LIGOはどのように重力波を見つけたのか—そしてその先は?
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0:02 - 0:04今から100年以上遡った
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0:04 - 0:061915年のこと
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0:06 - 0:10アインシュタインは
一般相対性理論を発表しました -
0:10 - 0:12これは少し変わった名前ですが
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0:12 - 0:15重力を説明する理論です
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0:15 - 0:20あらゆる物体や惑星の持つ質量は
それ自体が他の質量を引き付けますが -
0:20 - 0:24ニュートンが提唱したような
瞬間的に働く引力によるのでは無く -
0:24 - 0:28人間、惑星も含めたあらゆる物体が
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0:28 - 0:33時空の柔軟な構造に
歪みを引き起こすからだという理論です -
0:33 - 0:36時空とは私たちが生きている場所で
また全てのものを -
0:36 - 0:37互いに関係させている枠組みです
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0:38 - 0:41例えばマットレスに寝そべると
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0:41 - 0:43その形が歪むのと似ています
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0:44 - 0:49質量のあるものは動きます—
ニュートンの法則に従うからではなく -
0:49 - 0:53時空が歪んでおり
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0:53 - 0:56わずかに曲がった
曲面に沿って動くからです -
0:56 - 0:58マットレスが沈んだ分
一緒に寝ている人が -
0:58 - 1:02寄り添ってくるようなものです
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1:02 - 1:04(笑)
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1:05 - 1:081年後の1916年
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1:08 - 1:12アインシュタインは自身の理論から
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1:12 - 1:16重力波が存在すること
そして重力波は -
1:16 - 1:19質量のあるものが動くときに
生まれることを導き出しました -
1:19 - 1:22例えば 2つの星が
互いの周りを回り -
1:22 - 1:24系の持つエネルギーを奪う―
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1:24 - 1:27時空の歪みを作り出し
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1:27 - 1:31星が互いに近づいていくような場合です
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1:32 - 1:35しかし彼は同時に
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1:35 - 1:40この影響は大変微少なため
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1:40 - 1:42計測されることは
決してないだろうと考えました -
1:43 - 1:50私がお話しするのは
多くの国で研究している― -
1:50 - 1:54数百人もの科学者たちの
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1:54 - 1:58何十年間におよぶ研究をもとに
ごく最近 2015年になって -
1:58 - 2:01私たちが 重力波を
初めて観測することになった― -
2:01 - 2:03経緯についてです
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2:04 - 2:06長い話になりますが
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2:07 - 2:1213億年前に始まります
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2:13 - 2:16昔むかし—
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2:16 - 2:19遥か彼方の銀河で...
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2:19 - 2:21(笑)
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2:21 - 2:232つのブラックホールが
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2:23 - 2:26互いの周りを回っていました
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2:26 - 2:29「タンゴを踊って」いたんです
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2:29 - 2:31最初はゆっくり
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2:31 - 2:34しかし 重力波を発するにしたがって
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2:34 - 2:37互いの距離は縮まり
スピードを増して -
2:37 - 2:40ほぼ光速で周り始めた頃
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2:40 - 2:44これらは1つのブラックホールへと合体し
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2:44 - 2:47太陽の60倍の質量になりました
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2:47 - 2:52360キロメートル四方の空間に
押し込められたそれは -
2:52 - 2:55私が住むルイジアナ州の大きさです
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2:55 - 2:56私が住むルイジアナ州の大きさです
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2:57 - 3:02この驚くべき効果は 重力波を生み出し
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3:02 - 3:06これが銀河で起こった「抱擁」の知らせを
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3:06 - 3:08全宇宙へと届けました
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3:10 - 3:17重力波による影響を検知する方法を
開発するには長い時間を要しました -
3:17 - 3:19距離の変化を検知する方法を
用いているからです -
3:19 - 3:24距離の変化を検知する方法を
用いているからです -
3:24 - 3:27縦方向の距離を測るのです
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3:27 - 3:302015年に重力波が地球を通り過ぎた時
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3:30 - 3:322015年に重力波が地球を通り過ぎた時
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3:33 - 3:37あらゆる距離という距離に
影響を及ぼしました -
3:37 - 3:40皆さんのお互いとの距離
皆さんと私との距離 -
3:40 - 3:42私たちの背の高さ—
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3:42 - 3:45私たちはひとり残らず
ほんの僅かだけ引き伸ばされ縮められました -
3:46 - 3:50その効果は距離と
比例しているという予測でしたが -
3:51 - 3:53とても小さなもので
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3:53 - 3:58私の背の高さよりも
ずっと長い距離に対しても -
3:58 - 4:01影響は無に等しいといえるものです
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4:01 - 4:06例えば地球と太陽の間の距離が
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4:06 - 4:10原子1個分の直径ほどの
長さしか変化しませんでした -
4:11 - 4:13どのように計測できるでしょう?
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4:13 - 4:15どうやって測ったらいいのでしょう?
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4:17 - 4:1950年前
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4:19 - 4:23カリフォルニア工科大学とMITの
先見の明のある物理学者たち -
4:23 - 4:26キップ・ソーン、ロナルド・ドレーバー
レイナー・ワイスは -
4:26 - 4:30数キロメートル離れた
鏡同士の距離を測る― -
4:30 - 4:34レーザーを用いて
正確に距離を測れると考えました -
4:34 - 4:38レーザーを用いて
正確に距離を測れると考えました -
4:38 - 4:42長い年数をかけて
多くの科学者たちが研究を重ね -
4:43 - 4:46技術とアイデアを発展させました
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4:46 - 4:48そして20年後
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4:48 - 4:51今からほぼ30年前になります
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4:52 - 4:56彼らはアメリカで2つの重力波検出器―
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4:56 - 4:57干渉計型重力波検出器を
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4:57 - 4:59アメリカで造り始めました
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4:59 - 5:03それぞれは4キロの長さで
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5:03 - 5:061つはルイジアナ州リビングストンの
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5:06 - 5:10美しい森の中に
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5:11 - 5:13もう1つはワシントン州のハンフォード
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5:13 - 5:16砂漠の真ん中にあります
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5:17 - 5:22干渉計型重力波検出器には
レーザーが取り付けられており -
5:22 - 5:24設備の中央から
真空の中を4キロメートル伝わり -
5:24 - 5:27鏡に反射して戻って来ます
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5:27 - 5:302つのアームの距離差を測定します
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5:30 - 5:322つのアームの距離差を測定します
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5:33 - 5:37これらの検出器は
極めて感度が高いものです -
5:37 - 5:40世界で最も精度の高い機器です
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5:41 - 5:43なぜ2つも作ったのでしょうか
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5:43 - 5:46私たちが計測したいシグナルは
宇宙からやってきますが -
5:46 - 5:48それとは別に鏡は常に動いています
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5:48 - 5:51そこで
天体物理学的な効果である― -
5:51 - 5:55重力波の影響を
区別する必要がありますが -
5:55 - 5:59これは両方の検出器に
現れるはずなので -
5:59 - 6:02どちらか一方の検出器にしか
現れない― -
6:02 - 6:05局所的な動きからは
区別することができます -
6:07 - 6:102015年9月
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6:10 - 6:15第2世代の技術を用いた検出器を
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6:15 - 6:17取り付けている途中で
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6:17 - 6:22当時は未だ我々が求める最適な感度に
到達していませんでした -
6:22 - 6:232年後の今もそこに
至ったとは言えませんが -
6:23 - 6:252年後の今もそこに
至ったとは言えませんが -
6:25 - 6:28私たちはとにかくデータを集めたかったのです
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6:28 - 6:30何かを見つけられるとは
思っていませんでしたが -
6:30 - 6:33数ヶ月分のデータを集める準備をしていました
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6:34 - 6:37その時 我々は自然に驚かされました
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6:37 - 6:422015年9月14日
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6:42 - 6:45両方の検出器で
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6:45 - 6:47重力波が観測されました
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6:47 - 6:50どちらの検出器でも
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6:50 - 6:53振幅と周波数が増し そして減少するという
繰り返しが観測されました -
6:53 - 6:54振幅と周波数が増し そして減少するという
繰り返しが観測されました -
6:54 - 6:57両方の検出器で同じものが観測されました
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6:57 - 6:59重力波だったのです
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7:00 - 7:05それだけでなく
この波の形を解析してみると -
7:05 - 7:09これが10億年以上も前に
ブラックホールが -
7:09 - 7:11ひとつに合体した時のものだと
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7:11 - 7:14分かったんです
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7:16 - 7:17これには—
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7:17 - 7:23(拍手)
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7:24 - 7:26感動しました
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7:27 - 7:30最初は私たちも信じられませんでした
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7:30 - 7:33こんなに早く検出できるなどと
想像もしていなかったので -
7:33 - 7:34こんなに早く検出できるなどと
想像もしていなかったので -
7:34 - 7:37皆驚きました
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7:37 - 7:39これが本物の信号だと確認するのに
何ヶ月もかけました -
7:39 - 7:42誤りだったという可能性の
余地を残したくなかったからです -
7:43 - 7:44しかしそれは本物でした
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7:44 - 7:46疑いを晴らすかのように
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7:46 - 7:49検出器は この年の12月に
同じような信号を検出しました -
7:49 - 7:54最初のものよりは小さな
重力波を観測したのです -
7:54 - 7:55最初のものよりは小さな
重力波を観測したのです -
7:55 - 7:59最初の重力波は
陽子の1/4000の大きさの変化を -
7:59 - 8:024キロメートルの距離に対して
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8:03 - 8:04生じさせました
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8:04 - 8:07確かに2度目に検出した信号は
更に弱いものでしたが -
8:07 - 8:11私たちの基準では
間違いないと判断できるものでした -
8:13 - 8:16実際には これらの信号は音波ではなく
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8:16 - 8:18時空のさざ波ですが
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8:18 - 8:22この信号でスピーカーを
鳴らしてみたいと思います -
8:22 - 8:25私たちはこれを
「宇宙の音楽」と呼んでいます -
8:26 - 8:29その最初の2つの音を
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8:29 - 8:31聴いてください
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8:31 - 8:33(鳥の鳴き声のような音)
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8:34 - 8:37(鳥の鳴き声のような音)
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8:37 - 8:412つめの短い音は
2つのブラックホールが -
8:41 - 8:43最期の一瞬に発したもので
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8:43 - 8:48その一瞬の内に
莫大なエネルギーを放出しました -
8:48 - 8:55太陽3つ分の質量が
あの有名な式に従って -
8:55 - 8:57変換された大量のエネルギーです
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8:57 - 8:58「E = mc2」
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8:58 - 9:00これを覚えていますか?
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9:00 - 9:04この愛する音楽に合わせて
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9:04 - 9:06踊り出したい程です
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9:06 - 9:09もう1度聴いて見ましょう
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9:11 - 9:13(鳥の鳴き声のような音)
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9:15 - 9:16(鳥の鳴き声のような音)
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9:17 - 9:19これが宇宙の音楽です!
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9:19 - 9:23(拍手)
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9:23 - 9:26人々にこう聞かれるようになりました
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9:26 - 9:29「重力波は何に役立つんですか?
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9:29 - 9:31それが見つかった今
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9:32 - 9:34まだ発見すべきことは
残っているのですか」 -
9:34 - 9:37重力波が何に役立つか?
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9:38 - 9:40ボルヘスに
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9:40 - 9:42「詩は何に役立つんです?」
と聞いたら -
9:42 - 9:44彼はこう聞き返しました
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9:44 - 9:46「夜明けは何に役立つだろう?
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9:46 - 9:48愛撫は何のためにあるんだろう?
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9:48 - 9:50コーヒーの匂いは何のためにあるんだろう?」
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9:51 - 9:52彼の答えはこうでした
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9:52 - 9:58「詩の目的は喜びです
感情のために 生きるためにあるんですよ」 -
10:00 - 10:01このことと宇宙を理解するということ
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10:01 - 10:05つまりこの世の仕組みを知りたいという
人間の好奇心とは -
10:05 - 10:06似ています
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10:07 - 10:10記録が残されていない古代から 人類は
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10:10 - 10:13私たち皆が 子供の時に
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10:13 - 10:15空を初めて見上げ星を見て
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10:15 - 10:18不思議に思ったのです
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10:18 - 10:19「星って何だろう?」
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10:20 - 10:23好奇心は人間らしさなのです
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10:23 - 10:26それが科学なんです
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10:28 - 10:30重力波は今や目的を得たと言えます
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10:30 - 10:34重力波は今や目的を得たと言えます
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10:34 - 10:38宇宙を探査する
新たな手法を得たからです -
10:38 - 10:42今までは電磁波によって
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10:42 - 10:45星の光を見るだけでした
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10:45 - 10:50それが今では重力波のような
光を発しない -
10:50 - 10:54宇宙の音を
聴けるようになったのです -
10:56 - 10:57(拍手)
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10:57 - 10:58ありがとうございます
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10:58 - 11:02(拍手)
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11:02 - 11:04でも これは何かの役に立つでしょうか?
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11:04 - 11:09重力波から何か
新しい技術を生み出せないだろうか? -
11:10 - 11:11多分できるでしょう
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11:11 - 11:14でもそれには時間がかかるでしょう
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11:14 - 11:17私たちは重力波を検出する技術を
開発しました -
11:17 - 11:21でも重力波自体の役立て方を
見つけられるのは -
11:21 - 11:23100年後かもしれません
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11:23 - 11:27科学から技術を生み出すのには
時間がかかります -
11:27 - 11:28それに私たちの目的ではありません
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11:28 - 11:31全ての技術は科学から生まれますが
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11:31 - 11:32私たちは楽しいから科学するのです
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11:32 - 11:34私たちは楽しいから科学するのです
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11:35 - 11:37これから何が残されているでしょう?
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11:37 - 11:39たくさんのことです
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11:39 - 11:42これは単なる始まりに過ぎません
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11:43 - 11:46検出器の感度を上げれば上げるほど
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11:46 - 11:48私たちのやるべきことが増えます
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11:48 - 11:50ブラックホールも新たに見つかるでしょうし
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11:50 - 11:54リストをつくって それらが幾つあるのか
どこに位置しているのか -
11:54 - 11:56どれ程の大きさなのかを記録できます
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11:56 - 11:59異なるタイプの天体も
観測できるでしょう -
11:59 - 12:03中性子星同士が合体し
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12:03 - 12:05ブラックホールが生まれるところを
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12:05 - 12:08目撃できるようになるでしょう
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12:08 - 12:11私たちの銀河系で
互いの周りを回る2つの星が -
12:11 - 12:13正弦波を発するのを
観測することができるでしょう -
12:13 - 12:19銀河系での超新星爆発を
観測することもできるでしょう -
12:19 - 12:23これまで知られていなかった
あらゆる天体現象を観測できるでしょう -
12:24 - 12:25私たちはこう考えています
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12:26 - 12:29人体にもうひとつ
新しい感覚が加わったようだと -
12:29 - 12:31見ることに加えて
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12:31 - 12:33聞くことができるようになったのだと
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12:33 - 12:37これは天文学における革新的出来事です
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12:37 - 12:41ガリレオが望遠鏡を発明した時や
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12:41 - 12:44無声映画に音声が加わった時と
似ています -
12:45 - 12:48これはまだ始まりに過ぎません
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12:49 - 12:51こう思っています
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12:52 - 12:55科学の道のりはとても長く楽しく
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12:55 - 12:58でも本当に長く
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12:58 - 13:04この国際的な科学者コミュニティから
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13:04 - 13:07数々の国籍の研究者たちが集まり
チーム一丸となって -
13:07 - 13:09道を切り開き
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13:10 - 13:11この道のりを照らし
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13:11 - 13:14時には回り道をしながら
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13:14 - 13:17宇宙へのハイウェイを
造っているようなものです -
13:17 - 13:19宇宙へのハイウェイを
造っているようなものです -
13:20 - 13:21ありがとうございました
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13:21 - 13:26(拍手)
- Title:
- LIGOはどのように重力波を見つけたのか—そしてその先は?
- Speaker:
- ガブリエラ・ゴンザレス
- Description:
-
アルバート・アインシュタインが重力波 ― 天体の激しい衝突によって起きた時空のさざ波 ― の存在を予言してから100年以上も後に、LIGOの科学者たちはルイジアナとワシントンにある巨大で極めて精密な検出器を用いて重力波の存在を確認しました。LIGO科学コラボレーションに所属する天体物理学者ガブリエラ・ゴンザレスは、ノーベル賞を授与されたこの素晴らしい発見がどのように達成されたか、そしてそれが宇宙の理解にどのような意味をもたらすかについて語ります
- Video Language:
- Spanish
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 13:39