なぜこの絵画は人々を魅了するのか? ― ジェームズ・アールとクリスティーナ・ボシック
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0:08 - 0:12一見したところ この作品は
とりたてて特別には見えないかもしれません -
0:12 - 0:16しかし実際には美術史上 最も
解析されてきた作品の一つなのです -
0:16 - 0:20『ラス・メニーナス』あるいは
『女官たち』と呼ばれており -
0:20 - 0:24ディエゴ・ベラスケスによる
1656年の作品です -
0:24 - 0:28スペイン宮廷での日々の
一場面を描写しています -
0:28 - 0:32上品に着飾った幼い王女が
女官の差し出す一杯の水を拒んでいて -
0:32 - 0:34その脇では小人が犬に
ちょっかいを出しています -
0:34 - 0:36もう一人の小人が
またその横に立っており -
0:36 - 0:39画家自身がキャンバスの前で
ポーズをとっています -
0:39 - 0:41奥の方では別の二人が
何やら囁き合っており -
0:41 - 0:45また別の一人が部屋を
立ち去ろうとしています -
0:45 - 0:48とりたてて動きがないこの部屋を
立ち去らない理由はありません -
0:48 - 0:51犬さえも退屈そうです
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0:51 - 0:53しかしもう少しよく観てください
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0:53 - 0:56後ろに見える曇った鏡の中に
二人の人間が映っていますが -
0:56 - 0:58最初に観た時には簡単に
見逃してしまいそうです -
0:58 - 1:02この二人は王フェリペ四世と
マリアナ王妃にほかなりません -
1:02 - 1:05素朴な宮廷生活のこの場面を
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1:05 - 1:08王族の肖像画に
格上げしているかのように見えます -
1:08 - 1:10この情報を手がかりに
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1:10 - 1:12この作品の奥深い意味と
何世紀にも渡りこの作品が -
1:12 - 1:16なぜ観る者を魅了し続けて来たのかが
わかり始めるのです -
1:16 - 1:19まず この作品の歴史的背景に
注目してみましょう -
1:19 - 1:22『ラス・メニーナス』が描かれた
フェリペ王朝末期は -
1:22 - 1:25スペイン帝国の衰退期にあり
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1:25 - 1:28三十年戦争の痛手に苦しみ
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1:28 - 1:31経済的にも政治的にも
困難の時代でした -
1:31 - 1:34王自身も不運に苦しんでいた時期です
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1:34 - 1:40最初の妻を亡くし 再婚前には
唯一の継承者の王子も亡くしました -
1:40 - 1:45しかし 王家として人々を養う苦悩は
この作品では はっきり表現されていません -
1:45 - 1:48君主の年老いた様子も
曇った鏡の中に -
1:48 - 1:50隠してしまっています
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1:50 - 1:53キャンバス上の幾何学的中心には
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1:53 - 1:56窓から差し込む光によって
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1:56 - 1:59幼き王女マルガリータ・テレサが
明るく照らしだされています -
1:59 - 2:02マルガリータ王女はその頃
王に残されたたった一人の嫡出子でした -
2:02 - 2:03王女のキラキラした元気な様相は
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2:03 - 2:07苦悩を続けていた帝国の
未来への理想を描写しています -
2:07 - 2:11しかし幼き王女はこの作品の
唯一の中心人物ではありません -
2:11 - 2:13絶妙な遠近法テクニックを
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2:13 - 2:18315×270cmの等身大の
キャンバス上で駆使することで -
2:18 - 2:22ベラスケスの手法は芸術と現実の
境界線をぼかしてしまい -
2:22 - 2:26私たちもここに描かれた立体空間へと
踏み込めそうな感覚を作り出しています -
2:26 - 2:30天井と壁の間のいくつかのラインは
開いた戸口へと視線を導き -
2:30 - 2:34さらに鑑賞者の視点からの
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2:34 - 2:37物理的奥行き感を与えています
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2:37 - 2:40その意味では 作中の3名の視線が
真っ直ぐこちらに向いていることで -
2:40 - 2:45鑑賞者と現実世界に焦点を当てた
作品であるともいえます -
2:45 - 2:47注目すべき点は他にもあります
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2:47 - 2:51二つの照明具が作リ出すラインは
背景の壁の中央に向かっており -
2:51 - 2:55王夫妻を映し出す鏡に
観る者の目を導きます -
2:55 - 2:57この鏡の像の鑑賞者との
相対的な位置関係が -
2:57 - 3:02作品全体のまったく別の解釈へと
私達を導いていきます -
3:02 - 3:06鏡は肖像画制作のためにポーズする
王と王妃を映しているのでしょうか? -
3:06 - 3:08それとも作中のキャンバスを
映しているのでしょうか? -
3:08 - 3:09また 作中で暗示されている
宮廷肖像画を ベラスケスが -
3:09 - 3:13実際に描いたことがないという事実は
どう解釈するのでしょうか? -
3:13 - 3:18これは作品自体の創作過程を表現した
絵画なのでしょうか? -
3:18 - 3:20作品の中に鏡を取り入れることで
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3:20 - 3:22ベラスケスは作品の芸術性を
単純な職人技の範疇から -
3:22 - 3:25ベラスケスは作品の芸術性を
単純な職人技の範疇から -
3:25 - 3:27知的作品のレベルに引き上げています
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3:27 - 3:293つの競合する焦点によって
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3:29 - 3:32『ラス・メニーナス』は
理想 現実 そして鏡の中の世界という -
3:32 - 3:34この3つの世界の
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3:34 - 3:35明闇をくっきりと捉えながらも
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3:35 - 3:40くすぶり続ける緊張状態を維持することで
いかなる鏡をもっても語れない -
3:40 - 3:42複雑な物語を語っているのです
- Title:
- なぜこの絵画は人々を魅了するのか? ― ジェームズ・アールとクリスティーナ・ボシック
- Description:
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絵画『ラス・メニーナス(女官たち)』は一見、とりたてて特別には見えないかもしれませんが、実際には美術史上、最も分析されてきた作品のひとつなのです。ディエゴ・ベラスケスのこの作品は、なぜここまで人々を魅了するのでしょう?ジェームズ・アールとクリスティーナ・ボシックが、この作品に秘められている背景と複雑な構成について説明します。
講師:ジェームズ・アール、クリスティーナ・ボシック
アニメーション:Zedem Media
*このレッスンの教材: https://ed.ted.com/lessons/why-is-this-painting-so-captivating-james-earle-and-christina-bozsik - Video Language:
- English
- Team:
closed TED
- Project:
- TED-Ed
- Duration:
- 03:53
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Natsuhiko Mizutani approved Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik | |
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Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik | |
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Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik | |
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Shuichi Sakai accepted Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik | |
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Shuichi Sakai edited Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik | |
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Shuichi Sakai edited Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik | |
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Shuichi Sakai edited Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik | |
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Keiko Marutani edited Japanese subtitles for Why is this painting so captivating? - James Earle and Christina Bozsik |