WEBVTT 00:00:00.961 --> 00:00:03.125 今日お話したいのは 00:00:03.125 --> 00:00:05.523 現生人類(ホモ・サピエンス)と 絶滅したヒト属の 00:00:05.523 --> 00:00:07.101 ゲノムを研究して 00:00:07.101 --> 00:00:09.173 何が分かるかです 00:00:10.013 --> 00:00:11.198 しかしその前に 00:00:11.198 --> 00:00:14.300 既に知っていることを 簡単に復習します 00:00:14.300 --> 00:00:16.402 人の遺伝物質であるゲノムは 00:00:16.402 --> 00:00:19.000 体内のほとんど全ての細胞の染色体中に 00:00:19.000 --> 00:00:21.402 DNAとして収まっています 00:00:21.402 --> 00:00:24.529 DNAはご存知のように 二重らせん構造をしています 00:00:25.222 --> 00:00:26.699 そして遺伝情報は 00:00:26.699 --> 00:00:28.651 A T C G の文字で略される 00:00:28.651 --> 00:00:30.901 4つの塩基からなる 00:00:30.901 --> 00:00:33.141 配列に含まれています 00:00:33.141 --> 00:00:35.446 そしてこの情報は二本鎖の双方に 00:00:35.446 --> 00:00:37.000 存在します 00:00:37.000 --> 00:00:38.555 これは重要で 00:00:38.555 --> 00:00:41.205 新しい細胞が作られる際に 二本鎖が分離し 00:00:41.205 --> 00:00:44.591 古い鎖を鋳型として 新しい鎖が合成されます 00:00:44.591 --> 00:00:47.000 この過程は ほぼ完璧です NOTE Paragraph 00:00:48.010 --> 00:00:49.551 しかし当然ながら自然界には 00:00:49.551 --> 00:00:51.288 完璧なものなどありません 00:00:51.288 --> 00:00:53.606 従って時には間違いが起こり 00:00:53.606 --> 00:00:56.243 誤った文字が組み込まれます 00:00:56.243 --> 00:00:59.069 例えば このような変異の 00:00:59.069 --> 00:01:00.336 結果は 00:01:00.336 --> 00:01:02.312 この部屋にいる皆さんの 00:01:02.312 --> 00:01:05.353 DNA配列を比較したら分かるでしょう 00:01:05.353 --> 00:01:08.405 私と皆さんのゲノムを比べたなら 00:01:08.405 --> 00:01:12.234 約1200~1300文字ごとに 1文字の割合で 00:01:12.234 --> 00:01:14.212 違いがあることでしょう 00:01:14.212 --> 00:01:16.000 そしてこの変異は 00:01:16.000 --> 00:01:19.227 概ね時間の経過に伴い蓄積するのです 00:01:19.227 --> 00:01:22.617 従ってチンパンジーを考慮すると ヒトとの違いはさらに大きくなります 00:01:22.617 --> 00:01:25.259 約100文字あたり1文字の割合で 00:01:25.259 --> 00:01:27.263 チンパンジーとは違いがあります NOTE Paragraph 00:01:27.263 --> 00:01:29.435 DNA断片や全ゲノムの 00:01:29.435 --> 00:01:31.338 歴史に興味があるなら 00:01:31.338 --> 00:01:33.928 DNAの違いを調べることで 00:01:33.928 --> 00:01:36.416 DNAの歴史を再構築できます 00:01:36.416 --> 00:01:40.000 そしてこの歴史を語る時は 通常 00:01:40.000 --> 00:01:42.243 このような系統樹を用います 00:01:42.243 --> 00:01:44.174 この例は非常に単純です 00:01:44.174 --> 00:01:46.569 この2人のヒトのDNA配列は 00:01:46.569 --> 00:01:49.384 ごく最近共通の祖先から 枝分かれしました 00:01:49.384 --> 00:01:53.502 さらに遡るとチンパンジーと 祖先を共有します 00:01:53.502 --> 00:01:56.038 そしてこれらの変異は 00:01:56.038 --> 00:01:58.507 概ね時間の経過と共に起こるので 00:01:58.507 --> 00:02:00.538 遺伝子の違いを見ることで 00:02:00.538 --> 00:02:02.825 年代を推測することができます 00:02:02.825 --> 00:02:04.711 典型的に この2人のヒトは 00:02:04.711 --> 00:02:08.232 約50万年前に同じ祖先から枝分かれし 00:02:08.232 --> 00:02:10.280 チンパンジーとは 00:02:10.280 --> 00:02:13.322 5百万年前に枝分かれしました NOTE Paragraph 00:02:13.322 --> 00:02:15.292 この2~3年で 00:02:15.292 --> 00:02:17.504 分析技術が発達し 00:02:17.504 --> 00:02:21.258 多くのDNAを非常に短時間で 分析可能になりました 00:02:21.258 --> 00:02:23.601 おかげで今ではわずか数時間で 00:02:23.601 --> 00:02:26.309 ヒトの全ゲノムを解析できるのです 00:02:26.309 --> 00:02:29.395 当然ながら私たちは2つのヒトゲノム つまり 00:02:29.395 --> 00:02:32.299 母親と父親から一つずつ受け継いでいます 00:02:32.299 --> 00:02:36.270 ゲノムの全長は30億文字ほどです 00:02:36.270 --> 00:02:38.361 自分の持つ二つのゲノムは 00:02:38.361 --> 00:02:40.672 あるいは 私が分析に使う1つのゲノムは 00:02:40.672 --> 00:02:43.571 違いを見ると約3百万個所あります 00:02:43.571 --> 00:02:45.041 違いを見ると約3百万個所あります 00:02:45.041 --> 00:02:47.413 そうなると次に考えたくなるのは 00:02:47.413 --> 00:02:49.589 このような遺伝子の違いが どのように 00:02:49.589 --> 00:02:52.105 世界に分布しているかということです 00:02:52.690 --> 00:02:53.871 実際調べてみると 00:02:53.871 --> 00:02:57.397 まずアフリカでは一定程度の 遺伝子のバラツキが見られます 00:02:57.397 --> 00:03:00.243 そしてアフリカ以外の地域では 00:03:00.243 --> 00:03:03.281 遺伝子のバラツキはより少ないのです 00:03:03.281 --> 00:03:05.337 驚くのも無理はありません 00:03:05.337 --> 00:03:08.484 アフリカの人口はその他の地域の 00:03:08.484 --> 00:03:11.500 1/6 ~ 1/8 だからです 00:03:11.500 --> 00:03:14.422 にもかかわらずアフリカの人には 00:03:14.422 --> 00:03:17.056 より多くの遺伝子のバラツキがあるのです NOTE Paragraph 00:03:17.056 --> 00:03:19.351 さらにアフリカ以外の地域で見られる 00:03:19.351 --> 00:03:21.446 このような遺伝的バラツキはほとんどが 00:03:21.446 --> 00:03:23.401 アフリカ内で見るDNA配列に 00:03:23.401 --> 00:03:25.608 極めて共通点があります 00:03:25.608 --> 00:03:27.686 しかしアフリカ内で見ると 00:03:27.686 --> 00:03:30.430 他の地域とは密接な共通性がない 00:03:30.430 --> 00:03:33.274 遺伝的バラツキが見られます 00:03:33.274 --> 00:03:36.067 この説明としては 00:03:36.067 --> 00:03:39.740 アフリカ人の遺伝的バラツキの 全部ではなく一部が 00:03:39.740 --> 00:03:43.236 世界に広がり定着したという説が挙げられます 00:03:43.236 --> 00:03:47.641 このような遺伝子の違いが生じた時間を 推定する最新の技術から 00:03:47.641 --> 00:03:49.884 導き出された知見は次のようなものです 00:03:49.884 --> 00:03:52.773 本質的にはお互いに見分けのつかない 00:03:52.773 --> 00:03:54.712 現代人は 00:03:54.712 --> 00:03:57.891 ごく最近 10~20万年前に 00:03:57.891 --> 00:04:01.000 アフリカで進化し 00:04:01.000 --> 00:04:05.020 その後 約5~10万年前に 00:04:05.020 --> 00:04:07.000 アフリカから旅立ち 00:04:07.000 --> 00:04:09.128 その他の世界に定着したのです NOTE Paragraph 00:04:09.128 --> 00:04:11.301 このことから私がしばしば言うのは 00:04:11.301 --> 00:04:13.193 ゲノム的見地からは 00:04:13.193 --> 00:04:15.369 私たちは皆アフリカ人だということです 00:04:15.369 --> 00:04:18.000 私たちは今日アフリカの住人か 00:04:18.000 --> 00:04:20.390 ごく最近旅立った人のいずれかです 00:04:20.390 --> 00:04:22.667 現生人類の起源が 00:04:22.667 --> 00:04:25.498 直近の出来事であることを示す もう一つの事実は 00:04:25.498 --> 00:04:27.371 遺伝的バラツキが 00:04:27.371 --> 00:04:29.478 世界中に広く分布し 00:04:29.478 --> 00:04:31.935 少なくとも鳥瞰的に見ると 00:04:31.935 --> 00:04:34.152 多くの地域で 00:04:34.152 --> 00:04:38.000 徐々に変化しているということです 00:04:38.000 --> 00:04:40.305 多様な遺伝的バラツキが存在し 00:04:40.305 --> 00:04:43.219 しかも勾配を作るということは 00:04:43.219 --> 00:04:46.000 ある特定の人のゲノムから 00:04:46.000 --> 00:04:49.000 DNAの塩基配列を解析すれば 00:04:49.000 --> 00:04:51.000 祖父母や両親が 00:04:51.000 --> 00:04:53.000 頻繁に移動しなかった限り 00:04:53.000 --> 00:04:55.000 極めて正確に 00:04:55.000 --> 00:04:58.178 出身地を特定できます NOTE Paragraph 00:04:58.481 --> 00:05:00.160 しかし果たしてこれは 00:05:00.160 --> 00:05:02.187 多くの人が考えるように 00:05:02.187 --> 00:05:05.165 例えば異なる大陸間の人の集団の場合 00:05:05.165 --> 00:05:07.575 大きな遺伝子的違いがあると言うのでしょうか 00:05:07.575 --> 00:05:10.646 そのような質問にも答えが分かりつつあります 00:05:10.646 --> 00:05:12.585 例えば現在 00:05:12.585 --> 00:05:14.770 世界中から集めた千人の 00:05:14.770 --> 00:05:18.271 ゲノムの塩基配列を 解析する研究が進んでいます 00:05:18.271 --> 00:05:21.232 解析対象にはアフリカの2つの集団から 00:05:21.232 --> 00:05:24.139 選ばれたアフリカ人185人がいます 00:05:24.139 --> 00:05:27.246 これとほぼ同数のヨーロッパと中国の人も 00:05:27.246 --> 00:05:30.368 ゲノムの塩基配列を解析しました 00:05:30.368 --> 00:05:33.202 その結果 各個体の塩基配列に 00:05:33.202 --> 00:05:36.000 どれだけのバラツキを発見できるか 00:05:36.000 --> 00:05:39.303 何文字分のバラツキがあるか 解明を始めました 00:05:39.303 --> 00:05:43.364 違う個所は膨大で3800万個所に上ります NOTE Paragraph 00:05:43.364 --> 00:05:46.274 それよりもアフリカ人とその他の人々の間に 00:05:46.274 --> 00:05:48.570 決定的な違いがあるか解明できます 00:05:48.570 --> 00:05:50.165 大抵の人はおそらく 00:05:50.165 --> 00:05:52.509 ここに最大の違いがあると思ったでしょう 00:05:52.509 --> 00:05:54.470 絶対的な相違というのがあるのでしょうか 00:05:54.470 --> 00:05:56.205 何を意味するかと言うと 00:05:56.205 --> 00:05:59.246 全てのアフリカ人の遺伝子の特定の位置に 00:05:59.246 --> 00:06:02.244 100%共通する文字があるのに対し 00:06:02.244 --> 00:06:06.758 アフリカ外のすべての人で ここが別の文字に置き換わることです 00:06:06.758 --> 00:06:09.765 実は数百万もの塩基の異なる部位で 00:06:09.765 --> 00:06:13.279 そのような位置は一つもありません 00:06:14.000 --> 00:06:16.337 驚くべきことです 00:06:16.337 --> 00:06:19.496 もしかしたら一人くらいの 分類違いはあるかもしれません 00:06:19.496 --> 00:06:21.821 そこで条件を少し緩くしましょう 00:06:21.821 --> 00:06:23.830 すなわちアフリカ人の95%が 00:06:23.830 --> 00:06:25.926 一致する文字を持ち アフリカ人以外の95%が 00:06:25.926 --> 00:06:27.584 別の塩基を持つ部位が 00:06:27.584 --> 00:06:29.436 いくつあるでしょう 00:06:29.436 --> 00:06:31.373 その答えの数は12です NOTE Paragraph 00:06:31.373 --> 00:06:33.571 とても驚くべきことです 00:06:33.571 --> 00:06:35.885 つまり人種を比較して 00:06:35.885 --> 00:06:38.000 アフリカ出身の人と 00:06:38.000 --> 00:06:41.317 ヨーロッパあるいはアジア出身の人を比べて 00:06:41.317 --> 00:06:45.479 ゲノムの特定の位置で 100%の正確性を持って 00:06:45.479 --> 00:06:47.926 その人がどの塩基を持つか 予想できないのです 00:06:47.926 --> 00:06:50.420 そしてわずか12ヶ所の位置だけで 00:06:50.420 --> 00:06:53.000 95%の確率で 予測できるのです 00:06:53.000 --> 00:06:54.899 驚くべきことは 00:06:54.899 --> 00:06:57.449 外見から判断すれば これらの人や 00:06:57.449 --> 00:07:01.252 祖先がどこの出身か見分けがつくことです 00:07:01.252 --> 00:07:03.000 つまり 00:07:03.000 --> 00:07:04.810 明らかな 00:07:04.810 --> 00:07:07.230 外見上の特徴 00:07:07.230 --> 00:07:10.405 顔立ち 肌の色 髪質などは 00:07:10.405 --> 00:07:14.308 一つの遺伝子だけに 大きく左右される訳ではなく 00:07:14.308 --> 00:07:17.219 多くの遺伝的変異体により決まるのです 00:07:17.219 --> 00:07:19.359 そして変異体が生まれる頻度は 00:07:19.359 --> 00:07:21.567 地域により違っているようです NOTE Paragraph 00:07:21.567 --> 00:07:24.269 また お互いに容易に気づく 00:07:24.269 --> 00:07:27.000 明らかな外見上の特徴で 00:07:27.000 --> 00:07:29.325 特筆すべきことは 00:07:29.325 --> 00:07:32.000 まさに文字通り 00:07:32.000 --> 00:07:35.298 体の表面に見受けられることです 00:07:35.298 --> 00:07:37.433 つい先ほど申し上げたように 00:07:37.433 --> 00:07:40.000 顔立ち 髪質 肌の色なのです 00:07:40.000 --> 00:07:42.367 他にもいくつかの異なった特徴が 00:07:42.367 --> 00:07:44.478 大陸間では見られ 00:07:44.478 --> 00:07:48.471 それらは食べ物の代謝の違いや 00:07:48.471 --> 00:07:50.643 我々の体内に侵入しようとする 00:07:50.643 --> 00:07:53.000 微生物に対する免疫の働きの 00:07:53.000 --> 00:07:55.343 違いに関係しています 00:07:55.343 --> 00:07:57.000 しかし言ってみれば 00:07:57.000 --> 00:08:00.000 このような身体部分はすべて 00:08:00.000 --> 00:08:04.000 外部環境に直接触れています 00:08:04.000 --> 00:08:06.000 想像がつくのは 00:08:06.000 --> 00:08:08.318 こういった身体部分は 00:08:08.318 --> 00:08:11.276 環境による(進化的)選択を 即座に受けて 00:08:11.276 --> 00:08:13.000 関連する遺伝子の 00:08:13.000 --> 00:08:15.401 頻度を変えることです 00:08:15.401 --> 00:08:18.259 しかし環境と直接に相互作用をしない 00:08:18.259 --> 00:08:20.430 身体の他の部分 00:08:20.430 --> 00:08:23.643 例えば腎臓 肝臓 心臓などは 00:08:23.643 --> 00:08:25.443 見る限りでは 00:08:25.443 --> 00:08:27.408 遺伝的変異体が 00:08:27.408 --> 00:08:30.388 どこから来たか 全く分かりません NOTE Paragraph 00:08:31.000 --> 00:08:33.543 もう一つ興味深いのは 00:08:33.543 --> 00:08:36.214 ヒトがアフリカの共通の祖先から 00:08:36.214 --> 00:08:40.248 分化したという見方をすると 00:08:40.248 --> 00:08:43.693 それが起こったのは約10万年前のことですが 00:08:43.693 --> 00:08:45.610 その頃 地球上ではヒトが 00:08:45.610 --> 00:08:48.068 唯一のヒト属ではなかったのです 00:08:48.068 --> 00:08:50.670 他のヒト属も同時に存在したのです 00:08:50.670 --> 00:08:53.315 おそらく最も有名なのは ネアンデルタール人でしょう 00:08:53.315 --> 00:08:55.491 左に示したこのヒト属は 00:08:55.491 --> 00:08:57.592 右に示した現代人に比べ 00:08:57.592 --> 00:09:01.115 骨格ががっしりしています 00:09:01.115 --> 00:09:04.270 数十万年前から 西アジアとヨーロッパに 00:09:04.270 --> 00:09:06.544 棲んでいました 00:09:06.544 --> 00:09:08.497 興味深い疑問は 00:09:08.497 --> 00:09:10.252 我々が出会った時どうなったかです 00:09:10.252 --> 00:09:12.423 ネアンデルタール人はどうしたのでしょう? NOTE Paragraph 00:09:12.423 --> 00:09:14.504 この疑問に答えようとして 00:09:14.504 --> 00:09:18.000 私の研究チームは25年以上かけて 00:09:18.000 --> 00:09:20.000 ネアンデルタール人や 00:09:20.000 --> 00:09:22.000 数万年前に絶滅した 00:09:22.000 --> 00:09:24.272 動物の遺骸から 00:09:24.272 --> 00:09:27.517 DNAを抽出する方法を研究しています 00:09:27.517 --> 00:09:29.750 DNAの抽出方法や 00:09:29.750 --> 00:09:32.570 塩基配列解析可能な試料の調整に 00:09:32.570 --> 00:09:35.297 様々な技術的問題が伴います 00:09:35.297 --> 00:09:37.353 自身のDNAが 00:09:37.353 --> 00:09:40.000 試料に混入しないよう 00:09:40.000 --> 00:09:42.894 細心の注意が必要です 00:09:42.894 --> 00:09:46.130 また同時に大量のDNA分子の 00:09:46.130 --> 00:09:50.460 塩基配列を超高速に 解読する技術のおかげで 00:09:50.460 --> 00:09:52.749 昨年私たちはネアンデルタール人の 00:09:52.749 --> 00:09:55.463 ゲノム配列の第一版を公表しました 00:09:55.463 --> 00:09:57.249 誰でもインターネット上で 00:09:57.249 --> 00:09:59.698 これまで再構築できた最低55%の 00:09:59.698 --> 00:10:02.249 ネアンデルタール人のゲノムを 00:10:02.249 --> 00:10:05.000 見ることができます 00:10:05.000 --> 00:10:07.000 そこでネアンデルタール人と 00:10:07.000 --> 00:10:10.197 現代人のゲノムを比較し始められるのです NOTE Paragraph 00:10:10.197 --> 00:10:12.229 そこから生まれる疑問は 00:10:12.229 --> 00:10:14.702 我々が出会ったとき 何が起こったかということです 00:10:14.702 --> 00:10:16.225 我々が出会ったとき 何が起こったかということです 00:10:16.225 --> 00:10:18.390 交配しあったのでしょうか? 00:10:18.390 --> 00:10:20.483 この疑問に答えるには 00:10:20.483 --> 00:10:23.162 南ヨーロッパのネアンデルタール人と 00:10:23.162 --> 00:10:25.174 現代人のゲノムとを 00:10:25.174 --> 00:10:27.153 比較することです 00:10:27.153 --> 00:10:29.000 そこで我々は 00:10:29.000 --> 00:10:31.479 2人の現代人との間で比較を行うこととし 00:10:31.479 --> 00:10:33.223 その手始めとして 00:10:33.223 --> 00:10:35.567 2人のアフリカ人のゲノムを調べ 00:10:35.567 --> 00:10:38.898 互いに塩基の異なる部位を見つけ この部位がネアンデルタール人では 00:10:38.898 --> 00:10:41.490 どうなっているかを調べました 00:10:41.490 --> 00:10:44.670 ネアンデルタール人はいずれかの アフリカ人に一致するでしょうか? 00:10:44.670 --> 00:10:47.000 ネアンデルタール人はアフリカに 棲まなかったので 違いはないと予測しました 00:10:47.000 --> 00:10:49.572 ネアンデルタール人はアフリカに 棲まなかったので 違いはないと予測しました 00:10:49.572 --> 00:10:52.251 彼らは同等で いずれか一方に 00:10:52.251 --> 00:10:55.303 より近いとは考えられません 00:10:55.303 --> 00:10:57.309 結果はまさにそのとおりでした 00:10:57.309 --> 00:10:59.890 統計的に見て ネアンデルタール人と 00:10:59.890 --> 00:11:03.444 いずれのアフリカ人との相違に 差がありませんでした 00:11:03.444 --> 00:11:05.474 しかしヨーロッパ人と 00:11:05.474 --> 00:11:09.149 アフリカ人との差を見ると違いがあります 00:11:09.149 --> 00:11:12.212 明らかに高い頻度でネアンデルタール人は 00:11:12.212 --> 00:11:14.653 アフリカ人よりも ヨーロッパ人と一致するのです 00:11:14.653 --> 00:11:16.368 アフリカ人よりも ヨーロッパ人と一致するのです 00:11:16.368 --> 00:11:19.425 中国人とアフリカ人を比較しても 00:11:19.425 --> 00:11:21.197 同様です 00:11:21.197 --> 00:11:25.100 ネアンデルタール人は中国人に一致する頻度が より高いのです 00:11:25.100 --> 00:11:27.000 これもまた驚きです 00:11:27.000 --> 00:11:29.459 ネアンデルタール人は 一度も中国に棲んでいません NOTE Paragraph 00:11:29.459 --> 00:11:33.151 これの説明として我々が提唱するのは 00:11:33.151 --> 00:11:35.464 約10万年前 現生人類は 00:11:35.464 --> 00:11:38.033 アフリカから旅立った後に 00:11:38.033 --> 00:11:40.339 ネアンデルタール人に出会ったのです 00:11:40.339 --> 00:11:43.168 最初はネアンデルタール人が棲んでいた 00:11:43.168 --> 00:11:45.288 中東で出会ったと思われます 00:11:45.288 --> 00:11:47.374 もしそこで交配が起こったなら 00:11:47.374 --> 00:11:49.521 その現代人がアフリカ以外の人 00:11:49.521 --> 00:11:51.344 全ての祖先となり 00:11:51.344 --> 00:11:53.500 世界中の子孫に 00:11:53.500 --> 00:11:56.394 ゲノムの中の ネアンデルタール人の要素を 00:11:56.394 --> 00:11:58.400 広げたのです 00:11:58.400 --> 00:12:01.348 このようにして今日アフリカ以外の人は 00:12:01.348 --> 00:12:04.205 DNAの約2.5%をネアンデルタール人から 00:12:04.205 --> 00:12:06.245 受け継いでいるのです NOTE Paragraph 00:12:06.245 --> 00:12:09.338 ネアンデルタール人のゲノムを 入手したので 00:12:09.338 --> 00:12:11.453 これを対照とし 00:12:11.453 --> 00:12:13.497 古代人の遺骸から 00:12:13.497 --> 00:12:15.363 DNAを抽出する 00:12:15.363 --> 00:12:17.393 技術を活用して 00:12:17.393 --> 00:12:21.277 世界中の人を対象に応用することができます 00:12:21.277 --> 00:12:24.434 これを我々が初めて行ったのが南シベリアの 00:12:24.434 --> 00:12:26.367 アルタイ山脈にある 00:12:26.367 --> 00:12:28.515 デニソワという場所です 00:12:28.515 --> 00:12:30.000 2008年に 00:12:30.000 --> 00:12:32.847 考古学者が山の洞窟で 00:12:32.847 --> 00:12:36.290 とても小さな骨のかけらを発見しました 00:12:36.290 --> 00:12:37.861 これはその複製です 00:12:37.861 --> 00:12:41.128 これはヒトの小指の骨であることに 00:12:41.128 --> 00:12:44.238 考古学者らは気づきました 00:12:44.238 --> 00:12:46.687 そしてこの骨は保存状態がよかったので 00:12:46.687 --> 00:12:49.430 我々はこの人物のDNAを解析することができ 00:12:49.430 --> 00:12:51.374 実際ネアンデルタール人より 00:12:51.374 --> 00:12:53.386 詳しく解析することができ 00:12:53.386 --> 00:12:55.787 このゲノムをネアンデルタール人や 00:12:55.787 --> 00:12:58.366 現代人と比較してみました 00:12:58.366 --> 00:13:00.987 その結果約64万年前 この個体は 00:13:00.987 --> 00:13:03.722 ネアンデルタール人と共通のDNA配列を持つ 00:13:03.722 --> 00:13:07.474 祖先を共有していたことが分かりました 00:13:07.474 --> 00:13:10.376 さらに80万年前まで遡ると 00:13:10.376 --> 00:13:12.441 現代人とも共通の 00:13:12.441 --> 00:13:14.457 祖先につながるのです NOTE Paragraph 00:13:14.457 --> 00:13:16.893 従ってこの個体の属していた集団は 00:13:16.893 --> 00:13:19.576 ネアンデルタール人と共通の祖先を持ち 00:13:19.576 --> 00:13:22.560 枝分かれして以降 長い独自の歴史があったのです 00:13:22.560 --> 00:13:24.457 この小さな小さな骨のかけらから 00:13:24.457 --> 00:13:26.532 初めてその特徴が調べられた 00:13:26.532 --> 00:13:28.491 この人類の集団を 00:13:28.491 --> 00:13:30.852 初めて発見された場所にちなんで 00:13:30.852 --> 00:13:33.000 デニソワ人と呼びます 00:13:33.000 --> 00:13:36.207 デニソワ人についてもネアンデルタール人と 00:13:36.207 --> 00:13:38.480 同じ質問ができます 00:13:38.480 --> 00:13:42.243 現代人の祖先との間で交配したのだろうか? 00:13:42.243 --> 00:13:44.417 この問いかけに対して 00:13:44.417 --> 00:13:46.386 デニソワ人のゲノムを 00:13:46.386 --> 00:13:48.332 世界中の人と比較すると 00:13:48.332 --> 00:13:49.824 驚くことに 00:13:49.824 --> 00:13:52.355 今日のシベリア周辺の人ですら誰も 00:13:52.355 --> 00:13:57.276 デニソワ人のDNAを持っていないのです 00:13:57.276 --> 00:13:59.911 しかしパプア・ニューギニアを始めとした 00:13:59.911 --> 00:14:03.269 メラネシアや太平洋の島々の人は 持っているのです 00:14:03.269 --> 00:14:05.468 おそらく これが意味するのは 00:14:05.468 --> 00:14:08.465 デニソワ人は以前は より広く分布していたのです 00:14:08.465 --> 00:14:11.372 メラネシア人の祖先が シベリアに棲んでいたとは 00:14:11.372 --> 00:14:13.355 考え難いからです NOTE Paragraph 00:14:13.355 --> 00:14:15.355 絶滅したヒト属の 00:14:15.355 --> 00:14:18.117 ゲノムを研究することで 00:14:18.117 --> 00:14:21.508 現代人がアフリカから外へ旅立ち始めた頃の 00:14:21.508 --> 00:14:24.543 世界の様子が分かり始めているのです 00:14:24.543 --> 00:14:27.219 西にはネアンデルタール人が棲み 00:14:27.219 --> 00:14:29.212 東にはデニソワ人が棲んで 00:14:29.212 --> 00:14:31.306 おそらく他にも未知のヒト属が 00:14:31.306 --> 00:14:33.355 棲んでいたことでしょう 00:14:33.355 --> 00:14:36.271 これらのヒト属の居住地域の 境界線はよく分かりませんが 00:14:36.271 --> 00:14:38.569 南シベリアには少なくとも過去のある時期 00:14:38.569 --> 00:14:40.697 ネアンデルタール人とデニソワ人の 00:14:40.697 --> 00:14:43.506 両方が棲んでいたことが分かっています 00:14:43.506 --> 00:14:46.279 その後アフリカのどこかで現代人が現われ 00:14:46.279 --> 00:14:49.829 アフリカを出ておそらく中東に行きました 00:14:49.829 --> 00:14:52.778 そこでネアンデルタール人に出会い交配し 00:14:52.778 --> 00:14:55.234 世界中に広がり続け 00:14:55.234 --> 00:14:57.701 東南アジアのどこかで 00:14:57.701 --> 00:15:00.234 デニソワ人と出会い交配し 00:15:00.234 --> 00:15:03.334 太平洋へと向かって行ったのです 00:15:03.334 --> 00:15:06.932 その後これらのヒト属は絶滅しましたが 00:15:06.932 --> 00:15:09.208 特定の現代人の中で 00:15:09.208 --> 00:15:11.850 その一部が生き続けているのです 00:15:11.850 --> 00:15:14.482 アフリカ以外の人のDNAの2.5%は 00:15:14.482 --> 00:15:16.836 ネアンデルタール人に由来します 00:15:16.836 --> 00:15:19.284 メラネシアの人はこれに加え 00:15:19.284 --> 00:15:21.459 約5%のDNAを 00:15:21.459 --> 00:15:24.000 デニソワ人から受け継いでいます NOTE Paragraph 00:15:24.000 --> 00:15:25.768 これが意味することは 00:15:25.768 --> 00:15:28.382 アフリカ以外の人とアフリカ人との間に 00:15:28.382 --> 00:15:31.571 決定的な違いがある ということでしょうか? 00:15:31.571 --> 00:15:33.427 つまり アフリカ以外の人は 00:15:33.427 --> 00:15:35.563 絶滅した人属のゲノムの一部を 00:15:35.563 --> 00:15:37.582 受け継いでいるのに対し 00:15:37.582 --> 00:15:39.726 アフリカ人は持たないのでしょうか? 00:15:39.726 --> 00:15:42.546 そのようなことはないと思います 00:15:42.546 --> 00:15:44.206 おそらく現代人は 00:15:44.206 --> 00:15:46.453 アフリカのどこかで生まれました 00:15:46.453 --> 00:15:49.416 そして当然ながらアフリカ中にも広がり 00:15:49.416 --> 00:15:52.480 そこには古い(現生)人類もいました 00:15:52.480 --> 00:15:54.659 そして別の地域でも交配したように 00:15:54.659 --> 00:15:56.479 アフリカの古い人類のゲノムを 00:15:56.479 --> 00:15:58.362 将来発見した際には 00:15:58.362 --> 00:16:00.363 間違いなく 00:16:00.363 --> 00:16:02.754 アフリカの現代人の祖先もまた 00:16:02.754 --> 00:16:05.981 その古い人類と交配したことが分かるでしょう NOTE Paragraph 00:16:06.000 --> 00:16:08.082 最後にまとめると 00:16:08.082 --> 00:16:10.312 現代人と 絶滅したヒト属との 00:16:10.312 --> 00:16:12.310 比較ゲノム研究から 00:16:12.310 --> 00:16:14.368 何が分かったのでしょう 00:16:14.368 --> 00:16:16.372 おそらく多くのことが分かりましたが 00:16:16.372 --> 00:16:21.220 一つ大事な点と思い申し上げるのは 00:16:21.220 --> 00:16:24.603 我々は常に交配してきたということです 00:16:24.603 --> 00:16:26.000 我々は他のヒト属と出会うたびに交配し 00:16:26.000 --> 00:16:28.923 我々は他のヒト属と出会うたびに交配し 00:16:28.923 --> 00:16:32.346 それ以降は現生人類同士で 交配を続けているのです NOTE Paragraph 00:16:32.346 --> 00:16:34.732 ご清聴ありがとうございました NOTE Paragraph 00:16:34.732 --> 00:16:40.000 (拍手)