1 00:00:01,430 --> 00:00:07,549 マーク・ブラウンのGame Maker's Toolkitへようこそ ゲームデザインについてのシリーズだ 2 00:00:07,549 --> 00:00:12,590 数ヶ月前、Broken Ageをプレイした Double Fineのポイント&クリックアドベンチャーだ 3 00:00:12,590 --> 00:00:17,340 キックスターターで300万ドル集めたゲームで サイズが大きくなりすぎたので二つに分けて 4 00:00:17,340 --> 00:00:20,240 一年近く間隔を空けて発売された 5 00:00:20,240 --> 00:00:25,420 このゲームの前半は基本的に楽しめた 笑えるし、チャーミングだ 6 00:00:25,420 --> 00:00:30,160 メインキャラクターの二人は気に入った 怪物の生け贄予定の女の子ヴェラと 7 00:00:30,160 --> 00:00:34,530 過保護な親から離れたい少年シェイだ 8 00:00:34,530 --> 00:00:38,899 だが今年初めに発売された後半の パズルのいくつかは 9 00:00:38,899 --> 00:00:41,570 デザイン的にかなり問題がある 10 00:00:41,570 --> 00:00:45,390 例えばこの手は靴フェチなのだが 11 00:00:46,180 --> 00:00:50,620 「あら!こいつ、本当に靴が好きみたいね」 12 00:00:50,620 --> 00:00:53,440 ヴェラの靴には興味がないらしい 13 00:00:53,520 --> 00:00:57,120 「私にも、私の服にも興味はないみたい」 14 00:00:57,120 --> 00:01:03,200 この娘たちは食べ物がほしいと言うが ヴェラはタコスカプセルを渡そうとしない 15 00:01:03,240 --> 00:01:07,900 「正体がわかるまで、そのカプセルには触れたくないわ 宇宙毒かもしれないし」 16 00:01:07,900 --> 00:01:12,900 それから全く何もしないのが答えの パズルとか、ロールシャッハテストみたいな 17 00:01:12,900 --> 00:01:14,450 結び目のパズルとか 18 00:01:14,450 --> 00:01:18,000 そしてもう少しでプレイするのをやめようかと 思ったのがこのパズルだ 19 00:01:18,000 --> 00:01:23,160 ヴェラが宇宙スカーフを縫うために 正しい模様を知る必要のある場面だ 20 00:01:23,160 --> 00:01:26,380 だが正解は宇宙船の中にはない 21 00:01:26,380 --> 00:01:29,180 ヴェラのストーリー内には存在しないのだ 22 00:01:29,189 --> 00:01:32,150 実はシェイのストーリーに隠されている 23 00:01:32,159 --> 00:01:36,280 第一部ではもう一人の主人公の情報が必要になる パズルは一つもなかったのに 24 00:01:36,280 --> 00:01:41,400 第二部ではそんなパズルがあると 予想させるものは何もないのに 25 00:01:41,400 --> 00:01:44,520 そして二人の主人公はお互いのことを知らず 26 00:01:44,520 --> 00:01:47,270 コミュニケーションも取れないというのにだ 27 00:01:47,270 --> 00:01:51,590 理不尽だし、悪いデザインだ 28 00:01:53,560 --> 00:01:57,320 ポイント&クリックアドベンチャーでは 普通のことだと思うだろう 29 00:01:57,320 --> 00:02:00,890 このジャンルはドット単位での探索や 意味不明な解法、ありえない難問だらけだ 30 00:02:00,890 --> 00:02:06,200 例えばGabriel Knight3の悪名高いパズル マスキングテープとメープルシロップを使って 31 00:02:06,200 --> 00:02:10,760 猫の毛をつけヒゲに変える それである男に変装するのだが 32 00:02:10,760 --> 00:02:15,659 そいつにはヒゲがないので パスポートを盗んで、ペンでヒゲを書き入れる 33 00:02:15,659 --> 00:02:20,279 そう、ポイント&クリックアドベンチャーには こういう擁護不能のダメな部分がある 34 00:02:20,279 --> 00:02:23,620 だがジャンル全体を非難するのは行き過ぎだろう 35 00:02:23,620 --> 00:02:27,680 このジャンルはゲーム史の中でも 最高レベルのストーリーを生んでいる 36 00:02:27,680 --> 00:02:32,090 最高レベルのジョークもだ 他のジャンルとはペースが異なるし 37 00:02:32,090 --> 00:02:36,749 パズルも地に足がついていて 抽象的なパズルとは異なる 38 00:02:36,749 --> 00:02:38,840 PortalやAntichamberとは違う 39 00:02:38,840 --> 00:02:42,900 ポイント&クリック系のパズルの ひどい点を責めるのは簡単だ 40 00:02:42,900 --> 00:02:47,600 それはもう大量にあるからだ でも、優れたデザインのパズルを作るための 41 00:02:47,609 --> 00:02:52,509 黄金律を探してみよう このジャンルをゴミの山から救い出せるかもしれない 42 00:02:54,900 --> 00:02:58,209 ルールその1は、明確な目標を与えること 43 00:02:58,209 --> 00:03:01,760 パズルに到達する前に、プレイヤーは 今何をしているのか知る必要がある 44 00:03:01,760 --> 00:03:06,699 短期目標と長期目標との両方を知っていれば どんなパズルを解けばいいのかわかるし 45 00:03:06,699 --> 00:03:08,999 そのための動機も得られる 46 00:03:08,999 --> 00:03:13,639 ドタバタコメディのDay of the Tentacleでは 長期目標は取り残された時間旅行者である 47 00:03:13,639 --> 00:03:18,549 ラヴァーンとホーギーをバーナードのいる 現在に戻すことだとわかっている 48 00:03:18,549 --> 00:03:20,689 「じゃあ、さっさと彼らを戻してくれよ」 49 00:03:20,689 --> 00:03:28,129 「新しいダイアモンドを手に入れたらな そうしたらお前の仲間たちは」 50 00:03:28,129 --> 00:03:30,369 「クロノジョンの電源を入れさえすれば…」 51 00:03:30,369 --> 00:03:32,540 「電源だって!?」 52 00:03:32,549 --> 00:03:34,889 ということはラヴァーンは地下室に行くということだ 53 00:03:34,889 --> 00:03:43,700 「フレッド博士の古いラボが見えるわ 発電機もまだある あの電力が使えたらいいのに」 54 00:03:43,720 --> 00:03:48,500 つまり大時計の中に入って 紫テンタクルを通り抜ける必要がある 55 00:03:48,510 --> 00:03:50,489 これが短期目標だ 56 00:03:50,489 --> 00:03:54,619 当たり前だと思うかもしれないが いかに多くのアドベンチャーがこの点で失敗して 57 00:03:54,619 --> 00:03:58,949 プレイヤーを迷わせ、理由もなく パズルに取り組ませていることか 58 00:03:58,949 --> 00:04:03,359 LucasArtsは同時に複数の目標を与えることが多い プレイヤーは1つのパズルに詰まったら 59 00:04:03,359 --> 00:04:05,629 他のパズルにあたってみることができる 60 00:04:05,629 --> 00:04:09,809 「前輪の支柱が壊れてるから 新しいのを持ってくることね」 61 00:04:09,809 --> 00:04:15,290 「それから誰かが私の溶接トーチを盗んだわ それに燃料タンクは修理したけど燃料は空だし」 62 00:04:15,290 --> 00:04:16,900 「私は持ってないわよ」 63 00:04:16,900 --> 00:04:24,140 「入場者は3つのカテゴリーで判断されるのだ 笑顔、髪型、それから笑い声だ」 64 00:04:24,140 --> 00:04:28,280 「アトランティスを見つけたいのなら 3つの石を全て見つける必要があるわ」 65 00:04:28,280 --> 00:04:33,580 「そんなのどこで見つけりゃいいんだ?」 「なんとかしなさいよ、タフガイさん」 66 00:04:33,620 --> 00:04:36,120 ルールその2は道標を置くこと 67 00:04:36,129 --> 00:04:39,729 プレイヤーがパズルに取り組み始めたら 一番大事なことは 68 00:04:39,729 --> 00:04:42,090 明確な道標を与えることだ 69 00:04:42,090 --> 00:04:47,060 アドベンチャーはデザイナーの 脳内を推測するゲームだと言う人もいるが 70 00:04:47,060 --> 00:04:51,060 それは注意を払っていないだけだ 優れたアドベンチャーは何をするべきか 71 00:04:51,060 --> 00:04:55,490 手がかりをそこら中に残している 大抵は物を見たり、人物と話したりすればわかる 72 00:04:55,490 --> 00:05:00,009 Day of the Tentacleでは、この紫テンタクルに 話しかければ、こいつの通り抜け方について 73 00:05:00,009 --> 00:05:01,370 いいヒントをくれる 74 00:05:01,370 --> 00:05:07,340 「俺がここにいる限り、誰もこの時計には入れん 逃げた人間を追いかけるとき以外は」 75 00:05:07,340 --> 00:05:10,780 「俺は決してこの場所から動かん」 76 00:05:10,780 --> 00:05:14,720 囚人を見張っているこの衛兵と話すと… 77 00:05:14,720 --> 00:05:18,680 「ディナーはどうするつもり? クラブ・テンタクルなんてどうだい?」 78 00:05:18,680 --> 00:05:22,960 「いや、何言ってんだ こっちにゃあのブサイクを連れてくカネもないんだ」 79 00:05:22,960 --> 00:05:25,419 「君みたいな美人はなおさら無理だ」 80 00:05:25,419 --> 00:05:28,979 では、人間コンテストに勝てばいいことになる 81 00:05:28,980 --> 00:05:33,380 「大賞はクラブ・テンタクルのディナー2名様だ」 82 00:05:33,380 --> 00:05:39,360 道標は控えめなヒントをたくさん与えて ちゃんと聞いているプレイヤーに目標を教えることだ 83 00:05:39,480 --> 00:05:43,979 もちろん、控えめすぎると見逃してしまう あからさま過ぎると不快になる 84 00:05:43,979 --> 00:05:48,780 でもうまくやれば、プレイヤーには 「そうか!」という瞬間が訪れる 85 00:05:48,780 --> 00:05:52,900 手がかりを見つけて、謎を解き始めた時の あの脳に血がのぼる感じは格別だ 86 00:05:52,920 --> 00:05:56,140 下手な道標はパズルの要点の理解を妨げる 87 00:05:56,140 --> 00:05:59,640 マニーはメッセージチューブを 見るとこう言う 88 00:05:59,640 --> 00:06:01,300 「鍵がかかっている」 89 00:06:01,310 --> 00:06:05,030 これだと鍵がいるか、錠前を壊すかするのだと 思うだろうが、実際の解法は 90 00:06:05,030 --> 00:06:07,849 このスロットにカードを入れることだ 91 00:06:07,849 --> 00:06:11,659 車を洗うと雨が降るというような バカバカしいパズルでも 92 00:06:11,659 --> 00:06:14,999 道標が上手ければ機能する 93 00:06:14,999 --> 00:06:18,789 「自分の乗り物を洗うと雨が降ると 考える人がいるそうだが」 94 00:06:18,789 --> 00:06:20,590 「そうなの?」 「そうさ」 95 00:06:20,590 --> 00:06:22,860 「なるほどねえ」 96 00:06:22,860 --> 00:06:24,550 ルールその3はフィードバックだ 97 00:06:24,550 --> 00:06:27,919 パズルは解かれるためにある プレイヤーが正しい方向に進んでいるかを教え 98 00:06:27,919 --> 00:06:30,120 違っている時は拒否を示すべきだ 99 00:06:30,120 --> 00:06:33,740 プレイヤーが論理的に正しいことをしているのに 100 00:06:33,740 --> 00:06:35,699 使いまわしのセリフしか出ないのは腹が立つ 101 00:06:35,699 --> 00:06:38,659 「この組み合わせじゃダメだ」 102 00:06:38,660 --> 00:06:40,600 「それはあまりやりたくないな」 103 00:06:40,600 --> 00:06:45,240 こんなのじゃなくて、なぜその組み合わせが ダメなのかを説明するべきだ 104 00:06:45,249 --> 00:06:48,209 本当の解法に近づかせるような 一言があればもっといい 105 00:06:48,209 --> 00:06:50,840 「口をカタカタ言わせるのはやめてよ」 106 00:06:50,840 --> 00:06:55,740 「ガムでも噛んでるのかって 審査員の人たちに思われちゃうわよ」 107 00:06:58,249 --> 00:07:02,770 3つの黄金律に従えば 良質なパズルに行きつくはずだ 108 00:07:02,770 --> 00:07:06,800 プレイヤーはやるべきことを理解し どう解決するかもある程度わかる 109 00:07:06,800 --> 00:07:08,540 正答に向かうための手助けもある 110 00:07:08,540 --> 00:07:12,300 そういうパズルは正解を見た時 「どうしてわからなかったんだ」と思わせる 111 00:07:12,300 --> 00:07:14,580 「そんなのわかるか!」じゃなくてね 112 00:07:14,580 --> 00:07:17,180 プレイヤーをGameFAQsや ルーカスアーツ・ヒントラインに 113 00:07:17,180 --> 00:07:19,140 殺到させない、公正なパズルだ 114 00:07:19,140 --> 00:07:23,939 良質のパズルを傑作に押し上げるには 非常にクリエイティブでなければいけない 115 00:07:23,939 --> 00:07:28,449 Day of the Tentacleのリマスター版が出たら 116 00:07:28,449 --> 00:07:33,499 この時間旅行パズルゲームをやってみてほしい 400年の歴史を隔てて、3人のキャラクターを 117 00:07:33,499 --> 00:07:36,819 利用した見事なパズルだ 118 00:07:36,820 --> 00:07:43,040 言うまでもなく、Tentacleは完璧ではない 知らない人もいる現実世界の知識が必要だし 119 00:07:43,040 --> 00:07:47,060 ドット単位の探索も少しだけある ちゃんと話を聞いていないと 120 00:07:47,069 --> 00:07:51,099 道標を見逃す危険があり しかも二度と聞けないこともある 121 00:07:51,099 --> 00:07:55,849 でも、もしLucasArtsが今このゲームを (あるいはどんなゲームでも)作るなら 122 00:07:55,849 --> 00:07:59,610 ゲームをもっと遊びやすくするために 利用できる現代的な工夫は多くある 123 00:07:59,610 --> 00:08:04,710 今どきのゲームの多くは干渉できる物を ハイライトして、ドット探索を回避している 124 00:08:04,710 --> 00:08:09,800 Telltaleの初期作品は特定の回数 失敗すると、登場人物がヒントをくれる 125 00:08:09,800 --> 00:08:14,460 SF探偵物のGemini Rueは 一部のパズルに複数の解法がある 126 00:08:14,469 --> 00:08:19,900 ロボットが主役のMachinariumは ミニゲームをクリアすれば答えを教えてくれる 127 00:08:21,580 --> 00:08:25,640 多くの人はアドベンチャーゲームの死の原因を ふざけたパズルに帰しているが 128 00:08:25,640 --> 00:08:31,280 ジャンルが進化してこなかったからだと言う人もいる 3Dグラフィックは操作性を悪くしただけだし 129 00:08:31,280 --> 00:08:35,300 別のシステムを追加しても滅多に成功しなかった 130 00:08:35,300 --> 00:08:37,979 他のジャンルに遅れを取ったのだと批評家たちは言う 131 00:08:37,979 --> 00:08:42,860 でも僕は、革新の余地がたくさんあると思う このジャンルに立ち戻るべき理由もある 132 00:08:42,860 --> 00:08:47,720 アドベンチャーゲーム復活を掲げる Wadjet EyeのResonanceは記憶をアイテムにできる 133 00:08:47,720 --> 00:08:53,260 Technobabylonはサイバートランス状態の時 電気を持つ物体と話すことができる 134 00:08:53,300 --> 00:08:58,880 このジャンルが死ぬ以前にも リアルタイムで推移するThe Last Expressや 135 00:08:58,900 --> 00:09:05,460 レプリカントになる人物をランダム化して 複数回プレイを促すBlade Runnerがあった 136 00:09:05,540 --> 00:09:10,260 だからこのジャンルにできることはたくさんある 僕もアドベンチャーが生き残ることを期待している 137 00:09:10,260 --> 00:09:13,540 でもこのジャンルにはもっと親切な デザインが必要だ 138 00:09:13,540 --> 00:09:17,900 猫の毛ヒゲやウザい山羊の悪いイメージを 払い落すことができなければ 139 00:09:17,900 --> 00:09:22,840 本当の意味でのカムバックは無理だろう そうなったら残念だ 140 00:09:24,400 --> 00:09:28,440 視聴してくれてありがとう 君が遭遇した最悪のパズルは? 141 00:09:28,440 --> 00:09:33,399 そのひどさをコメントで教えてくれ 「いいね!」とチャンネル登録もよろしく 142 00:09:33,399 --> 00:09:37,379 Patreonでの支援も考えてみてほしい