これから皆さんに
秘密をたくさん お教えします
そうすることで
大抵の人が感じている—
セックスを恥じる気持ちを
少しでも解消できればと思います
通りすがりの人から 下品な言葉が
飛んできた経験のある方はいますか?
女性ばかりですね
私にとって一番 強烈だったのは
その「通りすがり」の人が
実は私の生徒だったときのことです
その日 授業の終わりに
問題の生徒がやって来て
予想通りの言葉を発しました
「教授 本当に申し訳ありません
教授だと知っていたら
あんなことは言いませんでした」
(笑)
教授だと認識するまで
彼は私を人とは見ていなかったのです
この概念は 性的「モノ化」と呼ばれ
性差別の根底をなすものであり
日常生活のあらゆる側面を通じて
繰り返されています
例えば 男性が女性をレイプしても
処罰しようとしない国の
政府に見られるものです
広告にも見られます
例えば 商品に関連がないのに
女性の胸を使った広告を
見たことがある方はいますか?
女性が恋愛対象としてしか
登場しない映画が
呆れるほど多いなと思う人は?
こういった事例は
取るに足らない無害なものに見えて
そのくせ裏では
女性を頑なにモノ扱いし続ける
文化の一部としてじわじわ勢いを増しています
男の子の気が散って勉強できないような
服を着ているからと
10歳の女の子を家に帰す学校にも
見られるものですし
また 強姦を何度も繰り返す男性を
処罰しようとしない国の
政府にも見られます
また ディスコで
股間を擦り付けて踊るのを嫌がっただけで
女性が殺されるのも同様の現象です
メディアが大きく加担して
女性の性的モノ化が続くのです
典型的なラブコメを見てみましょう
登場人物の女性に
ありがちなタイプは2種類あります
恋愛対象として描かれる女性の話です
1人目は アッというほどセクシーで
完璧なカラダを持つ
信じられないほど美しい女性です
主人公の男性は
その魅力に難なく気づき
あっさりとセックスします
2人目は 主人公の女性です
美しくも謙虚で
主人公の男性と恋に落ちる筋書きですが
最初は存在を認識されないか
認識されても嫌われます
1人目の女性は「軽い女」です
使い捨てにされ 忘れられます
軽すぎるからです
2人目は
魅力的だけど謙虚なので
主人公の男性の赤ちゃんを産むのに
ふさわしいタイプです
つまり花嫁候補です
事実 女性には2つの役割があると
言われますが
1人の女性が2つの役割を両立するのは
難しいことです
ごく稀に 知り合ったばかりの人に
私がセックスの研究をしていることを
話すことがあります
会話がそれで途切れない場合
大抵は非常に面白がります
「へえ もっと教えてよ」
そこで お言葉に甘えて—
「妊娠中や産後に
夫婦がとる性行動を
ぜひ調査したいと思っています」
こう言うと
最初と違う反応を受けます
(笑)
「え〜 何それ
妊婦ってセックスするんだ?
それより 性欲とか
オーガズムの研究なんてしてみたら?
そっちのほうが面白そうだし
話題性もあるよ」
皆さん 妊婦の姿を想像したとき
どんな言葉が浮かびますか?
ある調査で 500人以上の成人に
この質問をしたところ
大多数の人の答えは
「お腹」 「丸い」
そして「可愛い」でした
特に意外ではありませんでした
「可愛い」といえば
他に何がありますか?
赤ちゃん 子犬 子猫
お年寄り ですよね?
(笑)
でも大人を「可愛い」と呼ぶと
そういう人が持つ知性や
複雑性が大きく削がれてしまいます
子供のような性質しか残りません
また 男女に質問をしました
男性にはパートナーの女性が
妊娠中だと想像してもらい
女性には自分が妊娠中だと
想像してもらい
セックスするとしたら
どんな言葉が浮かぶか
教えてもらいました
回答のほとんどは否定的でした
「気持ち悪い」
「気まずい」
「セクシーじゃない」「変だ」
「やりづらい」
「どうやって?」
(笑)
「手間がかかる」
「危険を冒すほどでない」
最後のは 非常に印象に残りました
一般的に 妊婦や母親は
セックスと切り離して考えられるため
性的モノ化の対象にはならないと
思うかもしれません
性差別も受けにくいと思うでしょう
そうとも限らないのです
違ったタイプの
性的モノ化が起こります
これを説明しようとしていたら
旧石器時代の小像「ヴィレンドルフの女」の
話になったことがあります
学者たちは
愛と美の女神だと考え
ヴィーナスと呼びましたが
この理論は後になって覆されました
生殖に関わる部分があからさまに
強調されているという
発見があったからです
授乳にふさわしいとされる
大きな乳房や
丸みを帯びた
妊娠中と考えられるお腹
わずかに赤みのある色合いは
月経や出産を連想させます
また 手に持ったり横たえておく目的で
作られたとも考えられました
足が小さく そのままでは
立てておけないからです
顔さえもありません
こういった理由から
この小像は人をかたどったものではなく
生殖能力の象徴だと考えられました
単なる「モノ」だったのです
この小像の解釈は
理想的な愛と美の象徴から
生殖の象徴へと変化を遂げました
こうした変化から 分かるのは
小像の実際の意義というより
むしろ それを研究した
学者たちについてだと思います
妊娠を迎えた女性は
男性の性欲の対象ではなくなり
生殖や子育てをする役目に
すげ替えられます
それと同時に 女性は
社会の所有物と化し
非常に大切にされますが
ただ単に妊婦だからという理由です
私はこれをヴィレンドルフ効果と
呼んでいますが
これも その人の人生のあらゆる側面に
登場し 刷り込まれていきます
妊娠して 傍目にもわかるほど
お腹が出たことのある方は?
(笑)
たくさんいますよね
では 妊娠中 知らない人に
お腹を触られた方?
しかも「触っていいですか」さえ
言われなかった方?
医師や医療従事者で
世話にもなっていない人から
あれを食べろ これは食べるな
などと言われたことは?
分娩をどうするかなどと
踏み込んだ質問をされたことは?
しまいに「それは間違っている」
とまで言われたことは?
ええ 私もあります
ワインを注文して
ウェイターに断られたことは?
今のは「え?」っと思うかもしれませんが
まあ 聞いててください
これは ものすごい秘密です
実は 妊娠中の適度な飲酒は
安全なのです
大抵の人は知らない話です
教えたら妊婦は適量を守れないだろうと
医者が思っているからです
(笑)
学歴が低い女性や
有色人種の女性に対しては特にそうです
このことから分かるのは
ヴィレンドルフ効果には
階級差別や人種差別も含まれていることです
これが表れるのは 政府が
中絶を禁止する法案を次々と出して
子宮の中の命は
その女性のものではないのだと
知らしめてくるときや
産婦人科医のこんな言葉です
「妊娠中のセックスは
安全なのですが
絶対とは言い切れません
『安全第一』ですからね」
こうして 自分の体に対する自由や
基本的なプライバシーを否定されるのです
「いい母親であれ」という建前の下にね
妊婦は意思決定能力が低いと
見られているのです
「可愛い」存在ですしね
女性に対して
性的快感は — すみません
妊娠中に危険を冒してまで
セックスする価値はないという発言は
その女性の性的快感はどうでもいいと
言っているのと同じです
つまり 人として
どうでもいいという意味なのです
母体の快楽は胎児にとって
害にならないはずなのにです
医療機関 例えば
米国産科婦人科学会のような団体は
妊娠中のセックスの安全性を
教えることができる立場にありますが
どんな見解なのでしょう
実際には
妊娠中のセックスの安全性について
公式なコメントは出していません
メイヨー・クリニックは
概ね肯定的な見解ですが
こんな ただし書きが付いています
「大抵の場合 妊娠全期を通して
セックスしても安全ですが
注意したほうが良い場合もあります」
妊娠中にセックスしたくない
女性もいるでしょう
それもアリですし
妊娠中にセックス「したい」
女性もいるでしょう
それもアリなのです
禁止すべきなのは
社会が女性に対し
自分の体に何をするのかに
口出しすることです
(拍手)
妊婦は 顔のない 誰でもない
一人で立つこともできない—
生殖用の媒体ではありません
でも本当の話 問題の核心は
女の性的快感はどうでもいいと
あらゆる女性が言われていることです
同性同士セックスする女性や
子供が欲しくない女性は
存在すら
認められていないのです
「一時的に そう振舞ってるけど
素敵な男性が現れてないだけ」
と言われます
気持ちいいという理由だけで
女性がセックスすること自体
革命的として扱われます
革命児扱いです
女性の存在理由は
男性の快楽や生殖に限られると
押し付けてくる社会の抑圧に
抵抗していると みなされるのです
自分の性的ニーズを優先する女性は
恐ろしいものなのです
そういう女性は 自分のニーズを
まず先に考えるからです
(拍手)
周りと平等に扱われるべきと
主張するような女性であり
権力者の集まるテーブルに
自分の席を作ってくれと
要求するような女性であり
それが何よりも恐ろしいのは
席を作るためには
誰かが余分に持っている席を
諦めなければいけないからです
(拍手)
もう1つだけ秘密があります
私には2人の息子がいますが
皆さんの力を借りたいんです
息子たちには日頃から
男性は女性を対等な存在として
見ることが大事だと
言い聞かせているし
これを夫が率先して
実践してくれていますが
これが家庭内に限らず
世の中でも実践される必要があります
男性の問題でも
女性の問題でもなく
みんなの問題なのです
不平等なシステムを崩すにあたり
誰もが その一端を担うのです
まず 女性に対して
自分の体にしていいことや
悪いことは何か
押し付けるのはやめましょう
(拍手)
妊婦を社会の所有物として
扱うのもやめましょう
妊婦が知らない人なら
お腹を触っていいか聞くのすら失礼です
相手が妊婦でなければしないはずです
妊婦に何を食べるか
指図しないでください
出産に関わる選択について
詮索しないでください
そして 理解してください
自分は中絶はしないと決めている人でも
女性の選択する権利のために
闘ったっていいのです
男女平等という視点で言えば
この2つのニーズは相反しません
女性とセックスするときは
相手の快感を優先してください
何が気持ちいいのか分からなければ
聞いてあげてください
子供がいる場合は —
(笑)
できるだけ早いうちに
セックスについて話してあげてください
子供が「セックス」という言葉を
辞書で引くような時代ではありません
インターネットで調べるのですから
そして セックスについて
子供に話すときには
生殖の話だけに
こだわらないでください
人は様々な理由でセックスします
子供が欲しい人もいますが
大抵の人は気持ちいいから
セックスするのです
認めましょう
子供のあるなしに かかわらず
十代の若者にセックスを恥と思わせない
総合的な性教育を支援しましょう
(拍手)
若者の性欲や性行動を
恥だと思わせたところで
ポジティブな つまり
いい結果は何一つ生まれません
ポジティブ(陽性)なのは
性感染症や妊娠検査の結果くらいです
私たち一人一人が
不平等のパターンを乱すチャンスを
毎日毎日手にしているのです
その手間をかける価値があると
誰もが 思えるはずです
ありがとうございました
(拍手)