1995年の冬 科学者たちはハッブル望遠鏡を おおぐま座付近の空に向けました 真っ黒で周囲の星々の 光害からも外れていました 一見何もない領域で 成果が得られるか危ぶまれました 懸念したこととは逆に 何かが写っていたのでしょうか? 10日間に渡り 望遠鏡は同じ領域を 150時間近く露出しました その結果は壮観の一言に 尽きるものでした 宇宙のほんの小さな一片に 彼方にある1,500個以上の銀河系が ぼんやり写っている 画像だったのです まずは この画像の大きさについて 理解しましょう ボールペンを手に取って 夜空に向かって腕を伸ばし その先端に注目してみましょう それがハッブル望遠鏡が最初の ディープ・フィールドの撮影範囲となります 言い換えれば 宇宙のとても小さな1点に― 夜空の約2百万分の1の範囲に 3千個の銀河が見えるのです その大きさを説明してみると― 人間の平均身長は170cmです 地球の直径は12,700kmなので 約750万人の人を頭からつま先の方向に 一列に並べた大きさになります アポロ8号の宇宙飛行士は 月までの38万kmを飛行しました 私たちの比較的小さな太陽の 直径は約140万kmで 地球の直径の110倍です さらに広げていくと 銀河系には太陽も含めて 1千億~4千億個の星があります 観測範囲 つまりディープ・フィールドに 捉えられた個々の輝く点には 少なくとも数十億個の星が 含まれています ディープ・フィールドの 画像が撮影されてからほぼ10年後 科学者たちはハッブル望遠鏡の 光学的な調整を行い 2回目の露出を 約4カ月に渡る長期間行いました この時は1万個の銀河を 観察しました これらの銀河系の半数は より鮮明に分析され エクストリーム・ディープ・ フィールドの画像― XDFとして知られています 10年に渡り撮影した写真を 一緒にすることで XDFは 肉眼で見える明るさの わずか100億分の1しかない 遥かかなたにある銀河を 写し出します ディープ・フィールドの画像から 宇宙について学べることは何でしょうか? 宇宙の研究において 空間と時間は 密接に結びついています それは光の速さは 有限だからです だから ディープ・フィールドの画像は 太古の宇宙へのタイムマシンのようです はるか遠方の時空まで見通せるので 130億年以上前の銀河を 観察できるのです つまり ビッグバンの後― 10億年も経っていない頃の 宇宙が見られるので 科学者たちは初期段階の 銀河を調査できます ディープ・フィールドの画像は 宇宙が均質であることも示しています つまり 空の違う場所で撮った画像が 似ているのです 宇宙の広大さを考えると 信じられないことです 一体なぜ膨大な距離が離れているのに 均質と考えられるのでしょうか? 宇宙は言うまでもなく 1つの銀河の大きさを考えてみても 私たちがすぐに把握できる範囲に比べ 我々の存在は小さなものですが 私たちには疑問に思い 質問し 探索し 調査し 想像する能力があります だから次に夜空を 見上げる時は 我々が肉眼では見ることのできない 星々の間の真っ暗な空間に 広大な世界があるのだと 少し考えてみてください