WEBVTT

00:00:17.478 --> 00:00:18.857
「私を見て！」

00:00:21.076 --> 00:00:25.104
この言葉で 私は
アイコンタクトのコーチになりました

00:00:27.195 --> 00:00:30.007
私は 15歳になるイバンの母親です

00:00:30.919 --> 00:00:33.389
イバンは自閉症で
話すことができず

00:00:34.456 --> 00:00:36.470
iPadを通じて会話します

00:00:36.470 --> 00:00:40.592
そこには 画像という形で
彼の言葉の世界が広がっているのです

00:00:42.411 --> 00:00:46.399
イバンは２歳半のときに
自閉症と診断されました

00:00:48.107 --> 00:00:52.638
その日のことは今でも
痛々しく思い出されます

00:00:53.879 --> 00:00:56.432
夫と私は途方に暮れ

00:00:57.889 --> 00:01:00.067
どこから手をつけたら良いか
分かりませんでした

00:01:01.253 --> 00:01:03.496
当時はインターネットもなく

00:01:03.496 --> 00:01:05.930
情報を検索するということも
できませんでした

00:01:06.590 --> 00:01:08.983
ですから私たちは まったくの直感で

00:01:09.773 --> 00:01:11.798
最初の一歩を踏み出したのです

00:01:14.249 --> 00:01:16.339
イバンはアイコンタクトをしなくなり

00:01:17.411 --> 00:01:19.332
一旦覚えた言葉も失い

00:01:20.710 --> 00:01:22.147
名前を呼ばれても

00:01:22.809 --> 00:01:24.444
何かを尋ねても
反応しませんでした

00:01:25.469 --> 00:01:27.529
まるで言葉が雑音に
なったかのようでした

00:01:29.751 --> 00:01:33.799
彼に何が起こっているのか
彼がどう感じているのか

00:01:33.799 --> 00:01:37.647
それを知る唯一の手段が

00:01:38.737 --> 00:01:40.378
目を合わせることだったのに―

00:01:42.185 --> 00:01:44.058
その懸け橋が壊れてしまったのです

00:01:46.561 --> 00:01:50.023
どうやって生きる術を
教えろというのでしょう？

00:01:51.919 --> 00:01:55.851
私がイバンの好きなことをすると
彼は私を見てくれ

00:01:55.851 --> 00:01:57.385
私たちは つながりました

00:01:58.269 --> 00:02:01.052
ですから 全力をあげて
イバンが好きなことに一緒に取り組み

00:02:01.877 --> 00:02:05.640
アイコンタクトの時間を
増やそうとしました

00:02:07.532 --> 00:02:11.252
イバンの姉のアレクシアと

00:02:11.252 --> 00:02:14.140
何時間も鬼ごっこをしたものです

00:02:14.540 --> 00:02:17.187
「つかまえた！」と言うと

00:02:18.586 --> 00:02:20.280
イバンは 振り返って
私たちを見ます

00:02:20.980 --> 00:02:25.833
その瞬間 私は
彼が生きていると感じられました

00:02:29.396 --> 00:02:33.956
私たちがプールで過ごした時間も
記録的な長さです

00:02:35.418 --> 00:02:38.938
イバンは 昔から水が大好きでした

00:02:40.234 --> 00:02:42.704
忘れもしない
彼が２歳半のときのことです

00:02:43.955 --> 00:02:47.005
雨降りの冬の日

00:02:47.485 --> 00:02:49.835
私は イバンを屋内プールに
連れて行っていました

00:02:49.835 --> 00:02:52.485
雨の日でも
泳ぎに行っていたのです

00:02:53.842 --> 00:02:56.242
そのとき 高速道路に乗ったのですが

00:02:56.242 --> 00:02:57.971
私は出口を間違えてしまいました

00:02:58.695 --> 00:03:02.085
するとイバンは突然泣き出し
なだめようもなく 泣き続けました

00:03:02.487 --> 00:03:04.007
私が引き返して ようやく

00:03:04.674 --> 00:03:06.934
落ち着きました

00:03:09.178 --> 00:03:12.898
自分の名前にすら反応しない
２歳半の子に

00:03:12.898 --> 00:03:14.705
雨と霧のなか

00:03:15.412 --> 00:03:19.522
一体どうして
正しい道が分かったのでしょうか？

00:03:19.522 --> 00:03:23.522
私には何も見えなかったのにです

00:03:26.716 --> 00:03:30.156
そのとき私は
イバンの類まれな視覚的記憶に気づき

00:03:31.192 --> 00:03:34.592
これこそ私の進むべき道だ
と思ったのです

00:03:35.477 --> 00:03:37.847
私は あらゆるものを写真に撮り

00:03:38.408 --> 00:03:40.168
人生がどんなものか教えるのに

00:03:40.744 --> 00:03:44.334
写真を１枚１枚見せ始めました

00:03:45.408 --> 00:03:47.368
今でも イバンは
そうやって会話します

00:03:47.368 --> 00:03:53.248
何がほしいのか
何が必要なのか

00:03:53.971 --> 00:03:56.361
どういう気持ちか伝えます

00:03:59.673 --> 00:04:03.073
でも イバンがアイコンタクトすれば
それで良いわけではありません

00:04:04.424 --> 00:04:07.134
他のみんなからのアイコンタクトも必要です

00:04:08.250 --> 00:04:12.390
どうしたら みんなに 
イバンの自閉症だけではなく

00:04:12.399 --> 00:04:14.129
彼の人となりが見てもらえるか

00:04:14.835 --> 00:04:16.855
彼が与えられること

00:04:17.966 --> 00:04:20.086
彼ができること

00:04:20.928 --> 00:04:23.699
彼が好きなこと嫌いなことを
私たちの場合と同じように

00:04:23.699 --> 00:04:25.539
見てもらえるか考えました

00:04:26.961 --> 00:04:30.031
そのためには自己犠牲も必要でした

00:04:31.293 --> 00:04:33.583
彼に任せる強さを
持たねばならなかったのです

00:04:34.546 --> 00:04:36.776
とても辛いことでした

00:04:39.697 --> 00:04:41.167
イバンは11歳のとき

00:04:42.155 --> 00:04:45.845
家の近所へ治療に通っていました

00:04:47.193 --> 00:04:50.763
ある日の午後
私は彼を待つ間に

00:04:51.263 --> 00:04:52.623
八百屋さんに入りました

00:04:52.623 --> 00:04:55.603
何でもちょっとずつ売っている
よくある地元のお店です

00:04:56.654 --> 00:04:58.404
買い物をしながら

00:04:58.404 --> 00:05:01.614
店主のホセとおしゃべりを始めました

00:05:02.930 --> 00:05:06.700
イバンのことを話しました
イバンが自閉症であること

00:05:07.660 --> 00:05:11.660
イバンには 誰かの手を借りなくとも
ひとりで街を歩けるようになってほしいこと

00:05:12.129 --> 00:05:14.229
そんな思いを伝えました

00:05:15.196 --> 00:05:16.736
そしてホセに頼もうと決めました

00:05:16.736 --> 00:05:18.926
毎週木曜日の２時ごろに―

00:05:19.824 --> 00:05:23.204
イバンが店に来て
棚に水のボトルを並べるのを手伝っても良いかと

00:05:23.204 --> 00:05:25.344
イバンは 物を整理するのが
大好きなのです

00:05:26.021 --> 00:05:29.811
そのご褒美に
イバンは大好物のチョコクッキーを

00:05:29.811 --> 00:05:31.557
買って帰ります

00:05:34.134 --> 00:05:36.084
ホセは快諾してくれました

00:05:37.144 --> 00:05:39.924
そういうわけで１年の間

00:05:40.481 --> 00:05:42.771
イバンはホセのお店に行き

00:05:43.712 --> 00:05:46.832
水のボトルを並べる手伝いをしました

00:05:46.832 --> 00:05:51.832
ラベルが完ぺきに同じ方向を
向くように並べるのです

00:05:52.357 --> 00:05:56.357
そして チョコクッキーを手に
喜んで帰るのでした

00:06:02.454 --> 00:06:04.874
ホセは自閉症の専門家ではありません

00:06:07.691 --> 00:06:10.401
誰かを迎え入れるのに

00:06:11.612 --> 00:06:15.912
専門家である必要も
英雄的なことをする必要もありません

00:06:18.484 --> 00:06:20.504
ただ そこにいれば良いんです

00:06:20.504 --> 00:06:22.594
（拍手）

00:06:35.719 --> 00:06:38.124
（拍手がやむ）

00:06:39.385 --> 00:06:41.355
英雄的な行為は要らない―

00:06:42.847 --> 00:06:45.547
ただ そばにいるだけで良いのです

00:06:47.723 --> 00:06:49.893
もし心配なことがあったり

00:06:50.173 --> 00:06:52.821
分からないことがあれば

00:06:52.821 --> 00:06:54.941
聞けばいいんです

00:06:54.941 --> 00:06:56.621
好奇心を持ってください

00:06:58.209 --> 00:07:01.065
無関心はいけません

00:07:04.064 --> 00:07:07.864
互いの目を見て向き合う
勇気を持ってください

00:07:10.272 --> 00:07:12.452
見ることで

00:07:12.452 --> 00:07:15.761
誰かにつながる新しい世界を
切り開くことができるのです

00:07:16.742 --> 00:07:18.582
（拍手）

00:07:19.590 --> 00:07:21.700
（歓声）

00:07:21.700 --> 00:07:23.802
（拍手）

00:07:30.195 --> 00:07:32.195
ありがとうございました

00:07:32.195 --> 00:07:34.281
（拍手）