WEBVTT 00:00:02.417 --> 00:00:03.840 私はユタ州に住んでいます 00:00:03.840 --> 00:00:07.655 地球上でも最も壮麗な 風景のいくつかが 00:00:07.655 --> 00:00:09.175 見られる場所です 00:00:09.175 --> 00:00:12.647 素晴らしい光景に圧倒され 00:00:12.647 --> 00:00:16.530 その異世界のような姿には 心を奪われてしまいます 00:00:16.530 --> 00:00:20.108 科学者として私は 自然を観察するのが好きですが 00:00:20.108 --> 00:00:21.979 細胞生物学者としては 00:00:21.979 --> 00:00:24.821 自然の世界を ずっと小さなスケールで理解することに 00:00:24.821 --> 00:00:27.271 より強い関心を持っています NOTE Paragraph 00:00:27.917 --> 00:00:30.273 私は分子のアニメーション作家で 00:00:30.273 --> 00:00:32.083 他の研究者と協力し 00:00:32.083 --> 00:00:35.264 見えない小さな分子の 可視化をしています 00:00:35.264 --> 00:00:38.155 そういう分子は 光の波長よりも小さいため 00:00:38.155 --> 00:00:40.686 最高の光学顕微鏡を使っても 00:00:40.686 --> 00:00:42.488 直接見ることはできません 00:00:42.488 --> 00:00:44.565 見ることのできない 小さなものを 00:00:44.565 --> 00:00:46.687 どうやって可視化するのでしょう? NOTE Paragraph 00:00:46.687 --> 00:00:49.059 私が一緒に仕事しているような 科学者たちは 00:00:49.059 --> 00:00:53.473 1つの分子過程の理解に 生涯を費やすこともあり 00:00:53.473 --> 00:00:57.249 パズルの小さな断片について語る 実験をいろいろ行うことで 00:00:57.249 --> 00:00:59.028 解明をしていきます 00:00:59.028 --> 00:01:01.744 ある実験で タンパク質の形が分かり 00:01:01.744 --> 00:01:05.282 別の実験で 他のタンパク質との 相互作用の仕方が分かり 00:01:05.282 --> 00:01:08.650 また別の実験で細胞内の どこにあるかが分かるという具合です 00:01:08.650 --> 00:01:11.121 断片的情報を 繋ぎ合わせることで 00:01:11.121 --> 00:01:15.659 分子の働きについて 仮説を立てることができます NOTE Paragraph 00:01:17.000 --> 00:01:20.847 私の仕事は そのような仮説を元に アニメーションを作ることです 00:01:20.847 --> 00:01:23.897 分子というのは 突拍子もないことをしうるものなので 00:01:23.897 --> 00:01:25.591 難しいこともありますが 00:01:25.591 --> 00:01:28.322 アニメーションは 分子の働きについて 00:01:28.322 --> 00:01:31.887 研究者が考えを伝えるのに とても役に立ちます 00:01:31.887 --> 00:01:34.081 また みんなが分子の世界を 00:01:34.081 --> 00:01:36.380 科学者の眼で 見られるようにします NOTE Paragraph 00:01:36.380 --> 00:01:38.312 いくつかのアニメーションを使い 00:01:38.321 --> 00:01:43.571 驚異の分子の世界のツアーに 皆さんをお連れしましょう 00:01:43.571 --> 00:01:45.571 これは免疫細胞です 00:01:45.571 --> 00:01:48.777 このような細胞は 病原菌のような侵入者を見つけるために 00:01:48.777 --> 00:01:51.530 体内をはい回る必要があります 00:01:51.530 --> 00:01:54.604 この動きは細胞骨格のひとつで 00:01:54.604 --> 00:01:58.446 私のお気に入りのタンパク質の アクチンによるものです 00:01:58.446 --> 00:02:00.113 体の骨格とは違い 00:02:00.113 --> 00:02:03.921 アクチンの線維はたえず 作られたり壊されたりしています 00:02:03.921 --> 00:02:07.311 アクチンの細胞骨格は細胞内で とても重要な役割を担っています 00:02:07.311 --> 00:02:09.346 アクチンによって細胞は 形を変えたり 00:02:09.346 --> 00:02:11.522 動き回ったり 表面に張り付いたり 00:02:11.522 --> 00:02:13.946 細菌を平らげたりできるのです NOTE Paragraph 00:02:13.946 --> 00:02:16.571 アクチンは違った形の動きにも 関与しています 00:02:16.571 --> 00:02:18.510 筋細胞内では アクチンは 00:02:18.510 --> 00:02:21.393 布のような規則的な 線維構造を取っています 00:02:21.393 --> 00:02:24.164 筋肉が収縮する時は 線維が引っ張り合い 00:02:24.164 --> 00:02:27.843 筋肉が弛緩する時は 元の位置に戻ります NOTE Paragraph 00:02:27.843 --> 00:02:30.977 別の細胞骨格である微小管は 00:02:30.977 --> 00:02:33.780 長距離輸送を担っています 00:02:33.780 --> 00:02:37.603 細胞の中でひとつの場所から別の場所へ 物を動かす時に使われる 00:02:37.603 --> 00:02:39.919 細胞内の幹線道路のようなものです 00:02:39.919 --> 00:02:42.613 道路と違うのは 微小管は伸縮するということで 00:02:42.613 --> 00:02:44.120 必要な時に現れ 00:02:44.120 --> 00:02:46.372 仕事が済めばなくなります NOTE Paragraph 00:02:46.372 --> 00:02:48.929 分子版のトレーラーは 00:02:48.929 --> 00:02:51.599 モータータンパク質と 呼ばれています 00:02:51.599 --> 00:02:53.921 それが細胞小器官のような 00:02:53.921 --> 00:02:56.554 大きな荷物を牽引しながら 00:02:56.554 --> 00:02:58.576 微小管上を移動します 00:02:58.576 --> 00:03:01.665 ここに出ているダイニンという モータータンパク質は 00:03:01.665 --> 00:03:03.853 協力し合って働き 00:03:03.853 --> 00:03:07.206 私には馬車のように見えます NOTE Paragraph 00:03:07.206 --> 00:03:11.275 細胞というのは御覧のように 変化するダイナミックな場所で 00:03:11.275 --> 00:03:14.579 たえず構築と分解が 繰り広げられています 00:03:14.579 --> 00:03:16.347 構造によっては他と比べて 00:03:16.347 --> 00:03:18.155 分解が大変なものもあります 00:03:18.155 --> 00:03:21.660 そういう構造物を 適切なタイミングで分解するため 00:03:21.660 --> 00:03:23.520 特別部隊が必要になり 00:03:23.520 --> 00:03:26.321 このようなタンパク質の 出番になります 00:03:26.321 --> 00:03:28.356 このドーナツみたいな形の タンパク質は 00:03:28.356 --> 00:03:30.305 細胞内にいろいろな 種類がありますが 00:03:30.305 --> 00:03:33.518 真ん中の穴で個々の タンパク質を引っ張ることで 00:03:33.518 --> 00:03:35.405 解体を行います 00:03:35.405 --> 00:03:37.988 このようなタンパク質が 上手く働かないと 00:03:37.988 --> 00:03:43.237 分解されるべきタンパク質が くっついて溜まっていき 00:03:43.237 --> 00:03:47.338 アルツハイマーのような 酷い病気を引き起こします NOTE Paragraph 00:03:47.338 --> 00:03:49.414 今度は細胞核を見てみましょう 00:03:49.414 --> 00:03:52.285 DNAの形でゲノムが 格納されている場所です 00:03:52.285 --> 00:03:54.182 DNAはすべての細胞内にあって 00:03:54.182 --> 00:03:58.134 様々なタンパク質により 手入れされ保持されています 00:03:58.134 --> 00:04:01.067 DNAはヒストンというタンパク質に 巻き付いていて 00:04:01.067 --> 00:04:05.274 膨大な量のDNAが 細胞核内に収まるようにしています 00:04:05.274 --> 00:04:08.603 ここに出ているマシンは クロマチンリモデラーで 00:04:08.603 --> 00:04:12.519 ヒストンの周りで DNAを繰り出して 00:04:12.519 --> 00:04:16.312 DNAの新たな部分が 露出するようにします 00:04:16.312 --> 00:04:19.469 それでDNAが他のマシンから アクセスできるようになります 00:04:19.469 --> 00:04:21.863 ここでは大きな分子マシンが 00:04:21.863 --> 00:04:25.877 遺伝子のはじまる位置を 探しています 00:04:25.877 --> 00:04:27.613 その位置が見つかると 00:04:27.613 --> 00:04:30.405 一連の変形を行い 00:04:30.405 --> 00:04:36.613 遺伝子の発現や複写を行う 他のマシンが作業できるようにします 00:04:36.613 --> 00:04:39.821 これはとても良く 管理されたプロセスで 00:04:39.821 --> 00:04:42.803 発現する遺伝子の 種類やタイミングを誤ると 00:04:42.803 --> 00:04:45.280 酷い結果になりかねません NOTE Paragraph 00:04:45.280 --> 00:04:48.042 今では科学者は タンパク質のマシンを使って 00:04:48.042 --> 00:04:49.791 ゲノムを編集でます 00:04:49.791 --> 00:04:52.101 CRISPRの名前は 聞いたことがあるでしょう 00:04:52.101 --> 00:04:55.155 CRISPRはCas9という タンパク質を使い 00:04:55.155 --> 00:04:58.276 DNA上の特定の部分を 見つけて切断するよう 00:04:58.276 --> 00:05:00.238 仕立てることができます 00:05:00.238 --> 00:05:02.580 ここでは2つの Cas9タンパク質が 00:05:02.580 --> 00:05:05.530 DNAの問題のある個所を 切除しています 00:05:05.530 --> 00:05:09.012 病気を引き起こすような部分を 取り除くわけです 00:05:09.012 --> 00:05:10.531 細胞の働きを使って 00:05:10.531 --> 00:05:13.911 切られたDNAを つなぎ合わせます NOTE Paragraph 00:05:13.911 --> 00:05:16.291 分子アニメーション作家として 最も大変なのは 00:05:16.291 --> 00:05:18.788 はっきりと分からないものの 可視化です 00:05:18.788 --> 00:05:20.696 お見せしてきたアニメーションは 00:05:20.696 --> 00:05:23.968 科学者たちが手にできた 情報から推理した 00:05:23.968 --> 00:05:26.696 プロセスの働きを 表現したものです 00:05:26.696 --> 00:05:31.359 しかし分子的プロセスの多くは 理解され始めたばかりで 00:05:31.359 --> 00:05:33.065 学ぶべきことが まだまだあります 00:05:33.065 --> 00:05:35.917 実のところ この見えない分子の世界は 00:05:35.917 --> 00:05:38.684 広大で概ね未探査です 00:05:39.458 --> 00:05:41.530 こういう分子の風景は 00:05:41.530 --> 00:05:44.145 周りの目に見える 自然の世界同様に 00:05:44.145 --> 00:05:47.186 私にとって探索し甲斐の ある場所なんです NOTE Paragraph 00:05:47.186 --> 00:05:48.789 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:05:48.789 --> 00:05:51.792 (拍手)