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ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』を読むべき理由 / ジル・ダッシュ

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    ウィリアム・ゴールディングは
    人間性への信頼を失いつつありました
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    第二次世界大戦で
    英国の駆逐艦に乗務した
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    元哲学教師の海軍大尉は
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    人間の残虐性を
    絶えず目にすることになりました
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    国に戻っても
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    冷戦下の超大国が
    核兵器で殲滅すると互いに脅し合っており
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    人間の本質とは何なのか
    考えさせられました
  • 0:32 - 0:35
    その暴力の不可避性への考察が
  • 0:35 - 0:40
    処女作にして最も有名な作品
    『蠅の王』として結実しました
  • 0:40 - 0:43
    この小説は21社から断られた後
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    1954年に出版されました
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    題名は 傲慢と戦争に結び付けられている悪魔
    ベルゼブブから取られていますが
  • 0:52 - 0:56
    この2つは物語の
    核心をなしています
  • 0:56 - 1:00
    この小説は 難破して未開の孤島に
    流れ着いた少年たちの冒険を描く
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    人気ジャンルへの
    暗いパロディになっています
  • 1:05 - 1:09
    そういう物語では 主人公たちが
    新たな環境で持ち上がるー
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    様々な危難を乗り越えながら
    自然を征服していきます
  • 1:12 - 1:14
    このジャンルはまた
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    当時の英国作品によくある
    植民地主義的な見方を良しとし
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    少年たちが島の原住民に
  • 1:21 - 1:24
    “より優れた” 英国的価値を
    教えたりします
  • 1:24 - 1:27
    ゴールディングの皮肉は痛烈で
  • 1:27 - 1:33
    最も人気があった漂流冒険物である
    バランタインの『さんご島の三少年』から
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    設定や人物名を
    借りることまでしています
  • 1:37 - 1:39
    バランタインの本が読者に
  • 1:39 - 1:43
    「喜びと学びと限りない楽しみ」を
    約束しているのに対し
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    ゴールディングの本にあるのは
    暗さです
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    『蠅の王』では少年たちが
    既に島にいるところから始まりますが
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    会話の端々から
    恐ろしい旅の様子がうかがえ
  • 1:53 - 1:58
    彼らの飛行機は核戦争のさなかに
    撃墜されています
  • 1:58 - 2:03
    少年たちは 6歳から13歳で
    互いを知りません
  • 2:03 - 2:09
    例外は合唱隊で 黒い制服を着ていて
    ジャックという少年に率いられています
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    バランタインの『さんご島の三少年』同様に
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    少年たちの新たな世界は
    楽園のように見え
  • 2:15 - 2:19
    飲み水も 寝場所も
    豊富な食べ物もあります
  • 2:19 - 2:21
    しかし冒頭から
  • 2:21 - 2:26
    この一見平穏な状況には
    不気味な暗い影が差しています
  • 2:26 - 2:30
    少年たちの影は
    「黒いコウモリのような生き物」にたとえられ
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    合唱隊が海岸に登場する様も
  • 2:33 - 2:36
    「うごめく何か暗いもの」と
    形容されています
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    到着して時を経ず
    少年たちは
  • 2:39 - 2:44
    森に潜む獰猛な獣の
    恐ろしい噂をし合います
  • 2:44 - 2:47
    ゴールディングの物語は
    この不吉な導入から始まって
  • 2:47 - 2:49
    大人が不在である中で
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    団結が速やかにほころんでいく様が
    描かれます
  • 2:53 - 2:57
    生き残った者たちは 最初は
    秩序を打ち立てようとします
  • 2:57 - 3:01
    ラルフという少年は
    ほら貝を吹いてみんなを集めたり
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    作業を割り振ったりします
  • 3:03 - 3:05
    しかしジャックが
    リーダーの地位をラルフと争って
  • 3:05 - 3:10
    グループはまとまりを失い
    少年たちは暗い衝動に身を任せます
  • 3:10 - 3:13
    烏合の衆と化した子供たちは
    救助されるための計画もすぐに忘れ
  • 3:13 - 3:15
    わずかな理性の声を押し殺し
  • 3:15 - 3:21
    ジャックに盲目的に従って 島の際へと
    正気の際へと進んで行きます
  • 3:21 - 3:25
    その倫理、礼儀、社会に関する
    普遍的テーマによって
  • 3:25 - 3:28
    文学の名作とされている
    この小説では
  • 3:28 - 3:33
    当時の慣習や 長く保たれてきた
    人間性への信頼が風刺されています
  • 3:33 - 3:37
    漂流冒険譚では植民地主義が
    肯定されていることが多いですが
  • 3:37 - 3:40
    『蠅の王』では
    それがひっくり返されています
  • 3:40 - 3:44
    原住民を紋切り型の
    野蛮人として描く代わりに
  • 3:44 - 3:50
    ゴールディングは天使のような英国の児童たちを
    野蛮な戯画的存在へと変えています
  • 3:50 - 3:53
    少年たちが島内で
    争っている間にも
  • 3:53 - 3:58
    外では 彼らが島に来る原因となった
    破滅的な戦争が続いています
  • 3:58 - 4:01
    少年たちを彼ら自身から
    救い出せたとしても
  • 4:01 - 4:04
    いったいどんな世界に
    戻ることになるのでしょう?
  • 4:04 - 4:10
    登場人物たちを特定の場所や時代に
    結び付けるものはほとんどなく
  • 4:10 - 4:12
    この小説は時代を超えた
  • 4:12 - 4:16
    生の人間の本性への
    考察のように感じられます
  • 4:16 - 4:19
    ゴールディングの暗い見方に
    賛同しない読者もいるでしょうが
  • 4:19 - 4:25
    『蠅の王』には 最も楽観的な人さえ
    不安にさせるものがあります
Title:
ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』を読むべき理由 / ジル・ダッシュ
Speaker:
ジル・ダッシュ
Description:

第二次世界大戦で人間の残虐性を目にしたウィリアム・ゴールディングは人間性への信頼を失います。のちの冷戦では超大国が互いに核兵器で殲滅すると脅し合う状況となり、人間の本性と暴力の根っこにあるものを考えさせられました。その考察が最初の小説『蠅の王』に結実します。ジル・ダッシュがこの時代を超えた風刺作品について探ります。

講師 ジル・ダッシュ
監督 Lucy Animation Studio

このビデオの教材 https://ed.ted.com/lessons/why-should-you-read-lord-of-the-flies-by-william-golding-jill-dash

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Video Language:
English
Team:
closed TED
Project:
TED-Ed
Duration:
04:25

Japanese subtitles

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