レイチェル・パイク 「気候に関する見出しの裏にある科学」
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0:00 - 0:03今日は新聞で見出しになるような
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0:03 - 0:05科学的取り組みの規模について
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0:05 - 0:07お話したいと思います。
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0:07 - 0:09このような気候変動に関する見出しとか
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0:09 - 0:13大気汚染やスモッグに関する見出しについてです。
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0:13 - 0:162つとも大気科学という1つの分野の下位領域です。
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0:16 - 0:18最近「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が
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0:18 - 0:20大気システムの理解の現状に関して
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0:20 - 0:24報告を出した時の見出しは、このようなものでした。
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0:24 - 0:26そのレポートは40か国620人の
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0:26 - 0:28科学者によって執筆されたものです。
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0:28 - 0:30このテーマに関する1,000ページ近い資料です。
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0:30 - 0:33それらはさらに113か国400人以上の別な
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0:33 - 0:36科学者や査読者によって査読されました。
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0:36 - 0:39これは大きなコミュニティです。事実、その年次総会は
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0:39 - 0:42自然科学分野の学界として世界最大のものです。
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0:42 - 0:45この学会のために、毎年1万5千人の科学者がサンフランシスコに集まります。
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0:45 - 0:47それぞれの科学者は研究グループに所属しており
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0:47 - 0:50それぞれの研究グループは幅広い領域を研究しています。
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0:50 - 0:53ケンブリッジの私達のグループも、研究テーマは多岐にわたります。
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0:53 - 0:55天候や気候に影響を与えるエルニーニョ南方振動から
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0:55 - 0:57人工衛星データの解析、そして私の研究する―
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0:57 - 1:00バイオ燃料を作る穀物由来の温室効果ガス排出量など。
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1:00 - 1:03これら数ある研究領域のそれぞれに
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1:03 - 1:05私のような博士課程の学生がいて
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1:05 - 1:071つか2つのプロセスや分子を対象とする
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1:07 - 1:09とても狭いテーマで研究をしています。
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1:09 - 1:12私が研究しているのはイソプレンという有機分子で
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1:12 - 1:16たぶん皆さんはお聞きになったことがないでしょう。
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1:16 - 1:18ペーパークリップ1つの重さは
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1:18 - 1:22イソプレン分子9百ゼタ(9千垓)個分に相当します。
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1:22 - 1:24しかしとても軽い重量にもかかわらず
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1:24 - 1:26全人類の体重と同等の重さのイソプレンが
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1:26 - 1:29毎年大気中に放出されています。
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1:29 - 1:32これは大変な量です。メタンの排出量に匹敵します。
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1:32 - 1:35その多さによってイソプレンは大気システムにとって重要なものなのです。
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1:35 - 1:38大気システムにとってのその重要性のため
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1:38 - 1:40多くの努力を払ってこの物質を研究しています。
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1:40 - 1:42例えば、爆発させてその残骸を観察します。
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1:42 - 1:44これはスペインにあるEUPHOREスモッグチャンバです。
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1:44 - 1:46大気中での爆発ないしは燃焼反応には
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1:46 - 1:49自動車の中で起こる反応の1万5千倍という時間がかかります。
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1:49 - 1:51しかしそれでも私たちはその反応を観察します。
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1:51 - 1:53私たちはスーパーコンピュータで途方もないモデルも
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1:53 - 1:55動かしていて、実際私がやっています。
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1:55 - 1:57そのモデルでは数十万のメッシュについて
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1:57 - 2:00数百の変数を微細な時間間隔でシミュレーションします。
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2:00 - 2:02積分するのに何週間もかかります。
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2:02 - 2:04そして、何が起きているのかを理解するために
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2:04 - 2:06何十という積分を行います。
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2:06 - 2:09私たちはこの物質を求めて世界中を飛び回っています。
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2:09 - 2:12私は最近マレーシアにおける野外調査に参加しました。
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2:12 - 2:14そこ、熱帯雨林の真ん中に
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2:14 - 2:16大きな大気監視塔があり
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2:16 - 2:18その塔には
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2:18 - 2:20イソプレンやその他の物質を観測するための
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2:20 - 2:22数十万ドルする高価な機器が設置されています。
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2:22 - 2:24熱帯雨林の真ん中にある塔を上から見たところです。
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2:24 - 2:26こちらは下から見たところ。
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2:26 - 2:29そしてこの野外調査の一環として私たちは航空機さえ持参しました。
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2:29 - 2:32FAAMが管理するこのBA146は
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2:32 - 2:35通常は120~130人を載せて飛ぶ飛行機です。
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2:35 - 2:38もしかしたら今日ここへ来る時同じ様な飛行機に乗った人もいるかもしれません。
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2:38 - 2:41しかし私たちはただ飛んでいたのではなく、イソプレン計測のため
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2:41 - 2:44林冠の上100メートルを飛んでいたのです。とても危ないんですよ。
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2:44 - 2:47計測のためには特別な角度で飛行しなければなりませんでした。
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2:47 - 2:49操縦には空軍パイロットやテストパイロットを雇います。
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2:49 - 2:51特別の飛行許可も取らなくてはいけません。
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2:51 - 2:54この谷の斜面を旋回するときには2Gくらいかかります。
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2:54 - 2:56科学者たちは機内で計測を行うため
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2:56 - 2:58安全帯を装着する必要があります。
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2:58 - 3:00だからご想像の通り、この飛行機の内部は
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3:00 - 3:03皆さんが休暇の時に乗る飛行機とは全然違っています。
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3:03 - 3:08これはイソプレンの分布を計測するための空飛ぶ実験室なんです。
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3:08 - 3:11私たちはこの全てを1つの分子の化学的性質理解のために行っています。
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3:11 - 3:13そして私のような学生がその分子に関して
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3:13 - 3:15傾向や知見を得ると
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3:15 - 3:17そのテーマに関して1本の科学論文を書きます。
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3:17 - 3:19だからこの野外調査からはおそらく
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3:19 - 3:22数十個のプロセスや分子に関する数十本の論文が出来るでしょう。
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3:22 - 3:24そうやって知識が蓄積され
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3:24 - 3:27IPCCやその他の報告書の
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3:27 - 3:301つの節か、節の中の小項目になります。
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3:30 - 3:33IPCCの11の部会のそれぞれには
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3:33 - 3:356から10の下位セクションがあります。
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3:35 - 3:37これでこの営みのスケールを想像していただけるでしょう。
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3:37 - 3:39私たちが書く評価のそれぞれには
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3:39 - 3:41いつもサマリーをつけていますが
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3:41 - 3:44このサマリーは専門外の人々のために書くものです。
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3:44 - 3:46それをジャーナリストや政策立案者たちに提供し
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3:46 - 3:48そうしてこの様な見出しが出来るのです。
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3:48 - 3:50ご清聴ありがとうございました。
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3:50 - 3:53(拍手)
- Title:
- レイチェル・パイク 「気候に関する見出しの裏にある科学」
- Speaker:
- Rachel Pike
- Description:
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大気化学者であるレイチェル・パイクが4分間で、気候変動などの大見出しの裏に隠れている膨大な努力の一端を垣間見せてくれます。彼女は何千という貢献者の中の1人として、チームとともに熱帯雨林上の危険なフライトを敢行し、ある鍵となる分子を追いかけています。
- Video Language:
- English
- Team:
closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 03:57