私たちはみんな
捕らわれの身です
自分の頭の中にです
この世界をどう信じ
どう理解するかも
自らの視点に縛られています
つまり 自分に向け
作り話をしているんです
現代は情報で溢れています
思考の対象なら
いくらでもあるのに
私たちは 手を加えたり
削除したりして
思考や注意の対象を
選んでいます
話をでっち上げるわけです
状況を飲み込むためにです
そして間違えます
誰しも 自らの狂った方位磁針を
頼りに進もうとしますし
背負っている物もありますから
でも その話自体には
すごく説得力があります
誰もが やっていることです
しかも 頼りとする そうした話の多くは
自分のものでさえない
まずは 子供の頃に
親から受け継ぎます
当然 その親にも
歪んだ信念や
不満や虚無感のようなものが
あるわけです
良くも悪くも 子供は
それをそのまま引き受け
いざ社会に出て
「慕われるには成功しなきゃ」とか
「いつも他人の要求を第一に」
と考えたりします
人には言えない秘密に
悩んだりもするでしょう
でも それも作り話に過ぎません
余計な心配はしないで
自分で思うほど
人はあなたを気にしていません
(笑)
マジックは 私たちがいかに
現実に手を加え 話を作り上げ
それを真実と勘違いするかを
とてもよく表しています
私はイギリスのテレビで20年もの間
大きな心理実験を披露してきました
今はNetflixでも見られます
舞台もやっています
私のブロードウェイ進出作
『Secret』がもうすぐ始まります
紹介しただけ
見ろとは言っていません
(笑)
今年中に始まるでしょう
メンタリズムを使って
新しいことをしようと思っています
メンタリズムとは
人の頭の中に入り込む怪しげな技です
かつて 読心術を見せるショーが盛んでした
1930年代のことです
この格好は
その頃をイメージしました
なんともTEDらしからぬ装いです
当時『Oracle Act (預言者の演)』という
ショーがありました
そこでは観客の方々に
皆さんにも していただいたように
秘密の質問を書いてもらいます
占い師に聞くような質問です
それを封筒に入れ 封を閉じ
封筒の表に自分のイニシャルと
だいたいの座席の位置も
書いてもらいます
それから 心を読める預言者が
1通ずつ封筒を手に取ります
封は開けません
封を切らずに 中の質問を
言い当てるんです
当たっていれば
その質問にも答えます
このショーは
瞬く間に広まりました
人は こうした能力者に
魅了されるんですね
人生の複雑で捉えがたい質問に
分かりやすく端的に答えてくれます
不安についてもです
さて 皆さんにも
質問を書いていただきました
私は見ていません
厳重に保管されているはずです
ありがとうございます
では もらいましょう
皆さんのご協力に感謝します
始める前にいくつか
お話ししておきたいことがあります
誓って言いましょう―
まず 封筒を透かして
見ることはできません
封がしてありますし
分厚い黒色の封筒です
書いた方はご存じでしょう
透かすことはできません
2つめは 重要で
私は皆さんを知らないし
誰ともグルじゃありません
そういうショーではありません
3つめは
私には 心理学的に
特別な才能はありません
ましてや霊能力もない
では始めましょう
分からない
(笑)
これなら―
なるほどね
これは面白い
いくつか分かりました
これから始めましょう
文字が上下にうねるように
書かれています
浮き沈みがある感じですね
つまり 必ずとは言わないまでも
大抵の場合
その人自身が質問の答えを
分かっていません
将来についての質問でしょう
不確かさの表れです
きっと女性ではないかと
年齢は そうだな
文字が少ないから悩むけど
30代か40代くらいでしょうか
予想だと
将来についての質問です
質問者は「J・N 真ん中の席」
真ん中の皆さん どうですか
書いたのは自分だと思う方
教えてください
ちょっと見えにくいな
どうも 手を振ってください
あなたは ジェ・・・
ジェーン?ジェシカ?
(ジェシカ)そうです
(ダレン)どっち?
(ジェシカ)ジェシカです
(ダレン)たまたまです
称賛のざわめきをどうも
(笑)
そういうことで
ジェシカさん
年齢は聞きませんが
質問の本筋は
将来のことですか?
(ジェシカ)えぇ
(ダレン)「はい」?
(ジェシカ)はい
(ダレン)なるほど
では 将来の何について
質問したのでしょう
30代後半か40代前半ですか?
(ジェシカ)そういうことで
(笑)
(ダレン)大事なポイントです
年齢によって質問が変わります
もう一度
「そういうことで」と
(ジェシカ)そういうことで
(ダレン)バージニア州出身?
(ジェシカ)そうです
(ダレン)そうですか…
(笑)
私が思うに
こちらの女性は
バージニア州を離れたがっています
何か検討中のようです
出ていく準備が整うかどうか
考えています
手を見せてください
反対側も
爪が見たい
農場をお持ちですね
その農場を売って
バージニア州を出たい?
当たってますか?
(ジェシカ)その通り
(ダレン)よかった
とてもいい質問だ!
実際には何と書きましたか?
(ジェシカ)
「バージニア州の農場を売るかどうか」
(ダレン)農場を売るか?
占い師ぶるには
うってつけの質問です
将来のことだからです
「はい」とも「いいえ」とも
答えられます
それを証明するすべは
ありませんしね
でも 危険なのは
「はい」か「いいえ」で答えると
それが相手の頭に残り
その人の判断に
影響を与えてしまうという点です
と言っておきながら―
(笑)
はい あなたは農場を売ると思います
私が見るに
全く良い意味で
あなたは
自分の望みを叶えるタイプだから
欲しいものがあれば
そこに焦点を合わせるでしょう
もっと重要視すべきと分かっている
他のことを犠牲にしても
当たっていますか?
教養があって―
そうだな
もう一度「はい」と言って
(ジェシカ)はい
(ダレン)「いいえ」は?
(ジェシカ)いいえ
(ダレン)カリフォルニア大学
バークレー校かな?
(ジェシカ)バークレー校です
もうやめて!
(ダレン)当たりました
最近インドにも行っていますね
そこで何か小さな事が始まった
はい?いいえ?
(ジェシカ)はい
インドから戻ったばかりです
(ダレン)これは あくまで私の出した答えで
運命などと言うつもりはありません
実際違いますし
どうぞ ご自身の責任でご決断を
(ダレン)ありがとう
お座りください
(拍手)
次も 真ん中の席です
A・Hさん
40代後半の男性だと思います
A・Hさん
お立ちください
どうも マイクをどうぞ
スピーディーに行きますよ
カメラもよろしく
おっと見てください!
そのまま動かないで
じっとして
立っていますか? どこですか?
(男性)立っています
背は低くないんですが
(ダレン)そうか
今 変えましたね
立ち上がるとき
何かしました
「はい」か「いいえ」で
答えてください
今ではなく
立ち上がったときの話ですよ
左側...左脚か左足に関連した何かでしたね
はい?いいえ?
(男性)はい
(ダレン)立ち上がったとき
一目瞭然でした
左に体重を移動して
「はい」と言ってください
(男性)はい
(ダレン)ポケットから手を出して
反対側に体重をかけて
マイクの持ち手を変えて
もう一度「はい」と
(男性)はい
(ダレン)なるほど
脱臼されたようですね
左足の親指ですか?
(男性)はい
(ダレン)どうもありがとう
大当たりだ お座りください
マイクを変えたいと思います
私にください
この辺に―
ありがとうございます
マイクを変えたのには
理由があります
ちゃんと聞こえますか
今から目隠しをするからです
こうすると 立ち上がる動作は
一切見えません
手の動きも見えないし
私の発言への反応も
見えません
質問者の隣の人の様子も
見えません
周りが答えを知っているときは
かなり有効なんですけどね
そうした小技は抜きです
でも不思議なことに―
目隠しすると
私は自由になります
皆さんにも自由になっていただきます
質問を書かなかったけれど
書いておけばよかったと
思っている方
今がチャンスです
質問を書くポイントは
ただ一つ
はっきり簡潔な言葉を使うこと
頭の中で構いません
明解で簡潔にしたら
念じて送ってください
どこにも書かれていない質問を
私が言い当てます
質問と一緒に
名前も送ってくださいね
「名前は~です」というのと
「私の足でおかしい所は?」など
質問を送ってください
名前と質問です
誰か送ってくれましたね
前の席です
名前がはっきり見えます
真ん中 前のほうです
アランさん?
そういう方がいるはずです
かなり前のほうで
真ん中ぐらいでしょう
そこから気を感じます
60代前半の男性かな
(アラン)はい
(ダレン)マイクをもらったんですね
私がそっちに向いたら
「ストップ」と言ってください
向きを知りたいので
(アラン)ストップ
(ダレン)やぎ座ですか?
(アラン)はい
(ダレン)アランさんの質問を当てます
声から控えめな感じがしました
この質問はなかなか難しそうだ
もう一度「はい」と
(アラン)はい
(ダレン)おそらくー
いや 違うな
何かへの接続方法か
パスワードでしょうか
「はい」か「いいえ」で答えて
パスワードですか?
(アラン)はい
(ダレン)コンピューターか何かの?
(アラン)はい
(ダレン)よし!
(笑)
では 当てにいきます
もし当たっていれば
たくさんの人にパスワードがバレますよ
あとで変えてくださいね?
(アラン)もちろん
(笑)
(ダレン)もう一度「もちろん」と
(アラン)もちろん
(ダレン)そうですね
単語だと思います
目の前に
そのパスワードを思い浮かべて
大きくはっきりと
ブロック体の大文字で
そして真ん中にある
文字のことを考えてください
声に出さないで
真ん中の文字1つだけを
思い浮かべて
できましたか?
(アラン)はい
(ダレン)そのままで
あ 変えましたね
別の文字にしたでしょう
思い浮かべているのは―
「B」ですか?
(アラン)いいえ
違います
(ダレン)では「I」?
(アラン)そうです
(ダレン)最初は「B」でしたね?
(アラン)はい
(ダレン)途中で変えたでしょう
(笑)
では その文字を見続けて
そのまま頭の中で
繰り返し言ってください
おや ドラムも叩くんですか?
(アラン)叩きます
(ダレン)でも今は
ドラムのことは考えないで
これに集中してください
(笑)
私の仕事は
物語を売ることです
どうするかというと
皆さんの注意を
私が重視してほしい
あることに向けさせ
他のいらないものは
無視するよう仕向けます
そして 点と点を繋ぐように
私の行動を説明する物語を
ご自身で紡いでもらいます
これができるのは
人間が物語好きだからです
みんな毎日 話を作っています
私たちが乗り込んでいくのは
複雑で捉えがたい世界です
皆さんや私 アランさんのように
複雑で捉えがたい人ばかり
だから みんなを単純化して
分かりやすい人物像にして
自分への物語に
はまるようにしています
「あの人は不安症だ」「傲慢だ」
「信用できない人だ」と言いますよね
それも単なる物語で
私を「心が読める人」と思い込むのと一緒です
アランさん ご自分の会社を
売ろうと思っていますね?
(アラン)そうです
(ダレン)お肌に関する会社ですか?
(アラン)はい
(ダレン)スキンケア系の?
(アラン)そうですね
(ダレン)私は これをするのが
大好きなんですが
複雑で捉えがたい現実に
より敏感になり 注意を払うよう
思い起こさせてくれるからです
周りでは いつも
自分の知らないことが起こっています
注意力を上げれば もっと生きやすく
人に優しくできます
相手のストレスの裏には 常に
恐れがあると分かるからです
すると 構える必要もなくなり
相手の物語をありのままに
受け入れ始めることができ
人生とは自分のことだけではないと
分かるようになります
あ!
パスワードでしたね
アランさんはどこ?
(アラン)ここです
(ダレン)お立ちください
パスワードは「ariboy」だ
当たっていますか?
(アラン)正解です
(ダレン)ありがとうございました
(拍手)