私たちが幸せを感じる理由
-
0:02 - 0:0421分間の講演時間と比べると
-
0:04 - 0:07200万年という時間は
非常に長いものに感じられますね -
0:07 - 0:09しかし進化論という側面から見ると
200万年は 0年も同様です -
0:09 - 0:11それでも人間の脳は200万年の間に
-
0:11 - 0:15およそ3倍もの大きさになりました
-
0:15 - 0:19約700グラムの脳を持つ
私たちの祖先 ホモハビリスから -
0:19 - 0:21現在私たちの両耳の間にある脳は
-
0:21 - 0:24約1,400グラムにまでなったのです
-
0:25 - 0:28進化の過程において このような大きな脳を
-
0:28 - 0:32各人がもつ必要性はなんだったのでしょう
-
0:32 - 0:34それは 脳が3倍の大きさになったとき
-
0:34 - 0:37ただ単に容積が3倍になっただけではなく
脳は新たな構造を獲得したのです -
0:38 - 0:42新しいパーツを得たことが 脳がここまで
大きくなったことの理由のひとつなのです -
0:42 - 0:44前頭葉 その中でも特に
-
0:44 - 0:46前頭葉皮質と呼ばれる部分です
-
0:47 - 0:50前頭葉皮質が どのような
働きをするのかが分かれば -
0:50 - 0:54進化論における一瞬の時間で脳の全ての構造が
-
0:54 - 0:56変わった理由も分かるはずですね
-
0:56 - 0:59さて どうやら前頭葉皮質には
多くの役目がありそうです -
0:59 - 1:05なかでも一番重要な役目は
疑似体験をすることです -
1:05 - 1:07パイロットは模擬飛行装置を使って
操縦訓練をします -
1:07 - 1:10これは実際に飛行機を操縦するときに
ミスを犯さないためですね -
1:10 - 1:13人間にはこの驚くべき模擬体験装置があって
-
1:13 - 1:16経験を頭の中ですることができるのです
-
1:16 - 1:19実生活の中で経験するよりも先にです
-
1:19 - 1:21これは私たちのいかなる祖先も
-
1:21 - 1:24また他のどの動物も
同じようにはできない -
1:24 - 1:26驚異的な技なのです
-
1:26 - 1:30向かい合わせにできる親指や直立二足歩行
そして言語と共に -
1:30 - 1:33人類の生活の中心を森林から
-
1:33 - 1:35ショッピングモールに変えた
要因のひとつなのです -
1:35 - 1:37(笑)
-
1:37 - 1:39みなさんもこれと同じことをしているのです
-
1:39 - 1:43ベン&ジェリーズアイスクリームには
レバー&オニオン味のアイスクリームなんてありません -
1:43 - 1:46それは実際にいくつか作り試食して
「うえー」となったからではなく -
1:46 - 1:49机から離れなくとも
-
1:49 - 1:53その味を想像し 実際に作る前に
「うえー」と言えるからなのです -
1:56 - 1:58では実際に私たちがどのように
疑似体験をしているのかみてみましょう -
1:58 - 2:00話を進める前に
-
2:00 - 2:02ここで簡単なテストをしてみます
-
2:02 - 2:06ここに2種類の違った未来があります
-
2:06 - 2:10これら2つを疑似体験してみて
どちらの方が好ましいか教えてください -
2:10 - 2:16ひとつは宝くじを当てる未来です
これは3億円くらいはありますね -
2:16 - 2:18そしてもうひとつは下半身麻痺になる未来です
-
2:19 - 2:20(笑)
-
2:20 - 2:21さあ考えてみてください
-
2:21 - 2:24きっと考える必要なんてないと
思う方もいらっしゃるでしょう -
2:24 - 2:28興味深いことに2つのケースの
実際のデータがあるのです -
2:28 - 2:30実際彼らはどれくらい幸せなのでしょうか
-
2:30 - 2:33予想したとおりでしょう?
-
2:33 - 2:36けれどもこれは 私が作りあげた
ウソのデータなのです -
2:36 - 2:37こちらが本当のデータです
-
2:38 - 2:41みなさん講演開始5分にして
もう落第です -
2:41 - 2:45実際のところは 脚の機能が失われた1年後と
宝くじを当てた1年後とでは -
2:45 - 2:50宝くじの当選者と下半身麻痺の患者は
-
2:50 - 2:53人生において同等の幸福を感じているのです
-
2:53 - 2:56最初のテストで間違ったからといって
がっかりしないでください -
2:56 - 2:59誰もが全てのテストで
毎回同じように間違うのですから -
3:00 - 3:02私の研究室や国中の経済学者
-
3:02 - 3:06心理学者がしている研究において
-
3:06 - 3:08極めて驚くべきことがわかってきています
-
3:08 - 3:10「衝撃偏向」と呼ばれるもので
-
3:10 - 3:13疑似体験の働きを悪くする傾向のことです
-
3:14 - 3:18疑似体験の中では結果の違いが
-
3:18 - 3:20実際以上に大きいと思ってしまうのです
-
3:20 - 3:23フィールドワークや実験室での研究において
分かってきたのは -
3:23 - 3:27選挙に当選しようが落選しようが
生涯のパートナーを得ようが失おうが -
3:27 - 3:31仕事で昇進してもしなくても
大学入試に受かっても落ちても どんなことが起こったって -
3:31 - 3:37本人は私たちが思うほど
衝撃を受けていなければ感情的にもなっていない -
3:37 - 3:40そんなにそれを引きずっては
いないということです -
3:41 - 3:46実際最近の研究では
—これには閉口してしまうのですが -
3:46 - 3:51人生における最大のトラウマが
その人に及ぼす影響について -
3:51 - 3:54もしそれが3ヶ月以上前に起こったとすると
-
3:54 - 3:55多少の例外はあるにしても
-
3:55 - 3:58その人の幸せにはなんの影響も
与えないということがわかったのです -
4:00 - 4:01なぜでしょう
-
4:01 - 4:05幸せは作り出すことができるからです
-
4:05 - 4:09トーマス・ブラウンは1642年に
著書の中でこう述べました -
4:09 - 4:15「私は世界一幸せな人間だ
貧を富に変える力も逆境を順境に変える力も持っているのだから -
4:15 - 4:20私はあのアキレウスより不死身なのだ
どんな強運の持ち主も私を射止めることはできないだろう」と -
4:20 - 4:23一体彼の頭の構造は
どれほど奇なるものだったのでしょう -
4:23 - 4:28なんと それは私たちと全く同じだったのです
-
4:29 - 4:31人類には心理的な
免疫システムのようなものがあります -
4:31 - 4:34人類には心理的な
免疫システムのようなものがあります -
4:34 - 4:39認知プロセス ほとんどは意識下で
行われているシステムなのですが -
4:39 - 4:42これは自分が属する世界を
-
4:42 - 4:44より良いものに感じられるように
-
4:44 - 4:47世界の見え方を変えてくれるのです
-
4:47 - 4:49トーマス・ブラウン同様
誰もが持つシステムなのですが -
4:49 - 4:53彼とは違って誰もその存在に
気づいていないようです -
4:53 - 4:59幸せは作り出すものなのに
見つけるものだと考えてしまうのです -
4:59 - 5:00人々が実際に幸せを作り出す例は
-
5:00 - 5:04そんなにたくさん必要ないでしょうが
-
5:04 - 5:07これからいくつかの実験的証拠をお見せします
-
5:07 - 5:09証拠は身近なところにあるのです
-
5:09 - 5:11自分への挑戦として
以前私が外部の講義で目にした -
5:11 - 5:14ニューヨークタイムズの記事のコピーを使って
人々が幸せを作り出す実例を探しました -
5:14 - 5:16こちらが幸せを作り出した3人です
-
5:16 - 5:19「肉体的にも経済的にも感情的にも精神的にも
ほぼ全てにおいて向上した」 -
5:19 - 5:22「何ひとつ後悔はない
栄光のある経験をしたと思っている」 -
5:22 - 5:24「結果的にベストだったと信じている」
-
5:24 - 5:26これほどまでに幸せを感じられる人とは
一体誰なのでしょうか -
5:26 - 5:28最初の一言はジム・ライトのものです
-
5:28 - 5:29何人かの方々は覚えていらっしゃるでしょう
-
5:29 - 5:32彼はかつての下院議長だったのですが
-
5:32 - 5:33ニュート・ギングリッチという
-
5:33 - 5:35若手の共和党議員によって裏工作を暴かれ
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5:36 - 5:38若手の共和党議員によって裏工作を暴かれ
-
5:38 - 5:39その不祥事を理由に辞任しました
-
5:39 - 5:42国中から最強と言われた
この民主党議員は全てを失いました -
5:42 - 5:44金も権力も失った彼は
-
5:44 - 5:46この経験について後々何と語るかと言えば?
-
5:46 - 5:49「肉体的にも経済的にも
感情的にも精神的にも -
5:49 - 5:50ほぼ全てにおいて向上した」
-
5:50 - 5:53これ以上一体何を
向上させることができるでしょう -
5:53 - 5:55菜食面?ミネラル面?肉食面?
-
5:55 - 5:57彼は全てを制覇してしまったのです
-
5:57 - 6:00モリース・ビッカムという名前は
きっと耳にしたことがないでしょう -
6:00 - 6:03彼は釈放されたときに
これらの言葉を述べました -
6:03 - 6:0478歳の彼はそのうち37年を
-
6:04 - 6:07犯してもいない罪のために
-
6:07 - 6:08ルイジアナ州の拘置所で過ごしました
-
6:08 - 6:10DNA鑑定の結果最終的に
-
6:10 - 6:1278歳で無罪が確定したのです
-
6:12 - 6:14この経験について
彼が述べずにはいられなかったことは -
6:14 - 6:18「何ひとつ後悔はない栄光のある経験を
したと思っている」だったのです -
6:18 - 6:19栄光ですって!彼が言うべきことは
-
6:19 - 6:22「拘置所は何も悪い人ばかりだったってわけじゃないよ
ジムもあったし」ではなく -
6:22 - 6:23「栄光ある経験」だったのです
-
6:23 - 6:26我々が普通宗教的経験を述べるときのために
とっておくような言葉を彼は使ったのです -
6:26 - 6:30ハリー・ランガーマンのことは知っている方も
知らない方もいらっしゃるでしょう -
6:30 - 6:34彼は1949年にマクドナルドという
2人の兄弟が経営する -
6:34 - 6:37ハンバーガー売店の記事を新聞で目にして
-
6:37 - 6:39「これはいいアイデアだ!」と考えました
-
6:39 - 6:41彼は兄弟を探しあて会いに行くと
-
6:41 - 6:43「3,000ドルでチェーン店の
営業権をあげるよ」と言われました -
6:43 - 6:46ハリーはニューヨークに戻り
投資銀行をしている兄に -
6:46 - 6:493,000ドルのローンを願いでました
彼の兄の忘れられない一言は -
6:49 - 6:51「ばかいうな 誰もハンバーガーなんて
食いやしないよ」でした -
6:51 - 6:53彼はハリーに金を融資しませんでした
-
6:53 - 6:56当然のことながら6カ月後
レイ・クロックが同じことを思いついたのです -
6:56 - 6:58民衆はハンバーガーを食べるのです
-
6:58 - 7:01レイ・クロックはしばらくして
アメリカ一の富豪になりました -
7:02 - 7:03最後に―最もポジティブであったのは
-
7:03 - 7:07お分かりですね
若かりし頃のピート・ベストです -
7:07 - 7:09彼はビートルズの初代ドラマーでした
-
7:09 - 7:13ご存じの通り訳の分からない理由で解雇され
-
7:13 - 7:15ツアー中にビートルズと親交を深めた
リンゴが後を継ぎました -
7:15 - 7:171994年にインタビューを受けたとき
ピート ベストは -
7:17 - 7:20―彼は現在もドラマーであり
ミュージシャンであるわけですが -
7:20 - 7:23「ビートルズに在籍していた頃より
幸せだ」と言ったのです -
7:23 - 7:27どうやら彼らから
何か大切なことが学べそうです -
7:27 - 7:28これこそが幸せの秘訣なのです
-
7:28 - 7:31こちらです
やっと辿り着きましたね -
7:31 - 7:34その1 富や権力 名誉を
どんどん手に入れて それら全てを失いましょう -
7:34 - 7:37(笑)
-
7:37 - 7:41その2 人生でできるだけ多くの時間を
刑務所で過ごしましょう -
7:41 - 7:42(笑)
-
7:42 - 7:45その3 誰か自分以外の人を
大金持ちにしましょう -
7:45 - 7:48そして最後に なにがあっても
ビートルズには入らないこと -
7:48 - 7:49(笑)
-
7:49 - 7:50さて
-
7:50 - 7:52彼ら3人のように
-
7:52 - 7:54人が幸せを作り出したとき
-
7:54 - 7:58我々は顔では笑っていても少しあきれて
-
7:58 - 8:01「あっそ きっと実は
そんな仕事したくなかったんだよ」とか -
8:01 - 8:05「あのね 君は彼女と
そんなに共通点なんてなかったんだから -
8:05 - 8:07彼女に婚約指輪を突き返される前に
-
8:07 - 8:09気がついてよかったじゃないか」と言うんです
-
8:09 - 8:13苦笑いをするのは
人工的幸福はいわゆる -
8:13 - 8:16自然発生的幸福ほど価値がないと
考えてしまうからなのです -
8:16 - 8:17これらの幸福とは何でしょう
-
8:18 - 8:21自然発生的幸福とは
欲したものが手に入ることです -
8:21 - 8:26そして人工的幸福とは欲したものが
手に入らなかったときに自ら作り出す幸福です -
8:26 - 8:29私たちの属する社会では人工的幸福は
-
8:29 - 8:32二流の幸福であるという
強い信念が横行しているのです -
8:32 - 8:33どうしてそう思ってしまうのでしょうか
-
8:34 - 8:36理由はとても簡単です
-
8:36 - 8:39欲しいものが手に入っても入らなくても
-
8:39 - 8:42私たちが同等の幸福を感じるならば
-
8:42 - 8:45経済のエンジンは
回らなくなってしまうでしょう -
8:46 - 8:49我が友マシュー・リカードには
大変申し訳ないのですが -
8:49 - 8:51禅僧侶であふれているショッピングモールは
-
8:51 - 8:53そんなに利益が上がらないでしょう
-
8:53 - 8:56僧侶はそんなにものを欲しがらないのですから
-
8:56 - 8:57(笑)
-
8:57 - 9:00人工的幸福はその細部にわたるまで
-
9:00 - 9:02自分がまさに望んでいるものを
手にするという幸せと -
9:02 - 9:05同じくらいリアルであり
-
9:05 - 9:08長続きするものです
-
9:08 - 9:10私は科学者なので 修辞学的ではなく
-
9:10 - 9:13データを使って話していこうと思います
-
9:13 - 9:16まずはじめに一般的な成人の人工的幸福を
-
9:16 - 9:20証拠づけるための実験をお見せしましょう
-
9:20 - 9:21これは私のものではありません
-
9:21 - 9:24これは50歳の人の範例で
自由選択に関するものです -
9:24 - 9:25実験は簡単です
-
9:25 - 9:28何かしら物を
例えば6つくらい持っていって -
9:28 - 9:31被験者にそれらを好きな順に
ランク付けしてもらうのです -
9:31 - 9:34範例なのでみなさんにあらかじめ
何を使うかお教えしておきます -
9:34 - 9:35今回はモネの絵です
-
9:35 - 9:37被験者らはこれらのモネの絵を
-
9:37 - 9:40一番好きなものから
一番気に入らないものへと順に並べます -
9:40 - 9:42ここでひとつの選択肢を与えます
-
9:42 - 9:45「予備の絵がまだ たまたま
クローゼットに残っているんです -
9:45 - 9:47今日の実験のお礼にひとつ差し上げますよ
-
9:47 - 9:513番と4番の絵が
残っているみたいです」と -
9:51 - 9:53少し難しい選択ですね
-
9:53 - 9:56なぜなら どちらの絵も他と比べて
そんなに好きではなかったのですから -
9:56 - 9:58けれども自然と人は
3番を選ぶ傾向があるのです -
9:58 - 10:014番の絵よりは好きだったのですからね
-
10:02 - 10:05いくらか時間が経った後
―15分後もしくは15日後かもしれません -
10:05 - 10:07被験者の前に同じ絵を並べ
-
10:07 - 10:10再度ランク付けをしてもらいます
-
10:10 - 10:12「現時点ではどうですか」と言って
-
10:12 - 10:13さてどうなるでしょう
-
10:13 - 10:15彼らが幸せを作り出す様子をご覧ください
-
10:15 - 10:18こちらが何度も再現されている結果です
-
10:18 - 10:20幸せが作り出されています
-
10:20 - 10:22もう一度ご覧になりますか?
-
10:23 - 10:24はい 幸せ!
-
10:24 - 10:27「私が選んだ絵は
思ってたよりずっといいわ! -
10:27 - 10:28選んでない方の絵は大したことない!」
-
10:28 - 10:31これが人工的幸福です
-
10:31 - 10:32(笑)
-
10:32 - 10:35さてみなさんの反応は?
-
10:35 - 10:36「まあ そうかもね」
-
10:37 - 10:39次に私たちが行った実験です
-
10:39 - 10:41このデータが みなさんのその反応が
-
10:41 - 10:44間違いだと説得できればと思います
-
10:44 - 10:46この実験は入院中の
-
10:46 - 10:47前向性健忘症の患者らと共に行いました
-
10:47 - 10:49前向性健忘症の患者らと共に行いました
-
10:49 - 10:51患者の多くはコルサコフ症候群という
-
10:51 - 10:53多発性神経炎による精神障害にかかっています
-
10:54 - 10:57暴飲の結果 新しい記憶を
作ることができないのです -
10:57 - 11:01要するに幼児期の記憶はあるのですが
我々が部屋に入り自己紹介をして -
11:01 - 11:03部屋を一旦はなれ
-
11:03 - 11:05また戻ってくると彼らは
我々を認識できないのです -
11:06 - 11:09私たちはモネの絵を病院に持って行き
-
11:09 - 11:12患者らにそれらの絵を
-
11:12 - 11:16一番好きなものから順に並べてもらいました
-
11:16 - 11:19そして先ほどの実験と同様に
3番か4番かを選んでもらったのです -
11:19 - 11:21他のみんなと同じように彼らも
-
11:21 - 11:24「ありがとうございます 先生
新しい壁掛けにします -
11:24 - 11:253番をいただけますか」と言います
-
11:26 - 11:293番の絵は また後日
宅急便で送りますと言って -
11:29 - 11:32全ての荷物を持って私たちは部屋を出ました
-
11:32 - 11:34それから30分待って
-
11:34 - 11:35(笑)
-
11:35 - 11:38部屋に戻り
「どうも戻りました」と声をかけました -
11:38 - 11:41患者らとの会話は
「ああ 先生すみません -
11:41 - 11:44私は記憶障害でここにいるんです
-
11:44 - 11:46以前お会いしていたとしても
思い出せないんです」 -
11:46 - 11:49「覚えていないのかい?
さっきモネの絵を持ってきたんだけど」 -
11:49 - 11:52「すみません
全く覚えていないんです」 -
11:52 - 11:56「いいんだよ
ただ これらの絵を好きなものから順に -
11:56 - 11:59並べてもらえないかな」
-
12:00 - 12:01さあ彼らはどうするでしょう
-
12:01 - 12:04まず最初に 彼らが本当に
記憶喪失症かどうか確かめましょう -
12:04 - 12:08患者らに自分の絵はどれかと尋ねました
-
12:08 - 12:11彼らが先ほど選んだ絵です
-
12:11 - 12:14記憶喪失症の患者は
当てずっぽうに答えているようです -
12:14 - 12:17こちら[グラフ中の緑]が正常者です
-
12:17 - 12:19みなさんに同じ質問をしたら
全員自分の絵がどれか分かるでしょう -
12:19 - 12:23しかし同じことを
記憶喪失の患者に尋ねても -
12:23 - 12:25彼らには自分の絵を選び出す
手掛かりがないのです -
12:27 - 12:30正常者は幸せを作り出すのでしたよね
-
12:30 - 12:33絵のランク表は
-
12:33 - 12:37最初の順番と2番目の順番は
このように変わります -
12:37 - 12:39正常者は
―先ほどお見せしたマジックを -
12:39 - 12:41グラフでお見せしています―
-
12:41 - 12:44「自分が選んだ絵は予想より良かった
-
12:44 - 12:46選ばず残った方は思っていたほど
良くはなかったな」と言います -
12:46 - 12:48選ばず残った方は思っていたほど
良くはなかったな」と言います -
12:49 - 12:53なんと記憶喪失患者も
全く同じ結果を出したのです -
12:53 - 12:56彼らも自分の絵をより好んだのです
-
12:56 - 12:58自分の絵だとは知らないままに
-
13:00 - 13:03「まあ そうかもね」は
正しい答えではないのです! -
13:04 - 13:07これらの患者らが幸せを作り出したとき
-
13:07 - 13:10彼らは本当に
-
13:10 - 13:14絵に対する快楽
美的反応を変えたのです -
13:15 - 13:17自分の絵だからそうしているのではないのです
-
13:17 - 13:20だって彼らにはそれが
自分の絵だとは分からないのですから -
13:21 - 13:23さて このようなグラフをご覧になった時に
-
13:23 - 13:27それは多くの人間の
平均だということはおわかりですね -
13:27 - 13:30この心理的免疫システム
つまり幸福を作り出す能力は -
13:30 - 13:33私たち全てに備わっています
-
13:33 - 13:36しかしこの能力を
人並み以上に使いこなせる人もいます -
13:36 - 13:40またこの能力を
-
13:40 - 13:42より効果的に発揮できる状況も存在します
-
13:43 - 13:47自由というものは
-
13:47 - 13:50意思決定をし
またその意思を変える能力のことですね -
13:50 - 13:53自然発生的幸福の友です
なぜなら数々の魅力的な未来から -
13:54 - 13:56各々が最も楽しめるものを
-
13:56 - 13:58選ばせてくれるのですから
-
13:58 - 14:00しかし意思の決定や
-
14:00 - 14:02変更における選択の自由は
-
14:02 - 14:05人工的幸福にとっては敵であります
-
14:05 - 14:08なぜだか説明いたしましょう
ディルバートはもちろん知っています -
14:08 - 14:10「ドッグバードのテックサポートです」
-
14:10 - 14:13「プリンターが
白紙ページばかりだしてくるんです」 -
14:13 - 14:15「タダでもらえる紙に
なぜ文句を言うんですか」 -
14:15 - 14:17「タダ? でもこれ
もともと自分の紙ですよ」 -
14:17 - 14:21「全く! お前さんの荒い紙質と
タダ紙の紙質をよく見てみなさい -
14:21 - 14:23愚か者か嘘つきしか
同じだなんて言わないよ」 -
14:23 - 14:26「ああ! 言われてみれば
確かに絹のようだ!」 -
14:26 - 14:27「何してるんだ?」
-
14:27 - 14:31「変えられないものを受け入れる
手助けをしているのさ」 その通り -
14:32 - 14:34心理的免疫システムは私たちが
-
14:34 - 14:37袋小路に入り込んだときに
最も効果的にはたらきます -
14:37 - 14:40これはデートと結婚の違いと同じでしょう?
-
14:40 - 14:41ある男性とデートに出掛けると
-
14:41 - 14:44彼が鼻をほじりました
もう彼とはデートに行きません -
14:44 - 14:46ではあなたが結婚した彼が鼻をほじったら?
-
14:46 - 14:49「うーん 彼は優しい人だから
その手でケーキは触らないでね」でしょう? -
14:49 - 14:52出来事に対応した
幸せを見つけることができるんです -
14:52 - 14:53(笑)
-
14:53 - 14:55さて ここから私がお見せしたいのは
-
14:55 - 14:57このような働きは
一般的には知られていないことと -
14:58 - 15:02知らないことが
大いに不利になり得るということです -
15:02 - 15:04こちらはハーバードで行った実験です
-
15:04 - 15:07フォトグラフィーコースを開設して
白黒写真のコースですが -
15:07 - 15:10学生らに参加させ
暗室の使い方も教えました -
15:10 - 15:13まずカメラを持った彼らは
キャンパスを歩き回ります -
15:13 - 15:15好きな教授や寮の自室
ペットの犬など -
15:15 - 15:17好きな教授や寮の自室
ペットの犬など -
15:17 - 15:20ハーバードの思い出がつまった
12枚の写真を撮ってもらいます -
15:20 - 15:23それからカメラを回収し印刷紙を準備して
-
15:23 - 15:25出来のいい2枚の写真を選びます
-
15:25 - 15:28次に6時間かけて暗室の使い方を教え
-
15:28 - 15:292枚を現像させます
-
15:29 - 15:322枚の見事な8×10の 思い出のつまった
-
15:32 - 15:34光沢写真を前に我々は彼らに
-
15:34 - 15:36「どちらかを手放さなければ
ならないのだが」と言います -
15:36 - 15:37学生は「一枚手放すのですか?」
-
15:37 - 15:40「そうなんだ 授業の
プロジェクトの証拠としてね -
15:40 - 15:43一枚もらわなきゃならないんだ
どちらか決めておくれ -
15:43 - 15:45君に一枚 私に一枚だ」
-
15:45 - 15:48さて ここからがこの実験の2つの条件です
-
15:48 - 15:51一つのケースでは学生にこう言います
-
15:51 - 15:53「でもまあ もし気が変わったのなら
-
15:53 - 15:55写真はまだ私が持っているから
-
15:55 - 15:59これから4日間
実際に本部に送るまでは— -
15:59 - 16:02そう「本部」です
-
16:02 - 16:04「いつでも交換できるから ほんと
-
16:04 - 16:07君の寮まで届けてあげるよ
-
16:07 - 16:09メールを送ってくれ
いっそのこと一緒にチェックしよう -
16:09 - 16:12もし気が変わったなら
必ず交換するよ」と -
16:12 - 16:15残り半分の学生には
全く正反対のことを言います -
16:15 - 16:17「すぐに選びなさい
-
16:17 - 16:202分後にはイングランドに
発送しちゃうから -
16:20 - 16:23君の写真は大西洋を渡っていくから
-
16:23 - 16:25これが最後の別れだ」と
-
16:25 - 16:27次にそれぞれの条件の学生半数に
-
16:27 - 16:28手元に残した写真と手放した写真を
-
16:29 - 16:32これからどれくらい好きになるか
-
16:32 - 16:34予想してもらいます
-
16:34 - 16:37残りの学生はひとまず寮に帰して
-
16:37 - 16:40それから3日から6日ほど写真への好感度
-
16:40 - 16:42満足度を測ります
-
16:42 - 16:43結果をご覧ください
-
16:43 - 16:47まず最初に こちらが学生達の予想です
-
16:47 - 16:50彼らは手放した写真より
手元に残した写真を -
16:50 - 16:53恐らく僅かながら好きになるだろうが
-
16:53 - 16:56統計的に意義のある差には
ならないだろうと思いました -
16:56 - 17:00差はほんの僅かで
交換できるかできないかは -
17:00 - 17:03問題ではないと
-
17:03 - 17:07大間違い なぜなら
こちらが本当に起こったことなのです -
17:07 - 17:10交換する前もその5日後も
-
17:10 - 17:13手元の写真しか残っていない人
-
17:13 - 17:14選択肢のない人
-
17:14 - 17:16絶対に気を変えることのできない人は
-
17:16 - 17:17写真に多いに満足したのです
-
17:18 - 17:21そして頭を悩ませ考え続けた人は
「交換すべきか? -
17:21 - 17:24この写真でよかったのか?
もしかしたらこっちはよくないかも? -
17:24 - 17:27いい方を手放したかも?」という考えに
押しつぶされてしまったのです -
17:27 - 17:28彼らは自分の選んだ写真が好きでなかったし
-
17:28 - 17:31実際 交換期限が終わってもまだ
-
17:31 - 17:33その写真が好きにはなれませんでした
-
17:33 - 17:34なぜ?
-
17:34 - 17:38交換可能な条件は
-
17:38 - 17:40人工的幸福と相性が悪いからです
-
17:40 - 17:43さてこちらが最後の実験です
-
17:43 - 17:47先ほどとは違うグループの
純真なハーバードの学生を集め -
17:47 - 17:50「フォトグラフィーコースを
しているんだけれども -
17:50 - 17:522パターンあって
どっちかに参加して欲しいんだ -
17:53 - 17:552枚写真を撮ったあと
-
17:55 - 17:574日間考える時間があるコースと
-
17:57 - 18:002枚写真を撮ったら
-
18:00 - 18:03すぐにどちらか決めて
決して変更はきかないコースだ -
18:03 - 18:05どっちに参加したいか?」
ああ! -
18:05 - 18:0866% 3分の2の学生が
-
18:08 - 18:12選択の変更がきくコースを好んだのです
-
18:12 - 18:16そうなんです
66%の学生が最終的に写真に -
18:16 - 18:20大きな不満を覚えるコースを選んだのです
-
18:20 - 18:26彼らは人工的幸福が
生まれる環境を知らないからです -
18:27 - 18:32シェイクスピアはご存知の通り
物事を一番上手く表現します -
18:32 - 18:34私の話も 彼はおおげさではありますが
こう表現しています -
18:34 - 18:37「物事の善し悪しなんて本当は存在しない
我々の思考がそのように見せるだけだ」 -
18:37 - 18:40素敵な詩ではありますが
100%正しいはずはありません -
18:40 - 18:43本当に物事の善し悪しは
存在しないのでしょうか -
18:43 - 18:46胆嚢の手術とパリ旅行とは
-
18:46 - 18:48本当に同じものなのでしょうか
-
18:48 - 18:49(笑)
-
18:49 - 18:53これはIQテストの質問のようです
-
18:53 - 18:55両者は100%同じではないのです
-
18:55 - 18:58より誇張された散文で
しかしより真実に近いことを -
18:58 - 19:01近代資本主義の父
アダム・スミスが言っています -
19:01 - 19:03こちらは考え甲斐があります
-
19:03 - 19:07「人類の生活における苦悩や無秩序の多くは
-
19:07 - 19:10永続的状況とそれ以外の状況との差異を
-
19:10 - 19:13過大評価しているところに帰依するようだ
-
19:13 - 19:18いくつかの状況は疑いなく
他より好ましいものであるが -
19:18 - 19:21それらのどれも
-
19:21 - 19:26慎重さや公平さの規律を犯すまでの
-
19:26 - 19:28情熱をもってして
-
19:28 - 19:31追い求める価値はない
また未来の心の平穏さは -
19:31 - 19:35自らの愚行の記憶による恥
自らの不公平な行いへの -
19:35 - 19:39恐怖や後悔によって
乱されるべきではない」 -
19:39 - 19:43つまり 他より優れているものも
あるにはあります -
19:43 - 19:49ひとつの未来を選び抜く力は
持っておくべきです -
19:49 - 19:53けれどもその選択が
異なる未来の差異を -
19:53 - 19:56過大評価することによって
強引で拙速なものになると -
19:57 - 19:58リスクが生じるのです
-
19:59 - 20:03望みは限られたものであれば
楽しむことができます -
20:03 - 20:05けれども望みは制限なしだと
-
20:05 - 20:09我々は嘘をつき人を騙し
ものを盗み他人を傷つけ -
20:09 - 20:11本当に価値のあるものを犠牲にするのです
-
20:11 - 20:13同時に恐怖が限られたものであるなら
-
20:13 - 20:15我々は用心深く慎重で
分別をもって行動できます -
20:15 - 20:17我々は用心深く慎重で
分別をもって行動できます -
20:17 - 20:20しかし恐怖が限りなく強大なものであれば
-
20:20 - 20:22我々は向こう見ずであり臆病になります
-
20:23 - 20:26私がこれらのデータを使って
みなさんに伝えたかったことは -
20:26 - 20:30私たちの願望や心配は
自らの内で作り出されるために -
20:30 - 20:36どちらも大げさなものとなり
その結果 -
20:36 - 20:41何かを選んだ後も常に別の何かを
探し求めているということです -
20:41 - 20:42ありがとうございました
-
20:42 - 20:47(拍手)
- Title:
- 私たちが幸せを感じる理由
- Speaker:
- ダン・ギルバート
- Description:
-
『幸せはいつもちょっと先にある-期待と妄想の心理学』の著者であるダン•ギルバートが、期待外れが不幸を呼ぶという考えに対立します。私たちの中にある「心理学的免疫システム」が、たとえ予想通りに事が運ばなくても、心からの幸せを感じさせてくれることがあるのです。
- Video Language:
- English
- Team:
closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 20:59
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Retired user edited Japanese subtitles for The surprising science of happiness | |
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Retired user edited Japanese subtitles for The surprising science of happiness | |
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Yuko Yoshida edited Japanese subtitles for The surprising science of happiness | |
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Haruka Nishimura added a translation |