摩擦の科学ー摩擦が日常生活に与える影響
-
0:01 - 0:05お仕事は何ですかと聞かれると
内心嬉しくなります -
0:05 - 0:08まさしく 物をこすり合わせる
なんて答えますから -
0:09 - 0:10ふざけていますよね
-
0:10 - 0:12ただこすり合わせるのが仕事 なんて
-
0:13 - 0:16でも 専門用語があるんです
-
0:17 - 0:18トライボロジーといいます
-
0:18 - 0:22T-r-i-b-o-l-o-g-y
-
0:22 - 0:24語源はギリシャ語の
“tribos”で -
0:24 - 0:25「こする」という意味です
-
0:26 - 0:28聞き慣れない変わった言葉でしょうが
-
0:28 - 0:30断言します
-
0:30 - 0:33トライボロジーを知ると
現実世界との関わりが変わります -
0:33 - 0:36私は そのおかげで
素晴らしい事業に携わっています -
0:36 - 0:40今まで携わってきたのは
航空資材やドッグフード -
0:40 - 0:44一人では展開できそうにない
組み合わせですよね -
0:44 - 0:46これがたった数年で叶います
-
0:46 - 0:49トライボロジーというレンズを通して
世界を見れば です -
0:50 - 0:52皆さん 重要度に驚くと思います
-
0:52 - 0:55小さなことを扱うトライボロジーは
-
0:55 - 0:57非常に大きな問題を改善できるんです
-
0:59 - 1:03トライボロジーでは
摩擦・摩耗・潤滑を研究します -
1:04 - 1:063つとも 誰もが経験していることです
-
1:07 - 1:10床の上の重い物を動かそうとしたとき
-
1:11 - 1:13抵抗を感じませんでしたか?
-
1:13 - 1:14それが摩擦ですね
-
1:15 - 1:17摩擦とは
運動に抵抗する力です -
1:18 - 1:21摩耗とは
材料の損失と移動です -
1:21 - 1:23そのために
好きな靴を買換える必要があります -
1:23 - 1:26いずれ靴底がなくなりますからね
-
1:26 - 1:28潤滑剤は
摩擦と摩耗を減らしてくれます -
1:28 - 1:32錆びて動かないボルトも
緩めることができます -
1:34 - 1:37トライボロジーとは
相対運動下で相互作用を及ぼし合う表面の -
1:37 - 1:38科学でもあります
-
1:40 - 1:45さて 相対運動下で相互作用し合う
表面は -
1:45 - 1:47身近にたくさんあります
-
1:47 - 1:51今座っているときでも
足先を動かしたり -
1:51 - 1:52向きを変えたりしますよね
-
1:52 - 1:55なぜでしょう?
トライボロジーが起きています -
1:55 - 1:57座席でのほんの小さな動作にも
-
1:57 - 2:002つの表面で相対運動が
発生しています -
2:00 - 2:03そして その動作で生じる摩擦は
-
2:03 - 2:05隣に座っている人とは違います
-
2:05 - 2:07なぜなら衣服によって
-
2:07 - 2:09座席との摩擦が変わるからです
-
2:09 - 2:13シルクの服なら
座席の中で体を動かすとき -
2:13 - 2:14ウールより少し楽です
-
2:14 - 2:16シルクのほうが
摩擦が小さいからです -
2:17 - 2:20足首を動かしたり
少し捻ったりすると -
2:20 - 2:22ポキポキと鳴りますか?
-
2:22 - 2:24経験 ありますよね?
-
2:24 - 2:26起きるとき 歩くとき
関節が鳴りますよね -
2:26 - 2:28その音もトライボロジーです
-
2:30 - 2:33音の発生源は滑液で
関節を滑らかにして -
2:33 - 2:34動かしやすくします
-
2:34 - 2:37もともと 滑液中に
気泡が生じているんです -
2:38 - 2:41同じ音は
腱がお互いに動くだけでも鳴ります -
2:41 - 2:43よくあるのは足首で
-
2:43 - 2:45足先を揺すってしまう人は
-
2:45 - 2:49腱とトライボロジーの不思議な関係に
急に気づくかもしれませんね -
2:51 - 2:54ではどうしたら 私のような
トライボロジストになれるでしょう? -
2:55 - 2:57その始まりは皆さんが子供のころですね
-
2:57 - 2:58私は小さいころ バレリーナで
-
2:58 - 3:01つま先立ちで踊るレベルまで行きました
-
3:01 - 3:02「ポワント」とも言います
-
3:03 - 3:06ポワントで踊るときは
こんな凄いシューズを履きます -
3:06 - 3:08でも 床では滑りやすいのです
-
3:09 - 3:12最悪なのは
つま先立ちで踊っているときに -
3:12 - 3:13滑って転ぶことです
-
3:13 - 3:16そのため 松ヤニの入った箱があって
-
3:16 - 3:19そこに足を入れて
シューズを薄くコーティングしました -
3:19 - 3:21松ヤニは樹液が原料で
-
3:21 - 3:24滑り止めに使う粉です
-
3:25 - 3:27バレリーナがすぐ学ぶのは
-
3:27 - 3:29シューズにつける松ヤニの
適切な量です -
3:29 - 3:32少なすぎると
滑って転ぶからです -
3:32 - 3:35これは床との摩擦が
小さいことが原因です -
3:35 - 3:36運が良ければ
-
3:36 - 3:39かっこ悪いバレリーナ
で済みますが -
3:39 - 3:42最悪の場合
けがをしてしまいます -
3:43 - 3:47このころすでに 私は摩擦を活かし
上手に操っていました -
3:47 - 3:50私って トライボロジストになる
運命だったんですね -
3:50 - 3:52(笑)
-
3:53 - 3:55でも皆さんも 子供のころ
トライボロジストだったんですよ -
3:56 - 3:58クレヨンや色鉛筆を使うとき
-
3:58 - 4:01強く描くと 色も濃くなると
知っていましたよね -
4:01 - 4:04そして 濃く描くと
何度も削る必要があったことも -
4:04 - 4:06知っていたはずです
-
4:06 - 4:08より早く摩耗するからです
-
4:09 - 4:12これはどうでしょう?
ワックスで魅力的に光る床を見たら -
4:12 - 4:14滑らずにはいられません
-
4:14 - 4:16もし靴下を履いていれば
-
4:16 - 4:19とてもうまく滑れますよね
-
4:19 - 4:21裸足では絶対無理です
-
4:21 - 4:24皆さんは
摩擦を完璧に操っていたのです -
4:26 - 4:28子供はみなトライボロジストです
-
4:28 - 4:29大人はどうでしょう?
-
4:31 - 4:33今日 皆さん歯を磨きました
-
4:34 - 4:35よね?
-
4:35 - 4:36(笑)
-
4:36 - 4:38これもトライボロジーの出番です
-
4:38 - 4:41歯磨き剤と歯ブラシで
取り除かれ 摩耗するのは -
4:41 - 4:42歯垢です
-
4:44 - 4:46実は 私の父は歯医者です
-
4:46 - 4:49自分のキャリアが家業につながるとは
思いもしませんでした -
4:49 - 4:52私たちが同じことをしていると
気付いたのは -
4:52 - 4:56歯垢を取り除くテストの開発を
依頼されたときです -
4:56 - 4:58単純だと思っていたことが
-
4:58 - 5:01トライボロジストとして考えてみると
-
5:01 - 5:03とても複雑なことだとわかりました
-
5:03 - 5:06口の中には硬い物質である歯と
-
5:06 - 5:09歯茎や歯磨き剤 歯ブラシのような
やわらかい物質があります -
5:09 - 5:12潤滑の役割をするのは 唾液と水で
-
5:12 - 5:15さらに歯を磨くといった動きが加わります
-
5:16 - 5:19もしダイヤモンドを歯磨き粉に入れたら
-
5:19 - 5:21確実に歯垢は無くなりますが
-
5:21 - 5:23歯も無くなってしまうでしょう
-
5:24 - 5:27つまり 適切なバランスで
歯垢を削り取りつつ -
5:27 - 5:29歯や歯茎の損傷を避けるのです
-
5:31 - 5:33歯を磨くのは食事をするからですね
-
5:33 - 5:35食事も誰もが毎日することです
-
5:35 - 5:36単純なことに見えますが
-
5:36 - 5:38トライボロジーの1分野としては
-
5:38 - 5:39単純ではありません
-
5:40 - 5:43口の中で 食べ物は
粉々になり摩耗していきます -
5:43 - 5:46同時に 食べ物は歯や舌
唾液やのどとも -
5:46 - 5:47関わり合います
-
5:47 - 5:52そのような口の中の相互作用は全て
食べる経験に影響を与えます -
5:53 - 5:56食べたことがない物を食べたときを
思い出してください -
5:56 - 5:58こんな風に思いませんか?
-
5:59 - 6:01「味は普通だけど
-
6:01 - 6:03食感は最悪だな」
-
6:04 - 6:07トライボロジストにとって
潤滑性を表す摩擦係数は -
6:07 - 6:13口の中の食感と食事の経験を
つなげる役割を担っています -
6:13 - 6:16例えば 食べ物や飲み物の調合ー
-
6:16 - 6:20つまり糖や脂肪の含量を変えると
-
6:20 - 6:21食感はどう変わるか
-
6:21 - 6:23その食感をどう測れるか
-
6:23 - 6:26これがトライボロジストの関心です
-
6:26 - 6:29私の同僚は研究ラボの一角で
-
6:29 - 6:31ヨーグルトの脂肪分を研究し
-
6:31 - 6:32私はもう一角で
-
6:32 - 6:34ドッグフードを研究しています
-
6:34 - 6:36ちなみに そのラボは
とてもいい匂いがします -
6:37 - 6:39私たちは毎日歯を磨きますが
-
6:39 - 6:41ペットの歯は磨きますか?
-
6:43 - 6:46成長した動物が歯周病になることは
少なくありません -
6:46 - 6:48ですから ペットの歯は磨くべきです
-
6:48 - 6:50実際にそういう飼い主は増えています
-
6:50 - 6:54私の親友はとても上手に
飼い猫の歯を磨くんです -
6:54 - 6:56私の猫には絶対無理です
-
6:56 - 6:58そんなわけで
ペットフードの会社が試みているのは -
6:58 - 7:01おやつなどでの歯垢除去です
-
7:01 - 7:03犬を飼っている人なら
-
7:03 - 7:05おやつをあげたときに
それがたった1口で -
7:05 - 7:08魔法のように消えてしまうのを
見たことがあるでしょう -
7:08 - 7:10つまりここで難しいのは
-
7:10 - 7:121回噛むだけでどう歯垢を取り除くかです
-
7:13 - 7:16私はこの問題を研究するための
試験装置を開発しました -
7:16 - 7:18そのために犬の口の中の
歯や歯垢 唾液などを -
7:18 - 7:22再現する必要がありました
-
7:22 - 7:24そこで摩擦と摩耗の測定をして
-
7:24 - 7:27歯垢除去について
おやつの効果を研究しました -
7:29 - 7:32最近 飼い犬の歯磨きをしなかった日なんて
あったっけと -
7:32 - 7:34お考えの皆さん
お待たせしました -
7:34 - 7:37さて トライボロジーのすごさは
何でしょう? -
7:37 - 7:39もう1つ 例を挙げますね
-
7:40 - 7:44皆さんは何らかの方法で
この会場まで来たはずです -
7:44 - 7:45徒歩や自転車かもしれませんが
-
7:45 - 7:48ここには車で来た人が多いと思います
-
7:49 - 7:52車関連のトライボロジーを
考えてみましょう -
7:52 - 7:54人と車の相互作用や
-
7:55 - 7:56車と路面の相互作用のほか
-
7:56 - 7:59エンジンルーム全般や
駆動系内部とも関わっています -
7:59 - 8:03定期点検にも 直接トライボロジーに
関連するものがあります -
8:04 - 8:06走行距離がどれくらいで
タイヤの交換が必要か -
8:06 - 8:08ご存じだと思いますし
-
8:08 - 8:10タイヤの溝の状態を
定期的に確認して -
8:11 - 8:15摩耗を
ご自分で点検しているんです -
8:16 - 8:19トライボロジーは
摩耗と摩擦の科学であり -
8:19 - 8:23無事に到着できるものも
タイヤの摩擦によっては -
8:23 - 8:24事故になりかねません
-
8:24 - 8:27なぜなら タイヤと路面の摩擦が
-
8:27 - 8:30影響を与えるのは
加速や減速だけでなく -
8:30 - 8:32停止距離もだからです
-
8:32 - 8:36運転をする人は 摩擦の重要性を
直感的に理解しています -
8:36 - 8:38なぜなら路面が濡れているときは
-
8:38 - 8:40滑りやすく 普段より危険と
わかっているからです -
8:40 - 8:43これは 水のせいで
タイヤと路面の摩擦が -
8:43 - 8:44低減するためです
-
8:44 - 8:47摩擦は物体の運動を妨げる力でしたね
-
8:47 - 8:51つまり水がその力を弱めると
物体が動きやすくなるので -
8:51 - 8:53路面が濡れていると
滑りやすいのです -
8:54 - 8:56もう一つ考えるべきことは
-
8:56 - 8:58摩擦に対抗するためにエネルギーが
必要なので -
8:59 - 9:01エネルギーが失われることです
-
9:02 - 9:05タイヤが燃費に影響する
原因の一つです -
9:05 - 9:08実際のところ
燃料の約3分の1は -
9:08 - 9:11エンジン駆動の車が 摩擦に対抗することに
-
9:11 - 9:13使われるとご存知ですか?
-
9:14 - 9:153分の1です
-
9:15 - 9:18トライボロジーの研究は
摩擦を軽減してきました -
9:18 - 9:21その結果
燃費が良くなり 排出ガスも減ります -
9:22 - 9:25ホルムバリとエルデミシュによって
素晴らしい研究が複数行われ -
9:25 - 9:27明らかになったのは
トライボロジーの研究が -
9:27 - 9:28省エネ化に貢献していることです
-
9:28 - 9:32彼らの研究によれば
20年間に渡り -
9:32 - 9:33削減できる可能性があった
-
9:33 - 9:36乗用車のエネルギー消費量は
-
9:36 - 9:37最大60%でした
-
9:38 - 9:40世界中の全ての車で考えれば
-
9:40 - 9:42多量のエネルギーを節約できます
-
9:42 - 9:47それは現在世界で消費される
エネルギーの約9%にあたり -
9:47 - 9:51この削減にはトライボロジーも
貢献できると指摘しています -
9:52 - 9:54膨大な量のエネルギーと言えます
-
9:54 - 9:58このような数値を考えると
トライボロジーの重要さがわかります -
9:59 - 10:01私の同僚は
最大20クアッドのエネルギーを -
10:01 - 10:04アメリカだけで
節約できると算出しました -
10:04 - 10:05言い換えますと
-
10:05 - 10:111クアッドのエネルギーは
約1億8千万バレルの石油に相当するので -
10:11 - 10:13その20倍の石油を節約できるのです
-
10:14 - 10:17新しい素材や潤滑剤 新しい部品設計が
省エネに寄与し -
10:17 - 10:19新しい素材や潤滑剤 新しい部品設計が
省エネに寄与し -
10:19 - 10:22例えば風力発電の効率と信頼性を
高めています -
10:23 - 10:26この考えは
ただ31人の研究者が一同に会して -
10:26 - 10:28トライボロジーのレンズで
世界を見た結果です -
10:29 - 10:32つまり 至る所にあるトライボロジーを
-
10:32 - 10:34理解する人が増えれば
可能性は広がります -
10:35 - 10:38私が現在 入れ込んでいるのは
航空宇宙分野です -
10:38 - 10:42未知の環境下での摩耗と摩擦軽減に
心を注いでいます -
10:42 - 10:44私は素材や部品を作っています
-
10:44 - 10:47可動部とエンジンの摩擦を
低減し -
10:47 - 10:50ひいては 運動に抵抗する力を
軽減するのです -
10:51 - 10:54これはつまり動力が少なくてよい
ということなので -
10:54 - 10:56駆動装置は小さくて済み
-
10:56 - 10:58軽いものになり
-
10:58 - 10:59燃料が節約できます
-
11:00 - 11:03私は摩耗の耐久性が高い部品も
作っていますが -
11:04 - 11:05これで廃棄物が減る見込みです
-
11:05 - 11:08しかも 部品の製造頻度も減らすことになり
-
11:08 - 11:10製造にかかるエネルギーを節約できます
-
11:11 - 11:14まずは身の回りのトライボロジーを
探してみてください -
11:14 - 11:19そしてどうしたらその表面の働きが
良くなるか 考えてみましょう -
11:19 - 11:23塵も積もれば山となります
-
11:23 - 11:26トライボロジーは
聞き慣れない言葉でしょう -
11:26 - 11:29しかし 世界に大きな影響を
もたらすものなのです -
11:29 - 11:31ありがとうございました
-
11:31 - 11:33(拍手)
- Title:
- 摩擦の科学ー摩擦が日常生活に与える影響
- Speaker:
- ジェニファー・ベイル
- Description:
-
「トライボロジーという変わった響きの言葉は初耳かもしれませんが、人々の現実世界の見方と関わり方を変えるものです」と機械工学のエンジニア、ジェニファー・ベイルは言います。トライボロジー(摩擦と摩耗の科学)の考え方と日常生活におけるその意外で多様な実例、それがよりよい世界にどのように貢献するかを、ベイルが説明します。
- Video Language:
- English
- Team:
- closed TED
- Project:
- TEDTalks
- Duration:
- 11:47
Natsuhiko Mizutani approved Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives | ||
Yoshie Asahara accepted Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives | ||
Yoshie Asahara edited Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives | ||
Yoshie Asahara edited Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives | ||
Natsuhiko Mizutani rejected Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives | ||
Natsuhiko Mizutani edited Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives | ||
Naoko Fujii edited Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives | ||
Yoshie Asahara accepted Japanese subtitles for The science of friction -- and its surprising impact on our lives |