歴史は数々の物語に満ちている その多くは失われ- 時の風の中に散っていく 人の記憶の彼方へ でも この物語- 私たちの物語は- 忘れられてはならない パパ マイア! 逃げろ マイア! 我らは海より来た民 その記憶は太古の昔より- 水のように我らの命を流れる 長い年月を経て- 王の血統のように続く 途絶えることのない- 古の記憶と哀しみ ひとしずくの水が— そして血が- 次々としたたる さざ波を起こし- 川となる 川は奔流となり— 止めどなく流れる やがて 時を経て— あらゆる障壁を破り— 溢れ出すだろう 己の運命に向かって 我らは生き残りの民 ドゥネダイン 西方の民族は— 数も減り 離散していた 絶えず危険に囲まれて 冥王サウロンは— 過去を忘れてはいなかった 中つ国のどの民よりも- 我らを憎んでいた そして恐れた ドゥネダインの力を 彼は配下の者に命じた 何年かけてでも— イシルドゥアの末裔を探し出すこと そして滅ぼすことを 最大の敵を 最後の1人まで- 消し去るために 永遠に 急げ! 急ぐんだ! ディアハイル! イヴォルウェン ギルライン 逃げろ これ以上の犠牲は ごめんだ アラソルン! 感謝します 何なりとお申し付け下さい 命を救って下さった 私の方こそ 礼を申します とんでもない 留まるのは危険だ どちらへ? 当てはありません 村は焼かれ 村人は殺されました 助かった者も散り散りに ドルラド 息子です 家族を守って殺されました オークの餌食にはさせません ご子息は安住の地を得るだろう 我々の村へ アラソルン アラソルン? ご存知なの? ああ 彼が子供の頃な 人違いでなければ— 我が親族の息子だ 族長 アラドール殿の イシルドゥアの末裔… 何だ? 略奪が目的のようよ ガラクタばかりだ 妙だな オークが宝石狩りとは 何が目的だ? 君は父上に似てきたな 父はどう思うか… 生きていたら私を責めただろう "娘は荒野になど出さん”と だが 私は感謝しているよ 私もです アラソルン殿 逃げた者は おりません 良くやった 3人を送り届けよう 我らの村へどうぞ お名前は? ディアハイルです 妻のイヴォルウェンに 娘の… ギルライン 私はアラソルン アラドールの息子 いかにも おやめ下さい 父の前で- 礼を尽くされよ だが今は- 道を急がねば 嫉妬から真の愛は生まれない その2つは裏表だとしても 私が何に嫉妬するの? あの2人の視線… 君も見ただろう 勘ぐりすぎよ 私には関係ないわ そうかな? そうよ あなたもね ディアハボルン 野伏たちは一家を連れて北上した 大いなる川を越え- 広大なルダウアの森を抜けて- ドゥネダインの見守る平和な土地へ 彼の父 族長アラドールの待つ- 隠れ里 タウアダルである 良く来た 旧友よ ご子息には名誉ある弔いをしよう そなたの喪失は私の喪失 その悲しみは私の悲しみだ 石の墓で眠ることも叶わぬのか アラナルスの家の末裔よ だが その骨は汚すまい 邪悪の手先が再び来たり- 我らを追い詰めようとも さらば 許してほしい 君の彼への想いを誤解していた 一時の憧れにすぎないと 時間が経てば 目が覚めて- 近くを見てくれると 考えが浅かった 昨夜 思い知らされたよ 何年 そばにいても- 私たちの間には溝がある 弔いの炎で はっきり見えたわ あんな美しい人とは争えない 君を望まぬ男など いないはずだよ 彼には悲しみの種でしかないわ 昨日の襲撃で見つけました このような 小さな物が– 巨大な闇を引き寄せ- 我々の運命を変えたのだ 今やアラドール殿の懸念は増すばかり オークの襲撃の知らせが次々届く 助けの届かぬ遠くの集落も- 危険に さらされていた 各地から逃れたドゥネダインが- タウアディルに身を寄せた アラドール殿と野伏たちは出陣した 彼らの土地からオークの脅威を除き- 民を守るために しかし 最も信頼する男は- その傍らにはいなかった 収穫は いかがです? 豊作ですわ 旅の糧食には足りないな ご出立ですの? 敵の意図を探りに行きます 東方の山々へ お1人で? ええ 危険な旅ですわ その通り かつては危険など恐れず— 喜んで地の果てまで行った わが民のために でも 今は…? 私の一部をここに残します 私の心を 殿… すまない 驚かせて 東の方を眺めて— お帰りを待ちます ありがとう 喜びに心満ちて— アラソルンは旅立った アルノールの廃墟を越えて 彼が冬の山中を1人行く間— ギルラインは待っていた 夏の終りを迎えながら 時には森の奥まで入り- 彼の帰還を待った ギルライン 近くまでよ どういうつもりだ ご存知でしょう まだ若すぎる でも 愚かではない アラソルンは近い内に— バラヒアの指輪を継ぐ だが それも- 長くあるまい 予兆を感じるのだ ならば邪魔をしないで 2人が結婚すれば– 希望が生まれます さもなければ- ドゥネダインは滅びるでしょう 迫り来る影の中で 二度と甦ることなく せめて 幸せを与えてあげて 遅いぞ 他の連中は どこだ? 殺された 奇襲だ 幽霊に囲まれてる そんな物は いねえ ただの野伏どもだ 臆病な役立たずどもめ 手に入れたか? クズだ サウロンの探してる指輪じゃねえ 行け! 探すんだ! 手勢が足りない 集める時間をくれ 幽霊を襲ったのが間違いだぜ シャクナル 俺は間違いなど犯さん お前らの失敗はサウロンに報告するぞ 手勢を増やすなら スパイを使え 俺が戻るまでに奴を探し出せ 何だ? 人の肉の匂いだ そんなバカな 分からねえか? アラソルン 戻られたのね こんな所まで来てはだめだ でも 私… 行かなくていいのですか? すぐに見つかるよ だから 急がねば 機会を逃す 何の? ゆっくり探してほしいわ 優秀すぎるな 殿? 道に迷ってしまって… 見つけて頂いたの お礼を申します いつでも 何なりと ハルバロン 彼女を村へ ただちに エルガレイン 話がある すみません あなたを見失ったと… 謝る必要はない 恋したことはあるか? いいえ 世界が変わるぞ 全てを焼き尽くす炎 消すことはできない エアレンディルの星ほどの光 経験があるんだな 聞いた話です 恋をしてるんですね 結婚する …つもりだ 運命が味方すればな お幸せに でも 浮かない顔ですね? いや… ディアハイル殿が何と言うか ギルラインは まだ若い 私は恋を知りません でも これだけは分かります 自分の心に従うことです 機を逃せば 言うべきだった言葉は— 永遠に閉じこめられる 後悔だけが残るのです 賢い言葉だ だが… 季節は変わる 彼の心も動くでしょう 季節と共に変わるなら— 冷えこむばかりだよ 自信を持って 心のままに ありがとう 君は親友だ あなたに命を捧げます 私もだよ 無事で良かった 父上も ハルバロンに聞きました 討伐は成功したと 確かにオークの数は減った 当分は安心でしょう 不安そうだな 奴らの目的が分かりました 単独行動ではない サウロンの命令です 目的はバラヒアの指輪 つまり父上 あなたです 恐れていた通りだ 指輪を隠して下さい 見えぬ所に だめだ 目印を与えてしまう サウロンの全軍勢が来ようと– 私は自らを偽りはしない この身に命あり- 剣ある限りは お許しを 謝ることはない そなたはドゥネダインの支え 王の後継者なのだから もうよい 動ずるな お前の母は良く言っていた 我々は民を導く身 常に毅然とあるべきだと そなたも いつかは- 賢く美しい女性に会えるだろう 母上のような 我が子らに祝福を授けよう 長く実りある人生を生き- 希望と共にあれ 私は裂け谷へ- エルロンドに会いにいく 助言をくれるはず 戻ったら婚礼にしよう 許しを得ておけ ディアハイル殿… おはよう 冬の月日は長い アラソルンの熱い心は- しばし抑えられた 重大な責務の重みによって 自信を持って- 心のままに ディアハイル殿 結婚のお許しを頂きたい あなたに命を救われた だが 娘は別だ 彼女を愛しています 私は感じるのです わが家に落ちる影を ご好意は不吉です あなたには 彼女は違う だからこそ見過ごせないのです 娘のため- 父上に相応しくあられよ もし 民を裏切れば– ドゥネダインが敵となろう 娘を裏切ったら– その時は私が許さん 今のは同意? 冬が その凍てつく指を緩めはじめ— 大地が早春の光を迎える頃- アラドールの子 アラソルンは- ギルラインと結婚した 幸福と希望の中で しかし 1年が過ぎると- 再び暗い影が動き始める アルゴヌィの子 アラドールは— 遠征の途上 浅い谷に迷い込んだ 寒い丘原の凍てつく霧の中で 逃げろ 逃げるんだ! 父上は? この南に 先に行け 父上! 父上 アラソルン 目を覚まして ただの夢よ 違う 息絶えるのを見たんだ 落ち着いて これはただの夢 本当に夢なら良かったのに わが民に望みはない 王の血筋は絶えかけている 私が最後かもしれない アラソルン 喜びを忘れたの? 希望はどこへ? 私は望みを捨てない あなたもよ 私を見て 明日を恐れないで 私たちには決められないのだから 王家の血筋も途絶えはしない 生きているの あなたの中に そして私の中に わが希望が宿っている 父を亡くして1年の後- 3月の1日 ドゥネダインは 新たな希望を迎えた 男の子です アラゴルンと名付けよう “王者の勇猛” ふさわしい名ね 彼の胸に緑の石が見えます その石が彼の真の名となり– 名声に導くでしょう 彼は癒し手 再生者となるのです 見よ アラゴルンを アラソルンの子 ドゥネダインの族長 ヌメノールの若枝 イシルドゥアの末裔だ アラゴルン 万歳! アラゴルン 万歳! 族長と野伏たちに守られて- 束の間の平穏が訪れた アラゴルンは幸せに成長する ハルバロン ハルバラドが小さかったのが- 昨日のようだ まったくです 大人になるのも— もうすぐね ほんとうに 子供の成長は早い 食欲も旺盛 父親と一緒ね この地を王の領土とする 七星と王冠の旗印が- 戦場の空に ひるがえる 王の軍勢は進みゆく 北方王国の自由のために 戦いの中 使者は叫ぶ フォルノストの都は落ちたと 気高き勇者は馬より落ちて- 獣どもに踏みにじられた 王は辛くも戦を逃れた アングマールの軍が進む中- 我らが王旗は死の海に消え- 王の使者も息絶える 旗は遂に地に落ちた 恐ろしきは敵の勝ちどき 我らが民は逃げ惑う 裂け谷のエルラダン殿 エルロヒア殿 火急の用件でお見えです ようこそ 夜遅く 何事です? エルロンド卿は息災か? アルウェン姫は? 父も妹も元気です 父の命令で参りました 北と西にオークが増えています かつてない規模の数です 彼らは既に- 軍を進めています 遅かれ早かれ- この地に到達するでしょう 裂け谷に使者は眠る 王旗のはためく下で 父から助言を預かりました どのような? 奥様とご子息を- イムラドリスに避難させよと そして あなたは- 民を率いて出立せよと この地を逃れなさい 夜も遅い 明日 話しましょう 寝所を用意させます エルロンド卿は賢明な方 見えぬ物を見通される 未だ起こらぬ出来事を 検討します 民のことを考えねば 決断を急がれよ 時が過ぎれば— 危険も近づきます 分かりました 良い眠りを 良い眠りを だめよ 私は行かないわ 彼の助言は正しい 危険が迫っているのなら– お前たちは守らねば 族長は裂け谷で育つ習わし 私もかの地で過ごした 離れないわ 絶対に 居場所が分かった よし 来い エルガレイン どこへ行く? 私は去るべきなのです 別れも言わずにか? 父上の死後 ずっと私が- 君を見守って来たのだ 恩に報いるために 大切な友人だった 君が父の跡を継いでくれて- 10年も共に過したではないか 君を必要とする時に- 私を見捨てるのか? 遠方からあなたに仕えます ヒスリンが手薄ですから ヒスリンだと? 遠すぎる もう よいのです 重荷になりたくない 重荷ではないよ 君は大事な友人だ 妹のように ご家族がいます 奥様とお子様を- お守り下さい 止めないで お願いです 無理強いはしないよ だが 分からないのだ わけは言えません お許しを アラソルン殿 お戻り下さい ついに敵が動き出しました 気をつけて オーク軍が動き出しました エルロヒア殿から伝言です “代わりに決断を下した”と 隊長たちを呼べ 戦になるぞ 我が友よ 行きましょう しかし ドゥネダインの諸卿が- 作戦を練る間にも- オークは密かに近づいていた エルロンド卿の予見よりも早く 忘れ物だぞ 何のこと? 別れの言葉は? 殿には我々が必要だ 裂け谷に行くか- 他の土地へ民を導くだろう お助けしないのか 無理よ 分かったの 私の心を解放したい あなたも望んだはず その通りだ いつも君を想っている 気づかなかったのか? いつも優しかったわ 優しい? 違うよ エルガレイン 愛してるんだ もう何年も 彼を愛してたのに? いつかは諦めると知っていたから そうしたわ 僕からも逃げてる エル 逃げちゃだめだ 私と来て 分かった エルガレイン 逃げろ! 1人じゃ無理よ 急げ 村に戻れ 嫌よ 知らせるんだ! 皆を守れ 行け! また会える 今は行け 諸卿よ 聞いてくれ 敵の進軍を待ってはいられない 村からは撤退する 荒野で戦いを挑もう どこへ来ようとも 後悔させてやる 武器を! 武器を取って! ハルバロン 敵の襲撃よ 森で…ディアハボルンが食い止めてる 野伏たち! 怪我は? ないわ アラゴルンはどこ? アラゴルン? 集会所へ アラソルン 後退しよう あいつだ これが貴様の運命 王家は滅びるのだ パパ? パパ? 2匹 始末せねばならんな ギルライン 中に戻って 見捨てないわ パパ パパ ドゥネダインは救われた だが 勝利の代償も大きかった 許して 何を? 嫉妬したことを 彼があなたを選んだから エルガレイン アラソルン 私… 喋らないほうがいい 役に立てなかった そんなことはない 私の家族を守ってくれた 父上も誇りに思うだろう 愛を見つけたのに- 失ってしまった 一緒だったのか 全てを失いはしないわ あなたは生きて アラゴルンもよ 希望を失ってはだめ エルガレイン エルガレイン! あと何人 失えばいい? 何人だ? 奴らはずっと我々を踏みにじってきた かつてのアルノール王国を 西方の民よ 闇の影は長く伸び- 我々に届こうとしている だが希望を失ってはならない ドゥネダインが力を取り戻し- 奴らを駆逐する日が来る その時まで- 何に代えても民を守るのだ 立て ドゥネダインよ 己の真価を見せよ 我らの前に敵は逃げ出すだろう オークをこの森から逃すな 皆を集めろ 必ず戻る 約束だ かくて アラドールの子 アラソルン- ドゥネダインの族長は- 果敢な討伐に打って出た 敵のしもべは恐れをなした アラソルン 待て 王の血筋もこれで終わりだ 絶えてはいないぞ まだ望みはある きっと戻るわ 大丈夫よ ギルライン様 殿が負傷されました 何か言った? あなたの名前ばかり ギルライン? 私は ここよ そなたは私の喜び お前は我らの希望だ アラゴルン ドゥネダインの族長よ そしてギルラインは旅立った 一族と民に別れを告げて ヌメノールの末裔を守るために ドゥネダインはタウアダルの里を捨て- 散り散りに隠れ住むこととなった ルダウアの森の奥深く アラゴルンは裂け谷へ移された 彼を守り 育てるために そしてエルロンド卿の館に来たのよ もう アラゴルンとは呼べない その名は危険だから 敵に存在を知られれば- 全ての犠牲が無駄となる 最後に一度だけ呼ぶわ あなたはアラゴルン アラソルンの息子 ドゥネダインの族長 そしてイシルドゥアの末裔 でも今は- ただ“エステル” あなたは 我らの“希望”よ