WEBVTT 00:00:19.828 --> 00:00:21.610 あなたの給料はいくらですか? 00:00:21.855 --> 00:00:23.743 口に出してはいけませんよ 00:00:24.266 --> 00:00:26.237 頭の中で数字を思い浮かべるだけです 00:00:26.717 --> 00:00:31.360 では 隣に座っている人の給料は いくらだと思いますか? 00:00:31.816 --> 00:00:34.035 これも 口に出してはいけません 00:00:34.059 --> 00:00:35.161 (笑) 00:00:35.844 --> 00:00:38.202 それでは あなたの職場で 00:00:38.226 --> 00:00:42.164 机を並べて働いている人の 給料はいくらだと思いますか? 00:00:42.188 --> 00:00:43.343 知っていますか? 00:00:43.607 --> 00:00:45.242 知っておくべきことでしょうか? 00:00:45.661 --> 00:00:49.638 私だって こんな質問は するのさえ気まずく感じますが 00:00:49.662 --> 00:00:52.812 でも 実際のところ 皆さんだって知りたいでしょう 00:00:53.693 --> 00:00:57.122 ふつうは 給料を大っぴらにするなんて と思いますよね 00:00:57.122 --> 00:00:59.421 隣近所に言いふらすものじゃ ありませんし 00:00:59.421 --> 00:01:02.607 職場の同僚に言うなんて もってのほかです 00:01:02.631 --> 00:01:06.139 お互いの給料が分かったら 大混乱に陥ると思われているからです 00:01:06.139 --> 00:01:07.959 お互いの給料が分かったら 大混乱に陥ると思われているからです 00:01:07.983 --> 00:01:10.084 言い争いや もめ事が勃発し 00:01:10.108 --> 00:01:12.277 辞職する者も出てくるかもしれません 00:01:12.321 --> 00:01:16.100 でも そういった対立は 秘密にするから生まれるのだとしたら? 00:01:16.124 --> 00:01:18.742 この秘密を取り払ったら どうなるんでしょう? 00:01:19.299 --> 00:01:22.954 もしオープンにすることで 社内で公平感が高まり 00:01:22.954 --> 00:01:24.536 連携が深まるとしたら? 00:01:24.560 --> 00:01:28.146 給料をすっかり公開したら どうなるんでしょう? 00:01:28.954 --> 00:01:30.271 私はこの数年 00:01:30.295 --> 00:01:33.208 従来の経営手法に 疑問を投げかけている— 00:01:33.232 --> 00:01:36.781 企業リーダーを 研究してきましたが 00:01:36.805 --> 00:01:39.467 この給料の問題が 絶えず出てきます 00:01:39.805 --> 00:01:42.255 そして その結論には いつも驚かされています 00:01:43.158 --> 00:01:44.965 給料に透明性を持たせると 00:01:44.989 --> 00:01:47.099 つまり 社内で給料を公開すると 00:01:47.123 --> 00:01:49.756 従業員にとっても その組織にとっても 00:01:49.756 --> 00:01:51.943 より良い職場になるというのです 00:01:52.062 --> 00:01:55.161 同僚の給料に比べて 自分の給料がどうか分からないと 00:01:55.185 --> 00:01:57.001 給料が低すぎるとか 00:01:57.025 --> 00:01:59.180 差別されているとさえ 感じがちです 00:01:59.346 --> 00:02:01.921 従業員が 不当な待遇や 差別を感じていても 00:02:01.945 --> 00:02:04.749 知らんぷりな職場で 働きたいと思いますか? 00:02:05.297 --> 00:02:07.987 でも 給料を秘密にするとは そういうことなんです 00:02:07.987 --> 00:02:11.004 これは どこにでもある 昔からの慣行で 00:02:11.274 --> 00:02:13.726 アメリカでは労働者に 給与について話す権利が 00:02:13.726 --> 00:02:17.240 法律で保障されているにも かかわらずそうなんです 00:02:18.117 --> 00:02:20.675 百年近く前の有名な話があります 00:02:20.699 --> 00:02:22.805 雑誌『ヴァニティ・フェア』の経営陣が 00:02:22.829 --> 00:02:24.949 こんな題の文書を回覧したんです 00:02:24.973 --> 00:02:28.178 「従業員間での給料の話の禁止」 00:02:28.202 --> 00:02:31.524 禁止するんですよ 給料について話すことを 00:02:31.942 --> 00:02:34.213 それには みんな納得できなかったようです 00:02:34.213 --> 00:02:36.333 ニューヨークの作家たち ドロシー・パーカー 00:02:36.333 --> 00:02:38.275 ロバート・ベンチリー ロバート・シェアウッド 00:02:38.275 --> 00:02:40.650 アルゴンキン・ラウンド・テーブルの全員が 00:02:40.674 --> 00:02:42.455 透明性を求めて立ち上がり 00:02:42.479 --> 00:02:44.211 翌日 職場に現れたときには 00:02:44.235 --> 00:02:47.629 自らの給料を書いた札を 首からぶら下げていたそうです 00:02:47.629 --> 00:02:49.021 (笑) 00:02:49.416 --> 00:02:50.991 想像できますか? 00:02:51.015 --> 00:02:54.665 職場で みんなに見えるよう 給料を胸に書き出しているんですよ 00:02:56.193 --> 00:02:59.543 でも なぜ会社というのは 給料を口外させたくないんでしょう? 00:02:59.567 --> 00:03:03.169 なぜ 従う人がいる一方で こんな風に反対する人もいるんでしょう? 00:03:04.606 --> 00:03:07.284 よく言われる理由に加え 00:03:07.284 --> 00:03:10.977 給料を秘密にしておくと 実は大きなコスト削減になるんです 00:03:11.001 --> 00:03:12.912 給料を秘密にすることで 00:03:12.936 --> 00:03:15.887 経済学で言う「情報の非対称性」が 生まれます 00:03:15.911 --> 00:03:18.182 つまり 交渉の場において 00:03:18.206 --> 00:03:21.204 一方が 圧倒的に多くの情報を 持つことになります 00:03:21.477 --> 00:03:24.997 ですから 会社側は 雇用や昇進、昇給の交渉において 00:03:25.021 --> 00:03:28.849 情報が知られていないことを利用して 多額の節約ができるのです 00:03:28.998 --> 00:03:31.606 皆さんだって 他の人たちの給料を知っていたら 00:03:31.606 --> 00:03:33.803 昇給の交渉がしやすいと思うでしょう 00:03:36.192 --> 00:03:38.577 経済学では 情報の非対称性があると 00:03:38.577 --> 00:03:40.348 市場の失敗を招くとされています 00:03:40.348 --> 00:03:42.964 誰かコピー機に給与明細を 置き忘れようもんなら 00:03:42.964 --> 00:03:44.976 職場はもう大乱闘になるでしょう 00:03:45.566 --> 00:03:47.582 事実 経済学者は 00:03:48.306 --> 00:03:53.413 情報の非対称性は 市場の完全な失敗を 招きうるとさえ言っています 00:03:53.595 --> 00:03:55.609 私たちは その一歩手前にいます 00:03:55.633 --> 00:03:56.799 なぜ そう考えるのか 00:03:56.823 --> 00:04:01.751 まず ほとんどの人は同僚と比べて 自分の給料がどうなのか知りませんよね 00:04:02.334 --> 00:04:06.184 2015年に行われた 会社員7万人を対象とした調査では 00:04:06.208 --> 00:04:09.589 市場相場の給料をもらっている人の 3分の2が 00:04:09.613 --> 00:04:11.845 給料が不当に低いと感じる と答えました 00:04:12.536 --> 00:04:15.415 また 給料が低すぎると 感じている人のうち 00:04:15.439 --> 00:04:18.392 60%が 転職を考えていると 答えています 00:04:18.416 --> 00:04:21.277 実際の給料が 相場よりも 00:04:21.277 --> 00:04:23.047 安いか高いかにかかわらずです 00:04:23.560 --> 00:04:26.160 皆さんだったら この調査で何と答えたでしょうか? 00:04:26.184 --> 00:04:27.460 給料が安すぎる? 00:04:27.484 --> 00:04:29.783 でも ちょっと待って なぜ分かるんですか? 00:04:29.783 --> 00:04:32.066 職場で給料について 話せないわけでしょう? 00:04:32.411 --> 00:04:36.010 また 情報の非対称性 つまり 給料を秘密にすることで 00:04:36.034 --> 00:04:38.813 現在の市場に存在している差別を 00:04:38.837 --> 00:04:41.304 ないことに しやすくなります 00:04:41.717 --> 00:04:45.388 2011年に女性政策研究所が 発表した報告書によれば 00:04:45.388 --> 00:04:47.562 男女の賃金格差は 00:04:47.586 --> 00:04:49.324 23%でした 00:04:49.801 --> 00:04:52.960 あの「1ドルに対して77セント」 という話はここから来ています 00:04:52.981 --> 00:04:54.308 一方 連邦政府では 00:04:54.308 --> 00:04:56.145 等級によって給料が決まり 00:04:56.145 --> 00:04:58.289 みんなに給料が分かる仕組みに なっているため 00:04:58.289 --> 00:05:01.004 男女賃金格差は 11%にまで縮まっています 00:05:01.004 --> 00:05:03.464 ちなみに これは経済学者が よく議論している 00:05:03.488 --> 00:05:06.491 給料に影響する様々な要素を 考慮する前の数字です 00:05:06.764 --> 00:05:09.436 男女の賃金格差を本当になくしたいなら 00:05:09.450 --> 00:05:11.948 給料の公開に踏み切るべきかもしれません 00:05:12.364 --> 00:05:15.586 もし これが 市場の完全な失敗というものであるのなら 00:05:15.610 --> 00:05:18.878 給料の公開こそが 公正を確保する 唯一の残された道でしょう 00:05:19.774 --> 00:05:22.275 自分がいくら稼いでいるか 知られることは 00:05:22.299 --> 00:05:23.945 気まずいもの かもしれません 00:05:23.969 --> 00:05:25.484 でも もっと気まずいのは 00:05:25.508 --> 00:05:28.282 自分が差別されているんじゃないかとか 00:05:28.282 --> 00:05:32.444 妻や娘、姉妹の給料が低すぎやしないかと 思いあぐねることの方でしょう 00:05:32.853 --> 00:05:36.793 オープンにすることが 公正を確保する最善の方法であり 00:05:36.817 --> 00:05:38.930 給料の公開は それを実現できます 00:05:39.491 --> 00:05:42.015 だからこそ 企業のリーダーたちも 00:05:42.015 --> 00:05:44.912 何年にも渡って 給料の公開に 取り組んできたわけです 00:05:44.912 --> 00:05:46.425 例えば デーン・アトキンソン 00:05:46.449 --> 00:05:48.062 彼は連続起業家で 00:05:48.062 --> 00:05:51.934 従業員の給料が非公開の形で 多くの企業を立ち上げ 00:05:51.958 --> 00:05:53.595 その条件を利用して 00:05:53.595 --> 00:05:57.215 同じような資質であっても その人の交渉力によって 00:05:57.215 --> 00:05:59.454 大きく給料を変えていたことも ありました 00:05:59.591 --> 00:06:02.922 でも デーンは これが対立を生んでいると気づき 00:06:03.268 --> 00:06:05.549 一番新しく設立した会社 SumAll では 00:06:05.549 --> 00:06:08.809 最初から 全従業員の給料を公開すると約束し 00:06:09.321 --> 00:06:11.229 素晴らしい結果を生んでいます 00:06:11.924 --> 00:06:13.546 様々な研究が示しているのは 00:06:13.570 --> 00:06:15.420 自分の給料がどう決まり 00:06:15.420 --> 00:06:17.463 同僚の給料と比べてどうかが分かると 00:06:17.463 --> 00:06:19.950 従業員は業績を上げるため より懸命に働き 00:06:19.950 --> 00:06:23.129 より積極的に関わり 離職率も下がるということです 00:06:23.133 --> 00:06:24.865 だからこそ デーンだけでなく 00:06:24.865 --> 00:06:27.290 Bufferのような 技術系スタートアップから 00:06:27.315 --> 00:06:30.871 何万人もの社員を抱えるホールフーズ・ マーケットまで 取り組んでいるんです 00:06:30.871 --> 00:06:33.952 ホールフーズでは 給料が公開されるだけでなく 00:06:33.976 --> 00:06:36.976 店舗や部門の成績も 00:06:37.000 --> 00:06:38.293 社内イントラネット上で 00:06:38.293 --> 00:06:40.615 誰もが見られるようになっています 00:06:41.385 --> 00:06:43.721 給料に透明性を持たせる方法は たくさんあり 00:06:43.721 --> 00:06:45.739 どこにでも合うやり方 というのはありません 00:06:45.739 --> 00:06:48.089 給料を社外にも公開するところもあれば 00:06:48.113 --> 00:06:50.388 社内にとどめるところもあります 00:06:50.388 --> 00:06:52.807 給与の計算式を公開したり 00:06:52.807 --> 00:06:53.975 俸給表を作って 00:06:53.975 --> 00:06:56.743 等級で給料が分かるように するところもあります 00:06:56.743 --> 00:06:58.696 職場で社員が身に付ける― 00:06:58.720 --> 00:07:01.244 給料を書いた札を 作る必要もなければ 00:07:01.268 --> 00:07:04.166 職場で ひとり寂しく お手製の札を身に付けることもありませんが 00:07:04.166 --> 00:07:05.678 職場で ひとり寂しく お手製の札を身に付けることもありませんが 00:07:06.294 --> 00:07:09.498 給料の透明化のためにできることは たくさんあります 00:07:10.033 --> 00:07:12.045 透明化に向けて 00:07:12.045 --> 00:07:13.833 組織を動かす権限がある方は 00:07:13.833 --> 00:07:15.378 ぜひ進めてください 00:07:15.743 --> 00:07:17.715 その権限のない方は 00:07:17.715 --> 00:07:20.214 自らの権利のため立ち上がりましょう 00:07:21.063 --> 00:07:22.998 給料はいくらですか? 00:07:23.986 --> 00:07:26.613 同僚と比べて どうですか? 00:07:26.930 --> 00:07:28.656 あなたは知っておくべきだし 00:07:29.112 --> 00:07:30.587 同僚もまたしかりです 00:07:31.736 --> 00:07:32.904 ありがとうございました 00:07:32.928 --> 00:07:36.106 (拍手)