プライドの持つ力 | ジョージ・タケイ | TEDxKyoto

TEDから承認を受けて独自に開催されているローカル版であるTEDxのひとつ、TEDxKyotoで行われたこのトークでは米国史の最も暗い時期にジョージ・タケイが受けたインスピレーションと強さを語ります。第二次世界大戦中、120万人もの日系アメリカ人が強制収容されたのです。

強制収容所に張られた有刺鉄線の向こう側で過ごした幼少時代を思い出し、タケイは生涯をかけて、苦い混乱をから情熱的な尊敬とプライドを日系アメリカ人同胞に抱いていった道のりを語ります。そしてアメリカが私たちを包み祝福するようになるのです。

銀幕を飾った俳優であり、舞台での演技からでは計り知れないようなありのままの姿を見せてくれます。ジョージ・タケイが22歳でカメラの前で演技を始めるまでに、想像もつかないような、また真に理解されないような過酷な経験を経てきたのです。有刺鉄線に囲まれた強制収容所で幼少期を過ごした後、 幾多の苦節を経て50年にも及ぶ役者人生を築きます。そのことが更なる夢を呼び起こし、政治活動や社会評論、著述業やインターネットにも影響を及ぼしていきます。 そのひとつひとつがインスピレーションに満ちており、ジョージを果敢に未知なる世界に挑ませているのです。

私はエンタープライズ号の退役軍人です

（笑）

私は銀河を飛び

巨大な宇宙船を操縦していました

乗組員にはたくさんの人がいて

世界中から集まっていました

人種も違えば

文化も違い

祖先から受け継いだものも
違いましたが

一緒に働いていたのです

私たちの使命は未知なる世界を
探検することで

新たな生命と文明を探すことでした

誰も行ったことのないところへ
果敢に挑んだのです

そして・・・

（笑）

（拍手）

私は日系移民三世です

新しく未知の世界であるアメリカに
果敢に渡ったのです

新しいチャンスを追い求めたのです

私の母はカリフォルニア州
サクラメントの生まれです

父はサンフランシスコ出身です

両親はロサンゼルスで出会って
私はそこで生まれました

4歳の時

日本軍によって真珠湾が攻撃されました

1941年12月7日のことです

一夜にして世界は大戦に突入しました

アメリカはヒステリーに陥りました

日系アメリカ人は

日本人を先祖に持つアメリカ市民は

疑惑と恐れの目で見られていました

真珠湾を攻撃した日本人と

私たちが似たような
外見であるというだけで

公然と憎まれていました

そのヒステリーは日ごとに増し

1942年2月

アメリカ大統領の
フランクリン・ルーズベルトは

西海岸にいた全ての日系アメリカ人に
すぐ集合するよう命令しました

告訴もなく

裁判もなく

適正手続きもありませんでした

適正手続きは
司法制度の核となる柱ですが

すべて消え去ったのです

そうして私たちは集められ
収容されたのです

10の強制収容所に入れられ

ほとんどはアメリカの人里
離れたところで

焼けつくような暑さの
アリゾナ州の砂漠や

蒸し暑いアーカンソー州の湿地

ワイオミング州の荒廃した土地
アイダホ州、ユタ州、コロラド州

そして最も荒れ果てた
カルフォルニア州にある2カ所

4月20日は私の5歳の誕生日でした

誕生日から数週後のとある早朝に

両親は弟と妹 そして私を突然起こすと

急いで着替えさせました

弟と私はリビングにいて

窓から表を見ていました

そして2人の兵士が
近づいてくるのが見えました

彼らは銃剣のついたライフルを
持っていました

玄関先につくと
ドアをガンガン叩きました

父が応対すると

兵士たちから家を出るように
命令されました

父は私と弟に小さな荷物を
持たせました

家から出て 外で
母が出てくるのを待ちました

ついに母が出てきました

赤ん坊だった妹を抱いて

もう一方の腕に大きなダッフルバッグを
抱えていました

両頬にとめどなく
涙が流れていました

この光景は一生
忘れることができません

脳裏に鮮明に
焼きついているのです

家を追われ 列車に乗せられました

他の日系アメリカ人の家族と
一緒でした

車両の両端には警備の兵士がいて

まるで私たちは犯罪者のようでした

私たちは国土の2/3を移動させられ

4日3晩列車に揺られ続けて

アーカンソーの湿地に
辿り着いたのでした

いまだに私を閉じ込めていた
有刺鉄線を覚えています

こちらを向いたマシンガンのあった
あの高い監視塔を覚えています

夜 宿舎から便所に行く時には

サーチライトで照らされました

5歳の私は 便所までの道を
照らしてくれるなんて

ちょっと良いかもと思っていました

（笑）

私は ほんの子どもで
幼すぎて

事態が理解できていませんでした

子どもには驚くほど適応力があります

グロテスクで異常な
収容キャンプでの生活が

私の日常となりました

汚いご飯のために

うるさくてごみごみした
食堂で1日3回並ぶことも

父と一緒に大浴場に行って

お風呂に入ることも

有刺鉄線で囲まれた収容所で

拘束されることも日常となりました

戦争が終わると私たちは
解放されました

アメリカのどこにでも行ける
片道切符を渡されました

両親は元いたロサンゼルスに
戻ることにしました

しかしロサンゼルスでの
生活は厳しいものでした

一文無しでした

財産はすべて失い 偏見は酷いものでした

私たちの最初の家はLAでも
最も貧困層の多いスキッド・ロウで

路上生活者や酔っ払い
犯罪者などが暮らしていました

小便の悪臭が

大通りや

路地裏だけでなく

玄関にも立ちこめていました

酷い体験でした

子どもにとってはただ恐ろしく

酔っぱらいがふらふらと
近づいてきたと思うと

私たちの前で倒れ

嘔吐しました

妹は「ママ おうちに帰ろうよ！」
と言いました

有刺鉄線の向こう側が私たちには
帰りたいと思うお家だったからです

両親は普通の生活を
取り戻そうと必死に働きました

私たちはすべてを失いました

彼らは人生の半ばで
再出発をきることになりました

本当に血のにじむような努力で

資金を工面して

素敵な郊外に寝室が3つある
一軒家を買いました

私はティーンエイジャーに
なっていました

幼少期の収容体験に
興味を持ち始めました

公民の本を読みました

アメリカの民主主義についての
理想が書かれていました

「全ての人間は平等に造られていること」

「全ての人間は

生命 自由及び幸福追求
について不可侵の権利を有すること」

それらはどうしても

子どもの時代の強制収容とは
相容れませんでした

歴史の本は収容所について
全く触れていませんでした

そこで私は父とこのことについて
毎晩長く ときに熱く 議論するようになりました

何度も何度もそんな議論を
交わしました

そうして私が得たもの
それは父の英知でした

父こそが あの収容の状況下で

最も苦しんだ本人なのでした

それでも父はアメリカの民主主義を
理解していました

父は私たちの民主主義は
人民の民主主義だと言いました

人間と同様に素晴らしい
可能性を秘めている

ただそれと同時に 人間同様に
脆く崩れ去る可能性もある

父は言いました「アメリカの民主主義は

理想を尊び 素晴らしい民主主義を
実現するために

熱心に取り組む善良な
合衆国民に支えられている」のだと

父は私を選挙運動本部に
連れていきました

当時はイリノイ州知事が
大統領選に出馬しており

父はアメリカの選挙政治についての
いろはを教えてくれました

それと 第二次大戦中の
若き日系アメリカ人たちのことも

一緒に語ってくれました

真珠湾が攻撃された時
若い日系アメリカ人たちは

他の若いアメリカ人たちと同じように

アメリカ合衆国の為に闘おうと
徴兵委員会へと志願にいったそうです

しかしこの国を想っての行動も
拒絶されてしまいました

兵役に就くことが拒否され
敵性非外国人として扱われました

国のために戦うと志願しているのに

敵呼ばわりされるなんて
常軌を逸していました

その言葉には外国人ではないという
意味も含まれていたので

市民という言葉が否定的に表現されて
いました

政府は私たちから「市民」という
言葉さえも奪ったのです

そして一年間も強制収容されました

しかし合衆国政府が戦時の
人手不足に気づくと

すると 突然手のひらを返して

若い日系アメリカ人たちを
集めて部隊を作りました

まったくもって不合理な話ですが

素晴らしいことが起こりました

何千もの若い
日系アメリカ人の男女―

有刺鉄線の向こう側に
追いやられていた者たちが

私たちを監視する兵士と
同じ軍服を着て

強制収容所に家族を残して

国のために戦いました

彼らは強制収容所から
家族を出すためだけではなく

彼らの理想を大切にしていたからこそ

戦ったと言っています

私たちの政府が何を守ろうとし
何を守るべきなのか

何によって 何が廃止されたのか

すべての人は平等です

だから彼らは国のために戦ったのです

彼らは日系アメリカ人部隊として

ヨーロッパ戦線へ送られました

そして必死に戦い

素晴らしい武勇を持って戦いました

彼らが送り込まれたのは
最も危険な任務ばかりで

全部隊中 最悪の戦闘死傷率を

継続的に記録しました

それをよく表した戦いがあります

それがゴシックラインの戦いです

ドイツ兵は山間部に散らばって
いました

岩だらけの斜面で
堅固な洞窟で

連合国の３部隊による６ヶ月の
砲撃も功を奏さず

膠着状態が続いていました

そこに日系第442連隊戦闘団が
追加戦力として投入されます

そして独自の しかし危険な
作戦に出ました

山の裏は険しい崖になっていました

ドイツ兵は裏側からの攻撃は

不可能だと考えていました

しかし442部隊はその不可能を
実行しました

月のない闇夜に

岩壁をよじ登り始めました

重い装備を背負って

一歩間違えれば300m 以上も
落ちてしまう

急峻な崖を 彼らは

夜通し登りました

手や足を滑らせる者が
いないはずもなく

山峡へと落下して
命を落とす者もいました

ただただ 音もなく
落ちていきました

自分たちの存在を知られないよう

声を押し殺して堪えました

8時間も登り続け

頂上までたどり着けた者は

夜が明けるのをじっと待ちました

そして朝日が差すやいなや
奇襲を仕掛けました

ドイツ兵は驚きました

そして砦が陥落し
ゴシックラインを突破したのです

6ヶ月に渡る膠着は442部隊
によって32分で決着しました

素晴らしい行いでした

そして戦争が終わると

アメリカに戻った442部隊は

第二次世界大戦中
最多の勲章を授与されていました

ホワイトハウスの庭園に招かれ

トルーマン大統領はこう言いました

「敵だけではなく偏見と戦い
そして勝利した」

彼らは私のヒーローです

この国の輝かしい理念を

信じて手放さなかったのです

そして彼らは

アメリカ人というのは

一部の人たちのことだけではなく

人種によって

アメリカ人が定義されないということを
証明しました

アメリカ人が誰であるかという
定義の中に

恐れられ 疑われ

憎まれさえした日系アメリカ人をも
その中に包括させたのです

彼らは変革をもたらし

大きな遺産を残してくれました

彼らは私のヒーローです

そして私の父もヒーローです

民主主義が何かを理解し
私を導いてくれました

彼らは大きな遺産を残してくれました

遺産を受け継ぐというのは
責任を伴います

今 私は

アメリカを一層よくするために
力を尽くしています

私たちの政府を真の政府にするためです

私は今 私のヒーロー達のお陰で

また私たちが
くぐり抜けてきた苦難のお陰で

皆様の前に立てています

一人の日系アメリカ人のゲイとして

しかしそれだけではありません

私は誇りを持ったアメリカ人です

ありがとうございます

(拍手)