前回の「Developing - 開発過程」で僕は、ゲームエンジンの Unity を選び、その使い方を学び始めた
だが今度は、作品のアイデアを披露して
それを作り始める時だ
しかしゲームを開発するときは
どこから手を付けたらいいのだろうか?
これは死ぬほど重要な問題だと思う
これからお見せするように―
開発を始めるときに、もし間違った方向へ進んでしまうと
企画が壊滅的(悲惨な)な結果になってしまうかもしれないからだ これから説明しよう
Okay
ゲームのアイデアの話から始めよう
僕が作ろうとしているのは…
覚悟して聞いてくれ クレイジー 2D 横スクロールジャンプアクションゲームだ
分かってる 独立系開発者はみんな
横スクロールジャンプアクションを作るところから出発してる
だが僕にも相応の理由がある
僕はこの形式が大好きだし
ジャンプアクションは、総合的に見れば、比較的簡単に作れる
少なくとも MMO とは違うわけだ
僕はこの形式のステージ構造や
キャラ設計の動画をたくさん作ってきたし、役に立つはずだ
さて、これもまた…
もう一度覚悟して聞いてくれ
独特なひねりを加えたゲームにするつもりだ
僕のアイデアは、
磁力をもった主人公だ
つまり、ある足場から反発したり
別の足場に引き寄せられたりする
プレイヤーはボタンを押すだけで極性を変えられる
このアイデアは実のところ
このゲームから着想を得た
『ゼルダの伝説:ふしぎの木の実 大地の章』だ
このゲームでは「マグネグローブ」を入手する
リンクがある場所から反発したり、そこへ向かったりできる
デカイ鉄球を拾ってパズルを解いたり
戦闘に使ったりもできる
クールな仕組みだが、多少の制約があるように感じる
この様式や、俯瞰のカメラ視点
もちろん、ゲームボーイの技術的制限だ
そこで考えた…
このアイデアを借りて、別の形式に当てはめてみたらどうだろうか?
テンポの速い 2D ジャンプアクションだ
『Celeste』や『Super Meat Boy』に似たやつだ
速さ、柔軟性、正確さのために
磁力を会得しなければならないゲームだ
これが僕の構想だ
そして今の問題は―
どこから始めたらいいのか?
すぐに Unity でコードを書き始めればいいのか?
急いで Photoshop で絵を作ればいいのか?
物語の展開やキャラとかを
考えたほうがいいのか?
どこから始めれば良いんだ?
ぶっちゃけた話をすると
これは僕が初めて作ろうとしたゲームではない
子供の頃からゲームの構想があって
人生のなかで時々―
色々なツールとかで
そのゲームを作ろうとしてきた
だが、僕がそういったゲームを完成させることはほとんど無かった
その理由は毎回同じだと思う
間違ったやり方で始めたことだ
ご覧いただこう
このフォルダは僕の実家から持ってきたやつで
Game Maker’s Toolkit を始める数年前に
作ろうとしたゲームのメモや下絵や構想がいっぱい入ってる
これ『Starcraft Ghost』のマウスパッドだ
これ開発中止になったやつだろ?
eBay に出品する価値があるかもな
それでこれは『カーターの呪い』という
題名になる予定だった
ツタンカーメンの墓を発見した有名な考古学者
ハワード・カーターのゲームだ
少なくともゲーム内では
古代エジプトの呪いを目覚めさせてしまって
ゾンビやミイラ、古代エジプトの神々と戦う羽目になる
何時間もかけてこういう絵とかを描いていたのを覚えてる
つまり…なんてオタク野郎だ!
ともかく
じゃあどうやって敵と戦うのか?
答えは…ピクロスをやることだ
ピクロスは論理とマス目を使ったパズルで…
数独にちょっと似てる
任天堂はピクロスのゲームをたくさん作った
僕は『Bookworm Adventures』みたいなゲームに
かなり影響を受けた
画面下にパズルがあって、それを解くと
上画面の小さな戦闘シーンで敵にダメージが入る
僕のアイデアも同じで
下画面でピクロスをやって
ハワード・カーターが上画面で
怪物と戦うという内容だ
それですぐに開発に取り掛かった
僕は Codea という iPad アプリを使った
iPad 用に iOS ゲームを作れるアプリだ
僕は以前、これで iOS 用のごく普通のピクロスアプリを
作ったことがあったので
コードは自分で書けるだろうと思ったが
グラフィックは最高のやつにしたかったから
すぐに Photoshop を起動して
素材や動きをたくさん作った
Dropbox のフォルダにはドット絵の素材や
アニメーションがたくさん保存されている
いろんなキャラを大量に作ったし
ハワード・カーターの必殺技も作ったし
冒頭のカットシーンも作ったし
メニュー用の大きなワクワクするボタンも作った
僕は本当に、夢中で作った
しかし僕はあることに気付いた
かなり重要なことだ
この企画にかなり不都合なことだ
ゲームは全然良くなかった!
とても粗悪で、全然面白くなかった
コードを書けば書くほど
開発すればするほど
何が問題なのかが分かってきた
ピクロスは、この種のゲームとしては
深さが欠如してる
戦法も戦略も無いし、戦う敵に応じて
行動を変えることもできない
突き詰めると、この戦闘には
実体が無かった
上画面を丸ごと無視しても
ゲームはそのまま成立する
だってピクロスを
解いてるだけだから
つまり戦う敵に応じてもっと難しくしたり
もっと面白くしたりすることはできないし
プレイヤーは同じことを何度も何度も
繰り返すだけというわけだ
僕が作ったのは、浅くて作業的で
退屈なゲームだった
これを修正することも出来たかもしれないが
僕はその時点でボロボロですっかり落ち込んでいたから
そこで全てを破棄してしまった
それで僕は何を間違えたのか?
これは何年も経ってからの後知恵で(何年も経った後に分かったことだが)…
もう 10年近くになるが…
事の真相(何でこうなったのか)は、かなり明らかだ
ゲームを作るときは、制作しなければならないものが色々ある
主なものは、音楽、アート、ゲーム設計、物語、そしてコードだ
これらが平等だと考えるのは簡単だが
実際はそうじゃない
多くの場合、ゲーム設計は対等ではなく
他の全ての要素が乗っかる基盤になる
だから設計を間違えると
全体が崩壊してしまう
バグの修正や、グラフィックを描き直すことはできるが
ゲームプレイに根本的な欠陥がある場合
企画そのものが救出不可能になることがある
僕の失敗は
ほぼこれだった
絵と動きにたくさんの時間を費やしてしまい
ようやく「遊び」の部分に手を着けたときに、何もかもが欠陥だらけだと気付いた
要するに僕はグラグラする地盤に家を建てたくせに
トイレが床から抜け落ちてビックリ仰天してるわけだ
恥ずかしいことに、僕はこの手の失敗を
何度もやらかしている
僕は独自の「手がかり自動生成システム」を搭載した
ポイントクリック型の犯罪捜査ゲームを作りたかったが
あまりに多くの時間を、物語や
時間周期の調査に費やしてしまって
そのシステムを実際に
設計することはなかった
また携帯ゲーム『Snake』に、現代的な
速いテンポの工夫を加えたかったが
バグ修正と動きのコードを
完璧にすることにハマってしまい
このゲームが面白いのかどうか分からないまま
飽きて燃え尽きてしまった
だから僕は自作ゲームを
設計しようとするたびに
物語やグラフィックとかの他の要素を
ゲームプレイよりも優先させてきた なんでだ?
結局は、2つのかなり間違った
思い込み(誤解)をしてるからだと思う
誤解 1. は、ゲームは脳内だと
いつもクールな感じがしたから
これを作ったら面白いだろうと
思い込んでしまったことだ
明らかにこれは間違いだった
誤解 2. は、作ってみるまでそのゲームが面白いかどうかは分からないということだ
そのゲームの制作をひたすら続けていけば
いつかそれが良いものかどうか分かる…と思うだろ?
いや、これも間違いだった
今となっては答えは明白(自明)だから
これを言うのはドン引き???なのだが
当時は明白ではなかった(簡単に気付けなかった)
Game Maker’s Toolkit をやるようになって
ゲーム開発の調査をするようになって
数十人ものゲーム開発者に取材して、その後で
大成功したゲームがどう始まるのか分かるようになった
ゲーム開発者はいつもたくさんのアイデアを持っている
頭の中では驚くほど楽しそうに見える
だが最良の開発者は、自分の脳みそが
ひどい悪臭の嘘つき野郎だと分かってる
ゲームのアイデアが良いかどうかを知る唯一の方法は
それを作って試すことだ
だがゲーム全体を作るのではなく
開発者が作るのは…「試作品」だけでいい