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Títol:
作物の病気と闘う農家を救うためにDNA技術をいかに使うか
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Descripció:
世界中でほぼ8億の人々がキャッサバに頼って生きていますが、この重要な食糧源はウィルスの脅威にさらされています。ただしそれは完全に予防できる、と計算生物学者でTEDシニアフェローのローラ・ボイキンは言います。彼女は私たちを東アフリカの農場にいざないます。彼女はそこで、多様性のある科学者チームと共に、ウィルスを月単位ではなく数時間で特定可能なポータブルDNA実験室とミニスーパーコンピューターを使って、農家が作物の健康を保つのを助けています。
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Speaker:
ローラ・ボイキン
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私は2つの理由があって
ベッドから起き出します
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1つめは 家族経営の小さな農家たちが
もっと多くの食糧を必要としているからです
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この2019年に 我々に食糧を供給する
農家たちが飢えているなんて おかしな話です
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2つめは 科学が多様性と包含性を
必要としているからです
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この地球上で特に解決が困難な問題―
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例えば極度の貧困に生きる多くの人々の
食糧問題を解決しようとするならば
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我々みんなの力が必要でしょう
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世界で一番多様性を持ち
包含的なチームと共に
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農家がもっと食糧を得られるよう
助けたいのです
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私は計算生物学者です
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疑問ですよね
それはどんな仕事でどう飢餓を解決するのか?
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私は元々コンピューターと
生物学が好きだったんですが
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どうやら それを合わせると
仕事になるんですね
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生物学者になりたかったと
いうわけではありませんでした
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実際のところ 大学では
バスケットボールの選手だったんです
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さらに 学費援助プログラムが提供する
仕事を必要としていました
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だから 思い立ったある日
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宿舎から一番近い建物に行ってみたのです
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そうすると そこがたまたま
生物学棟だったんですね
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中に入って仕事の掲示板を見てみました
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そう インターネットのまだ無い時代です
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そして小さなカードに載っている
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「ハーバリウム」での仕事を見つけたんです
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私は素早くその電話番号をメモしました
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「勤務時間自由」とあって
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バスケットの空き時間に働くには
その必要があったんです
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図書館に駆け込んで
「ハーバリウム」が何か調べました
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枯れた植物の乾燥標本を
収蔵する場所だと知りました
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私は運よくその仕事を得ました
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だから 私の初めての科学的な仕事は
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枯れた植物をひたすら
紙に糊付けすることだったのです
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こうして私は計算生物学者になったのでした
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そうこうしている間に
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ゲノム科学と計算科学の時代となり
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私は修士課程に進み
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生物学とコンピューターを組み合わせました
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ロスアラモス国立研究所の
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理論生物学と生物物理学の
グループで働いていました
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そして そこで初めて
スーパーコンピューターに出会って
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心を奪われたのです
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スーパーコンピューターというのは
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簡単に言うとPCを数千個くっつけて
高速化したものですが
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それを使うとインフルエンザや
C型肝炎の複雑な様相を解明できます
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そこでの経験によって
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コンピューターと生物学の組み合わせが
人類に役立つ力を持つことを知りました
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それで その道で
生きていきたいと思ったのです
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1999年から
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私は科学者としてのキャリアのほとんどを
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高価な装置に囲まれた
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ハイテク研究室で過ごしてきました
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「なぜ そしてどんなふうにして
アフリカの農家のために働いているのですか」
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そうですね 私には
コンピュータ技術があったので
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2013年のことでしたが
ある東アフリカの科学者チームから
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キャッサバを守るのに苦労しているので
チームに加わってほしいと頼まれたのです
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キャッサバは植物で その葉と根が
世界中で8億の人々の食糧となっています
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そして そのうち5億が
東アフリカの人々です
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約10億の人々が
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日々必要な栄養分を
この植物に頼っているのです
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もし小規模な家族経営の農家に
十分なキャッサバがあれば
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家族を養うことができますし
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市場で売ることで 学校の授業料
医療費そして貯金など
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重要な費用にあてることもできます
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しかし キャッサバは アフリカで
危機にさらされています
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コナジラミやウィルスが
キャッサバに打撃を与えているのです
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コナジラミは小さな昆虫で
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600種類以上の植物の葉を食べます
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それは悪い知らせです
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この虫には多くの種があり
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殺虫剤に耐性を持つようになり
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そして 植物の病気の原因となる
何百ものウィルスを仲介し
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キャッサバ褐色条斑病や
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キャッサバモザイク病をおこすのです
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それらは植物を完全に駄目にします
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そして キャッサバが無くなれば
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何百万もの人々の 食糧も収入も
無くなってしまうのです
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そこの女性たちには
助けが必要なことが分かりました
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驚異的で力強い
小規模な家族経営の農家たち―
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その多くは女性ですが
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大変な苦労をしています
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家族を十分に養うだけの食糧がなく
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本当に危機的状況です
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こんな様子です
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雨期になったら
畑にキャッサバを植えます
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9ヵ月後
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何も収穫はありません
害虫や病気のせいです
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私は考えてみました
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一体全体 農家が飢えるなんて
そんなことがあっていいのか?
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農家や科学者たちと共に過ごし
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私の持つ技術が
役に立つか試してみようと
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現地の状況は衝撃的でした
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コナジラミがタンパク質を含む葉を
駄目にしてしまい
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ウィルスがデンプンを含む根を
駄目にしてしまっていました
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作物の育つ時期は
終わろうとしていて
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農家は1年分の収入と食糧を
棒に振ることになり
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その後長期間の飢餓に
陥ることになるでしょう
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これは完全に予防可能です
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もし農家が
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畑にどの種類のキャッサバを植えれば
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ウィルスや病原菌に
耐えられるかを知っていれば
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より多くの食糧を得られるでしょう
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しかし知識や資源は
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世界中に均等に分配されている
わけではありません
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この場合 具体的に言うと
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既存のゲノム技術です
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害虫や病原菌の複雑な世界を
解明するために
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これが使われてきました
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でも この技術はサハラ以南の
アフリカ向けではありません
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これには100万ドル以上もかかるんです
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安定的な電源供給も必要ですし
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専門知識をもつ人も必要です
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アフリカ大陸には この装置は
ごく少数しかないので
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現地で懸命に活動している
多くの科学者たちは
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試料を海外便で送るしかありません
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海外便で送られた試料は
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劣化してしまいますし 費用もかさみます
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そして貧弱なインターネット経由では
分析結果を返してもらうのは
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ほとんど不可能です
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だから分析結果を農家に伝えるのに
6ヵ月もかかることがあります
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それでは遅すぎます
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既に作物は駄目になっていて
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さらなる貧困と飢餓が続くのです
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2017年のこと
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手のひらサイズのポータブル
DNA分析器のことを知りました
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「Oxford Nanopore MinION」です
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これはエボラ出血熱に対処するために
西アフリカで使われていました
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我々は考えました
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東アフリカの農家を救うために
これを使えないわけがないと
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それで 実行しました
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当時まだこの技術は目新しいもので
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農場でもこれが役立つのか
多くの人々は疑っていました
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これを始めた当初
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あるイギリスの「協力者」は
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東アフリカでそれを
うまく使うのは不可能だろう
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ましてや農場でなんて
と言いました
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我々は挑戦を受けて立ちました
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この人は最高級のシャンパンを
2本賭けさえしたんですよ
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我々が絶対成功しない方にね
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一言いいですか
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ちゃんと買ってきてね
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我々はハイテク分子生物学実験室を丸ごと
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タンザニアやケニア ウガンダの
農家のところまで持っていき
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それを「樹の実験室」と名付けました
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それで何をしたか?
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まずはチームに名前を付けました
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「キャッサバ・ウィルス対処プロジェクト」
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ウェブサイトも作りました
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ゲノム科学と計算科学の分野から
協力者を募集し
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遠く離れた農家の元へ とんだのです
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「樹の実験室」に必要なものはすべて
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このように チームが運びます
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病気の植物を分子生物学的に
診断するために必要なものや
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そのための計算能力要求を
すべて満たすものが そろっています
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そして実はそれらすべてが
このステージ上にもあります
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より近いところで
データを得られれば
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作物の問題点を より迅速に
農家に伝えられるということです
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そして何が問題か伝えるだけではなく
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解決策の提供もできることです
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解決策とは
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畑を焼くこと そして
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畑にいる害虫や病原体に強い種類の
作物を植えることです
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まず手始めにDNA抽出を
しなければいけませんでした
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それにはこの装置を使いました
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「PDQeX」と言います
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「やけに速い抽出機」の略です
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ジョーは私の仲間ですが
ホントにすごいんです
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DNA抽出において 特に難しいのは
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通常それには高価な装置が必要で
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何時間もかかることです
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しかし この装置を使えば
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20分間で処理することができますし
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コストも何分の1かです
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しかもこれはバイクのバッテリーで動作します
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こうして DNA抽出物をとりだして
ライブラリを作る準備をします
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装置に装填できるようにします
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ポータブルで 手のひらサイズの
ゲノム塩基配列解析器にです
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こちらですね
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そしてそれをこの
ミニスーパーコンピューターに接続します
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「MinIT」と呼ばれています
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どちらの装置もポータブルの
バッテリーに接続されます
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こうして電源とインターネットは
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必要でなくなりました
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この2つは 小規模な家族経営の農場では
用意するのがたいへん難しい物です
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データを素早く解析することも課題です
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しかし その分野では
計算生物学者の私が お役に立てます
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枯れた植物を糊付けした経験
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そして測定の経験
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さらにコンピュータの知識
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それらが現実世界で 直接
役に立つ時がやってきたのです
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私が特製のデータベースを作り
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我々は3時間で 農家に
結果を伝えることができました
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6ヵ月ではなくて
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効果があったのが
どうして分かったかって?
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「樹の実験室」から9ヵ月の後
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アシャの収穫量は
ヘクタール当たり0トンから
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40トンになったのです
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家族に食べさせるのに十分足りましたし
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市場で売りもしました
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そしていま彼女は
家族と住む家を建てています
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いいですね
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実は
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アフリカの農家経営は
既に一定規模に達しています
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女性たちはグループで農作をしているので
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アシャを手助けすることは
その村の3千人を手助けすることでした
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彼女が分析結果や解決策を
皆にも教えたからです
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彼らの苦しみ そして喜びは
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私の記憶に刻み込まれています
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我々の科学は彼らのためにあります
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彼らの食糧確保の向上を手助けするうえで
「樹の実験室」は最善の試みです
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私は思ってもいませんでした
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私の人生最良の科学が
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東アフリカの毛布の上で
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最新鋭のゲノム分析装置を使って
なされるなんて
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しかし我々のチームは夢見ていました
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6ヵ月ではなくて3時間で
農家の人たちに答えを与えられたらって
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そして我々はやりとげました
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なぜならそれこそが 科学における
多様性と包含性の力だからです
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