ウォールストリートを制した天才数学者
-
0:01 - 0:04クリス・アンダーソン:
あなたはいわゆる天才数学者ですね -
0:04 - 0:07若くしてハーバード大やMITで
教鞭と取っておられました -
0:07 - 0:09するとNSAから
電話がかかってきたとか -
0:09 - 0:11それはどういう話でしたか?
-
0:11 - 0:15ジム・サイモンズ:NSA つまり
アメリカ国家安全保障局が -
0:15 - 0:17実際に電話してきた
わけではありません -
0:17 - 0:20プリンストンに彼らの拠点があり
-
0:20 - 0:25数学者を雇って暗号解読とかを
やっていて -
0:25 - 0:27その存在については知っていました
-
0:27 - 0:30とても良い雇用条件で
-
0:30 - 0:33時間の半分を
本来の業務に充てていれば -
0:33 - 0:37残りの時間を数学の研究に使うのも
自由だったのです -
0:38 - 0:39しかも給料が高かったので
-
0:39 - 0:42抗しがたい魅力でした
-
0:42 - 0:44だから自分から足を運んだのです
-
0:44 - 0:46クリス:暗号解読の任務に就いたのですね
-
0:46 - 0:46ジム:その通りです
-
0:46 - 0:48クリス:解雇されるまでは ですね
-
0:48 - 0:49ジム:はい 解雇されました
-
0:49 - 0:51クリス:どうしてそうなったのですか?
-
0:51 - 0:53ジム:どうしてって?
-
0:54 - 0:59それは 当時ベトナム戦争の
真っ最中でしたが -
0:59 - 1:04そこの上司の上司というのが
大の戦争好きで -
1:04 - 1:09ニューヨーク・タイムズ日曜版に
ベトナム戦争で勝利する方法について -
1:09 - 1:11特集記事を書いたのです
-
1:11 - 1:14私は戦争が嫌いですから
愚かなことだと思いました -
1:14 - 1:16それでタイムズ紙に投稿して
それが掲載されました -
1:16 - 1:20マクスウェル・テイラーの —
みんな彼を覚えているかわかりませんが -
1:20 - 1:26彼の元で働く人間が全部
彼に賛同しているわけではないと言って -
1:26 - 1:27私自身の考えを書いたのですが —
-
1:27 - 1:29クリス:なるほど クビになるわけだ
-
1:29 - 1:32ジム:テイラー将軍とは
意見が異なったということです -
1:32 - 1:34しかし その時は
何も言われませんでした -
1:34 - 1:38当時29歳でしたが
私のところに -
1:38 - 1:42ニューズウィーク誌の記者だという
若者がやってきてインタビューしたいと言い -
1:42 - 1:46私が自分の主張に関して
何をしているのかと聞きました -
1:46 - 1:50私はこう答えました
「今はもっぱら数学をしています -
1:50 - 1:54戦争が終わったら
NSAの仕事に戻ります」 -
1:54 - 1:57そして私がその日にした
唯一聡明なことをしました -
1:57 - 2:01インタビューを受けたことを
上司に伝えたのです -
2:01 - 2:03「何をしゃべったんだ」と質問され
-
2:03 - 2:04言ったがままに報告しました
-
2:04 - 2:06「テイラー将軍に電話せねばならない」
と彼は言い -
2:06 - 2:0910分ほど電話しに行き
-
2:09 - 2:11戻って5分後には
解雇されていました -
2:12 - 2:12クリス:なるほど
-
2:12 - 2:14ジム:でも 悪いことではありませんでした
-
2:14 - 2:17クリス:それでニューヨーク大
ストーニー・ブルック校で職を得て -
2:17 - 2:20数学者としてのキャリアを
歩み始めたのですね -
2:20 - 2:22そしてこの人物と一緒に
研究することになりました -
2:22 - 2:24どういう方ですか?
-
2:24 - 2:26ジム:シンシェン・チャーンです
-
2:26 - 2:29チャーンは20世紀を代表する
数学者の一人です -
2:29 - 2:34彼とはバークレー校の大学院生の時からの
知り合いでした -
2:34 - 2:36私にはちょっとしたアイデアがあって
-
2:36 - 2:39それを彼に話すと彼は興味を示し
共同でやることになりました -
2:39 - 2:45画面で見てもらうと
簡単に分かると思いますが (笑) -
2:45 - 2:46これです
-
2:47 - 2:51クリス: それが とても有名になる
共著論文へと繋がりました -
2:51 - 2:54その内容について
少し紹介いただけませんか? -
2:55 - 2:56ジム:無理だよ
-
2:56 - 2:58(笑)
-
2:59 - 3:01ジム:理解できる人ならいいですが —
-
3:01 - 3:03(笑)
-
3:03 - 3:05クリス: こちらの説明ならいかがですか?
-
3:05 - 3:08ジム:そういう人は
あまり多くはありませんから -
3:09 - 3:12クリス:その理論はこの球と
関係しているということでしたね -
3:12 - 3:14ここから始めて下さい
-
3:14 - 3:17ジム:たしかに関係しています
あの研究のことは この後お話しします -
3:17 - 3:21この球と関係はあるのですが
その前に言っておきたいことがあります -
3:21 - 3:24あの論文はもっぱら
数学に関するものでした -
3:24 - 3:27私もチャーンもそのことに
不満はありません -
3:28 - 3:32今では大きく発展している
数学の分野を切り開きさえしました -
3:33 - 3:38しかし興味深いことに
それが物理学にも応用されるようになったのです -
3:38 - 3:42私は物理なんて知らないし
-
3:42 - 3:45チャーンだって
大して知らないでしょう -
3:45 - 3:49論文が出て10年くらいして
-
3:49 - 3:53プリンストン大のエド・ウィッテンという人が
ひも理論に応用し始めました -
3:53 - 3:58またロシア人が凝縮系物理学という
理論にも応用し始めました -
3:58 - 4:03今では そのチャーン・サイモンズ不変量と
呼ばれるものが -
4:03 - 4:05物理学の様々な分野で使われています
-
4:05 - 4:06驚くばかりです
-
4:06 - 4:08私たちは物理の知識などなく
-
4:08 - 4:11物理学に応用されるなんて
予想もしていませんでした -
4:11 - 4:14でも それが数学の特徴なのです
何に応用されるか分かりません -
4:14 - 4:16クリス:素晴らしいことですね
-
4:16 - 4:20真理を理解するか
分からないものながら -
4:20 - 4:23進化は人の精神をどう形作っていくのか
という話をしましたが -
4:23 - 4:26あなたは物理学のことを知らずに
-
4:26 - 4:28数学の理論を作ったというのに
-
4:28 - 4:31それが20年後に
現実の物理の世界の -
4:31 - 4:33根本的なところを記述するために
応用されるのですから -
4:33 - 4:35どうしてそんなことが
可能なのでしょう? -
4:35 - 4:36ジム: 神のみぞ知る です
-
4:36 - 4:38(笑)
-
4:39 - 4:42ユージン・ウィグナーという
有名な物理学者が -
4:42 - 4:48「(自然科学における) 数学の不条理なまでの
有効性」という論文を書いています -
4:48 - 4:52数学というものは
ある意味で現実の世界に根付いていて -
4:52 - 4:57人は数えたり測ったりするようになり
みんなすることですが -
4:57 - 4:59その後 独自の発展をしていきます
-
4:59 - 5:02しかしそれが巡り巡って
現実の問題を解決するのです -
5:02 - 5:04一般相対性理論がその一例です
-
5:04 - 5:08ヘルマン・ミンコフスキーが
その名を冠する幾何学を考え出し -
5:08 - 5:12アインシュタインが「これこそ一般相対性理論の
記述に求めていたものだ!」と見出す -
5:12 - 5:15数学理論がどう使われるかなんて
分かりません -
5:15 - 5:16実に不思議なものです
-
5:16 - 5:20クリス:ここに素晴らしい
数学の成果の一例があります -
5:20 - 5:21これについて解説して下さい
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5:21 - 5:27ジム:これはボール - 球で
表面に格子が組まれています -
5:27 - 5:29正方形の形をしていますね
-
5:31 - 5:36ここで説明することは
レオンハルト・オイラーによって見出されたことです -
5:36 - 5:381700年代の偉大な数学者です
-
5:38 - 5:43その発見は数学の
とても重要な分野である -
5:43 - 5:46代数的位相数幾何学へと
発展しました -
5:47 - 5:51私たちの論文も
ここにルーツがあります -
5:51 - 5:53では説明しましょう
-
5:53 - 5:58ここには8つの頂点、12の辺と
6つの面があります -
5:58 - 6:02頂点の数から辺の数を引き
面の数を足すと -
6:02 - 6:032となります
-
6:03 - 6:052です まあそんなもんでしょう
-
6:05 - 6:09別のケースを見てみましょう
三角形で覆ってみます -
6:09 - 6:14今度は12の頂点
30の辺、20の面があり -
6:14 - 6:1820枚のタイルで覆われていますが
-
6:19 - 6:23頂点-辺+面は
またもや2になります -
6:23 - 6:26実際のところ
覆うものが たとえ -
6:26 - 6:29三角形や他の多角形
それが混合していようとも -
6:29 - 6:31結果は同じで
-
6:31 - 6:34頂点-辺+面 は2になるのです
-
6:34 - 6:36今度は別の形です
-
6:36 - 6:40トーラスで ドーナツ状の形をしています
-
6:40 - 6:47これを長方形で覆います
頂点は16、辺は32、面の数は16です -
6:47 - 6:49頂点-辺+面 は0になります
-
6:49 - 6:51いつだって0です
-
6:51 - 6:54トーラスは 正方形、三角形や
-
6:54 - 6:59他のどんなもので覆っても
0になるのです -
7:01 - 7:03このような数を
オイラーの標数といいます -
7:03 - 7:06位相不変量と呼ばれるものの一種です
-
7:07 - 7:08とても興味深いことです
-
7:08 - 7:11どの様にやっても
いつも同じ結果が得られます -
7:11 - 7:17この分野は1700年代中頃に芽生え
-
7:17 - 7:21今では代数的位相幾何学と
呼ばれるものになりました -
7:21 - 7:24クリス:あなた方が作り上げた理論は
-
7:24 - 7:26ここにヒントを得て
より高い次元の理論へと -
7:26 - 7:30高次元の物体へと拡げ
新たな不変量を見出したということですね -
7:30 - 7:34ジム:そうです しかし高次元の
不変量自体は以前からありました -
7:34 - 7:39ポントリャーギン類
それにチャーンの名が付いたのもありました -
7:39 - 7:42こういった不変量は
たくさんあって -
7:42 - 7:46私はそのうちの一つについて
研究していたのですが -
7:46 - 7:51通常行われていたのとは異なる
-
7:51 - 7:54ある種組み合せ論的な定式化をし
-
7:54 - 7:58その結果 新たな発見があったのです
-
7:58 - 8:02しかしオイラー先生がいなかったら-
-
8:02 - 8:06彼は70巻もの数学書を
書き上げましたが -
8:06 - 8:0713人も子供がいたので
-
8:07 - 8:14きっと膝の上に子供を乗せながら
本を書いていたことでしょう -
8:14 - 8:20オイラー先生がいなかったら このような
不変量は発見されていなかったかもしれません -
8:20 - 8:25クリス:なるほど
素晴らしき知性の一端を見せて頂きました -
8:25 - 8:27ではルネサンス社の話を聞かせて下さい
-
8:27 - 8:32頭脳明晰なあなたは
NSAで暗号解読の仕事に携わりましたが -
8:32 - 8:36その後ファイナンスの暗号に
取り組むようになりました -
8:36 - 8:38効率的市場仮説というのを
信じなかったのだと思いますが -
8:38 - 8:4520年間に驚くほどのリターンを
生み出したある方法を見出しました -
8:45 - 8:46聞いたところによると
-
8:46 - 8:50それがすごいのは
リターンが大きいだけでなく -
8:50 - 8:54他のヘッジファンドに比べ
驚くほど安定度が高く -
8:54 - 8:56リスクが低いのだと
-
8:56 - 8:58どうやったら
こんな事が出来たのですか? -
8:58 - 9:02ジム:まずは優秀な人材を集めました
-
9:02 - 9:06私がトレーディングを始めた時
少し数学に飽きていました -
9:06 - 9:1030代後半で
ちょっとしたお金を持っていました -
9:10 - 9:13トレーディングを始めて
これが首尾良くいきました -
9:13 - 9:16かなり稼ぎましたが
単なる幸運でした -
9:16 - 9:18偶然だったと思います
-
9:18 - 9:20それは決して数学モデルとは
関係していませんでした -
9:20 - 9:24しかし しばらくデータを見ているうちに
気が付きました -
9:24 - 9:26そこにはある種の構造が
存在するように見えたのです -
9:26 - 9:30そこで数学者を何人か雇い
モデルをいくつか構築し始めました -
9:30 - 9:34それはIDA(防衛分析研究所)で
やっていた類の事です -
9:34 - 9:37アルゴリズムを設計し
コンピューターにかけて -
9:37 - 9:39上手くいくかどうか
試してみるわけです -
9:39 - 9:41クリス:これをご覧いただけますか?
-
9:41 - 9:45これは典型的な相場のグラフで
-
9:46 - 9:51これを見て私ならこう思います
「ランダムに上下しているな -
9:51 - 9:53全体を見ると少しだけ
上向きの傾向があるかも」 -
9:53 - 9:56あなたはどうやって
ランダムでない部分を見てとり -
9:56 - 9:58上手く取引をすることが
出来たのですか? -
9:58 - 10:01ジム: これは昔のものですね
古き時代のグラフです -
10:01 - 10:06商品や通貨の相場に
トレンドがありました -
10:06 - 10:12ここで見られるような穏やかなトレンドだけでなく
周期的なトレンドがあります -
10:12 - 10:16それが分かったら
過去20日間の平均的な変動から -
10:16 - 10:21今日の値を予測します
-
10:21 - 10:24上手く予想できれば
儲けることができます -
10:24 - 10:29以前には
そういう方法が通用しました -
10:29 - 10:32完璧ではありませんが
上手くいったのです -
10:32 - 10:34儲けたり 損したり
儲けたり となりますが -
10:34 - 10:37長く続けていれば
-
10:37 - 10:42期間全体としては
ちょっとしたお金を稼げます -
10:42 - 10:44今や通用しないやり方です
-
10:45 - 10:48クリス:あなたは様々なトレンドの
周期を試したのですね -
10:48 - 10:51例えば
10日周期、15日周期について -
10:51 - 10:54その先が予測可能かどうか
試そうとしたのですね -
10:54 - 11:01ジム:様々なものを試し
どれが最善かを探すわけです -
11:02 - 11:05トレンドによる予測は60年代には
上手くいきました -
11:05 - 11:0770年代も そこそこ上手くいきました
-
11:07 - 11:09でも80年代は 違いました
-
11:09 - 11:12クリス: 皆が同じことを
やったからですね -
11:12 - 11:15あなたは どうやって彼らに
先んじようとしましたか? -
11:15 - 11:21ジム:別の方法を考えることで
先行しました -
11:21 - 11:24短期の予測といったものですが —
-
11:25 - 11:28大きいのは大量のデータを
集めたということです -
11:28 - 11:32当初は手作業でした
-
11:32 - 11:36連邦準備銀行に行って過去の利率の
データを複写するといったことです -
11:36 - 11:39コンピューターにはデータが
保存されていませんでしたからね -
11:39 - 11:41データを沢山取得しました
-
11:41 - 11:45そして とても頭の良い人達を雇う
これが鍵です -
11:45 - 11:50ファンダメンタル投資する人を
どう採用したらいいかなんて分かりませんでした -
11:50 - 11:53何人か雇いましたが
儲けたり 損したりで -
11:53 - 11:55それでは十分な利益が
出せませんでした -
11:55 - 11:57しかし科学者の採用であれば
うまくできました -
11:57 - 12:00それに関しては
目が利いたからです -
12:00 - 12:02これが種明かしです
-
12:02 - 12:05そうやって予測モデルは
徐々に改善され -
12:05 - 12:07さらに改善していきました
-
12:07 - 12:10クリス:ルネサンス社の特徴的なことも
あなたの業績とされていますね -
12:10 - 12:12高給に釣られるだけの人は
雇わないという -
12:12 - 12:16社風を作り上げました
-
12:16 - 12:20数学と科学で面白いことがやれるというのが
モチベーションになっているという -
12:20 - 12:22ジム:そうだったと願いたいですが
-
12:22 - 12:26お金も重要な要素でした
-
12:26 - 12:27クリス:随分稼いでいますものね
-
12:27 - 12:30ジム:金目当てで来る人が
いないとは言えません -
12:30 - 12:32多くの人がお金に引かれて
来たと思いますが -
12:32 - 12:34しかし同時に
面白そうだという理由もありました -
12:34 - 12:37クリス:機械学習は
どのような役割を果たしたのですか? -
12:37 - 12:40ジム:ある意味で
我々がやったことは機械学習です -
12:41 - 12:47多くのデータを分析し
様々な予測手法を試し -
12:47 - 12:49徐々により良い手法を
見出していきます -
12:49 - 12:53必ずしもフィードバックにより
改善していくわけではありませんが -
12:53 - 12:56上手くいきました
-
12:56 - 13:00クリス:予測方法の中には
意外で型破りなものもあったそうですね -
13:00 - 13:03天気、ドレスの長さ
-
13:03 - 13:06政治的意見といったものまで
あらゆるものを試してみたのですね? -
13:06 - 13:08ジム: はい
でもドレスの長さは試していません -
13:08 - 13:10クリス: どんなものを試されましたか?
-
13:10 - 13:12ジム:何もかもです
-
13:12 - 13:15使えるものは何でも -
裾の長さを別にすれば -
13:17 - 13:19天気、年次報告
-
13:19 - 13:24四半期報告、歴史的データ、売上高
-
13:24 - 13:25あるものは何でもです
-
13:25 - 13:28毎日 数テラバイトのデータを取り込んで
-
13:28 - 13:32保存、加工し 分析に使えるようにします
-
13:33 - 13:35そして異常値を探し出します
-
13:35 - 13:38あなたが言われたように
-
13:38 - 13:40効率的市場仮説というのは
正しくありません -
13:40 - 13:44クリス:異常値1つとれば
ランダムでしかありませんが -
13:44 - 13:47複数の奇妙な異常値の間に
-
13:47 - 13:49関連性を見つけ出すのが
鍵だとか -
13:49 - 13:52ジム:単一の異常値は
ランダムなものかもしれませんが -
13:52 - 13:56しかし 十分なデータを集めれば
そうでないと判断できます -
13:56 - 14:01十分に長い時間持続するような
異常が見つかります -
14:01 - 14:06そのようなことが偶然に起こる確率は
高くありません -
14:06 - 14:10しかしそのような異常も
いずれ消えてしまいます -
14:10 - 14:13ですから 常に
先を行く必要があります -
14:13 - 14:16クリス: ヘッジファンド業界を見て
多くの人は -
14:16 - 14:20ある意味 ショックを受けています
-
14:20 - 14:22多大な富がそこで産み出され
-
14:22 - 14:25そこには多くの才能ある者
関わっているからです -
14:26 - 14:30この業界 あるいは
金融業界一般に対して -
14:30 - 14:32懸念はありませんか?
-
14:32 - 14:35暴走列車のようで -
-
14:35 - 14:39何というか
格差の拡大を助長しているとか -
14:39 - 14:43ヘッジファンド業界で起きていることを
どう擁護しますか? -
14:43 - 14:45ジム:この3、4年ほどは
-
14:45 - 14:47ヘッジファンドはさほど
上手くいっていません -
14:47 - 14:49我々の商売は首尾よくいきましたが
-
14:49 - 14:53ヘッジファンド業界全体としては
捗々しくありません -
14:53 - 14:58一方 株式市場はご存じのとおり
上昇しています -
14:58 - 15:01株価収益率は上がりました
-
15:01 - 15:04この5-6年でもたらされた
富の大部分は -
15:04 - 15:08ヘッジファンドによるものではありません
-
15:08 - 15:12「ヘッジファンドって何?」
と聞かれたら -
15:12 - 15:14「1と20」と答えます
-
15:14 - 15:18今では「2と20」になっていますが ー
-
15:18 - 15:212%の固定手数料と
利益の20%をいただくという意味です -
15:21 - 15:23ヘッジファンドというのは
別種の生き物なんです -
15:23 - 15:27クリス:あなた方はもう少し高い手数料を
取っているという噂ですが -
15:27 - 15:31ジム:ある時点で我々は
業界で最も高い手数料を取っていました -
15:31 - 15:34「5 と 44」です
-
15:34 - 15:35クリス:「5 と 44」というと
-
15:35 - 15:385%の固定手数料と
利益の44%ということですね -
15:38 - 15:41それでも投資家は
大変な利益を得られた -
15:41 - 15:43ジム:実際 高いリターンを得ました
-
15:43 - 15:46人々は怒りだしました
何でそんな高い手数料を取るのだと -
15:46 - 15:47「止めてもいいですよ」
と私は言いました -
15:47 - 15:50どうやればもっと儲けられるかというのが
みんなの考えることです -
15:50 - 15:52(笑)
-
15:52 - 15:54しかし これはあなたに
お話ししたと思いますが -
15:54 - 15:59ある時点で外部からの投資を
受け入れなくなりました -
15:59 - 16:02クリス:しかし優秀な数学者が
-
16:02 - 16:08ヘッジファンド業界に集中し
世界のその他の問題解決のための -
16:08 - 16:11人材が不足することを憂慮すべきでは
ありませんか? -
16:11 - 16:13ジム:数学者だけでなく
-
16:13 - 16:15天文学者や物理学者なども雇っています
-
16:16 - 16:18しかし気にする程のことではありません
-
16:18 - 16:21今でも業界としては
小さなものです -
16:21 - 16:27事実 投資の分野に
科学を持ち込んだことで -
16:27 - 16:30世界は良くなったと思います
-
16:30 - 16:34不安定性が抑えられ
資金の流動性が高まりました -
16:34 - 16:37取引が増えることで
商品間のスプレッド(価格差)が縮小しました -
16:37 - 16:43私はアインシュタインのような天才が科学を捨て
ヘッジファンドを始めることを憂慮はしていません -
16:43 - 16:47クリス:あなたは今の時点になって
-
16:47 - 16:50反対の供給側に
投資するようになりましたね -
16:50 - 16:55アメリカ中で
数学の後押しをしています -
16:55 - 16:56この方は奥さんのマリリンさんですね
-
16:56 - 17:01お2人で慈善活動をなさっています
-
17:01 - 17:02このことについてお話し下さい
-
17:02 - 17:06ジム:そこに写っている
-
17:06 - 17:10美しき我が妻マリリンは
-
17:10 - 17:13財団を約20年前に設立しました
-
17:13 - 17:141994年だったと思います
-
17:14 - 17:16私が’93年だと主張しても
彼女は'94年と言います -
17:16 - 17:18何れにしろ どちらかの年です
-
17:18 - 17:21(笑)
-
17:21 - 17:27我々は財団を設立しました
寄付するのには都合の良い方法でしたから -
17:28 - 17:31彼女が帳簿の管理などをしていました
-
17:31 - 17:38当時 はっきりしたビジョンはありませんでしたが
徐々に芽生えてきました -
17:38 - 17:43基礎研究を重視し
数学や科学に焦点を当てるということです -
17:44 - 17:46そして これを実行に移しました
-
17:46 - 17:53私は6年ほど前に ルネッサンス社を辞めて
財団で働くようになりました -
17:53 - 17:54今でも働いています
-
17:54 - 17:56クリス:「Math for America」では
-
17:56 - 18:00米国内の数学教師に資金を与え
-
18:00 - 18:04追加報酬を与えたり
支援や指導を行っています -
18:04 - 18:07教育の効率を高め
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18:07 - 18:09教師たちが目指せる
使命を提示していますね -
18:09 - 18:14ジム:問題のある教師を
叱責するよりその方がいいです -
18:14 - 18:19特に数学や科学の分野では
叱責しても -
18:19 - 18:22教育界全体で
やる気の低下を招くだけです -
18:22 - 18:28そこで 優秀な者を表彰し
地位を与えることに注力しました -
18:28 - 18:31年間2百万円弱の報奨金を与えます
-
18:31 - 18:35現在 ニューヨーク市の公立校にいる
数学や科学の教師 800人を支援しており -
18:35 - 18:37彼らはその中心的役割を担っています
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18:37 - 18:41彼らにはやる気があり
-
18:41 - 18:43教育現場に留まっています
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18:43 - 18:47来年にはニューヨーク市の公立校の
数学と科学の教師の10%にあたる -
18:47 - 18:501千人へと拡大します
-
18:50 - 18:56(拍手)
-
18:56 - 18:59クリス:あなたは別のプロジェクトに
対しても慈善的支援を行っていますね -
18:59 - 19:02生命の起源に関するものだとか
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19:02 - 19:03どのような研究ですか?
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19:04 - 19:05ジム:それにお答えする前に
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19:05 - 19:08あなたが質問された
-
19:08 - 19:11生命の起源の謎とは
とても興味深いものだと言いたいのです -
19:11 - 19:13どのようにして誕生したのでしょうか?
-
19:13 - 19:152つの謎があります
-
19:15 - 19:21地質学的なものから
生物学的なものへの遷移は -
19:21 - 19:22どのように起きたのか
というのが一つ -
19:22 - 19:25もう一つの謎は
何から始まったのかということ -
19:25 - 19:28その遷移において
どの物質が起源となったのか? -
19:28 - 19:31これら2つは
とても興味深い謎です -
19:32 - 19:38最初の謎は 地質からRNAのようなものに至るまでの
途方もない進化の道筋についてで -
19:38 - 19:40その仕組みは
どのようなものだったのかということ -
19:40 - 19:42もう一方の謎
生命体をなす物質を得る過程は -
19:42 - 19:44従来の説を超えたものなのかもしれません
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19:44 - 19:49この写真は星の形成過程を示しています
-
19:50 - 19:53我が銀河系には約千億個の星がありますが
-
19:53 - 19:56毎年2つほどの新しい星が誕生しています
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19:56 - 19:58その仕組みについては知りませんが
とにかく誕生しています -
19:58 - 20:02星ができるまでには
百万年ほどの時間がかかります -
20:02 - 20:04そのため 定常的に
-
20:04 - 20:08形成過程の星が
2百万個あります -
20:08 - 20:12写真はこの形成過程にある星です
-
20:12 - 20:15その周りを取り巻いて
-
20:15 - 20:17塵のようなものがあります
-
20:17 - 20:21そして太陽系みたいなものが形成されます
-
20:21 - 20:23ここに注目すべきことがあります
-
20:23 - 20:29形成過程の星の
周辺を取り巻く塵には -
20:29 - 20:35重要な有機分子が含まれていることが
分かってきました -
20:36 - 20:42メタンといった分子だけでなく
ホルムアルデヒドやシアン化物といった -
20:42 - 20:49生命の種ともいえる基本物質が
あるのです -
20:49 - 20:52これは当たり前に
起きていることなのかもしれません -
20:52 - 20:56そういう生命の基本物質から
-
20:56 - 21:03惑星ができるというのは
典型的なことなのかもしれません -
21:04 - 21:07ならば 生命は至る所に居るのでは?
-
21:07 - 21:08そうなのかもしれません
-
21:08 - 21:12しかし 種となる物質が存在するというだけの
はかない原始状態から -
21:12 - 21:17生命誕生に至る過程が どれ程に
大変なことなのかという疑問が残されます -
21:17 - 21:21種となる物質は 休眠している惑星に
降り注ぐことになります -
21:21 - 21:23クリス:つまり あなたは
-
21:23 - 21:26生命の起源と誕生に関する謎を
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21:26 - 21:30解き明かしたいとお考えなのですね
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21:30 - 21:31ジム:解明されればと願っています
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21:31 - 21:33生命の誕生が
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21:33 - 21:38開始条件に関わらず
ほぼ不可能なほど起こりにくいなら -
21:38 - 21:43地球に生命があるのは
特異的なことということになります -
21:43 - 21:45逆にさほど難しくないなら
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21:45 - 21:48宇宙に漂う有機物の塵から
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21:48 - 21:52そこらじゅうに
生命は存在するのかもしれません -
21:53 - 21:54ぜひ知りたいところです
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21:54 - 21:58クリス:2年前 イーロン・マスクに
話を聞く機会があったのですが -
21:58 - 22:00彼に成功の秘密について尋ねると
-
22:00 - 22:04物理に真剣に取り組むことだと
彼は答えました -
22:05 - 22:09あなたの話によると
あなたは数学に真剣に取り組み -
22:09 - 22:12それがあなたの人生全体に
力を与えています -
22:12 - 22:17そして巨万の富を得て
それをアメリカや世界の大勢の子供たちの -
22:17 - 22:21将来のために投資することを
可能にしています -
22:22 - 22:24これは科学が役に立つ
ということでしょうか? -
22:24 - 22:27数学は役に立つのか?
-
22:27 - 22:32ジム:数学は間違いなく
役に立ちますよ -
22:32 - 22:33それに楽しくもあります
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22:33 - 22:38マリリンと一緒に働き 人々に貢献する
これはとても楽しいことです -
22:38 - 22:40クリス:知に真剣に取り組むことで
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22:40 - 22:45かくも多くのものが得られうるということに
とても感銘を受けました -
22:45 - 22:48TEDにお越し頂いて あなたの
素晴らしい人生について聞かせて頂き -
22:48 - 22:49ありがとうございました
-
22:49 - 22:50ジム・サイモンズでした!
-
22:50 - 22:54(拍手)
- Title:
- ウォールストリートを制した天才数学者
- Speaker:
- ジム・サイモンズ
- Description:
-
数学者であり暗号の専門家であるジム・サイモンズは、暗号解読に用いる高度な数学を使って金融市場に潜むパターンを解読できるかもしれないと気付きました。1兆円を超える資産を築いた今、彼は次の世代の数学教師や研究者の育成に携わっています。TEDのクリス・アンダーソンがサイモンズと膝を交えて数にまつわる彼の驚くべき人生について聞きます。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 23:03
Yasushi Aoki approved Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street | ||
Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street | ||
Yasushi Aoki accepted Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street | ||
Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street | ||
Yasushi Aoki edited Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street | ||
Tomoyuki Suzuki edited Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street | ||
Tomoyuki Suzuki edited Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street | ||
Tomoyuki Suzuki edited Japanese subtitles for A rare interview with the mathematician who cracked Wall Street |