - 25:51
    やっぱり私が ミッションを終えて
    帰ってきたときに
  • 25:51 - 25:53
    娘が寄ってきて抱っこしたときとか
  • 25:53 - 25:56
    先日生まれた子どもを見たときにですね
  • 25:56 - 25:59
    本当に生きて帰ってよかったと
    強く思いました
  • 26:04 - 26:07
    (拍手)
  • 26:10 - 26:16
    やっぱり 自分の身を守れない人間に
    他人を助けることは絶対できない
  • 26:16 - 26:19
    そういうふうに思っています
    高山隊長からも教わっています
  • 26:19 - 26:26
    なんですけども
    目の前に私たちの助けを求める人がいるんであれば
  • 26:26 - 26:31
    それはもう全力で
    本当に自分の力の限界を越えてまでも
  • 26:31 - 26:35
    助けて その人が
    私と同じように生きて帰って良かったって
  • 26:35 - 26:37
    思っていただけるように
    これからも全力でがんばります
  • 26:37 - 26:39
    本当にありがとうございました
  • 26:39 - 26:42
    (拍手)
  • 26:48 - 26:54
    (司会者) 佐藤さん 高山さん 三島さん
    本当にどうもありがとうございました
Title:
命を懸ける勇気の源 | 佐藤康雄 | TEDxSeeds
Description:

東日本大地震によって発生した福島第一原発1号機の爆発から6日後、極めて困難で危険な原子炉冷却のミッションが達成された。佐藤康雄は自らの率いる東京消防庁ハイパーレスキュー隊の活躍を生々しく語る。

このビデオはTEDカンファレンスとは独立して運営されるTEDxイベントにおいて収録されたものです。

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Video Language:
Japanese
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
26:59

Japanese subtitles

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