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海洋プラスチック汚染研究の最前線 | 磯辺篤彦 | TEDxTenjin

  • 0:30 - 0:33
    マイクロプラスチックの話をします
  • 0:34 - 0:38
    大体 今世界で年間に
    3千万tのプラスチックごみが
  • 0:38 - 0:40
    道端に捨てられていると
    言われているんですね
  • 0:40 - 0:44
    その3千万tのプラスチックごみが
    どうなるかというのは
  • 0:44 - 0:46
    実のところ よく分かっていないんですが
  • 0:46 - 0:50
    ほとんどのプラスチックは
    いずれ道端に捨てられれば
  • 0:50 - 0:55
    川に入って 大きな川に移って
    それから海に流れ出るだろうと
  • 0:55 - 1:00
    まあほとんどっていうことはないですが
    そういう部分が必ず出てくる訳ですね
  • 1:00 - 1:02
    そうやって海に流れて行くプラスチックが
  • 1:02 - 1:07
    大体今年間で2百万tくらい
    流れ出るだろうという試算があるんですが
  • 1:08 - 1:12
    それがですね
    海を漂うと海岸に打ち上がって
  • 1:12 - 1:14
    あるいは海をずっと漂いながら
  • 1:14 - 1:16
    紫外線を浴びて 次第に劣化していってですね
  • 1:16 - 1:23
    それから 波だとかそういった
    物理的な作用で 細かく砕けて
  • 1:25 - 1:29
    人の目にはつかなくなるんですけど
    いわゆるマイクロプラスチックという —
  • 1:29 - 1:32
    5mm以下をひとつの目安として
    呼んでいますが —
  • 1:32 - 1:36
    そういう小さな微細片になって
    また海を漂い始める
  • 1:36 - 1:40
    で そういったプラスチック微細片
    マイクロプラスチックと言われるものが
  • 1:40 - 1:41
    海を漂うとですね
  • 1:43 - 1:44
    目に触れることは無いんですが
  • 1:44 - 1:48
    小さいだけに 色んな生き物が
    それを誤食してしまうんですね
  • 1:48 - 1:50
    誤って食べてしまう訳ですね
  • 1:50 - 1:51
    誤って食べてしまうと —
  • 1:51 - 1:54
    基本的に プラスチックというものは
    無害なんですけれども —
  • 1:55 - 1:59
    プラスチックの表面には
    「残留性有機汚染物質」といわれる —
  • 1:59 - 2:03
    PCBなんかが よく名前が通っていると
    思いますけれども —
  • 2:03 - 2:07
    そういった残留性有機汚染物質
    いわゆる「POPs」というものが
  • 2:07 - 2:12
    プラスチックの表面に非常に吸着しやすい
    という性質を持っていて
  • 2:12 - 2:15
    海にせっかく薄く広がった
    そういった残留性有機汚染物質が
  • 2:15 - 2:17
    プラスチックに乗っかって
  • 2:17 - 2:23
    そしてそれを生物が食べることによって
    POPsが生物の体内に移ってしまう
  • 2:23 - 2:26
    それが海洋生物にとって
  • 2:26 - 2:29
    何か悪影響が出るのではないかという
    危惧がある訳ですね
  • 2:29 - 2:30
    一方で
  • 2:30 - 2:36
    また粒子毒性 (particle toxicity)
    という言葉があります
  • 2:36 - 2:40
    これは何であっても
    食べ過ぎれば毒物だということで
  • 2:40 - 2:42
    プラスチックを食べすぎるとですね―
  • 2:42 - 2:45
    食べる事自体も生物は
    エネルギーを使いますから —
  • 2:45 - 2:48
    それで何らかのストレスを受けて
  • 2:48 - 2:52
    摂食障害や成長障害など
    色々な障害が出ると言われていますが
  • 2:52 - 2:55
    それがプラスチックを誤食することの悪影響で
  • 2:55 - 3:00
    もうひとつの結果であると言われています
  • 3:00 - 3:01
    実際ですね
  • 3:03 - 3:07
    どれだけマイクロプラスチックを食べると
  • 3:07 - 3:10
    生き物に何が起こるのかという
    実験がここ数年で
  • 3:10 - 3:14
    世界で60程度あるいは今は
    もうちょっと増えているかもしれませんが
  • 3:14 - 3:16
    多数行われています
  • 3:17 - 3:19
    その結果を並べてみますとですね
  • 3:19 - 3:23
    大体 海水1tあたりに
  • 3:23 - 3:27
    1g(1,000mg)位の重量で
  • 3:27 - 3:29
    マイクロプラスチックが
    浮くようになればですね
  • 3:29 - 3:34
    そこに生きる生き物には
    何らかの障害が出てくる —
  • 3:34 - 3:37
    成長障害だとか摂食障害だとかですね —
  • 3:37 - 3:41
    そういった障害が出てくると言われています
  • 3:41 - 3:43
    大事なことはですね
  • 3:43 - 3:47
    あくまでも実験室の中で
    確かめられた結果なんですけれども
  • 3:47 - 3:49
    大事なことは
  • 3:49 - 3:50
    このように実験室の中で
  • 3:50 - 3:56
    何らかの生物に影響が出ると言われるような
    浮遊マイクロプラスチックの濃度が
  • 3:56 - 4:00
    実際の海に現れるのかどうか
    今現在 現れているのか
  • 4:00 - 4:02
    現れていないとすれば
  • 4:02 - 4:05
    将来何年後ぐらいに そういう事態に
    なってしまうのか というのを
  • 4:05 - 4:11
    正しく監視し予測するということが
    今最も大切なことだと言われています
  • 4:11 - 4:14
    そこで 私達の研究グループは
  • 4:14 - 4:18
    昨年これは『Nature Communication』で
    発表したばかりの仕事なんですけれども
  • 4:18 - 4:25
    世界で初めて 浮遊マイクロプラスチックの
    浮遊量の将来予測を行いました
  • 4:26 - 4:29
    今 発表しているのは
    太平洋だけの結果なんですけれども
  • 4:29 - 4:31
    太平洋で約50年後
  • 4:31 - 4:34
    浮遊マイクロプラスチックの濃度が
    どの程度になってしまうのか —
  • 4:34 - 4:37
    もちろん プラスチックの量に対して
    何らかの規制をすれば
  • 4:37 - 4:39
    また状況は変わるでしょうけども —
  • 4:39 - 4:44
    何の規制もしないという前提で
    このままプラスチックが捨てられ続ければ
  • 4:44 - 4:47
    年間3千万t道端に捨てられて
  • 4:47 - 4:50
    年間2百万tぐらいは海に流れ出るという
  • 4:50 - 4:54
    今の状況が更に悪化していけばどうなるか
    という予測なんですけれども
  • 4:54 - 4:57
    今から50年後はですね
  • 4:57 - 5:02
    太平洋の中央辺りそして東アジアの海域では
  • 5:02 - 5:07
    大体1㎥ あたり(海水1tあたり)
    約1g(1,000mg)の
  • 5:07 - 5:13
    浮遊マイクロプラスチックが浮くことに
    なるだろうという予測を 私達はしました
  • 5:13 - 5:19
    これは先程申し上げた実験室の結果を
    そのまま復元できる量なんですね
  • 5:19 - 5:24
    つまり 実験室で生物に何らかの
    影響が出るという程の濃度に
  • 5:24 - 5:29
    実際の海も 今から50年後ぐらいには
    なってしまう可能性があるという
  • 5:29 - 5:31
    実験結果・予測結果 ―
  • 5:31 - 5:34
    コンピューターシミュレーションの結果を
    発表したばかりです
  • 5:35 - 5:39
    ただしですね この実験には
    大きな弱点がひとつあって
  • 5:39 - 5:42
    それは「サイズ」なんですね
  • 5:42 - 5:48
    実際 実験室の中で
    浮遊マイクロプラスチックを与える実験 —
  • 5:48 - 5:51
    プラスチックビーズを与える訳ですけれども
  • 5:51 - 5:54
    そのサイズは数μm あるいはnmのサイズ
  • 5:54 - 5:59
    あるいは大きくても数十μmの
    サイズのビーズを与えますが
  • 5:59 - 6:03
    私達が実際の海で監視し
    そしてその結果を踏まえて
  • 6:03 - 6:07
    コンピューターシミュレーションで予測する
    マイクロプラスチックの大きさは
  • 6:07 - 6:10
    実は そんな小さなプラスチックは
    扱えないんですね
  • 6:10 - 6:12
    小さすぎて観測する技術がない
  • 6:12 - 6:16
    従って それを予測する方法も
    ないということになります
  • 6:16 - 6:20
    私達が今 実際の海で監視し予測しているのは
  • 6:20 - 6:23
    せいぜい 数百μm以上の
    マイクロプラスチックです
  • 6:23 - 6:26
    従って 実験室と観測 ―
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    実際の海で あるいはコンピュータの中で
    予測するマイクロプラスチックのサイズには
  • 6:30 - 6:32
    今 大きなギャップがあって
  • 6:32 - 6:39
    私達の予測がそのまま自然の中で成立するか
    どうかには今の所確かなことが言えません
  • 6:40 - 6:41
    違う言い方をすれば
  • 6:41 - 6:47
    実験室の中で マイクロプラスチックによって
    何らかの影響があると言われるものが
  • 6:47 - 6:52
    実際の海で起こるかどうかも
    またこれは確かなことが言えない
  • 6:52 - 6:54
    今 そんな状況にあります
  • 6:54 - 6:56
    これが今マイクロプラスチック研究
  • 6:56 - 6:59
    あるいは海洋プラスチック汚染研究の
    最前線のひとつで
  • 6:59 - 7:02
    私達は 数十マイクロ、数マイクロ
  • 7:02 - 7:06
    あるいはもっと小さな
    マイクロプラスチックの行方を探して
  • 7:06 - 7:12
    その量の将来予測をするということが
    今 求められている訳です
  • 7:12 - 7:13
    このようにですね
  • 7:13 - 7:17
    マイクロプラスチックの研究
    海洋プラスチック汚染の研究というものが
  • 7:17 - 7:19
    まだ発展途上にあって
  • 7:19 - 7:21
    このまま行くと将来
  • 7:21 - 7:24
    海洋プラスチック汚染によって
    海洋生態系がどういう風に劣化していくか
  • 7:24 - 7:28
    あるいはこの地球環境がどのように
    変質していくかというものに対して
  • 7:28 - 7:33
    まだ確かな答えを
    私達は出すことができません
  • 7:33 - 7:38
    では 科学が確かな未来を出せないのなら
  • 7:38 - 7:41
    確かな未来を予見できない状態であれば
  • 7:41 - 7:47
    予見できるまで この問題を放置して良いのか
    という問いかけがあります
  • 7:47 - 7:54
    環境問題に関してはですね
    科学が十分な将来を予測できなくても
  • 7:54 - 7:59
    例えば その汚染物質に対する影響を
    将来十分予測できなくても
  • 7:59 - 8:03
    一旦広がってしまえば
    取り返しのつかない汚染に関しては —
  • 8:03 - 8:06
    マイクロプラスチックなんていうのは
    一回海に広がってしまえば
  • 8:06 - 8:08
    それは 回収などできませんから —
  • 8:08 - 8:11
    一旦広がってしまえば
    海洋生物に影響が出れば
  • 8:11 - 8:14
    それはもはや取り返しがつかない訳ですね
  • 8:14 - 8:17
    そういった汚染物質に対しては
  • 8:17 - 8:22
    今 科学が将来を十分に予見できなくても
    何らかの対策を講じる必要がある
  • 8:22 - 8:25
    これを「予防原則」といいますが
  • 8:25 - 8:27
    この予防原則に則って
  • 8:27 - 8:32
    私達は今 海洋プラスチック汚染に対して
    何らかの対策を講じる必要がある
  • 8:32 - 8:33
    そういったところにあります
  • 8:33 - 8:37
    これは 地球温暖化・気候変動でも
    同じことですね
  • 8:37 - 8:41
    温室効果ガスが広がってしまえば
    それを取り返すことは もはやできませんから
  • 8:41 - 8:45
    私達は 何らかの対策を講じる必要がある
  • 8:45 - 8:50
    まだ科学は十分に温室効果ガスが広がった
    気候変動の将来を予測できませんけれども
  • 8:51 - 8:56
    しかし私達はそれでも 予防原則に則って
    何らかの対策を講じる必要があるということで
  • 8:56 - 9:01
    パリ協定などのIPCCのように国際的な枠組み
  • 9:01 - 9:07
    科学的な知見に則って
    将来を今 変えようとしている訳ですね
  • 9:08 - 9:13
    海洋プラスチックに関しても
    私はこのように 国際的な枠組みに則って
  • 9:14 - 9:16
    プラスチックの削減というものに
  • 9:16 - 9:21
    今後は人類は舵を切らなければ
    ならないのだと考えています
  • 9:21 - 9:23
    というのも
  • 9:23 - 9:29
    プラスチックを完全に 完璧に管理する
    というのはほぼ無理であろうからなんですね
  • 9:29 - 9:35
    例えば今日本では年間9百万tの
    プラスチックが捨てられています
  • 9:35 - 9:39
    これは ただ捨てられていると言っても
    道端に捨てられている訳ではなくて
  • 9:39 - 9:43
    ほとんどが 焼却あるいは埋立
    再利用されている訳ですけれども
  • 9:43 - 9:48
    そんな日本であっても 年間14万tは
    環境中に漏れると言われています
  • 9:49 - 9:51
    平たく言えば 道端に捨てられる訳ですね
  • 9:51 - 9:53
    しかし14万tというのは実のところ
  • 9:53 - 9:59
    日本で捨てられるプラスチックごみ総量の
    1%~2%に過ぎません
  • 9:59 - 10:04
    一般論から言って
    50%を90%に上げることは可能ですが
  • 10:04 - 10:09
    99%を100%に上げるというのは
    コストを考えても ほぼ不可能に近い
  • 10:09 - 10:11
    ということは 私達は
  • 10:11 - 10:16
    「プラスチックは 環境中に漏れるものだ」
    という前提に立つ必要があるのだと思います
  • 10:16 - 10:17
    [日本の廃棄プラスチックの流れ]
  • 10:17 - 10:20
    管理が個人に委ねられる
    特に使い捨てプラスチック —
  • 10:20 - 10:23
    シングルユースのプラスチックであれば
    尚更 これを完全に管理するということは
  • 10:23 - 10:25
    不可能でしょう
  • 10:25 - 10:28
    日本で年間14万t漏れるということは
  • 10:28 - 10:31
    中国あるいは東南アジア
    人口比をかければ年間百万t
  • 10:31 - 10:35
    世界を合わせれば
    数百万tは漏れるものなんですね
  • 10:35 - 10:36
    プラスチックというものは
  • 10:36 - 10:38
    従ってこれを減らすためには
  • 10:38 - 10:42
    プラスチックの総量を減らす以外に
    私達には選択肢はないと考えています
  • 10:43 - 10:46
    ただ これも温室効果ガスと
    非常によく似た問題ですが
  • 10:46 - 10:50
    使い捨てプラスチックを完全に管理して
  • 10:50 - 10:53
    それを禁止してしまえば
  • 10:54 - 10:59
    それによって 不利益を被る人達が
    たくさんいる訳ですね
  • 10:59 - 11:02
    プラスチックというのは決して
    富裕層の贅沢品ではなくて
  • 11:02 - 11:06
    プラスチックがあるからこそ成り立つ
    清潔な暮らしだとか
  • 11:06 - 11:10
    高い福祉などというものを
    人類が それを実現させてきた訳ですね
  • 11:10 - 11:16
    従って 特に経済的な弱者ほど恩恵を被る
    プラスチックを一方的に無くすということは
  • 11:16 - 11:20
    これはまた 違うリスクを
    生むことになるでしょう
  • 11:20 - 11:22
    温室効果ガスと同じように
  • 11:22 - 11:27
    私達は 科学的な知見に則って
    しかし確実に
  • 11:27 - 11:32
    これから使い捨てプラスチックを
    減らしていくということが
  • 11:32 - 11:34
    求められているのだろうと思います
  • 11:34 - 11:39
    気候変動は 加害者と被害者が
    一致する訳ですね
  • 11:39 - 11:44
    私達が出す温室効果ガスによって
    私達の今現在そして将来未来の
  • 11:44 - 11:50
    生活・暮らしに影響を与える
    そういった問題なんですね
  • 11:50 - 11:57
    そして一方的に拙速に温室効果ガスの
    排出を失くしてしまうというのは
  • 11:57 - 11:59
    今度は経済に対してリスクが出てくる
  • 11:59 - 12:03
    プラスチックも全く同じ構図であることに
    気がつくことと思います
  • 12:03 - 12:05
    IPCCのような
  • 12:05 - 12:09
    「Intergovernmental Panel
    on Plastic Polution」といったような
  • 12:09 - 12:11
    国際的な枠組みが今後出来
  • 12:11 - 12:14
    そしてそこが出す
    科学的なエビデンスに基づいて
  • 12:14 - 12:16
    しかし確実にプラスチックを減らしていく —
  • 12:16 - 12:21
    そしてそれは弱者をも納得させる
    社会的あるいは国際的な合意のもとに
  • 12:21 - 12:24
    行われるべきだと考えています
Title:
海洋プラスチック汚染研究の最前線 | 磯辺篤彦 | TEDxTenjin
Description:

磯辺篤彦九州大学応用力学研究所教授はマイクロプラスチックによる海洋汚染について最前線で研究をしています。マイクロプラスチック汚染について最新の状況を学びましょう。
はたしてマイクロプラスチック汚染は止められるのでしょうか、そして「誰も取り残さない」より良い未来への道筋を立てるにはどうすれば良いのでしょうか?

磯辺篤彦 九州大学応用力学研究所教授、博士(理学)。専門は海洋物理学。海洋プラスチック研究の第一人者として環境省の研究プロジェクトや、国際協力機構と科学技術振興機構の研究プロジェクトでリーダーを務める。

このビデオは、TEDカンファレンスの形式で地元コミュニティが独自に運営するTEDxイベントにおいて収録されたものです。詳しくは http://ted.com/tedx をご覧ください。

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Video Language:
Japanese
Team:
closed TED
Project:
TEDxTalks
Duration:
12:37

Japanese subtitles

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