筋肉疲労の驚くべき原因 ー クリスチャン・モーロー

筋トレをしていると最初は簡単に感じられますが、段々と大変になり持ち上げられなくなってしまいます。腕の内側では、物を持ち上げるための筋肉が 収縮できなくなっているのです。一体、何が起きているのでしょうか？
クリスチャン・モーローが具体的にどのように筋肉が動かされ、何が筋肉疲労を引き起こすのかを説明します。

レッスン：クリスチャン・モーロー
監督：ニコラ・ラツゴ
＊このビデオの教材：https://ed.ted.com/lessons/the-surprising-reason-our-muscles-get-tired-christian-moro

筋トレをしていると

最初は簡単に感じられますが

段々 大変になり
持ち上げられなくなってしまいます

腕の内側では

物を持ち上げるための筋肉が
収縮できなくなっているのです

なぜ筋肉は疲れるのでしょうか？

乳酸や体力の消耗が原因であると
されることが多いのですが

これらだけが筋肉疲労の
原因ではありません

他の主な要因は

脳からの信号に反応する
筋肉の能力にあります

筋肉疲労の根本原因を
理解するためには

神経からの信号に反応し どのように
筋収縮するかを知る必要があります

これらの信号は運動ニューロンという
長く 細い細胞を通って

一瞬で脳から筋肉へと送られます

運動ニューロンと筋細胞の間には
非常に小さな隙間があり

この隙間を通して行われる粒子の交換が
筋収縮を可能にします

隙間の片側には

アセチルコリンという神経伝達物質を
含んでいる運動ニューロンがあり

反対側には

荷電粒子 つまりイオンがあり

内側にカリウム 外側にナトリウムが

筋細胞膜に沿って並んでいます

脳からの信号の反応として

運動ニューロンは
アセチルコリンを放出し

筋細胞膜の細孔を
開けさせます

ナトリウムが流入し
カリウムが放出されます

これらの荷電粒子の流れは
筋収縮において非常に重要で

荷電量の変化は
活動電位という電気信号を

筋細胞全体で発生させ

筋細胞内に蓄えられている
カルシウムの放出を刺激します

このカルシウムの流れが
筋肉の収縮をもたらします

筋繊維に埋めこまれたタンパク質が
筋繊維と結びつき

筋同士を引き寄せて

カチッとロックを掛けることで
収縮が起きているのです

筋収縮に必要なエネルギーは
ATPという分子によりもたらされます

またATPは後に筋細胞膜を通して
イオンを逆向きに移動させ

ナトリウムとカリウムの
両方のバランスを元の状態に戻します

この全体の過程が 筋収縮が起こるたびに
繰り返されるのです

それぞれの収縮で

ATPの形態をとったエネルギーが
使い尽くされると

乳酸のような老廃物が生み出され

イオンの中には筋細胞膜から
流れ出すものもあり

より小さなイオンの塊が
筋細胞膜に残されていきます

筋細胞は収縮を繰り返すたびに
ATPを使い切るのですが

常に より多くのATPを
作っているので

大抵は

ひどい筋肉疲労でも このエネルギーを
使い尽くすことはありません

さらに言えば
多くの老廃物は酸性ですが

疲労した筋肉の
pH値は 正常範囲内であるため

筋細胞の組織が効果的に老廃物を
除去していることが分かります

筋収縮が繰り返されるうちに
いずれは

カリウムやナトリウム カルシウムの

イオン濃度が低下し
すぐに周辺から得られる量が不足して

系を適切な状態に戻すことが
出来なくなるでしょう

そのため 脳が信号を送ったとしても

筋細胞は収縮に必要な活動電位を
生み出すことができません

しかし ナトリウムやカリウム
カルシウムのようなイオンが

筋細胞の中や周りで使い尽くされても

これらのイオンは体内の
他の場所に豊富にあるので

少しの時間で

必要とされている場所に
戻ってきます

これは 時に活発なナトリウムや
カリウムポンプの力を借りて行われます

つまり 動きを止めて休憩すると

イオンが筋肉に補充されることで
筋肉疲労が和らぐのです

定期的に運動すればするほど

毎回 筋肉が疲れるまでに
かかる時間が長くなります

なぜなら あなたが強ければ強いほど

一定の重さの物を持ち上げる時に

筋肉を収縮させるために

脳が神経信号を送る
繰り返し回数が減るからです

循環回数の少なさは イオンの枯渇が
遅くなることを意味するので

身体状態が頑健になるほど

同じ強さでより長く
運動することができるのです

多くの筋肉は運動によって発達し

筋肉が大きくなるほど
より多くのATPを蓄えることができ

さらに 老廃物を
取り除く能力を高め

疲労が起きるのを
ずっと先に遅らせられます