WEBVTT 00:00:00.691 --> 00:00:01.969 私がまだ９歳のとき 00:00:01.993 --> 00:00:06.916 祖父は 彼が６年前に目撃した 恐怖を教えてくれました 00:00:06.940 --> 00:00:09.844 私の故郷であるインドのナーシクで 00:00:09.868 --> 00:00:11.884 群衆事故で 39人が亡くなったのです 00:00:12.461 --> 00:00:15.750 それは 2003年 ナーシクの クンブ・メーラでの出来事でした 00:00:15.774 --> 00:00:18.746 クンブ・メーラは 世界最大の巡礼行事の1つです 00:00:19.213 --> 00:00:22.943 12年に１回 ３千万人以上の ヒンズー教の巡礼者が 00:00:22.967 --> 00:00:24.546 普段 たった150万人しかいない 00:00:24.570 --> 00:00:27.410 私の街に押し寄せ 00:00:27.434 --> 00:00:29.077 45日間滞在します 00:00:29.601 --> 00:00:32.672 巡礼の目的は ゴーダーヴァリ川に沐浴して 00:00:32.696 --> 00:00:35.021 彼らの罪すべてを洗い流すことです 00:00:35.807 --> 00:00:38.045 そして 群衆事故は簡単に起こります 00:00:38.069 --> 00:00:41.346 なぜなら 高密度の群衆が ゆっくり移動するからです 00:00:42.002 --> 00:00:46.311 クンブ・メーラは ナーシク以外の３箇所でも 00:00:46.335 --> 00:00:48.054 異なる頻度で開催されます 00:00:48.078 --> 00:00:50.847 そして 2001年から2014年までの間 00:00:50.871 --> 00:00:56.369 クンブ・メーラの群衆事故によって 2,400名以上が命を落としました 00:00:57.362 --> 00:00:59.219 私が一番悲しかったのは 00:00:59.243 --> 00:01:03.758 身近な人々が この街の運命に身を任せ 00:01:03.782 --> 00:01:07.607 クンブ・メーラのたびに 何十人も ただ命を落としていくのを 00:01:07.631 --> 00:01:08.908 見ているだけという状況でした NOTE Paragraph 00:01:09.448 --> 00:01:10.878 私は この状況を変えようと思いました 00:01:10.902 --> 00:01:13.877 なぜ私は この状況の解決策を探せないのかと 00:01:13.901 --> 00:01:15.389 なぜなら この状況は間違っているからです 00:01:15.701 --> 00:01:19.153 小さなころからプログラミングを学んで 工作好きになり 00:01:19.177 --> 00:01:20.845 大胆なアイデアを考えていました NOTE Paragraph 00:01:20.869 --> 00:01:22.057 (笑) NOTE Paragraph 00:01:22.081 --> 00:01:23.466 [「工作好き」は常に道を見つける] NOTE Paragraph 00:01:23.490 --> 00:01:26.559 大胆なアイデアを考えていました 00:01:26.569 --> 00:01:29.041 人の動きを制御するシステムのアイデアです 00:01:29.065 --> 00:01:32.054 そして 次の2015年のクンブ・メーラで システムを使い 00:01:32.078 --> 00:01:35.683 群衆事故と できれば死亡事故を 減らそうと考えました NOTE Paragraph 00:01:36.177 --> 00:01:38.648 それは 不可能なミッションのようであり 00:01:38.672 --> 00:01:40.440 大きすぎる夢に思えました 00:01:40.464 --> 00:01:42.645 15歳の少年には なおさらです 00:01:42.669 --> 00:01:46.208 でも この夢は2015年に実現しました 00:01:46.232 --> 00:01:49.169 このとき 00:01:49.169 --> 00:01:52.815 群衆事故を減らしただけでなく 00:01:52.815 --> 00:01:55.102 初めて ナーシクのクンブ・メーラで 00:01:55.126 --> 00:01:59.133 群衆事故０件を達成しました NOTE Paragraph 00:01:59.596 --> 00:02:04.934 (拍手) NOTE Paragraph 00:02:04.958 --> 00:02:07.444 これは 記録されている歴史のなかで 00:02:07.468 --> 00:02:10.214 初めての犠牲者なしのクンブ・メーラでした NOTE Paragraph 00:02:10.888 --> 00:02:12.038 どうやったのでしょう？ 00:02:12.623 --> 00:02:15.654 始まりは MITメディアラボの イノベーション・ワークショップ 00:02:15.678 --> 00:02:18.368 「クンバソン」(Kumbhathon)に 00:02:18.368 --> 00:02:20.347 2014年に参加したことでした 00:02:20.371 --> 00:02:24.775 これは 大規模なクンブ・メーラでの問題を 解決するためのチャレンジでした NOTE Paragraph 00:02:25.784 --> 00:02:30.292 群衆事故を解決するのに 00:02:30.316 --> 00:02:32.480 われわれが 知りたかったことは たった３つ 00:02:32.504 --> 00:02:35.243 人数 場所 00:02:35.267 --> 00:02:38.726 そして１分あたりの人の流れです 00:02:39.241 --> 00:02:43.370 われわれは この３つを知るための技術を探しました 00:02:44.091 --> 00:02:48.345 人々の識別に 無線機器を配ることは どうでしょう？ 00:02:48.369 --> 00:02:51.782 ３千万個の機器を配るなんて 費用は高いし 00:02:51.806 --> 00:02:53.742 実用的ではないでしょう 00:02:54.545 --> 00:02:57.926 カメラと画像処理技術を使うことは どうでしょう？ 00:02:57.950 --> 00:02:59.997 この規模では費用がかかりすぎます 00:03:00.021 --> 00:03:02.899 持ち運びが難しいし 00:03:02.923 --> 00:03:05.741 雨が降ったら まったく役に立ちません 00:03:05.765 --> 00:03:08.147 雨は クンブ・メーラにはつきものです 00:03:09.120 --> 00:03:11.445 携帯電話の中継局を使うのは どうでしょう？ 00:03:11.806 --> 00:03:14.273 これは 完璧な解決法のように思えます 00:03:14.297 --> 00:03:16.070 しかし 奇妙なことに 00:03:16.094 --> 00:03:18.839 クンブ・メーラのようなイベントで ほとんどの人は 00:03:18.863 --> 00:03:20.347 携帯電話を持ってこないのです 00:03:20.887 --> 00:03:24.601 また 携帯電話だと 十分に細かい情報が 得られません 00:03:24.625 --> 00:03:27.078 だから私たちは リアルタイムで動き 00:03:27.102 --> 00:03:30.063 安価で 壊れにくく 水にも強く 00:03:30.063 --> 00:03:32.854 簡単に処理できるデータを 得る方法が必要でした NOTE Paragraph 00:03:33.672 --> 00:03:36.028 そこで私たちは「アシオト」を作りました 00:03:36.052 --> 00:03:38.137 アシオトは 日本語で足音を意味します 00:03:38.161 --> 00:03:42.346 これは 圧力センサー入りの 持ち運べるマットで 00:03:42.370 --> 00:03:44.861 その上を歩く人数をカウントできます 00:03:44.885 --> 00:03:47.317 データは インターネット経由で 00:03:47.341 --> 00:03:49.888 私たちの先進的データ解析ソフトに送られます 00:03:50.483 --> 00:03:53.771 起こりうる間違い たとえば オーバーカウントつまり２回踏みの問題は 00:03:53.795 --> 00:03:56.445 デザインの工夫で解決しました 00:03:56.803 --> 00:04:00.329 最適なマットの幅は46cmでした 00:04:00.353 --> 00:04:02.592 これは 多数の試作品のテストと 00:04:02.616 --> 00:04:05.203 人の歩幅の平均値に基づいて決めました 00:04:06.111 --> 00:04:09.016 そうしないと 人はセンサを跨いでしまうことがあるのです NOTE Paragraph 00:04:09.040 --> 00:04:11.612 私たちは３日で 段ボールとアルミホイルを使った 00:04:11.636 --> 00:04:14.510 試作品を作りました NOTE Paragraph 00:04:14.534 --> 00:04:15.535 （笑） NOTE Paragraph 00:04:15.559 --> 00:04:17.933 これは実際に上手くいきました 00:04:17.957 --> 00:04:20.647 次に アルミ複合パネルと 00:04:20.671 --> 00:04:22.309 圧力を電気パルスに変える 00:04:22.333 --> 00:04:25.904 圧電プレートを使った試作品も作りました 00:04:26.959 --> 00:04:30.228 私たちは 混雑したレストラン 00:04:30.252 --> 00:04:33.974 ショッピングモール 寺院など30か所でテストし 00:04:33.998 --> 00:04:35.632 人がどう反応するかを観察しました 00:04:36.720 --> 00:04:38.743 人々はこのテストに協力的でした 00:04:38.767 --> 00:04:45.243 なぜなら 彼らは地元の人々が 地域の問題に取り組むことを喜んだからです 00:04:45.680 --> 00:04:48.799 私は15歳 ほかのメンバーも20歳代前半でした NOTE Paragraph 00:04:49.736 --> 00:04:54.227 センサーに色をつけると 00:04:54.251 --> 00:04:57.092 人々は怖がって私たちに質問しました 00:04:57.116 --> 00:04:59.323 「踏むと感電死するの？」 NOTE Paragraph 00:04:59.347 --> 00:05:00.348 （笑） NOTE Paragraph 00:05:00.372 --> 00:05:04.744 あるいは もし地面に 電気のセンサーがすぐに見えると 00:05:04.768 --> 00:05:06.261 人々は飛び越えちゃうんです NOTE Paragraph 00:05:06.285 --> 00:05:07.361 （笑） NOTE Paragraph 00:05:07.385 --> 00:05:10.449 だから 私たちはセンサーに カバーをすることにしました 00:05:10.473 --> 00:05:13.530 そうすると 人は地面の物を心配せずに済みます NOTE Paragraph 00:05:13.554 --> 00:05:15.530 何度かの実験の末 00:05:15.554 --> 00:05:18.364 私たちは ある産業用センサーを 使うことにしました 00:05:18.388 --> 00:05:21.357 危険区域での安全装置に使われるものを 00:05:21.381 --> 00:05:22.532 センサーにして 00:05:22.556 --> 00:05:24.637 黒いネオプレンゴムのシートを 00:05:24.661 --> 00:05:25.903 カバーにしました 00:05:26.374 --> 00:05:29.191 黒いゴムを使うもう１つのメリットは 00:05:29.215 --> 00:05:32.842 ほこりが表面を勝手に覆うので 00:05:32.866 --> 00:05:35.516 地面とのカモフラージュになることです 00:05:35.540 --> 00:05:40.652 さらに センサの厚みは 12mmより薄くしなければなりません 00:05:41.206 --> 00:05:43.435 そうしないと 人々はセンサーにつまづいて 00:05:43.459 --> 00:05:45.364 群衆事故を起こしてしまうからです NOTE Paragraph 00:05:45.792 --> 00:05:49.579 （笑） NOTE Paragraph 00:05:49.603 --> 00:05:50.965 それは望んでいません NOTE Paragraph 00:05:50.989 --> 00:05:52.778 （笑） NOTE Paragraph 00:05:52.802 --> 00:05:56.881 センサーは 10mmの厚みにできました NOTE Paragraph 00:05:57.469 --> 00:05:59.709 いまや データはリアルタイムで サーバに送られ 00:05:59.733 --> 00:06:02.331 地面にある全デバイスの情報に基づいて 00:06:02.331 --> 00:06:04.748 ヒートマップが描画されます 00:06:04.772 --> 00:06:09.057 もし群衆の動きが遅くなったり 群衆密度が閾値を超えたりしたら 00:06:09.081 --> 00:06:12.216 当局の担当者へ警告が送られます NOTE Paragraph 00:06:12.992 --> 00:06:17.984 2015年のナーシクのクンブ・メーラで ５枚のマットを使って 00:06:18.008 --> 00:06:20.398 50万人以上の動きを 00:06:20.422 --> 00:06:22.104 18時間 監視し続けました 00:06:22.128 --> 00:06:26.505 個々のチェックポイントからの データをリアルタイムで利用できるようにして 00:06:26.529 --> 00:06:28.405 人の動きを安全に保つことができました NOTE Paragraph 00:06:28.429 --> 00:06:31.874 いま このシステムは ほかのイノベーションとの組み合わせで 00:06:31.898 --> 00:06:35.050 クンブ・メーラでの群衆事故の 完全防止に役立っています NOTE Paragraph 00:06:35.585 --> 00:06:38.458 クンブ・メーラで使われた アシオトのプログラムコードは 00:06:38.482 --> 00:06:41.894 まもなく公開され 誰でも無料で使えるようになります 00:06:41.918 --> 00:06:44.885 誰かがこのコードを使い 多くの集会を安全にできるなら 00:06:44.885 --> 00:06:46.131 私はうれしいです NOTE Paragraph 00:06:46.878 --> 00:06:48.804 クンブ・メーラでの成功によって 00:06:48.828 --> 00:06:52.740 私は 群衆事故に遭うかもしれない ほかの人々を助けたいと思いました 00:06:52.764 --> 00:06:55.573 このシステムは 多数の人々が集まるような 00:06:55.597 --> 00:06:57.591 どんなイベントにも適用できるよう 00:06:57.615 --> 00:07:01.411 設計されています 00:07:01.435 --> 00:07:04.999 そして 私の新しい夢は このシステムを改良し 00:07:04.999 --> 00:07:11.238 世界中に適用し 生命が奪われることを防ぎ 人々の流れの安全を確保することです 00:07:11.262 --> 00:07:14.049 なぜなら すべての人の魂は尊いからです 00:07:14.073 --> 00:07:16.265 それがコンサートや スポーツイベントであっても 00:07:16.265 --> 00:07:18.796 アラーハーバードの マハー・クンブ・メーラであっても 00:07:18.796 --> 00:07:20.207 メッカの巡礼であっても 00:07:20.207 --> 00:07:21.978 シーア派のカルバラ巡礼であっても 00:07:21.978 --> 00:07:23.266 バチカン市においても NOTE Paragraph 00:07:23.893 --> 00:07:25.770 どう思いますか？ できると思いますか？ NOTE Paragraph 00:07:25.794 --> 00:07:26.945 （観衆）できる！ NOTE Paragraph 00:07:26.969 --> 00:07:28.120 ありがとうございます NOTE Paragraph 00:07:28.144 --> 00:07:29.145 （歓声） NOTE Paragraph 00:07:29.169 --> 00:07:32.439 （拍手）