マーク・ブラウンのGame Maker's Toolkitへようこそ
ゲームデザインについてのシリーズだ
数ヶ月前、Broken Ageをプレイした
Double Fineのポイント&クリックアドベンチャーだ
キックスターターで300万ドル集めたゲームで
サイズが大きくなりすぎたので二つに分けて
一年近く間隔を空けて発売された
このゲームの前半は基本的に楽しめた
笑えるし、チャーミングだ
メインキャラクターの二人は気に入った
怪物の生け贄予定の女の子ヴェラと
過保護な親から離れたい少年シェイだ
だが今年初めに発売された後半の
パズルのいくつかは
デザイン的にかなり問題がある
例えばこの手は靴フェチなのだが
「あら!こいつ、本当に靴が好きみたいね」
ヴェラの靴には興味がないらしい
「私にも、私の服にも興味はないみたい」
この娘たちは食べ物がほしいと言うが
ヴェラはタコスカプセルを渡そうとしない
「正体がわかるまで、そのカプセルには触れたくないわ
宇宙毒かもしれないし」
それから全く何もしないのが答えの
パズルとか、ロールシャッハテストみたいな
結び目のパズルとか
そしてもう少しでプレイするのをやめようかと
思ったのがこのパズルだ
ヴェラが宇宙スカーフを縫うために
正しい模様を知る必要のある場面だ
だが正解は宇宙船の中にはない
ヴェラのストーリー内には存在しないのだ
実はシェイのストーリーに隠されている
第一部ではもう一人の主人公の情報が必要になる
パズルは一つもなかったのに
第二部ではそんなパズルがあると
予想させるものは何もないのに
そして二人の主人公はお互いのことを知らず
コミュニケーションも取れないというのにだ
理不尽だし、悪いデザインだ
ポイント&クリックアドベンチャーでは
普通のことだと思うだろう
このジャンルはドット単位での探索や
意味不明な解法、ありえない難問だらけだ
例えばGabriel Knight3の悪名高いパズル
マスキングテープとメープルシロップを使って
猫の毛をつけヒゲに変える
それである男に変装するのだが
そいつにはヒゲがないので
パスポートを盗んで、ペンでヒゲを書き入れる
そう、ポイント&クリックアドベンチャーには
こういう擁護不能のダメな部分がある
だがジャンル全体を非難するのは行き過ぎだろう
このジャンルはゲーム史の中でも
最高レベルのストーリーを生んでいる
最高レベルのジョークもだ
他のジャンルとはペースが異なるし
パズルも地に足がついていて
抽象的なパズルとは異なる
PortalやAntichamberとは違う
ポイント&クリック系のパズルの
ひどい点を責めるのは簡単だ
それはもう大量にあるからだ
でも、優れたデザインのパズルを作るための
黄金律を探してみよう
このジャンルをゴミの山から救い出せるかもしれない
ルールその1は、明確な目標を与えること
パズルに到達する前に、プレイヤーは
今何をしているのか知る必要がある
短期目標と長期目標との両方を知っていれば
どんなパズルを解けばいいのかわかるし
そのための動機も得られる
ドタバタコメディのDay of the Tentacleでは
長期目標は取り残された時間旅行者である
ラヴァーンとホーギーをバーナードのいる
現在に戻すことだとわかっている
「じゃあ、さっさと彼らを戻してくれよ」
「新しいダイアモンドを手に入れたらな
そうしたらお前の仲間たちは」
「クロノジョンの電源を入れさえすれば…」
「電源だって!?」
ということはラヴァーンは地下室に行くということだ
「フレッド博士の古いラボが見えるわ
発電機もまだある あの電力が使えたらいいのに」
つまり大時計の中に入って
紫テンタクルを通り抜ける必要がある
これが短期目標だ
当たり前だと思うかもしれないが
いかに多くのアドベンチャーがこの点で失敗して
プレイヤーを迷わせ、理由もなく
パズルに取り組ませていることか
LucasArtsは同時に複数の目標を与えることが多い
プレイヤーは1つのパズルに詰まったら
他のパズルにあたってみることができる
「前輪の支柱が壊れてるから
新しいのを持ってくることね」
「それから誰かが私の溶接トーチを盗んだわ
それに燃料タンクは修理したけど燃料は空だし」
「私は持ってないわよ」
「入場者は3つのカテゴリーで判断されるのだ
笑顔、髪型、それから笑い声だ」
「アトランティスを見つけたいのなら
3つの石を全て見つける必要があるわ」
「そんなのどこで見つけりゃいいんだ?」
「なんとかしなさいよ、タフガイさん」
ルールその2は道標を置くこと
プレイヤーがパズルに取り組み始めたら
一番大事なことは
明確な道標を与えることだ
アドベンチャーはデザイナーの
脳内を推測するゲームだと言う人もいるが
それは注意を払っていないだけだ
優れたアドベンチャーは何をするべきか
手がかりをそこら中に残している
大抵は物を見たり、人物と話したりすればわかる
Day of the Tentacleでは、この紫テンタクルに
話しかければ、こいつの通り抜け方について
いいヒントをくれる
「俺がここにいる限り、誰もこの時計には入れん
逃げた人間を追いかけるとき以外は」
「俺は決してこの場所から動かん」
囚人を見張っているこの衛兵と話すと…
「ディナーはどうするつもり?
クラブ・テンタクルなんてどうだい?」
「いや、何言ってんだ
こっちにゃあのブサイクを連れてくカネもないんだ」
「君みたいな美人はなおさら無理だ」
では、人間コンテストに勝てばいいことになる
「大賞はクラブ・テンタクルのディナー2名様だ」
道標は控えめなヒントをたくさん与えて
ちゃんと聞いているプレイヤーに目標を教えることだ
もちろん、控えめすぎると見逃してしまう
あからさま過ぎると不快になる
でもうまくやれば、プレイヤーには
「そうか!」という瞬間が訪れる
手がかりを見つけて、謎を解き始めた時の
あの脳に血がのぼる感じは格別だ
下手な道標はパズルの要点の理解を妨げる
マニーはメッセージチューブを
見るとこう言う
「鍵がかかっている」
これだと鍵がいるか、錠前を壊すかするのだと
思うだろうが、実際の解法は
このスロットにカードを入れることだ
車を洗うと雨が降るというような
バカバカしいパズルでも
道標が上手ければ機能する
「自分の乗り物を洗うと雨が降ると
考える人がいるそうだが」
「そうなの?」
「そうさ」
「なるほどねえ」
ルールその3はフィードバックだ
パズルは解かれるためにある
プレイヤーが正しい方向に進んでいるかを教え
違っている時は拒否を示すべきだ
プレイヤーが論理的に正しいことをしているのに
使いまわしのセリフしか出ないのは腹が立つ
「この組み合わせじゃダメだ」
「それはあまりやりたくないな」
こんなのじゃなくて、なぜその組み合わせが
ダメなのかを説明するべきだ
本当の解法に近づかせるような
一言があればもっといい
「口をカタカタ言わせるのはやめてよ」
「ガムでも噛んでるのかって
審査員の人たちに思われちゃうわよ」
3つの黄金律に従えば
良質なパズルに行きつくはずだ
プレイヤーはやるべきことを理解し
どう解決するかもある程度わかる
正答に向かうための手助けもある
そういうパズルは正解を見た時
「どうしてわからなかったんだ」と思わせる
「そんなのわかるか!」じゃなくてね
プレイヤーをGameFAQsや
ルーカスアーツ・ヒントラインに
殺到させない、公正なパズルだ
良質のパズルを傑作に押し上げるには
非常にクリエイティブでなければいけない
Day of the Tentacleのリマスター版が出たら
この時間旅行パズルゲームをやってみてほしい
400年の歴史を隔てて、3人のキャラクターを
利用した見事なパズルだ
言うまでもなく、Tentacleは完璧ではない
知らない人もいる現実世界の知識が必要だし
ドット単位の探索も少しだけある
ちゃんと話を聞いていないと
道標を見逃す危険があり
しかも二度と聞けないこともある
でも、もしLucasArtsが今このゲームを
(あるいはどんなゲームでも)作るなら
ゲームをもっと遊びやすくするために
利用できる現代的な工夫は多くある
今どきのゲームの多くは干渉できる物を
ハイライトして、ドット探索を回避している
Telltaleの初期作品は特定の回数
失敗すると、登場人物がヒントをくれる
SF探偵物のGemini Rueは
一部のパズルに複数の解法がある
ロボットが主役のMachinariumは
ミニゲームをクリアすれば答えを教えてくれる
多くの人はアドベンチャーゲームの死の原因を
ふざけたパズルに帰しているが
ジャンルが進化してこなかったからだと言う人もいる
3Dグラフィックは操作性を悪くしただけだし
別のシステムを追加しても滅多に成功しなかった
他のジャンルに遅れを取ったのだと批評家たちは言う
でも僕は、革新の余地がたくさんあると思う
このジャンルに立ち戻るべき理由もある
アドベンチャーゲーム復活を掲げる
Wadjet EyeのResonanceは記憶をアイテムにできる
Technobabylonはサイバートランス状態の時
電気を持つ物体と話すことができる
このジャンルが死ぬ以前にも
リアルタイムで推移するThe Last Expressや
レプリカントになる人物をランダム化して
複数回プレイを促すBlade Runnerがあった
だからこのジャンルにできることはたくさんある
僕もアドベンチャーが生き残ることを期待している
でもこのジャンルにはもっと親切な
デザインが必要だ
猫の毛ヒゲやウザい山羊の悪いイメージを
払い落すことができなければ
本当の意味でのカムバックは無理だろう
そうなったら残念だ
視聴してくれてありがとう
君が遭遇した最悪のパズルは?
そのひどさをコメントで教えてくれ
「いいね!」とチャンネル登録もよろしく
Patreonでの支援も考えてみてほしい